人気ブログランキング | 話題のタグを見る

どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル

どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_15145723.pngマスコミは相変わらずCIA御用オールスターズが出ずっぱりで、戦争プロパガンダのシャワーを切れ目なく撒いている。一方、ネットの言論空間の方は、右と左が斉唱で「どっちもどっち論」叩きに血道を上げ、「ロシアを一方的に非難せよ」と咆吼の声を上げている。ヒステリックな絶叫の嵐が一段とボルテージを上げている。ロシア側の言い分に耳を傾けるな、正義は一つだ、一億火の玉だと、まるで戦前日本のような集団狂気への盲従が半強制されている。

「ロシアを一方的に非難せよ」という主張は、要するに、ウクライナ・西側のプロパガンダを全て真実だと信じ、それに疑念を抱くなということだ。マスコミが散布し放射する戦争プロパガンダを鵜呑みにし、ロシア寄りの言論や情報は一切排除せよという意味だ。各自が競馬の遮眼革を装着した精神状態になれと説き、ロシアに対して不寛容に徹せよと叫号している。そんな暴論を左翼リベラルの国会議員が吐き散らかして扇動している。リベラルとは寛容の意味ではなかったのか。寛容の思想と複眼の理性がリベラルの本質ではなかったのか。




どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_15151487.pngこの戦争がロシアの侵略戦争であり、国連憲章違反の主権侵害であり、国際法上正当化できる余地はないとする見地は、私も同じであり、それは何度も述べてきた。法的なロシアの立場はギルティで、留保や両論はなく、すでに決定済みの事項である。だが、刑事裁判で有罪になった被告人にも、犯した暴行傷害事件において原因と事情があり、裁判の審理過程で斟酌され、量刑の加減に響くことは屡々ある。親の介護に疲れて魔が差した事件では、殺人犯である子に温情判決が下される場合も多い。

「ロシアを一方的に非難せよ」という主張は、首を絞めて親を殺した子は残虐で極悪な殺人鬼であり、犯行理由の説明に耳を貸す必要はないと言っているのと同じだ。親の介護で疲れるのは誰でも同じで、そこに惻隠の情の差し挟みなど無用と切り捨てる思考停止の薦めと同じである。今回、ロシアにも言い分がある。この侵略戦争の背景と構図がある。まず、マスコミと右翼左翼は、この侵略戦争が不意に突然始まったかのように図式化し、そのフィクションを前提に議論するが、実際には昨年10月にゼレンスキー政権がドローン攻撃で火蓋を切っている。


どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_15155604.pngさらに遡れば8年前から戦争は始まっていて、ロシア側の言い分では、極右ネオナチの暴力によって東部ドンバスのロシア系住民が迫害を受け、多数の犠牲者が出ているという主張がある。その一端は、フランス人記者アンヌ=ロール・ボネルの現地取材によって確認され、証拠として提示・報告されている。マスコミ論者は、8年前からロシアの侵略戦争が始まっているという見方で決めつけるが、ロシア側の主張と見解では、ウクライナ東部南部に暮らすロシア系住民の命を救う、やむを得ない正義の防衛行動となる。

つまり、正当防衛の立論がされている。ロシア側の言い分に正当防衛の論理と契機があることに、寛容を旨とするはずのリベラルは注意を向ける必要があるだろう。東部ドンバス住民の防護と救援というのは一つの具体的で直接的な根拠づけだが、さらに大きな見取図において、ロシア側には二つの根本的な正当防衛の理由立てがある。すなわち、今回の軍事行動を必然化せしめた国家安全保障上の動機がある。あらためて整理要約しよう。その第一は、NATOの東方拡大と圧迫への対抗である。この点については多弁は無用だろう。


どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_15161921.pngが、マスコミと右翼左翼の論調では、NATOの東漸への危機感などプーチンの被害妄想に過ぎぬという結論になっている。被害妄想という四字熟語が繰り返し報道番組で論(あげつら)われ、プーチンの危機感は根拠のない不当で不毛なものという断定が刷り込まれている。果たしてそうだろうか。私は違うと思う。その認識は誤りであり、差別と偏見が滲んだ悪質なプロパガンダだと思う。私が提出する反証の証人はG.ケナンだ。生前、ケナンはNATOの東方拡大を「最も致命的な誤り」だと批判して政策の撤回を求めていた。

ケナンの警告は慧眼の予言となって的中した。軍事同盟であるNATOの敵はロシアであり、ソ連に続いてロシアを封じ込め、ロシア連邦をソ連と同じ運命に追い込むことがNATOの神聖目的に他ならない。ロシアが脅威を感じて身構えるのは当然だろう。加えて、そこには、NATO東漸と軌を一にしたカラー革命の連続が存在した。2000年のユーゴのブルドーザー革命、2003年のグルシアのバラ革命、2004年のウクライナのオレンジ革命。いずれもCIAが絡んだ謀略であり、2012年の反プーチン巨大デモもカラー革命の未遂事件である。NATO東漸はカラー革命の連発とセットの動きだった。


どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_15164772.pngロシア側の正当防衛の言い立てを根拠づける第二の要素、すなわち国家安全保障上の脅威の二つ目は、ウクライナのネオナチ勢力の跳梁と挑発である。ナチスの表象と実体がロシアでどのような意味を持つかは、最近のマスコミの解説でも十分理解できるところだろう。ウクライナのネオナチの問題は、何度も書いてきたので重複は避けるが、その猛毒の組織が国境の隣の兄弟国で暗躍し、政権を壟断し、CIAに支援され、軍事訓練され、ロシア系住民を迫害しているとなると、国家安全保障上の必要からロシアはそれを簡単に見逃せない。

そのことは、前にも書いたが、韓国や中国にとって、自衛隊が靖国神社に集団参拝する図がどう映るかという問題と等置される。中国は前の戦争で2000万人の犠牲者を出した。その犠牲の上にPRCの建国の基礎がある。抗日解放の原点がある。現在、日本では、8月15日の靖国参拝は季節の風物詩になり、政治的な嫌忌と警戒の視線を向けられないイベントになった。クレンジング(政治漂白)された。だが、中国や韓国の人々にはその表象改造(=ゴマカシ)は通用しない。それは、中国と韓国の国家安全保障上の重大な懸念材料となる。ロシアも同じで、ウクライナのネオナチは国家の脅威なのだ。


どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_15171375.pngロシアが正当防衛と違法性阻却事由を言い得る根拠があるとして、その第三の要素は、遠藤誉も批判するとおり、直前でのアメリカの挑発と誘導である。この戦争についてアメリカの責任を正面から指弾する論者は多く、J.ミアシャイマーとE.トッドがその論陣を張っている。危機が本格化した12月以降、バイデンはプーチンに対して「侵攻しろ、早く始めろ」と無益な嗾けを続けた。それがあまりに露骨なので、ゼレンスキーは二度も釘を刺し、煽り過ぎるなと制止をかけた場面があった。アメリカの態度は問題で、プーチンの戦争発動を呼び込む流れを作った点は否めない。

アメリカは、ウクライナのNATO加盟を棚上げしようとしたのか、容認しようとしたのか、そこが曖昧なままだった。プーチンの前にニンジンをぶら下げて操り、痺れを切らさせていた。NATO加盟は認めないと決断していれば、大団円となり、この戦争は起きずに済んだ。他方、ゼレンスキーの側にも責任がある。昨年10月のドローン先制攻撃は言うに及ばず、それ以上に、ミンスク合意の履行をゴネて怠業していた過誤は大きい。アゾフ大隊に脅されていた可能性もあるけれど、大統領の権限で果敢に実行していれば、この戦争は未然に避けられた。マクロンに何度も催促されたのに、ゼレンスキーは愚図って履行に踏み出さなかった。


どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_15174027.pngロシア側の正当防衛の論理と立場にばかり焦点を当ててきたが、無論、この戦争の最大の責任者はプーチンである。この点を、プーチンがなぜ戦争を始めたかの第四の要素として総括しよう。独裁者を長く続けたプーチンは、ある種の老害になっていて、周囲からの諫言助言を聞いて明晰な判断ができる指導者ではなくなっていた。一部上場の大企業のワンマン会長などにありがちなパターンだ。プーチンの判断の最大の誤りは、2月時点のウクライナ軍の戦力を過小評価していたことであり、同時にロシア軍の戦力を過大評価していたことである。そこが失敗に繋がった。

純軍事的観点から言えば、電撃侵攻して瞬時にキエフを落とすのなら、ウクライナ軍の軍備が整わない、そしてロシア軍兵士も「演習」で疲労していない、年末年始に決行すべきだった。タイミング(時機)の選択と設定は戦略の最重要要件である。ジャベリンとスティンガーが大量供給され、偵察衛星の監視態勢も万全に配置され、英米軍事顧問団とCIAによる迎撃作戦の準備が仕上がる2月下旬まで、プーチンはブリンケンの時間稼ぎに付き合っていた。実際のところ、軍事侵攻をせずとも、外交でウクライナのNATO加盟阻止は実現できていたはずなのだ。プーチンは短期でキエフ攻略が可能と安易に計算し、地上部隊を広域分散させて攻撃する愚を犯してしまった。

兵力集中攻撃は戦法の鉄則なのに、ロシア軍の実力を過信してそれをしなかった。2月下旬の時点で、おそらく、クレムリンのスタッフ全員が侵攻に反対だったのだろう。侵攻後の軍の士気が高まるはずがない。以上、四つの側面から「なぜプーチンが戦争を始めたのか」の全体像を整理した。思考停止せずにリベラルは考えてもらいたい。寛容で慎重な考察と意見こそがリベラルの正論なのだから。



どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_16024914.png
どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_16030645.png
どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_16025886.png
どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_16032148.png
どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_16213480.png
どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_16040284.png
どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_16041116.png
どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_16102643.png
どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_16103405.png
どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_16143882.png
どっちもどっち論叩きと一方的非難の扇動 – 寛容をかなぐり捨てたリベラル_c0315619_16144572.png

by yoniumuhibi | 2022-04-22 23:30 | Comments(3)
Commented by 長坂 at 2022-04-23 12:17 x
バイデンが追加の8億ドルの軍事支援を発表しましたが、私が読んだJacobinの記事によると、アメリカは実は援助の武器兵器が最終的にだれの手に渡るのかは把握していないのだと。ウクライナは侵攻前から武器の取引きブラック・マーケットが盛ん、そこに20カ国以上の政府から大量の武器が流入したらどうなるか?ウクライナ軍はポーランドで武器弾薬を受け取るが、その時点でその武器をどこへ誰に渡すかは彼らの判断によるって、、、確実に横流し。ヨーロッパに散らばる極右白人至上主義組織が強力な武装集団になり長期的に地域の不安定化( テロやクーデター)をもたらす懸念大。NATOの軍事介入カダフィ暗殺後のリビアから大量の武器が国外流出し、北アフリカ一帯が混乱し紛争が再燃したように。そういえばテロとの戦いと勇ましくマリに介入したフランス軍は、甲斐もなく2月に撤退しましたね。10年間なんだったんでしょう。
停戦や終戦の知恵を絞らず、無節操に武器兵器を送り続ける事で、エンドレスの戦争。レイセオンやロッキードの高笑いだけが響き渡る。ロシアが免責されたり正当化されないのは言わずもがなですが。
Commented by コスモス at 2022-04-23 21:33 x
ボリスジョンソンは、来年末まで戦争が続く可能性がある、ロシアが勝利する可能性があると話しました。来年末までとは…。

貴ブログで、日本が観光を主要産業にすることの危惧を何度か拝読しました。知床の事故を前にして、改めて思い出します。観光で食べていく人がいてもいいけど、観光を主要産業にするのは間違っています。
今回の観光船の会社は古い建物で、いっぱいいっぱいの操業のように見えます。地方の疲弊、コロナ禍での疲弊。そして菅義偉が始めたgoto、県民割などの旅行援助。コロナで厳しくなる前にと無理をしたのかもしれません。
和歌山のIRが県議会で否決されましたが、とてもいいことだと思います。大阪はIRで地獄を見ると思います。予定地が埋立地でどうにもならないようですから。
Commented by 極少数派 at 2022-04-24 20:14 x
ミアシャイマー氏がCGTNのインタビューにおいて
「我々がどう思うかが問題ではなく、ロシアがどう思っているかが問題なのだ」とロシアの安全保障上の憂慮が被害妄想云々の批判に答えていました。
少なくとも2007年のミュンヘン会議以来プーチンは一貫してNATOへの懸念を明確に表明してきたのです。
そしてこれはプーチン個人や与党だけの考えではなく最大野党ロシア共産党においても認識は変わりません。
振り返って日本国内の一部政治家は大々的に中国の脅威を唱え続け利用している。台湾や南シナ海が清国以来中国の領土であることを考慮すればよほど被害妄想にすぎるのではないでしょうか。
さらに最近結ばれた中国、ソロモン諸島間の協力関係を米豪は大声で自らの安全保障の脅威であると騒ぎ、一部軍人は軍事力行使にまで言及する始末。
NATOと比較にならないレベルの二国間協定にすらこのように反応する国々がロシアの懸念を被害妄想だと批判するこの二重基準。
石垣のりこは日本国憲法を信じているなら尚更NATO、アメリカに批判的であるべきでしょう、そもそも2014年ドンバス紛争を武力解決しようとしたのはウクライナである基礎事実がすっぽり抜けていますね。
日本の援助にドローンが含まれているのを見て驚いたのですが現作戦映像でもドローンが砲撃、待ち伏せなどに広く利用されていてこれは明らかに兵器であり戦闘行為への加担です。
現在の大政翼賛体制は危険水域に達しています。


メールと過去ログ

Twitter

最新のコメント

今こそ「テニスコートの誓..
by 印藤和寛 at 09:18
総裁選で石破さんを倒すた..
by 人情味。 at 09:29
もし山上容疑者が安倍元首..
by 人情味。 at 21:23
杉田水脈なる人物は論評に..
by 住田 at 10:51
あれは15年程前..
by ムラッチー at 11:27
悪夢のような安倍政治から..
by 成田 at 13:03
ハーバード大学で比較宗教..
by まりも at 23:59
重ねて失礼いたします。 ..
by アン at 17:48
安倍晋三のいない世界は大..
by アン at 13:16
今まで、宗教2世の問題に..
by さかき at 10:31

以前の記事

2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング