「有事に対応する内閣」の宣言と恐怖 - 忽然と消えた中島恵の中国情報
ペロシ訪台を機に起きた中国の軍事演習と台湾周辺の緊張について、客観的な立場からの報道や解説がない。テレビに出て発言するのは宮家邦彦や小野寺五典のようなグロテスクな右翼ばかりだ。日本のマスコミで公論化した中国叩きの口上を垂れ、中国との戦争のための準備を整えよと扇動する結論で終わり。不信と憎悪を刺激的に畳み込む準戦時モードの言説が流される。今週は、原爆の日(8/6・8/9)と終戦の日(8/15)の中間の日程で、本来ならこの国が最も平和主義の思想に包まれ、国民が反戦への誓いを新たにする時間帯だった。
一年中で最も暑いこの時期に、一年中でたった一度だけ、保守を含めた市民全体が憲法9条の理念に接近する。日本国の基本と原点について思い知る。ジブリ映画『火垂るの墓』が茶の間に流される。だが、今年は全くそうなっていない。10日に改造内閣を立ち上げた岸田文雄は、あろうことか新内閣を「有事に対応する政策断行内閣」と銘打った。有事とは、「戦争や事変など、非常の事態が起こること」の意味である。岸田文雄の「有事」が「台湾有事」を示唆しているのは明白で、中国との戦争に対応すると宣言している。
この内閣は中国との武力衝突の事態に備えた内閣だと、組閣発表時に首相が自ら内外に宣告した。前日に長崎平和祈念式典で、「恒久平和の実現に向けて力を尽くすことを改めてお誓い申し上げます」と述べたその口と舌で、新内閣は有事対応内閣だと言い放った。この欺瞞と厚顔に対して、マスコミは何も掣肘するところなく見逃している。「有事内閣」の不吉な語を捉えて批判しようとしない。マスコミもまた岸田文雄と同列にあり、中国との戦争を必然視し、それへの構えを国家の必須の課題とする立場だから、そこに何も違和感はないのだ。
通常、自民党政権は1年の年限で改造をする。それが慣例の行事で、秋国会前の9月にオーガニゼーション・チェンジを行う。大臣の任期は1年で、派閥がポストを議員に年功順送りで与えて行く。待機組が初入閣する。この第2次岸田改造内閣も、期限は1年である。政権が安泰であれば、来年9月に改造して新たな内閣に移る。ということは、今回のキャッチコピーの「有事に対応する」は、今後1年のこの内閣の任務と目的を言い上げたものだ。すなわち、この1年間で対中戦争への態勢整備の断行が目論まれている意図が分かる。
不思議で不満なのは、ペロシ訪台と中国軍事演習の緊張について、右翼以外の論者から発言がないことだ。例えば、田岡俊次や前田哲男などのリベラル系の軍事評論家である。80歳と83歳。二人とも高齢で体力がないのだろうか。私も高齢者に仲間入りする年齢となり、長い記事を瞬発的に書き上げる体力がなくなった。80歳と83歳の人に無理をお願いするのは酷のようにも思われる。が、二人より若い世代を探しても、適当な候補が思い浮かばない。統一教会問題で彗星の如く登場した鈴木エイトのような人材が、対中関係や台湾有事の論評で出現してくれないだろうか。
中国との外交安保に関わる問題で、右翼に対立して反論する者の姿が消えて果てた。東アジアの情勢についての議論は完全に一色に染まっていて、アメリカの戦略を全面肯定し、日米同盟の論理と視点に乗っかった忌まわしい主張しかない。中国は悪魔の敵国であり、討滅すべき国際社会の逆賊であり、一刻も早く戦争態勢を整えねばならず、邪魔な憲法9条を変えなくてはならない、と言う。それが現在の国論だ。最早、異論はなく、論争は絶えた。憲法9条や日中共同声明の原則と正論を言う者がいない。大平正芳の「一衣帯水」の旗を立て、地に踏ん張って抵抗する者がいない。
お気づきの者はいるだろうか。最近、中島恵の中国関連のレポートが Yahoo トップのニュース一覧から消えている。昨年までは月に一回ほどの頻度で案内され、屡々注目されて5chなどで話題になっていた。最近の掲載で印象に残っているのは、2年前に上がった「中国の日本風夏祭りのブーム」の記事で、その取材内容に驚かされたものだ。中国で日本の夏祭りのコピーがイベントとして流行っていて、屋台の露店が出て、女の子が浴衣姿で歩いている。日本人がクリスマスやハローウィンなど欧米の季節の催事を生活文化に根づかせたように、中国が日本の文化を精力的に摂取・導入している。
