停戦平和を望むウクライナ国民と戦争拡大に進むゼレンスキー政権

記事によると、米国の情報機関は、ウクライナに関する諜報報告では、現時点でジェノサイド(大量虐殺)の指定を支持してないと、当局者がそう証言している。ジェノサイドの法的基準を理由にしての実務的な慎重判断なのだが、日本のマスコミの空気や常識とはずいぶん話が違っていて興味深い。日本では「ロシアによる大量虐殺」で決まりであり、誰もそれを疑っていない。CIAと米国政府は、ブチャ虐殺をロシア軍によるジェノサイドとはまだ正式認定してないのだ。

キエフ州・チェルニヒウ州の民間人犠牲者は三つあり、(1)ロシア軍によってスパイの嫌疑をかけられて拘束殺害された者もいれば、逆に、(2)ロシア軍撤退直後に、ウクライナ内務省軍によってロシア軍協力者が報復殺害されたケースもあるに違いない。無論、(3)ロシア軍の爆撃で吹き飛ばされたり、建物の下敷きになった犠牲者も多い。それらを一つ一つ検証してカウントする作業が必要であり、すべてを十把一絡げにして「ロシア軍による非人道的な大量虐殺」と決めつけるのは正しくない。

つまり、何年か後に、実はブチャの路上の遺体はアゾフ大隊(ウ内務省軍)が仕組んだものだという真相が露呈したとき、米国政府の立場を守るアリバイ情報を置いているのではないか。あのとき、米国政府はNBCの取材に対して「政府はそれをロシア軍のジェノサイドだと認定していない」と回答したはずだと、そう弁解することができる。責任逃れの担保。そこから、CIAの意図なり本音が読み解けるだろう。全てを知っていて、証拠も誰より完璧に押さえているはずのCIAが、ブチャ虐殺についてロシア軍のジェノサイドだと断定していない。

真実が白日に下に暴かれ、ソ連の犯行として確定したのは、ゴルバチョフが正式に認めて謝罪した1990年だ。時間がかかっている。ドイツは弁駁する立場がなかったため、濡れ衣のままの時間が続いた。おそらく、ブチャの虐殺も似た構図ではないかと私は考えている。今、どれほどロシア側が無実潔白を訴え、反証の説得材料を並べても、侵略戦争を始めて国連総会で非難決議を受けたロシアに立つ瀬はなく、第三者たる国際社会は聞く耳を持たない。謀略を仕掛けた側は、戦争の作戦としてのプロパガンダだから、10年後にバレても問題ない。当事者はもう責任ある地位にいない。昔話の後の祭りになっている。

CIA御用学者も、防衛研の陣笠も、番組キャスターも、自分がウソ混じりの講説(=プロパガンダ)を放送していることは自覚し、理解している。だが、それがウクライナの戦争勝利に利するもので、ロシアを敗北させるための正義の貢献であり、普遍的価値観のための情報提供活動だから構わないと思っている。目的は手段を浄化するという信念の下で、少々歪曲が入ってもいいと自認してやっている。後で文句を言われる局面になっても、あのときはウクライナを勝たせるために必死だったのだと言い訳でき、テレビの全員が同じ言動をしていたと逃げられる。

ブチャ虐殺事件が表に出たのは4月4日で、この問題発生はウクライナと西側にとってはドンピシャのタイミングだった。ここから西側の世論が沸騰し、戦車もドローンも対空ミサイルも何でも武器を入れろという好戦論になり、東部に戦線を集中するロシア軍を押し返す攻撃兵器を無尽蔵に送れという流れになった。EU委員長と英国首相がキエフに飛び、軍事支援を約束して武器を大量供給する方向となった。政治的に経過を検証すると、やはりブチャの事件報道の衝撃と影響が大きく、西側の戦争態勢がギアチェンジされる契機となったのは間違いない。

その証左として、一度国境を出て避難した市民が再び国内に戻っている。東部南部以外なら安心して暮らせるという見込みの上での行動ではないか。NATOが事実上ウクライナを同盟の保護下に引き入れ、強固に安全保障する体制になったから、もうキエフがロシア軍に狙われることはないだろうと、そういう想定で動いている雰囲気が漂っている。侵攻前の8年間のドンバス紛争の状態に戻ったと、そう現状を捉えているのではないか。いずれにせよ、リヴィウの市民の表情は1か月前よりも柔らかくなっていた。

