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最後通牒を突きつけたアメリカ – ロシアが譲歩しなければ「開戦」

最後通牒を突きつけたアメリカ – ロシアが譲歩しなければ「開戦」_c0315619_14310667.png2月12日、米ロ首脳による緊急の電話会談が行われた。それに先立って11日にはサリバンの会見があり、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が「いつ始まってもおかしくない」と警告、ウクライナに滞在するアメリカ人に対して48時間以内の退避を呼びかけた。また同時並行して、西側メディアが「プーチンがウクライナ侵攻を軍に命じた」というCIAからの情報を流し、日本でもテレ朝などが同じ報道を行った。CIAの情報では戦争勃発は16日(水)だと言う。世界の週末が緊張した空気に包まれた。

ロシア側はこの情報をデマと否定。米ロ首脳会談終了後の発表も、いつもと同じような調子の文言が並び、懸念と不満の応酬と対話継続の結論で纏められたものが出た。が、バイデンは11日に行った欧州各国首脳とのテレビ会議で、やはり、16日にもロシアが攻撃を開始するだろうと観測を伝えている。また、サリバンは会見で、ロシア軍がキエフを急襲するという見方を示していた。12日、ポーランドに3000人の空挺部隊を追加で派遣するという報道が、国防総省高官からの発信としてNHKから伝えられた。




最後通牒を突きつけたアメリカ – ロシアが譲歩しなければ「開戦」_c0315619_14262270.png何が起きたのか。私の分析は、米国側の戦争準備が万全に整い、いつでも作戦決行できる態勢になり、プーチンに対して最後通牒を突きつけたという解釈である。今すぐ撤退を決断して国境から引くか、それとも侵攻して戦争に突き進むか、二者択一せよと会談で迫ったと思われる。62分間の会談の中身は、報道発表ではオブラートに包まれている。そこは推理と検討を必要とするところだが、重要なのは、昨年末以来40日ぶりに行われた12日の首脳会談が、アメリカ側から求めてロシア側が応じたという経緯の点だ。

アメリカ側が伝えたい話(=弾=狙い)があり、この会談をセットしている。アメリカの方に目的があり、ロシアは受け身で聞いている。そして会談の結果が、ロシアがあらためて対応の返答をするという形に終わっている。外交上のキャッチボールの形式は担保されているが、これはロシア側が相当に追い詰められた内実を示唆している。一寸待ってくれ、返事するから時間をくれ、と弱気になった関係性が看て取れる。バイデンがかなり強烈な直球を投げ込み、プーチンが狼狽して劣勢に立った状況が推察される。


最後通牒を突きつけたアメリカ – ロシアが譲歩しなければ「開戦」_c0315619_14321709.pngプーチンからしてみれば、もともと、2/7-11の週はマクロンが外交の調停役(の素振りをして点数稼ぎ)をする時間帯であり、2/14-18の週はショルツが登場して同じ立ち回りをする段取りだった。仏独首脳がモスクワ詣でしてロシアの存在感を高め、ロシアの要求の意義と妥当性を宣布し、その後に控えた米ロ首脳会談本番を引き立てる演出効果が目論まれていた。北京五輪閉幕後にバイデンとのガチンコ対決を予定した工程表だったのである。それは、ウクライナの雪原が泥土になる背水の陣のタイミングと戦略設計だった。

その順調な流れを、突然、アメリカ側が割り込んで中断させ、米ロ会談を前倒ししてきたのであり、急用を告げてきたのである。そして、3000人の米地上軍の追加派遣が決まった。プーチンにとっては意外な一撃だっただろう。プーチンは、NATOは決してロシアとの戦争には踏み出せず、それを避ける選択と範囲でしか策を打てず、したがって、NATO東方不拡大のロシアの要求に対して妥協する外交を模索するだろうと計算していたはずだ。その想定でずっと動き、外交上の獲物(米ロ新安保協定の締結)を狙っていた。