現代中国の文化風俗のトレンドを紹介し、特に中国人の日本文化への傾倒の強さに焦点を当てた中島恵の記事は、最悪の状態となった日中関係の中で一服の清涼剤の感を放っていた。日中の政治的緊張を大衆レベルでやわらげる、例外的な情報発信であり、貴重で有意味な友好効果をもたらしていたと言える。マスコミが振り撒く中国憎悪の感情を薄め、日本人が中国に好感を持つ契機となり得る材料だった。Yahoo がそれを陳列していた差配も、ある種のバランス配慮の政治だったと考えられる。中島恵の記事が消えたことは、戦前、アメリカ映画が配給停止になり、野球の「ストライク」が「よし」になった不毛な歴史を想起させる。
気になって調べると、中島恵の最新記事があり、「中国の夏祭りが『反日感情」で続々中止に」なっている事情が書かれていた。残念なことだが、国家の関係は相互的なものであり、日本でハリウッド映画を禁止して鬼畜米英を唱えていた頃は、アメリカでも日本人を強制収容してジャップ叩きのプロパガンダを煽っていた。もともと、中国の若者の日本文化への殺到と熱中は、中国政府が政策として促進した流れの延長と結果であり、それは中国の消費水準を引き上げ、中国製品の品質と付加価値を上げるために行われた経済戦略の副産物に他ならない。マンガやアニメを自前で制作する技量を養うために推進されたものだ。
無論、合わせて、文化と消費の面での親日化現象を演出して、日本人の中国への認識が少しでも好転し、20年間積み重なった中国への憎悪と敵意が改善される変化への期待もあっただろう。だが、中国の今年直近の動向を覗うと、従来とは逆の流れが起きていて、暗澹とした気分にさせられる。プノンペンで予定されていた日中外相会談を中国側が拒絶し、日本がG7共同声明で中国の軍事演習を非難したことに猛反発した態度も、この「夏祭り中止」の逆流事情と無縁ではあるまい。中国側に内在して言えば、我慢の限界を超えたという意味であり、中国における日本の位置づけと序列が下に変わり、日本への愛想とサービスはやめたという判断に違いない。
台湾有事の問題については、昨年4月に何本か記事を書いている。今読み返しても古くなく、正しく有意味な分析と考察を提供していると確信する。以前から論じているように、台湾有事とは、アメリカの側から仕掛けた軍事外交戦略であり、中国の体制(CPC)を転覆し、国家(PRC)を崩壊させる目的と方針の下で策定された、現在実行中の新冷戦プログラムだ。19年10月のペンス・ドクトリンの演説から始動し、バイデン政権に変わっても継承され、精緻で巧妙な工程表に落とし込まれて遂行されている。対中国の本格的な戦争(WW3)が構想されていて、そこへ至る主軸プロセスとして台湾工作が設計されている。
昨年3月に前インド太平洋軍司令官のデービッドソンの口を通じて、「6年以内に台湾有事」というスケジュールを公表した。クアッドとオーカスを組織し、IPEFを結成し、中国を挑発しながら、ブリンケンらしく有能に着実に歩を固めている。アメリカは繰り返し「一つの中国」の基本は守ると弁明しているが、これは口先だけのウソであり、狡猾な二枚舌の詭弁にすぎない。現実の行動は「二つの中国」を既成事実化する露骨な一挙一動であって、台湾独立へ向けての環境作りに余念がない。アメリカと西側諸国の高官を次々訪台させ、事務所を台北に設置し、事実上の外交関係を深め公然化させている。軍事顧問団まで送り込んでいる。
アメリカの対中国戦略の動機は、21世紀も覇権国の地位を守ることである。このまま中国の経済的軍事的発展を座視すれば、中国にルールメーカーの首座を奪われてしまうため、先手を打って実力で阻止することである。この本音はアリソンの著書の中で正直に書かれているし、一般論として公知の事実だろう。けれども、日本のマスコミはこの重要で本質的な背景を語らず、また、台湾有事が一貫してアメリカ側から仕掛けられた策動の上に積み上がった情勢である真実も言わない。そもそも、台湾は中国の一部であり、主権は中華人民共和国に属し、それが「一つの中国」の意味であり、アメリカもそれを認めてきた。
