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また棄民政策に逆戻り - キットないので検査しません、病院にも来ないで

また棄民政策に逆戻り - キットないので検査しません、病院にも来ないで_c0315619_15094033.png昨日(1/25)、今日(1/26)と久しぶりにモーニングショーを見た。やはりコロナ報道ではこの番組が他に抜きん出ていて、必要で正しい情報を届けていると痛感する。2日間の放送で現在の第6波の厳しい現状をよく知ることができた。コロナは足が速い。オミクロン株は特に速く、あっと言う間に昨年8月の恐怖の世界が再現されている。オミクロン株は毒性が低く軽症で済むから大丈夫、社会経済活動を止めずにウィズコロナで乗り切ろう、というのが先週までの日本全体の共通認識であり、支配的な空気感だったけれど、その楽観論が一気に消し飛んだ。

これまで隠れていた尾身茂や釜萢敏が、急にテレビに出て来てバタバタ立ち回っている。昨日(1/25)はNHKが夜10時からオミクロン株のNスペを放送した。普通は週末の夜9時に流す内容だ。政府内に緊張が走っていて、国民に行動規制のメッセージを
緊急で伝えようと慌てている事情が窺える。第6波の危機が本格化し、想定を超えた大きな被害が出ると察したのだろう。3回目接種が未達で高齢者人口の割合が高い日本は、欧米諸国とはオミクロン株禍の前提条件が異なる。



また棄民政策に逆戻り - キットないので検査しません、病院にも来ないで_c0315619_15102782.png25日のモーニングショーの報道で知った事実は2点あり、一つは検査キットが払底していることで、もう一つはすでに医療逼迫が始まっていることだ。検査キットがない。検査ができない。感染者が増えすぎて需給が追いつかなくなり、医療機関で使う抗原検査キットがなくなった。PCR検査キットについてもおそらく払底しているのだろうが、メーカーに在庫があるという噂も一部にある。常識で考えれば、抗原検査キットがなくなるくらいだからPCR検査キットも入手困難だろう。厚労省が出した「検査なしでも感染したと診断できる」という新方針は、要するに検査キットがないため、症状を診て医師が主観で陽性者だと判断するということだ。

この問題を25日の衆院予算委で日本共産党の議員が質問していて、政府側は、460万回分の抗原検査キットの在庫があり、さらにメーカーに1日80万回分の増産を要請していると答弁していた。25日朝にモーニングショーに出演した仁木芳人は、460万回分の在庫なら2日で空になると解説、1日80万回分の増産もすぐの達成は厳しいだろうと悲観的な見方を示した。抗原検査とPCR検査のキットがなくなり、検査そのものが物理的に困難になるため、厚労省の上の新方針が出たのである。しからば、症状が出れば簡単に医師の診断を受けられるかというと、どうやらそうでもないようで、厚労省は、「若くて低リスクの人は必ずしも受診しなくてよい」という方針も併せて出している。


また棄民政策に逆戻り - キットないので検査しません、病院にも来ないで_c0315619_15115757.png厚労省がリークしてマスコミに書かせた記事によると、「若年層に自分で検査してもらうこと」とあり、 こうすれば「医療機関での検査を減らせる」とある。 要するに、どういう意味かというと、自分で薬局で検査キットを探して購入し、自ら検査して陽性・陰性の判定をしろということだ。自分で金を出して検査キットを買えと言っている。品不足で争奪戦の製品を本当に店頭で入手できるのか、転売ヤーから高額でネット購入しろというのか、厚労省の矛盾する二つの方針の真意がよく分からない。想像をめぐらせば、おそらく、資産や人脈を所有する者は大丈夫ですよというネオリベ的真相なのだろう。昨年の著名女優の例のように。医療機関でのPCR検査も、治療薬の即時提供も、長期入院療養も「上級」は可能なのだ。貧乏人は自己責任という意味だ。

