核戦争が始まってからでは遅い - アメリカは譲歩を

同時並行で、ベラルーシでカラー革命の空前のデモが発生、独裁体制が打倒され、ベラルーシに親米政権が建つのは間違いない。レジームチェンジが起きる。そのときプーチン政権が不安定で、ルカシェンコがロシアに亡命できなかった場合は、おそらく、ルカシェンコは1989年のチャウシェスクと同じ運命に遭う。2011年のカダフィと同様の最期を迎えるだろう。陰謀論的に聞こえるかもしれないが、CIAはそこまでのグランド・プログラムを準備していて、手ぐすね引いて作戦決行の時機を待っている。

ルガンスク、ドネツクの東部2州の戦闘は少しずつ激しさを増している。ウクライナ政府軍と親ロ派武装勢力(人民共和国軍)との戦闘らしいが、内実はわれわれには全く分からない。何が行われているか、どういう状況と局面なのか、真相を知っているのは米欧・ロのトップと軍・情報機関だけだ。この紛争がさらに拡大し、どこかの時点で、何かの動きをCIAが「ロシア軍侵攻の証拠」だと捉えて確定し、それをホワイトハウスがオーソライズすれば、そこで「侵攻が始まった」という既成事実が作られる。

12日の米ロ首脳会談で、バイデンはCIAの諜報能力を示し、ロシア側の軍事機密が筒抜けであることをプーチンに証明して見せ、諦めて撤収しろと決断を迫ったはずだ。プーチンは怯みながらクリンチ戦法に出て、撤収もせず侵攻もせず外交交渉を求め続けるという態度に固まったまま現在に至っている。クリンチとは、ボクシングの試合で、形勢不利な側が相手にしがみつき、抱きついたまま離れず時間稼ぎするという防御術である。アメリカは、何度も何度も「撤収か侵攻か二つに一つを選べ」と迫り、挑発のボルテージを上げるのだが、老獪なプーチンはクリンチで逃げている。

その意味で、米英と仏独は微妙にスタンスが違っていて、一見すると西側諸国が一つに纏まってロシアに圧力をかけているようで、実は米英と仏独の間で主導権争いがある。駆け引きと鬩ぎ合いがある。先週17日、国連安保理の会合にブリンケンが出席し、「ロシアのウクライナ侵攻は『差し迫った脅威だ』と強調」した一件があった。テレビで大きく報道されたが、実はこの会合は、本来は仏独ロとウクライナの4か国で行うもので、アメリカは呼ばれてなかった。仏独ロウ4国でミンスク合意の履行をめぐって実務の詰めを行う予定の会議だったのである。安保理議長国はロシア。

昨年12月時点の情勢と比較して、英米が、特にバイデンが一変して強硬派に変わったことに意を強くして、元コメディアンの小物のゼレンスキーも強気になり、EU・NATOに向かって文句を言う姿勢になった。20日のミュンヘン安保会議の演説で、EU・NATOに対してウクライナの加盟を認めるかどうかの「回答」を求めるという高飛車な挙動に出た。これは、ウクライナによる(=英米による)仏独への事実上の脅しだ。ミンスク合意のプロセスとスキームの白紙化を仏独に迫っている。こんなことはこれまでなかった。客観情勢がいかに米英ウクライナ側に有利に、ロシア側に不利に流れ、ロシアの外交敗北の構図が固まったかが読み取れる。

正論である。振り上げたプーチンの拳を降ろさせる妥協の外交が必要だ。だが、アメリカは全く譲歩の意思がない。このまま、経済制裁とカラー革命に突き進んで、ロシアを破綻させ、ベラルーシとロシアの政権転覆を謀る未来しか考えておらず、刻一刻と工程表の歩を詰めている。それにプーチンがどう対抗するか、私には軍事的打開策の正面突破しか思いつかない。ロシアが持っているカードは軍事力だけだからである。チキンレース、すなわちロシアンルーレットの賭けに出る以外に道はなく、それができないなら全てを断念し、失脚と政権崩壊を覚悟して、ウクライナとベラルーシのNATO入りを認めるしかないだろう。