そのため、帰国を急ぐ避難民に「まだ帰って来るな」と言っているのだろう。アメリカが戦争を続けたいのだ。その動機と理由は、ロシアに戦争で完勝できるからだ。プーチン政権転覆だけでなく、ロシアの国連常任理事国追放まで視野に入り、さらに、カラー革命によるベラルーシ崩壊とロシア連邦解体まで展望に収まってきたからだ。核戦争さえ阻止できれば、通常兵器でロシアに勝てる。今のウクライナ軍は、戦闘員だけがウクライナ兵で、後のすべての要素はNATO軍に他ならない。武器も弾薬も車両も燃料も医薬品も資金もとめどなく補給・充当されている。

今、そういう状況にある。われわれも同じだ。日本国民も少なからず厭戦気分の影が差している。もうプロパガンダ漬けに内心飽きている。だが、大本営の連中はそうではない。だから、毎日毎晩テレビで発破をかけ、ゲーム解説のように新ネタを仕込んで戦争情勢を垂れ、大衆の関心を焚きつけている。世論調査で「欲しがりません、勝つまでは」の数字を出して念を押している。ゼレンスキーが3月に野党を活動停止に追い込んだのは、停戦を求める国内の声を封じ込める目的があったからではないだろうか。無論、指図したのはアメリカだろうが。
この戦争でアメリカが一番得をするのだから。









by yoniumuhibi
| 2022-04-19 23:30
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Comments(4)

日本のマスコミによる「アゾフ連隊」のクリーン化はいよいよ佳境に入りましたね。今朝(19日)フジTV系での解説では「アゾフ隊は2014年にできた」「英雄視されている」といった論調でした。
一方、検索していた時偶然にヒットしたサイト「グローバルマクロ・リサーチ・インスティテュート」の記事は秀逸でした。【アゾフ連隊: ウクライナ国家親衛隊に実際に存在するネオナチの暴力集団 2022年3月8日】ごく一部をコピペすると、こんな感じです。
「このアゾフ連隊の出自は日本人にはなかなか理解しづらいだろう。日本で治安悪化と言えばスリなどを行う犯罪者や、せいぜいが不良やヤクザであり、彼らが軍を組織してあまつさえ自衛隊に合流するなどということは有り得ない。しかしアゾフ連隊はそういう出自を持っている。」
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/21097
一方、検索していた時偶然にヒットしたサイト「グローバルマクロ・リサーチ・インスティテュート」の記事は秀逸でした。【アゾフ連隊: ウクライナ国家親衛隊に実際に存在するネオナチの暴力集団 2022年3月8日】ごく一部をコピペすると、こんな感じです。
「このアゾフ連隊の出自は日本人にはなかなか理解しづらいだろう。日本で治安悪化と言えばスリなどを行う犯罪者や、せいぜいが不良やヤクザであり、彼らが軍を組織してあまつさえ自衛隊に合流するなどということは有り得ない。しかしアゾフ連隊はそういう出自を持っている。」
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/21097
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記録で読んだ沖縄戦を思い出します。
この後は、自決させるのか?まともじゃない。
この後は、自決させるのか?まともじゃない。

ウクライナ野党・ジャーナリストの誘拐、拷問、暗殺。ウクライナ市民への虐待。ロシア兵捕虜への残虐行為。これらが記事になっています。
ロシア兵捕虜への残虐行為の後殺害についても詳細が記されていましたが、朝から気分が悪い。ジュネーブ条約のかけらもない。お亡くなりになられたロシア兵のご冥福をお祈りします。
ロシアの残虐行為と言われて国連で騒いでいるものの主体が誰なのか、貴ブログでも書かれています。ウクライナ側のほうがよほど明確に戦争犯罪をしていると、私は思います。
冷戦は終わったと教わって、ロシアは大国、ロシアはじめ旧ソ連諸国の人々の生活は激動して大変、くらいにしか考えていなかった自分は、西側のロシアに対する敵視がどこからくるのか理解できなくて戸惑っています。
ロシア兵捕虜への残虐行為の後殺害についても詳細が記されていましたが、朝から気分が悪い。ジュネーブ条約のかけらもない。お亡くなりになられたロシア兵のご冥福をお祈りします。
ロシアの残虐行為と言われて国連で騒いでいるものの主体が誰なのか、貴ブログでも書かれています。ウクライナ側のほうがよほど明確に戦争犯罪をしていると、私は思います。
冷戦は終わったと教わって、ロシアは大国、ロシアはじめ旧ソ連諸国の人々の生活は激動して大変、くらいにしか考えていなかった自分は、西側のロシアに対する敵視がどこからくるのか理解できなくて戸惑っています。

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