具体的にイメージしよう。日雇いなど非正規で働く無産層の若者が、感染爆発する都市の現場で無理して労働して、オミクロン株特有の咳や喉の痛みを発症したとしよう。薬局に行っても検査キットは手に入らない。保健所に電話したら、若いからしばらく様子を見てくれと放置される。保健所は忙しくて手一杯だから構ってられないと突き放され、熱が出てもっと症状が悪化したらまた電話しろと指示される。結局、彼は新規感染者ともカウントされず、医師の診察も受けられず、薬ももらえない。自宅で自力で治すか、肺炎が重症化する手前でひなたのような訪問医師の往診を受けるしかないのだ。間に合えば命は助かるが、間に合わなければ「自宅療養中死亡」の人になる。それをテレビが神妙な顔で報道する。


また棄民政策に逆戻り - キットないので検査しません、病院にも来ないで_c0315619_15152900.png早い話が、昨年8月2日に菅義偉が打ち出したところの、中等症以下の患者は自宅療養の方針に戻っていて、さらにはPCR検査も施さないという、第5波時以下の滅茶苦茶な棄民対応に帰着してしまった。菅義偉よりひどい医療放棄策が、しれっと厚労省の「方針」としてリークされ、マスコミが敷き固めて国民に受け入れさせている。昨年の棄民政策は、責任者である菅義偉が出てきて自分で発表をした。今回の棄民政策は、岸田文雄は前に出て説明せず、厚労省がマスコミリークし、ピエロの尾身茂が腐った舌を回してゴマカシながら逃げるという対応をとっている。菅義偉よりも卑劣な態度ではないか。この異常な棄民政策の本質を暴露して批判したのは玉川徹だけだ。

第6波・オミクロン株禍の日本の対処方針は、検査させない、診断させない、病院にアクセスさせない、入院させない、薬も与えない、自宅で自己責任で治させる、である。その正当化の理由は、医療資源がないからという説明だ。検査キットがない、薬がない、医師・看護師のキャパがない、ベッドがない、ワクチンがない。なので、この対処方針で我慢してもらう。政府とマスコミは平然とそう言って国民に納得を強いている。だが、日本はコロナ対策に2年間で77兆円注ぎ込んでいる国だ。国民一人当たり61万円。日本国民はコロナ対策に一人61万円も税金を払っている。61万円を払ってこの棄民政策。入院どころか検査さえ受けられない。検査拡充は、この2年間、政府がずっと言い続け、自民党が選挙で公約にしてきたことだった。


また棄民政策に逆戻り - キットないので検査しません、病院にも来ないで_c0315619_16071940.png日本政府の恐るべき無能無策の前に失神する気分になる。なぜ、政府と分科会専門家がオミクロン株を軽視して今のような事態を招いたかというと、やはり「ウィズコロナ」の路線に準拠していた問題が大きい。英国米国の方式を唯一標準のモデルと信奉し、同じ方法(共存という名のレッセフェール)で乗り切ろうとしたからだろう。その悪影響が出た。今、英国ではマスク撤廃を含めた規制撤廃で臨んでいる。欧米からはオミクロン株は重症率が低いという特徴ばかりが伝わり、その一点が強調され、そのため日本で新変異種を軽視する風潮が醸成された。しかしながら、英国にはレッセフェールに突き進める条件が存在したのであり、ブースター接種の進捗というアドバンテージがあったのだ。その前提のない日本で、本来、オミクロン株の感染波に対して英国と同じ「コロナと共存」の政策を選べるはずがない。

さらに、人口に占める高齢者の比重が異なり、65歳以上の高齢化率が日本では29%だが英国は18%にすぎない。米国は16%。いわば基礎体力が違う。12月時点から、松本哲哉など専門家は、オミクロン株がどれだけ重症化率が低くても、感染者の絶対数が多く母数が多くなれば重症者数も多くなるのだという警告をずっと発していた。25日夜の長妻昭の話では、オミクロン株の重症化率はデルタ株の4分の1だと言う。だとすれば、感染者数が4倍になれば重症者数は昨年8月と同じ水準になり、医療逼迫・医療崩壊を惹き起こすのは必然ではないか。それなのに、選挙に勝った維新系を筆頭に、新自由主義者たちはオミクロン株は軽症だから規制は不要だと言い張り、経済を回すことを優先しろと吠え、インフルエンザと同じだから5類に引き下げろと喚き続けてきた。12月から1月前半のコロナ論議はそれが争点だった。その言説が作用して、日本の危機感はきわめて薄かった。


