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核戦争が始まってからでは遅い - アメリカは譲歩を

核戦争が始まってからでは遅い - アメリカは譲歩を_c0315619_11390264.pngこのままでは、戦争になる確率が45%、戦争にならない確率が55%である。戦争にならない確率と言っても、これは元の平穏な状態に戻ることを意味しない。プーチンが失脚し、政権が倒れることを意味する。侵攻もなく、外交成果もなく、すなわち、NATO不拡大の保証どころかミンスク合意の履行すら得られず、手ぶらで国境の大部隊を撤収した場合は、プーチンの完全敗北となる。支持率が急落し、モスクワで大きなプーチン退陣要求デモが起き、全土に波及してロシアの政情は混乱の事態となるだろう。

同時並行で、ベラルーシでカラー革命の空前のデモが発生、独裁体制が打倒され、ベラルーシに親米政権が建つのは間違いない。レジームチェンジが起きる。そのときプーチン政権が不安定で、ルカシェンコがロシアに亡命できなかった場合は、おそらく、ルカシェンコは1989年のチャウシェスクと同じ運命に遭う。2011年のカダフィと同様の最期を迎えるだろう。陰謀論的に聞こえるかもしれないが、CIAはそこまでのグランド・プログラムを準備していて、手ぐすね引いて作戦決行の時機を待っている。




核戦争が始まってからでは遅い - アメリカは譲歩を_c0315619_12083412.pngアメリカは、もうロシアに対して経済制裁を発動することを決めていて、後戻りはない。必ず踏み切る。ここがポイントだ。バイデンが19日に発言したところの、「(プーチンが)軍事侵攻を決断したと確信している」と述べた真意は、必ず「軍事侵攻」の既成事実を作って経済制裁に踏み切るという意味だ。CIAは「侵攻」の「証拠」を簡単に作り出すことができる。その「証拠」を西側メディアが大々的に報道し、宣伝・拡散し、視聴者が頷けば、「侵攻」の既成事実は成る。ベトナム戦争で北爆開始の口実となったトンキン湾事件と同じだ。

ルガンスク、ドネツクの東部2州の戦闘は少しずつ激しさを増している。ウクライナ政府軍と親ロ派武装勢力(人民共和国軍)との戦闘らしいが、内実はわれわれには全く分からない。何が行われているか、どういう状況と局面なのか、真相を知っているのは米欧・ロのトップと軍・情報機関だけだ。この紛争がさらに拡大し、どこかの時点で、何かの動きをCIAが「ロシア軍侵攻の証拠」だと捉えて確定し、それをホワイトハウスがオーソライズすれば、そこで「侵攻が始まった」という既成事実が作られる。


核戦争が始まってからでは遅い - アメリカは譲歩を_c0315619_11450545.pngそして一気に経済制裁の発動となる。ベラルーシ国境を越えてキエフに侵攻する絵がなくても、東部2州の紛争拡大の中で、「ロシア軍侵攻」の「証拠」は捏造できるし、アピールできるだろう。あるいは、東部2州の政府系住民が「無残に殺戮」されたという「事件」が起き、それを口実に経済制裁へと踏む込むという作戦もあり得る。上海事変の際の日本軍による日本人僧侶殺害事件。あれと同じ手口の謀略が仕込まれるかもしれない。バイデンの決断次第であり、アメリカのフリーハンドである。24日に米ロ外相会談があるが、その前に起きる可能性がある。

12日の米ロ首脳会談で、バイデンはCIAの諜報能力を示し、ロシア側の軍事機密が筒抜けであることをプーチンに証明して見せ、諦めて撤収しろと決断を迫ったはずだ。プーチンは怯みながらクリンチ戦法に出て、撤収もせず侵攻もせず外交交渉を求め続けるという態度に固まったまま現在に至っている。クリンチとは、ボクシングの試合で、形勢不利な側が相手にしがみつき、抱きついたまま離れず時間稼ぎするという防御術である。アメリカは、何度も何度も「撤収か侵攻か二つに一つを選べ」と迫り、挑発のボルテージを上げるのだが、老獪なプーチンはクリンチで逃げている。