1979年にアメリカは台湾と断交し、台北のアメリカ大使館を閉鎖している。ペンス・ドクトリン以降のアメリカの台湾への干渉は、それがどれほど台湾市民に歓迎される行動であっても、中国との約束を破る国際法違反である。アメリカの一連の台湾工作こそ、力による現状変更の営みの典型である。中国の側は、アメリカの動きを警戒し牽制し、中止するよう強く要求してきたが、アメリカに方針撤回の意思がないことを悟り、遂に軍事的に対抗する姿勢に変わった。今年から明確にそうなった。今、米中の間には外交チャンネルは存在しないという説明になっていて、いつでも中台衝突が起こり、米中紛争に発展する危険性がある。
その意味で、台湾有事は、最早、アメリカが一方的に工作や作戦を仕掛けている構図ではなくなり、双方が対峙し手を出し合う一触即発の段階に入った。中国の方も戦争覚悟で対決する計画を立てる進行となった。黙って見ていれば押されるばかりで、アメリカの主導権で着々と既成事実を積み上げられる。アメリカの老獪な外交の手で翻弄され、気がつけば西側諸国すべてが「二つの中国」を容認する状況が出来上がってしまう。台湾を国連加盟させようという事態にまで一瞬で持って行かれる。ウクライナ戦争はアメリカの台湾工作に絶好の条件を与えており、中国側の危機感と焦燥は甚だしい。
中国にはソフトパワーがなく、国際社会で協力を得る味方陣営もなく、結局、軍事力で物理的に干渉を排除して「一つの中国」の主権を守るしかない。宮本雄二が指摘したように、武力に訴えて問題解決する方法と選択しかない。他に能力と基盤の前提がない。ペロシ訪台で現出したアメリカと中国のチキンレースは、今後、さらに引火爆発の危険度を増しつつ延長戦が繰り返され、どこかの時点で臨界に達し、自衛隊も参戦する第三次世界大戦になるだろう。それを止める可能性は、偶然しかなく、アメリカで衝撃的な波乱と決壊のアクシデントが起きるか、中国の政治が劇的に変わるかしかない。
親鸞の他力本願で平和を祈るしかないのが現実だ。
ブログ活動ご支援のお願い
あれは15年程前でしたか、民放の土曜日か日曜日の朝の番組で
国会議員を退かれて、そう間が無かった塩川正十郎さんがこう仰ったと
記憶しています。
「日本の発展にはアメリカも中国も両方必要」
「アメリカか中国、どちらかと縁を切れと言うのは、幼子に
トト様とカカ様どちらかを選べと言うのと同じ位、むごい事」
その上で、塩川さんは「今は、アメリカに比重を置くべし」とも
仰ってました。
あれから15年、塩川さんも今は亡く、ますます現在の政権は
アメリカに傾倒しています。
もし、日中間で戦端が開かれれば、日本の主要都市や沖縄は
ほぼ壊滅、中国も沿岸部に相当被害を受けて、立て直すのに
かなりの時間が掛かるでしょう。
・・・要するにアメリカが火事場泥棒、漁夫の利を得るわけです。
そんな事を絶対にさせない様に、我々の命を守る為にも、
自民党政権を完膚無きまでに叩き潰したいのですが、
それでも、日本の有権者は自民党を選ぶんですよね。
一年中で最も暑いこの時期に、一年中でたった一度だけ、保守を含めた市民全体が憲法9条の理念に接近する。日本国の基本と原点について思い知る。ジブリ映画『火垂るの墓』が茶の間に流される。だが、今年は全くそうなっていない。10日に改造内閣を立ち上げた岸田文雄は、あろうことか新内閣を「有事に対応する政策断行内閣」と銘打った。有事とは、「戦争や事変など、非常の事態が起こること」の意味である。岸田文雄の「有事」が「台湾有事」を示唆しているのは明白で、中国との戦争に対応すると宣言している。
この内閣は中国との武力衝突の事態に備えた内閣だと、組閣発表時に首相が自ら内外に宣告した。前日に長崎平和祈念式典で、「恒久平和の実現に向けて力を尽くすことを改めてお誓い申し上げます」と述べたその口と舌で、新内閣は有事対応内閣だと言い放った。この欺瞞と厚顔に対して、マスコミは何も掣肘するところなく見逃している。「有事内閣」の不吉な語を捉えて批判しようとしない。マスコミもまた岸田文雄と同列にあり、中国との戦争を必然視し、それへの構えを国家の必須の課題とする立場だから、そこに何も違和感はないのだ。
