どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル

「ロシアを一方的に非難せよ」という主張は、要するに、ウクライナ・西側のプロパガンダを全て真実だと信じ、それに疑念を抱くなということだ。マスコミが散布し放射する戦争プロパガンダを鵜呑みにし、ロシア寄りの言論や情報は一切排除せよという意味だ。各自が競馬の遮眼革を装着した精神状態になれと説き、ロシアに対して不寛容に徹せよと叫号している。そんな暴論を左翼リベラルの国会議員が吐き散らかして扇動している。リベラルとは寛容の意味ではなかったのか。寛容の思想と複眼の理性がリベラルの本質ではなかったのか。

「ロシアを一方的に非難せよ」という主張は、首を絞めて親を殺した子は残虐で極悪な殺人鬼であり、犯行理由の説明に耳を貸す必要はないと言っているのと同じだ。親の介護で疲れるのは誰でも同じで、そこに惻隠の情の差し挟みなど無用と切り捨てる思考停止の薦めと同じである。今回、ロシアにも言い分がある。この侵略戦争の背景と構図がある。まず、マスコミと右翼左翼は、この侵略戦争が不意に突然始まったかのように図式化し、そのフィクションを前提に議論するが、実際には昨年10月にゼレンスキー政権がドローン攻撃で火蓋を切っている。

つまり、正当防衛の立論がされている。ロシア側の言い分に正当防衛の論理と契機があることに、寛容を旨とするはずのリベラルは注意を向ける必要があるだろう。東部ドンバス住民の防護と救援というのは一つの具体的で直接的な根拠づけだが、さらに大きな見取図において、ロシア側には二つの根本的な正当防衛の理由立てがある。すなわち、今回の軍事行動を必然化せしめた国家安全保障上の動機がある。あらためて整理要約しよう。その第一は、NATOの東方拡大と圧迫への対抗である。この点については多弁は無用だろう。

ケナンの警告は慧眼の予言となって的中した。軍事同盟であるNATOの敵はロシアであり、ソ連に続いてロシアを封じ込め、ロシア連邦をソ連と同じ運命に追い込むことがNATOの神聖目的に他ならない。ロシアが脅威を感じて身構えるのは当然だろう。加えて、そこには、NATO東漸と軌を一にしたカラー革命の連続が存在した。2000年のユーゴのブルドーザー革命、2003年のグルシアのバラ革命、2004年のウクライナのオレンジ革命。いずれもCIAが絡んだ謀略であり、2012年の反プーチン巨大デモもカラー革命の未遂事件である。NATO東漸はカラー革命の連発とセットの動きだった。

そのことは、前にも書いたが、韓国や中国にとって、自衛隊が靖国神社に集団参拝する図がどう映るかという問題と等置される。中国は前の戦争で2000万人の犠牲者を出した。その犠牲の上にPRCの建国の基礎がある。抗日解放の原点がある。現在、日本では、8月15日の靖国参拝は季節の風物詩になり、政治的な嫌忌と警戒の視線を向けられないイベントになった。クレンジング(政治漂白)された。だが、中国や韓国の人々にはその表象改造(=ゴマカシ)は通用しない。それは、中国と韓国の国家安全保障上の重大な懸念材料となる。ロシアも同じで、ウクライナのネオナチは国家の脅威なのだ。

アメリカは、ウクライナのNATO加盟を棚上げしようとしたのか、容認しようとしたのか、そこが曖昧なままだった。プーチンの前にニンジンをぶら下げて操り、痺れを切らさせていた。NATO加盟は認めないと決断していれば、大団円となり、この戦争は起きずに済んだ。他方、ゼレンスキーの側にも責任がある。昨年10月のドローン先制攻撃は言うに及ばず、それ以上に、ミンスク合意の履行をゴネて怠業していた過誤は大きい。アゾフ大隊に脅されていた可能性もあるけれど、大統領の権限で果敢に実行していれば、この戦争は未然に避けられた。マクロンに何度も催促されたのに、ゼレンスキーは愚図って履行に踏み出さなかった。

純軍事的観点から言えば、電撃侵攻して瞬時にキエフを落とすのなら、ウクライナ軍の軍備が整わない、そしてロシア軍兵士も「演習」で疲労していない、年末年始に決行すべきだった。タイミング(時機)の選択と設定は戦略の最重要要件である。ジャベリンとスティンガーが大量供給され、偵察衛星の監視態勢も万全に配置され、英米軍事顧問団とCIAによる迎撃作戦の準備が仕上がる2月下旬まで、プーチンはブリンケンの時間稼ぎに付き合っていた。実際のところ、軍事侵攻をせずとも、外交でウクライナのNATO加盟阻止は実現できていたはずなのだ。プーチンは短期でキエフ攻略が可能と安易に計算し、地上部隊を広域分散させて攻撃する愚を犯してしまった。
兵力集中攻撃は戦法の鉄則なのに、ロシア軍の実力を過信してそれをしなかった。2月下旬の時点で、おそらく、クレムリンのスタッフ全員が侵攻に反対だったのだろう。侵攻後の軍の士気が高まるはずがない。以上、四つの側面から「なぜプーチンが戦争を始めたのか」の全体像を整理した。思考停止せずにリベラルは考えてもらいたい。寛容で慎重な考察と意見こそがリベラルの正論なのだから。











by yoniumuhibi
| 2022-04-22 23:30
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Comments(3)