また棄民政策に逆戻り - キットないので検査しません、病院にも来ないで_c0315619_16063027.png日本はウィズコロナにコミットした国である。ウィズコロナとは、感染対策と社会経済活動を両立させるという考え方であり、それが可能でそれが理想だとする政策思想に他ならない。けれども、目の前の現実はどうか。次々と学級閉鎖・休校に追い込まれ、保育園が休園したため親が働きに出られなくなっている。救急搬送困難事案はすでに過去最多の件数に上っている。通常医療が大幅に制限される深刻な事態になった。日本の社会活動は麻痺して機能不全の状態に陥っている。現実には両立できてない。それならば、英国や米国は本当に両立できているのか。英国の現在の7日間平均の1日の死亡者数は263人。最悪だった昨年1月の半分ほどだが、この数字を日本に置き換えると1日500人になる。米国の現在の7日間平均の1日の死亡者数は2369人で、人口比で日本に換算すると1日904人の数になる。

英国も米国も壮絶な死者数を出していて、もし日本でこの死者数が出る惨状になったら、内閣倒壊どころか政権交代が起きているだろう。比較して、やはり社会が違うのだという本質的差異を素朴に感じさせられる。これほどの死者数を出しながら、マスク等規制を全廃して自由に経済社会活動のアクセルを踏もうという発想と意思はどこから来るのか。英国や米国は、欧米は、日本とは社会が根本的に異なっている。他人の不幸を身内の問題の如く考えて心を傷ませる度合いが薄く、優勝劣敗・適者生存・弱肉強食のダーウィン的論理で均衡が成立しているように見える。日本は、同じ日本国民を自分の家族のように考え、相互に配慮し合う。社会成員の一人一人の命が相対的に重いのだ。赤の他人ではない。共同体(ゲマインシャフト)の契機と性格が本来的に強い。そうした社会体質の日本が、欧米モデルのウィズコロナを選択することが果たして正しいことだろうか。


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by yoniumuhibi | 2022-01-26 23:30 | Comments(2)
Commented by qwer at 2022-01-26 21:15 x
カミュの『ペスト』を読むと、作中の敬虔なキリスト教徒は「ペストが神の意思なら、相応の人間が死ぬことを甘受すべき」と言う態度であり、防疫に奮闘する主人公たちの姿勢は「反キリスト教的」と分類されている。東洋とは考え方が根本的に異なる。

こうなると、「為政者は民草を善導し、仁政を敷くべし」と言う儒教の伝統も、疫病下では悪くないと思う。
Commented by みきまりや at 2022-01-28 14:33 x
 “一丸となって”という言い方がありますが、アメリカの場合だと、それができるのは外国との戦のときなどで、国内の出来事に対しては一丸となりにくい体質なのでは、と思います。
 地球上のあらゆる国から、それぞれの文化を持ってアメリカに移ってきた人たち、多様性はそれを目的にしたのではなく、結果としてそうなってしまったという歴史です。日本に言われる多様性は、絵に描いた餅的で、現実はほとんど単一民族国家の単一性が体質、一丸となって、コロナゼロを目指そうと決心すれば、それを実現させやすい方ではないかなと私は思うのです。
 ウィズコロナよりコロナゼロの方が完璧で、勝利に近いですね。そしてコロナを抑え込み克服した国の経済には、立ち直りが待っている。
 アメリカのことを書いたのは、夫の仕事の関係で二年近く住んだことがある国だからです。世界の歴史の流れから結果として多様性国家になり、人それぞれの考えに注意を払い大切にする価値観、コロナゼロに国民の気持ちをまとめるのは難しく、ウィズコロナで精いっぱいなのでは、と推測します。日本はコロナゼロを念頭に据え、このウイルスに対峙するのがいいと私は思います。


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