通常、自民党政権は1年の年限で改造をする。それが慣例の行事で、秋国会前の9月にオーガニゼーション・チェンジを行う。大臣の任期は1年で、派閥がポストを議員に年功順送りで与えて行く。待機組が初入閣する。この第2次岸田改造内閣も、期限は1年である。政権が安泰であれば、来年9月に改造して新たな内閣に移る。ということは、今回のキャッチコピーの「有事に対応する」は、今後1年のこの内閣の任務と目的を言い上げたものだ。すなわち、この1年間で対中戦争への態勢整備の断行が目論まれている意図が分かる。
不思議で不満なのは、ペロシ訪台と中国軍事演習の緊張について、右翼以外の論者から発言がないことだ。例えば、田岡俊次や前田哲男などのリベラル系の軍事評論家である。80歳と83歳。二人とも高齢で体力がないのだろうか。私も高齢者に仲間入りする年齢となり、長い記事を瞬発的に書き上げる体力がなくなった。80歳と83歳の人に無理をお願いするのは酷のようにも思われる。が、二人より若い世代を探しても、適当な候補が思い浮かばない。統一教会問題で彗星の如く登場した鈴木エイトのような人材が、対中関係や台湾有事の論評で出現してくれないだろうか。
中国との外交安保に関わる問題で、右翼に対立して反論する者の姿が消えて果てた。東アジアの情勢についての議論は完全に一色に染まっていて、アメリカの戦略を全面肯定し、日米同盟の論理と視点に乗っかった忌まわしい主張しかない。中国は悪魔の敵国であり、討滅すべき国際社会の逆賊であり、一刻も早く戦争態勢を整えねばならず、邪魔な憲法9条を変えなくてはならない、と言う。それが現在の国論だ。最早、異論はなく、論争は絶えた。憲法9条や日中共同声明の原則と正論を言う者がいない。大平正芳の「一衣帯水」の旗を立て、地に踏ん張って抵抗する者がいない。
お気づきの者はいるだろうか。最近、中島恵の中国関連のレポートが Yahoo トップのニュース一覧から消えている。昨年までは月に一回ほどの頻度で案内され、屡々注目されて5chなどで話題になっていた。最近の掲載で印象に残っているのは、2年前に上がった「中国の日本風夏祭りのブーム」の記事で、その取材内容に驚かされたものだ。中国で日本の夏祭りのコピーがイベントとして流行っていて、屋台の露店が出て、女の子が浴衣姿で歩いている。日本人がクリスマスやハローウィンなど欧米の季節の催事を生活文化に根づかせたように、中国が日本の文化を精力的に摂取・導入している。
現代中国の文化風俗のトレンドを紹介し、特に中国人の日本文化への傾倒の強さに焦点を当てた中島恵の記事は、最悪の状態となった日中関係の中で一服の清涼剤の感を放っていた。日中の政治的緊張を大衆レベルでやわらげる、例外的な情報発信であり、貴重で有意味な友好効果をもたらしていたと言える。マスコミが振り撒く中国憎悪の感情を薄め、日本人が中国に好感を持つ契機となり得る材料だった。Yahoo がそれを陳列していた差配も、ある種のバランス配慮の政治だったと考えられる。中島恵の記事が消えたことは、戦前、アメリカ映画が配給停止になり、野球の「ストライク」が「よし」になった不毛な歴史を想起させる。
気になって調べると、中島恵の最新記事があり、「中国の夏祭りが『反日感情」で続々中止に」なっている事情が書かれていた。残念なことだが、国家の関係は相互的なものであり、日本でハリウッド映画を禁止して鬼畜米英を唱えていた頃は、アメリカでも日本人を強制収容してジャップ叩きのプロパガンダを煽っていた。もともと、中国の若者の日本文化への殺到と熱中は、中国政府が政策として促進した流れの延長と結果であり、それは中国の消費水準を引き上げ、中国製品の品質と付加価値を上げるために行われた経済戦略の副産物に他ならない。マンガやアニメを自前で制作する技量を養うために推進されたものだ。
無論、合わせて、文化と消費の面での親日化現象を演出して、日本人の中国への認識が少しでも好転し、20年間積み重なった中国への憎悪と敵意が改善される変化への期待もあっただろう。だが、中国の今年直近の動向を覗うと、従来とは逆の流れが起きていて、暗澹とした気分にさせられる。プノンペンで予定されていた日中外相会談を中国側が拒絶し、日本がG7共同声明で中国の軍事演習を非難したことに猛反発した態度も、この「夏祭り中止」の逆流事情と無縁ではあるまい。中国側に内在して言えば、我慢の限界を超えたという意味であり、中国における日本の位置づけと序列が下に変わり、日本への愛想とサービスはやめたという判断に違いない。