最後通牒を突きつけたアメリカ – ロシアが譲歩しなければ「開戦」_c0315619_14210419.png12日の首脳会談とアメリカ側の報道攻勢は、プーチンのその甘い認識と戦略を打ち砕いたものだ。優位な立場でアメリカを攻め、バイデンから歩み寄りを期待していたプーチンは、今回、一気に防戦の側に回り、「ちょっとタンマ」と怯んで時間稼ぎする側に回った。私の見通しでは、プーチンは撤退か侵攻か二つに一つしか選べない。しかも16日という期限までに回答しないといけない。16日というアメリカ発の予告日程は、実は、CIAが謀略を起こして開戦の口実を作る期日という意味だ。アメリカはそれが可能である。その権力と実力を持っているから世界を支配できる。

ブログの読者には釈迦に説法で無駄な講釈だけれど、アメリカは、大きな戦争を始めるとき、必ずCIAの謀略を起こして口実を作り、戦争を正当化する大義名分を前面に立てる。ベトナム戦争のトンキン湾事件がそうであり、イラク戦争の「大量破壊兵器」がそうだ。今回も、開戦に当たっては同様の謀略から始めることは確実で、「ロシア軍が侵攻した」という事実を捏造し、「証拠」を工作して散布し、既成事実を作って固めるに違いない。ソフトパワーのヘゲモニーを支配し、世界のメディアを壟断している英米は、その説得とセメント化が可能だ。この手を定石として使ってくる。アメリカの戦争の作法だ。


最後通牒を突きつけたアメリカ – ロシアが譲歩しなければ「開戦」_c0315619_14205358.pngこうした指摘なり訓戒を、親米右翼と親米左翼は「陰謀論」だと侮辱し嘲笑して一蹴するのだけれど、戦争が終わった後で、関口宏の退屈な言い草のように「私たち騙されてたんですねえ」と反省の弁を述べるのである。親米左翼は、アメリカは怪しからんと逆上するルーティンを演じ、アメリカ発の情報を信じ込んだ過去の自分を都合よく忘れる。かくしてアメリカは何度も同じ手口を使う。今回、どれほどロシア側が「アメリカの謀略だ」と反論して証明してみせたところで、西側メディアと大衆は聞く耳を持たず、デマを言っているのはロシア側だと決めつけて糾弾するだろう。分かりきった絵であり、政治のリアルである。

その意味で、CIAに謀略を仕掛けられる段まで来たら、その国はもう終わりなのだ。開戦を阻止できない。軍事的にも世論的にも反撃・抵抗できない。過去に唯一、ソフトパワーの戦いでアメリカに勝ち、判官贔屓の国際世論を引き寄せた例はベトナムだけだ。今回のロシアにはどう考えてもその荷は重い。冷戦期以来、ソ連・ロシアは常に世界の悪役キャラである。ロシア側がどれほど客観的合理的な「謀略」の証拠の提示と説明をしても、激昂した西側メディアと世論はそれを承認せず一顧だにしないだろう。火蓋が切られれば、ひらすら戦争でのロシアの敗北と殲滅を祈ってNATO応援で一色になる。


最後通牒を突きつけたアメリカ – ロシアが譲歩しなければ「開戦」_c0315619_15185343.png危機が始まって以降、時間経過の中でアメリカは大きく方針を変えた。変えさせた原動力は国内世論であり、政権支持率であり、中間選挙への対応の必要である。当初は、ロシアがウクライナに侵攻してもNATOは関与せずとバイデンは言い、経済制裁だけに限定する姿勢だった。だが、その態度が少しずつ変わり、12日には「迅速で厳しい代償を課す」と強硬になっている。何より、ポーランド国境に4700人の空挺部隊を集結させる措置に出て、大量の武器をウクライナに送り込んでいる。4700人の部隊は大兵力だ。察するに、開戦と同時にウクライナをNATO入りさせ、要請に応じる法形式を整えて地上軍をリボフ(リヴィウ)に入れる作戦を構えているのだろう。