核戦争が始まってからでは遅い - アメリカは譲歩を_c0315619_12110167.pngプーチンが何とかクリンチで粘って凌ぐことができているのは、微弱ながらそれを扶ける勢力があるからで、それはフランスとドイツである。仏独は英米と立場を若干異にしていて、エネルギー供給の不安と経済打撃の懸念から、ロシアへの経済制裁の発動に消極的だ。ミンスク合意の履行で何とかこの危機を打開したいという思惑が窺える。つまり、単に強硬に脅してロシアに撤収を迫るのではなく、ウクライナを説得して、東部2州の自治共和国化(ウクライナの連邦化)というミンスク合意の達成で、ロシア側に撤収の名目を与える妥協を図ろうという外交方針である。

その意味で、米英と仏独は微妙にスタンスが違っていて、一見すると西側諸国が一つに纏まってロシアに圧力をかけているようで、実は米英と仏独の間で主導権争いがある。駆け引きと鬩ぎ合いがある。先週17日、国連安保理の会合にブリンケンが出席し、「ロシアのウクライナ侵攻は『差し迫った脅威だ』と強調」した一件があった。テレビで大きく報道されたが、実はこの会合は、本来は仏独ロとウクライナの4か国で行うもので、アメリカは呼ばれてなかった。仏独ロウ4国でミンスク合意の履行をめぐって実務の詰めを行う予定の会議だったのである。安保理議長国はロシア。


核戦争が始まってからでは遅い - アメリカは譲歩を_c0315619_11581525.pngそんな会議を開催されたらすわ大変と、急遽ブリンケンが横槍を入れ、無理やりNYの席に殴り込んで、激越なロシア批判で卓袱台をひっくり返したという巻である。西側メディアは経緯と真実を報道せず、ブリンケンの発言だけ流した。アメリカを外して国連で仏独ロウの会議が予定されたという事実だけを見ても、米英仏独が一枚岩でない事情が察せられる。ブリンケンは懸命に巻き返しに出て、18-20日のミュンヘン安保会議とG7外相会合を演出し、西側諸国の足並みに乱れがないことを示威している。ゼレンスキーに欧米への不満を発言させたのも、この文脈からの政治的画策だろうと推測できる。

昨年12月時点の情勢と比較して、英米が、特にバイデンが一変して強硬派に変わったことに意を強くして、元コメディアンの小物のゼレンスキーも強気になり、EU・NATOに向かって文句を言う姿勢になった。20日のミュンヘン安保会議の演説で、EU・NATOに対してウクライナの加盟を認めるかどうかの「回答」を求めるという高飛車な挙動に出た。これは、ウクライナによる(=英米による)仏独への事実上の脅しだ。ミンスク合意のプロセスとスキームの白紙化を仏独に迫っている。こんなことはこれまでなかった。客観情勢がいかに米英ウクライナ側に有利に、ロシア側に不利に流れ、ロシアの外交敗北の構図が固まったかが読み取れる。


核戦争が始まってからでは遅い - アメリカは譲歩を_c0315619_12020784.png20日のサンデーモーニングで藪中三十二が、プーチンが振り上げた拳の落としどころを配慮してやるべきだという趣旨の外交論を唱えていた。軽薄で俗物な男だが、今回の意見に私も賛成だ。藪中三十二のこの主張は、嘗ての岡本行夫の見解を彷彿させるもので、外務省の本筋というかオーソドクシーの認識はこうなんだなあと了解される。おそらく、佐藤優も同じだろう。岡本行夫は、8年前のウクライナ危機の折のサンデーモーニングの解説で、いま話題になっているNATOの東方不拡大についての米国側のゴルバチョフへの口約束を引き合いに出し、バルト3国にまでミサイルを配備されて、それをロシアに忍耐せよと言うのはいくら何でも理不尽だと喝破した。

正論である。振り上げたプーチンの拳を降ろさせる妥協の外交が必要だ。だが、アメリカは全く譲歩の意思がない。このまま、経済制裁とカラー革命に突き進んで、ロシアを破綻させ、ベラルーシとロシアの政権転覆を謀る未来しか考えておらず、刻一刻と工程表の歩を詰めている。それにプーチンがどう対抗するか、私には軍事的打開策の正面突破しか思いつかない。ロシアが持っているカードは軍事力だけだからである。チキンレース、すなわちロシアンルーレットの賭けに出る以外に道はなく、それができないなら全てを断念し、失脚と政権崩壊を覚悟して、ウクライナとベラルーシのNATO入りを認めるしかないだろう。