台湾有事の問題については、昨年4月に何本か記事を書いている。今読み返しても古くなく、正しく有意味な分析と考察を提供していると確信する。以前から論じているように、台湾有事とは、アメリカの側から仕掛けた軍事外交戦略であり、中国の体制(CPC)を転覆し、国家(PRC)を崩壊させる目的と方針の下で策定された、現在実行中の新冷戦プログラムだ。19年10月のペンス・ドクトリンの演説から始動し、バイデン政権に変わっても継承され、精緻で巧妙な工程表に落とし込まれて遂行されている。対中国の本格的な戦争(WW3)が構想されていて、そこへ至る主軸プロセスとして台湾工作が設計されている。
昨年3月に前インド太平洋軍司令官のデービッドソンの口を通じて、「6年以内に台湾有事」というスケジュールを公表した。クアッドとオーカスを組織し、IPEFを結成し、中国を挑発しながら、ブリンケンらしく有能に着実に歩を固めている。アメリカは繰り返し「一つの中国」の基本は守ると弁明しているが、これは口先だけのウソであり、狡猾な二枚舌の詭弁にすぎない。現実の行動は「二つの中国」を既成事実化する露骨な一挙一動であって、台湾独立へ向けての環境作りに余念がない。アメリカと西側諸国の高官を次々訪台させ、事務所を台北に設置し、事実上の外交関係を深め公然化させている。軍事顧問団まで送り込んでいる。
アメリカの対中国戦略の動機は、21世紀も覇権国の地位を守ることである。このまま中国の経済的軍事的発展を座視すれば、中国にルールメーカーの首座を奪われてしまうため、先手を打って実力で阻止することである。この本音はアリソンの著書の中で正直に書かれているし、一般論として公知の事実だろう。けれども、日本のマスコミはこの重要で本質的な背景を語らず、また、台湾有事が一貫してアメリカ側から仕掛けられた策動の上に積み上がった情勢である真実も言わない。そもそも、台湾は中国の一部であり、主権は中華人民共和国に属し、それが「一つの中国」の意味であり、アメリカもそれを認めてきた。
1979年にアメリカは台湾と断交し、台北のアメリカ大使館を閉鎖している。ペンス・ドクトリン以降のアメリカの台湾への干渉は、それがどれほど台湾市民に歓迎される行動であっても、中国との約束を破る国際法違反である。アメリカの一連の台湾工作こそ、力による現状変更の営みの典型である。中国の側は、アメリカの動きを警戒し牽制し、中止するよう強く要求してきたが、アメリカに方針撤回の意思がないことを悟り、遂に軍事的に対抗する姿勢に変わった。今年から明確にそうなった。今、米中の間には外交チャンネルは存在しないという説明になっていて、いつでも中台衝突が起こり、米中紛争に発展する危険性がある。
その意味で、台湾有事は、最早、アメリカが一方的に工作や作戦を仕掛けている構図ではなくなり、双方が対峙し手を出し合う一触即発の段階に入った。中国の方も戦争覚悟で対決する計画を立てる進行となった。黙って見ていれば押されるばかりで、アメリカの主導権で着々と既成事実を積み上げられる。アメリカの老獪な外交の手で翻弄され、気がつけば西側諸国すべてが「二つの中国」を容認する状況が出来上がってしまう。台湾を国連加盟させようという事態にまで一瞬で持って行かれる。ウクライナ戦争はアメリカの台湾工作に絶好の条件を与えており、中国側の危機感と焦燥は甚だしい。
中国にはソフトパワーがなく、国際社会で協力を得る味方陣営もなく、結局、軍事力で物理的に干渉を排除して「一つの中国」の主権を守るしかない。宮本雄二が指摘したように、武力に訴えて問題解決する方法と選択しかない。他に能力と基盤の前提がない。ペロシ訪台で現出したアメリカと中国のチキンレースは、今後、さらに引火爆発の危険度を増しつつ延長戦が繰り返され、どこかの時点で臨界に達し、自衛隊も参戦する第三次世界大戦になるだろう。それを止める可能性は、偶然しかなく、アメリカで衝撃的な波乱と決壊のアクシデントが起きるか、中国の政治が劇的に変わるかしかない。
親鸞の他力本願で平和を祈るしかないのが現実だ。
by yoniumuhibi
| 2022-08-12 23:30
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Comments(5)