反ロの感情と気運が国内でも最も激越なリボフ。そこまで国境から60キロ。現在、着々と西側諸国(英・蘭・加・豪・米)の外交機能がリボフに避難移動させられている。ここにウクライナ政府も移し、ロシア軍がキエフを陥落させて親ロ政権を建てても認めず、リボフとの間に防御線を張ってNATO軍が守る計画ではないか。場合によっては、ロシアとアメリカの地上軍同士が戦闘を交える場面もあるだろう。プーチンがすべてを断念し、NATO東方不拡大の成果も諦め、ウクライナ東部2州の自治権(ミンスク合意)も棄てて撤兵するなら、戦争は起きずに済む。だが、それを選択してアメリカに屈服することは、プーチンの威信を失墜させ、国内で支持率が急落することを意味する。


最後通牒を突きつけたアメリカ – ロシアが譲歩しなければ「開戦」_c0315619_14242063.png情勢を窺うに、米ロどちらも折れることが難しくなり、戦争を始めざるを得ない環境になっている。プーチンからよほどバイデンを満足させる提案が出なければ、16日以降に何事かがハプンするだろう。アメリカ側は今が好機であり、戦略がコンプリートに遂行してチェック(王手)をかける瞬間である。謀略も経済制裁も完璧に準備が整い、16日に開戦するのが最善のシナリオで、時間を与えてロシアに挽回策の隙を与えたくない。老バイデンは、それでも慎重派で、米兵の血が流れる地上戦は望んでおらず、ロシアとの核戦争のリスクは避けたいだろう。

だから、16日の期限を一日二日猶予を与え、ロシア側の新たな提案にも耳を傾けるかもしれない。猶予を与え、温情をかけてやったとしても、季節は春になって雪原が泥土に変わるだけで、ロシアは軍事的に不利になるだけなのだ。NATO側はどう転んでも勝てる戦略に仕上がっている。そういう自信と構図なのだと思われる。追い詰められているのはロシアの方で、私にはロシア側に有効な打開策は思いつかない。いずれにせよ、中立の観点から俯瞰すれば、まさに双方がトゥキディデスの罠の回路を歩んでいる図が確認できる。後戻りできない破滅の道を進んでいるとしか思えない。


グレアム・アリソンが『米中戦争前夜』に書いていた恐ろしい文章を最後に引用しよう。

最後通牒を突きつけたアメリカ – ロシアが譲歩しなければ「開戦」_c0315619_14302683.pngMAD(相互確証破壊)の制約下では、どちらの国も核戦争に勝つことはできない。しかし逆説的なことに、どちらも、負けるリスクを冒してでも、いざとなったら核戦争をする気があるという意思を示す必要がある。さもなければ、競争から脱落するだけだ。(略)核戦争のリスクを冒す覚悟がないなら、相手方は屈服か戦争かの選択を強いる状況をつくり出して、あらゆる目標を達成できる。したがって、重大な国益と価値観を守るためには、その指導者が破滅のリスクを冒す覚悟が必要だ。(略)中国のような現実的および潜在の敵に信憑性のある抑止力をかけるためには、常に核戦争を選択肢に入れておく必要がある。(P.179-180)


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by yoniumuhibi | 2022-02-14 23:30 | Comments(1)
Commented by 成田 at 2022-02-14 22:27 x
なるほどと感心しました。ここまで深い読みはメディアには全く出ていないです。NATOは加盟国ではないウクライナのためにロシアと戦争はしないだろうと思っていましたが、開戦と同時に加盟とは。たしかにウクライナとロシアでは大人と赤ちゃんくらいの差があります。ウクライナだけならあっという間に負けてしまいます。
NATOも米国もロシアも核保有国で戦後一度も直接戦争してないですが、ウクライナの地で核戦争になるかもしれませんね。
アメリカはロシアと核戦争をして何を得たいのでしょうか。
世界大戦になったら日本の自衛隊も集団的自衛権で参戦することでしょう。あの時戦争法案を否決できていればと悔やみます。


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