核戦争が始まってからでは遅い - アメリカは譲歩を_c0315619_12074857.pngキューバ危機のとき、表面上、形の上ではケネディが断固たる決意を貫き通し、フルシチョフに譲歩させて解決を見たという歴史物語になっている。だが、実際はそれほど単純ではなく、裏側でNATOがトルコに配備したジュピター・ミサイルの撤去について交渉し合意しており、ソ連側にイーブンの外交結果の形式を与えることもケネディは腐心していた。妥協の形を作っているのである。今回は全くそれがない。また、キューバ危機の際は、ケネディは弟のロバートをソ連大使との交渉役に据え、確かなパイプで意思疎通を果たしていた。今回はそれが見られない。テレビしかチャネルがない。

テレビしかチャネルがないということは、相手側に意思を正確に伝えて戦争回避に努力するというのではなく、自国民に対してパフォーマンスや人気取りすることが主たる動機になるということだ。今回のアメリカの手法はそれが際立っている。よほど、ロシア潰しの戦略に自信があり、なおかつ核戦争にはならないという確信があるのだろう。だが、そうした謙虚さを欠いた安易な想定こそがトゥキディデスの罠に嵌まる所以なのである。アメリカはあまりにロシアを見くびりすぎている。たしか、8年前の危機のとき、プーチンは核戦争の準備をしていたという意味の証言を後でしていた記憶がある。核のボタンに手をかけていた。


ロシアには戦略ミサイル軍という軍部隊がある。以前、NHKが内部を取材して紹介したことがあり、ミサイル発射の訓練の様子も撮っていた。陸海空軍とも独立した組織で、ソ連時代から引き継がれたものだ。プーチンの「準備」とは、戦略ミサイル軍へのスタンバイ指令だろう。おそらく、今、そのモードに入っているはずだ。ロシアにとっては国家存亡の危機なのだから。


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by yoniumuhibi | 2022-02-21 23:30 | Comments(2)
Commented by コスモス at 2022-02-24 16:06 x
貴ブログやSNSでのご教示通りの結果となりました。

プーチン、メルケルが傑出した器量、私は素人ですがその通りと思います。エルドアンは今回仲介に意欲を示しているという報道を見ましたが、その矢先にコロナ陽性が発覚したとかでその後の動向は報道からはわかりませんでした。
ウクライナの大統領はコメディアン出身らしいですね。話になりませんよ。日本だって森田健作が知事のところは台風に無策にやられるままでしたし、西川きよしやノックがプーチンと話ができますか?

人が死ぬところをこれ以上見たくない。ロシア軍の兵士たちにも犠牲があっては欲しくないし、北京五輪で「no war in Ukraine」と掲げていたウクライナの選手たちは国に帰ってどうしているだろうか。ウクライナの人たちのこれから先、難民がどれだけでるだろうか。ウクライナの高官やその家族が一族郎党出国を済ませたという報道も見た、真偽は知らないがいつの時代も同じだ。
そして、パラリンピックは開催されるのだろうか?一応プーチンは習近平の顔を立てて、五輪期間中は静かにしていたということになるのだろうか。

ロシアのフィギュアの女の子たちにワーワー騒ぎ、カーリングのモグモグタイムが注目を集めていた日本は、ボケていてズレている以外の、何物でもない。
Commented by 成田 at 2022-02-25 18:42 x
まさにその通りです!
ゼレンスキーの外交政策の誤りを指摘してる言説はないです。
プーチンばかりが悪者にされてますが、ゼレンスキーにも重大な責任があります。プーチンからするとゼレンスキーに裏切られたという思いが強いと思います。それがクリミア半島、そして今回のウクライナ東部への平和維持部隊の派遣につながったと思います。
おっしゃるとおりでバイデンの責任も重大です。ロシアはフィンランドやスウェーデンがNATOに入ることについても深刻な結果を招くと警告してます。兄弟国であるウクライナがNATO加盟したらどんなことになるか、想像がつかない訳がないです。
戦争を招いた責任はゼレンスキーとバイデンです。


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