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ムラッチー
at 2022-08-13 11:27
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あれは15年程前でしたか、民放の土曜日か日曜日の朝の番組で
国会議員を退かれて、そう間が無かった塩川正十郎さんがこう仰ったと
記憶しています。
「日本の発展にはアメリカも中国も両方必要」
「アメリカか中国、どちらかと縁を切れと言うのは、幼子に
トト様とカカ様どちらかを選べと言うのと同じ位、むごい事」
その上で、塩川さんは「今は、アメリカに比重を置くべし」とも
仰ってました。
あれから15年、塩川さんも今は亡く、ますます現在の政権は
アメリカに傾倒しています。
もし、日中間で戦端が開かれれば、日本の主要都市や沖縄は
ほぼ壊滅、中国も沿岸部に相当被害を受けて、立て直すのに
かなりの時間が掛かるでしょう。
・・・要するにアメリカが火事場泥棒、漁夫の利を得るわけです。
そんな事を絶対にさせない様に、我々の命を守る為にも、
自民党政権を完膚無きまでに叩き潰したいのですが、
それでも、日本の有権者は自民党を選ぶんですよね。
34
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by
住田
at 2022-08-14 10:51
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杉田水脈なる人物は論評に値しない人物だと思って無視していましたが、BBCは、杉田が伊藤詩織さんを「枕営業」と揶揄する動画をすでに配信していて、世界中が視聴済です。伊藤詩織さんのことは日本人より外国の人の方がよく知っているでしょうね。
その杉田が国会議員なのも恥でしたが、政務官にするという。安倍晋三に言われて仕方なく政務官にしたわけでもない。岸田が任命した、確信犯です。
統一教会が韓国で開いた催しで安倍晋三を追悼していましたが、安倍と統一教会のつながりが非常に強いことが明らかだ。統一教会はトランプにメッセージ動画の謝礼で1億払ったと明言しているが、安倍晋三にもほぼ同額でしょう。
テレビ朝日はいまだに、なぜ統一教会への恨みが安倍晋三に向かったのかわからないなどという報道をしています。この放送局も確信犯。
その杉田が国会議員なのも恥でしたが、政務官にするという。安倍晋三に言われて仕方なく政務官にしたわけでもない。岸田が任命した、確信犯です。
統一教会が韓国で開いた催しで安倍晋三を追悼していましたが、安倍と統一教会のつながりが非常に強いことが明らかだ。統一教会はトランプにメッセージ動画の謝礼で1億払ったと明言しているが、安倍晋三にもほぼ同額でしょう。
テレビ朝日はいまだに、なぜ統一教会への恨みが安倍晋三に向かったのかわからないなどという報道をしています。この放送局も確信犯。
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人情味。
at 2022-08-14 21:23
x
もし山上容疑者が安倍元首相を殺さなければ、
すぐに改憲されていたと思います。
統一教会の不正が次々と暴かれていき、状況が少し
変わってきたように思います。
いくら投票しても中選挙区制時代のような安心感のある政治、
温かみのある政治には至らず、悔しい思いをしてきて、
この際政治に無関心になって、ご近所と円満で会社でそこそこ
ちゃんとやっていけていれば、もうそれでいいか、気持ちも楽だもの、と思うまでになりましたが、毛沢東の言っていたように、銃口で政治の流れが一気に変わったように思います。
この最後のチャンスを、僕たちは決して無駄にはしたくない。
戦争したら、愛する人が悲しむ死が待っています。倒す相手にも家族がいます。殺し合いは意味はありません。
山口二郎さんたちが小選挙区制の旗振り役を担ったことはとても悲しく思います。
僕たち平成生まれは、平和教育する先生が少なかったり、格差の激しい時代に幼少から晒されてきた関係から、社会から愛されてる、と実感する比率が上の世代の方より少ないため、戦争への参加へのためらいも少ないかもしれません。