テレビしかチャネルがないということは、相手側に意思を正確に伝えて戦争回避に努力するというのではなく、自国民に対してパフォーマンスや人気取りすることが主たる動機になるということだ。今回のアメリカの手法はそれが際立っている。よほど、ロシア潰しの戦略に自信があり、なおかつ核戦争にはならないという確信があるのだろう。だが、そうした謙虚さを欠いた安易な想定こそがトゥキディデスの罠に嵌まる所以なのである。アメリカはあまりにロシアを見くびりすぎている。たしか、8年前の危機のとき、プーチンは核戦争の準備をしていたという意味の証言を後でしていた記憶がある。核のボタンに手をかけていた。
ロシアには戦略ミサイル軍という軍部隊がある。以前、NHKが内部を取材して紹介したことがあり、ミサイル発射の訓練の様子も撮っていた。陸海空軍とも独立した組織で、ソ連時代から引き継がれたものだ。プーチンの「準備」とは、戦略ミサイル軍へのスタンバイ指令だろう。おそらく、今、そのモードに入っているはずだ。ロシアにとっては国家存亡の危機なのだから。












by yoniumuhibi
| 2022-02-21 23:30
|
Comments(2)

貴ブログやSNSでのご教示通りの結果となりました。
プーチン、メルケルが傑出した器量、私は素人ですがその通りと思います。エルドアンは今回仲介に意欲を示しているという報道を見ましたが、その矢先にコロナ陽性が発覚したとかでその後の動向は報道からはわかりませんでした。
ウクライナの大統領はコメディアン出身らしいですね。話になりませんよ。日本だって森田健作が知事のところは台風に無策にやられるままでしたし、西川きよしやノックがプーチンと話ができますか?
人が死ぬところをこれ以上見たくない。ロシア軍の兵士たちにも犠牲があっては欲しくないし、北京五輪で「no war in Ukraine」と掲げていたウクライナの選手たちは国に帰ってどうしているだろうか。ウクライナの人たちのこれから先、難民がどれだけでるだろうか。ウクライナの高官やその家族が一族郎党出国を済ませたという報道も見た、真偽は知らないがいつの時代も同じだ。
そして、パラリンピックは開催されるのだろうか?一応プーチンは習近平の顔を立てて、五輪期間中は静かにしていたということになるのだろうか。
ロシアのフィギュアの女の子たちにワーワー騒ぎ、カーリングのモグモグタイムが注目を集めていた日本は、ボケていてズレている以外の、何物でもない。
プーチン、メルケルが傑出した器量、私は素人ですがその通りと思います。エルドアンは今回仲介に意欲を示しているという報道を見ましたが、その矢先にコロナ陽性が発覚したとかでその後の動向は報道からはわかりませんでした。
ウクライナの大統領はコメディアン出身らしいですね。話になりませんよ。日本だって森田健作が知事のところは台風に無策にやられるままでしたし、西川きよしやノックがプーチンと話ができますか?
人が死ぬところをこれ以上見たくない。ロシア軍の兵士たちにも犠牲があっては欲しくないし、北京五輪で「no war in Ukraine」と掲げていたウクライナの選手たちは国に帰ってどうしているだろうか。ウクライナの人たちのこれから先、難民がどれだけでるだろうか。ウクライナの高官やその家族が一族郎党出国を済ませたという報道も見た、真偽は知らないがいつの時代も同じだ。
そして、パラリンピックは開催されるのだろうか?一応プーチンは習近平の顔を立てて、五輪期間中は静かにしていたということになるのだろうか。
ロシアのフィギュアの女の子たちにワーワー騒ぎ、カーリングのモグモグタイムが注目を集めていた日本は、ボケていてズレている以外の、何物でもない。
3

まさにその通りです!
ゼレンスキーの外交政策の誤りを指摘してる言説はないです。
プーチンばかりが悪者にされてますが、ゼレンスキーにも重大な責任があります。プーチンからするとゼレンスキーに裏切られたという思いが強いと思います。それがクリミア半島、そして今回のウクライナ東部への平和維持部隊の派遣につながったと思います。
おっしゃるとおりでバイデンの責任も重大です。ロシアはフィンランドやスウェーデンがNATOに入ることについても深刻な結果を招くと警告してます。兄弟国であるウクライナがNATO加盟したらどんなことになるか、想像がつかない訳がないです。
戦争を招いた責任はゼレンスキーとバイデンです。
ゼレンスキーの外交政策の誤りを指摘してる言説はないです。
プーチンばかりが悪者にされてますが、ゼレンスキーにも重大な責任があります。プーチンからするとゼレンスキーに裏切られたという思いが強いと思います。それがクリミア半島、そして今回のウクライナ東部への平和維持部隊の派遣につながったと思います。
おっしゃるとおりでバイデンの責任も重大です。ロシアはフィンランドやスウェーデンがNATOに入ることについても深刻な結果を招くと警告してます。兄弟国であるウクライナがNATO加盟したらどんなことになるか、想像がつかない訳がないです。
戦争を招いた責任はゼレンスキーとバイデンです。
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