バイデンが追加の8億ドルの軍事支援を発表しましたが、私が読んだJacobinの記事によると、アメリカは実は援助の武器兵器が最終的にだれの手に渡るのかは把握していないのだと。ウクライナは侵攻前から武器の取引きブラック・マーケットが盛ん、そこに20カ国以上の政府から大量の武器が流入したらどうなるか?ウクライナ軍はポーランドで武器弾薬を受け取るが、その時点でその武器をどこへ誰に渡すかは彼らの判断によるって、、、確実に横流し。ヨーロッパに散らばる極右白人至上主義組織が強力な武装集団になり長期的に地域の不安定化( テロやクーデター)をもたらす懸念大。NATOの軍事介入カダフィ暗殺後のリビアから大量の武器が国外流出し、北アフリカ一帯が混乱し紛争が再燃したように。そういえばテロとの戦いと勇ましくマリに介入したフランス軍は、甲斐もなく2月に撤退しましたね。10年間なんだったんでしょう。
停戦や終戦の知恵を絞らず、無節操に武器兵器を送り続ける事で、エンドレスの戦争。レイセオンやロッキードの高笑いだけが響き渡る。ロシアが免責されたり正当化されないのは言わずもがなですが。
停戦や終戦の知恵を絞らず、無節操に武器兵器を送り続ける事で、エンドレスの戦争。レイセオンやロッキードの高笑いだけが響き渡る。ロシアが免責されたり正当化されないのは言わずもがなですが。
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ボリスジョンソンは、来年末まで戦争が続く可能性がある、ロシアが勝利する可能性があると話しました。来年末までとは…。
貴ブログで、日本が観光を主要産業にすることの危惧を何度か拝読しました。知床の事故を前にして、改めて思い出します。観光で食べていく人がいてもいいけど、観光を主要産業にするのは間違っています。
今回の観光船の会社は古い建物で、いっぱいいっぱいの操業のように見えます。地方の疲弊、コロナ禍での疲弊。そして菅義偉が始めたgoto、県民割などの旅行援助。コロナで厳しくなる前にと無理をしたのかもしれません。
和歌山のIRが県議会で否決されましたが、とてもいいことだと思います。大阪はIRで地獄を見ると思います。予定地が埋立地でどうにもならないようですから。
貴ブログで、日本が観光を主要産業にすることの危惧を何度か拝読しました。知床の事故を前にして、改めて思い出します。観光で食べていく人がいてもいいけど、観光を主要産業にするのは間違っています。
今回の観光船の会社は古い建物で、いっぱいいっぱいの操業のように見えます。地方の疲弊、コロナ禍での疲弊。そして菅義偉が始めたgoto、県民割などの旅行援助。コロナで厳しくなる前にと無理をしたのかもしれません。
和歌山のIRが県議会で否決されましたが、とてもいいことだと思います。大阪はIRで地獄を見ると思います。予定地が埋立地でどうにもならないようですから。

ミアシャイマー氏がCGTNのインタビューにおいて
「我々がどう思うかが問題ではなく、ロシアがどう思っているかが問題なのだ」とロシアの安全保障上の憂慮が被害妄想云々の批判に答えていました。
少なくとも2007年のミュンヘン会議以来プーチンは一貫してNATOへの懸念を明確に表明してきたのです。
そしてこれはプーチン個人や与党だけの考えではなく最大野党ロシア共産党においても認識は変わりません。
振り返って日本国内の一部政治家は大々的に中国の脅威を唱え続け利用している。台湾や南シナ海が清国以来中国の領土であることを考慮すればよほど被害妄想にすぎるのではないでしょうか。
さらに最近結ばれた中国、ソロモン諸島間の協力関係を米豪は大声で自らの安全保障の脅威であると騒ぎ、一部軍人は軍事力行使にまで言及する始末。
NATOと比較にならないレベルの二国間協定にすらこのように反応する国々がロシアの懸念を被害妄想だと批判するこの二重基準。
石垣のりこは日本国憲法を信じているなら尚更NATO、アメリカに批判的であるべきでしょう、そもそも2014年ドンバス紛争を武力解決しようとしたのはウクライナである基礎事実がすっぽり抜けていますね。
日本の援助にドローンが含まれているのを見て驚いたのですが現作戦映像でもドローンが砲撃、待ち伏せなどに広く利用されていてこれは明らかに兵器であり戦闘行為への加担です。
現在の大政翼賛体制は危険水域に達しています。
「我々がどう思うかが問題ではなく、ロシアがどう思っているかが問題なのだ」とロシアの安全保障上の憂慮が被害妄想云々の批判に答えていました。
少なくとも2007年のミュンヘン会議以来プーチンは一貫してNATOへの懸念を明確に表明してきたのです。
そしてこれはプーチン個人や与党だけの考えではなく最大野党ロシア共産党においても認識は変わりません。
振り返って日本国内の一部政治家は大々的に中国の脅威を唱え続け利用している。台湾や南シナ海が清国以来中国の領土であることを考慮すればよほど被害妄想にすぎるのではないでしょうか。
さらに最近結ばれた中国、ソロモン諸島間の協力関係を米豪は大声で自らの安全保障の脅威であると騒ぎ、一部軍人は軍事力行使にまで言及する始末。
NATOと比較にならないレベルの二国間協定にすらこのように反応する国々がロシアの懸念を被害妄想だと批判するこの二重基準。
石垣のりこは日本国憲法を信じているなら尚更NATO、アメリカに批判的であるべきでしょう、そもそも2014年ドンバス紛争を武力解決しようとしたのはウクライナである基礎事実がすっぽり抜けていますね。
日本の援助にドローンが含まれているのを見て驚いたのですが現作戦映像でもドローンが砲撃、待ち伏せなどに広く利用されていてこれは明らかに兵器であり戦闘行為への加担です。
現在の大政翼賛体制は危険水域に達しています。
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