しかし、それでは軍国主義を願う彼らの思う壺であります!(壺なだけに)
諦めず、勉強して、仕事して、結婚して、世代を問わず、日本に住んでて幸せだと感じられる日常を絶対に作っていきたい。
すぐに改憲されていたと思います。
統一教会の不正が次々と暴かれていき、状況が少し
変わってきたように思います。
いくら投票しても中選挙区制時代のような安心感のある政治、
温かみのある政治には至らず、悔しい思いをしてきて、
この際政治に無関心になって、ご近所と円満で会社でそこそこ
ちゃんとやっていけていれば、もうそれでいいか、気持ちも楽だもの、と思うまでになりましたが、毛沢東の言っていたように、銃口で政治の流れが一気に変わったように思います。
この最後のチャンスを、僕たちは決して無駄にはしたくない。
戦争したら、愛する人が悲しむ死が待っています。倒す相手にも家族がいます。殺し合いは意味はありません。
山口二郎さんたちが小選挙区制の旗振り役を担ったことはとても悲しく思います。
僕たち平成生まれは、平和教育する先生が少なかったり、格差の激しい時代に幼少から晒されてきた関係から、社会から愛されてる、と実感する比率が上の世代の方より少ないため、戦争への参加へのためらいも少ないかもしれません。
しかし、それでは軍国主義を願う彼らの思う壺であります!(壺なだけに)
諦めず、勉強して、仕事して、結婚して、世代を問わず、日本に住んでて幸せだと感じられる日常を絶対に作っていきたい。
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人情味。
at 2022-08-15 09:29
x
総裁選で石破さんを倒すために、統一教会の信者が安倍さんに大量に票を動員したということを知った時、「統一教会は平和の敵」と確信しました。
彼らが改憲を進め、非正規の人を大量に増やすための強力なバックアップをしてきて、人々の暮らしの改善を目指す政治家を総裁選であれ国会議員選挙であれ知事選であれ、潰してきたということを知りました。
候補者の当落を左右するほどの影響力を持つ教会、山上はそこに一撃を与えたんだと思います。
確信を持って言いますが、中曽根康弘が総理になって、残酷な新自由主義を推進していなければ、確実に田中さんは家庭を築けたはずです。
「中曽根は世界のリーダーと対等に渡り合えた」「中曽根は既得権益を倒して経済発展に寄与した」と言う連中もいますが、産業を破壊して僕たち一般市民の仕事を奪った男であります。
田中角栄の逮捕を導いたのも岸信介で、こういう悪徳の輩を裏で采配していたのが、日本人信者から莫大な財産を巻き上げて組織を肥やした統一教会に間違いありません。
これ以上政治家が国民を虐げることは許しません。
彼らが改憲を進め、非正規の人を大量に増やすための強力なバックアップをしてきて、人々の暮らしの改善を目指す政治家を総裁選であれ国会議員選挙であれ知事選であれ、潰してきたということを知りました。
候補者の当落を左右するほどの影響力を持つ教会、山上はそこに一撃を与えたんだと思います。
確信を持って言いますが、中曽根康弘が総理になって、残酷な新自由主義を推進していなければ、確実に田中さんは家庭を築けたはずです。
「中曽根は世界のリーダーと対等に渡り合えた」「中曽根は既得権益を倒して経済発展に寄与した」と言う連中もいますが、産業を破壊して僕たち一般市民の仕事を奪った男であります。
田中角栄の逮捕を導いたのも岸信介で、こういう悪徳の輩を裏で采配していたのが、日本人信者から莫大な財産を巻き上げて組織を肥やした統一教会に間違いありません。
これ以上政治家が国民を虐げることは許しません。
Commented
by
印藤和寛
at 2022-08-20 09:18
x
今こそ「テニスコートの誓い」の時。与党が国会を開かないというなら、憲法に基づき野党で国会を開け。国会議事堂に入れなければ中庭でも憲政記念館でもいい。報道記者も国民大衆もそれを取り囲んで集まるだろう。勝負の時だ!それが戦争と改憲を阻止する道ではないか。
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