ウィズコロナとゼロコロナ ー 日本共産党の変節

いつも政治的中立に努めて慎重運転のコメントに徹し、無難に生放送をこなすキャラクターとしてテレビ局に重宝されている松本哲哉。その表情に、一瞬だが、このメッセージを発信する責任についての葛藤と動揺の気配が浮かび、それが視聴者に微妙に伝わり、真相を疑わせる映像になっていた。本人は気が進まないが、多額のギャラで世話になっているTBSが無理に要請してきたので、断れずに依頼に応じたのだろう。政治的にナイーブな松本哲哉としては、無理があり不自然な一言だった。

政府は「ウィズコロナ」という言葉を安易に使うべきでない。多様なウイルスの全体と人類との共生を論じることはできても、「共生」できないウイルスもある。誰が「ウィズエボラ」とか「ウィズポリオ」とか「ウィズ天然痘」というだろうか。新型コロナウイルスは、封じ込めなければならないものです。
私は、コロナ対策の基本姿勢としては、この志位和夫の主張が正しいと思うし、日本共産党は現在もこの方針を堅持していると思っていた。

現在の泉健太の執行部がこのウィズコロナとゼロコロナの政策問題をどう処理し、どの地平に立っているのか、その点は不明だが、昨年3月の衆院予算委では、政調会長だった泉健太が菅義偉に対して質問に立ち、「われわれ立憲民主党はゼロコロナという方向性に行くべきだと言っている」と切り込んでいる。この時点を振り返れば、日本の国論は二つに分かれていて、ゼロコロナを支持する者とウィズコロナを支持する者の二派があり、マスコミも二派に分かれていて論争が行われていた状況を確認できる。与党の支持者はウィズコロナ、野党の支持者はゼロコロナという対立構図だった。

疑問に思いながら推理して調べると、どうやら、昨年10月初旬のNZの動きが転換点になっていることが窺われる。世界の中でも厳しい規制措置をとってきたNZ政府の政策に対して、ロックダウンに反対する市民デモが起き、アーダーンがゼロコロナ政策の断念を発表していた。私はこの事実をこれまで知らなかったが、立憲民主党にとっては、またゼロコロナのマスコミ論者(岡田晴恵・玉川徹)にとっては不本意な出来事の発生だっただろう。NZにゼロコロナの旗を降ろされたら、ゼロコロナ派は立場を失って総崩れになる。アーダーンはゼロコロナの女神だった。

私の勝手な想像だが、おそらくアーダーンにアメリカから圧力がかかって、ゼロコロナ放棄を明言するよう指示と差配があったのだろう。NZがそれを言えば、中国だけが孤立化して異端化される。アメリカの作戦が奏功する。逆に、NZがゼロコロナを掲げて感染対策に成功し続けると、アメリカや英国の立場はない。コロナ対策は米中冷戦の重要な「戦場」で、アメリカからすれば、中国と同じ方式が成功し勝利することは許されないことだ。アーダーンは労働党の政治指導者で、政策は公共福祉にウエイトがかかるのが道理なのだけれど、NZは小さな国でファイブアイズの一国である。アメリカには逆らえない。

大和総研と日本総研のエコノミストの分析では、2022年の中国のGDP成長率はプラス5.4%と想定されている。IMFの予測でもプラス5.6%と高い。アメリカは5.2%で、EUは4.3%である。アメリカよりも高い。コロナ初年の2020年、中国は武漢封鎖などきわめて厳しい私権制限の行動規制をとり、全国で壮絶なロックダウン策を敢行したが、先進諸国が軒並みマイナス成長を記録したのを尻目に、一国だけ2.3%のプラス成長を達成している。昨年2021年はプラス8.1%の絶倫的V字回復。イアン・ブレマーが何を言いたいのか全く分からない。正常な科学的理性からの判断とは思えず、CIAの下品なプロパガンダの下請けとしか思えない。

ワクチンでコロナと戦うのがウィズコロナで、個人の自由活動を許容する。リベラリズムの発想だ。ゼロコロナは、水際対策と検査と隔離で対処するのであり、公共政策(ソシアリズム)の論理と原則を前面に立てて防疫する。二つは根本的にスタンスが異なる。ここで注視しないとといけない問題は、すでにEU当局が警告を発しているように、ブースター接種を4か月毎に繰り返すとヒトの免疫系に悪影響を及ぼすという医学的観測と疑念だ。イスラエルはすでに4回目の接種を行っているが、オミクロン株で過去最多の感染者数を更新している。3回のワクチン接種が済んでいても効果がない事実が証明されていて、集団免疫は達成獲得されていない。
オミクロン株の感染の波が収束した後、昨年のデルタ株のように再び強毒性の変異種が発生するかもしれない。そして、世界中に猛威をふるうかもしれない。コロナの正体も今後の展開も未知で、AIでも予測不可能で、人類はただワクチンにすがって振り回されているだけだ。免疫システムの今後の不安や後遺症の懸念を考えると、特に若い世代はなるべく感染を避けた方がよく、慎ましく謙虚にコロナと向き合った方がよいように思われる。1日にコロナでの死者数を1700人も出しているアメリカや400人も出している英国の政策が、中国よりも優れているとは到底言えない。人の命が第一なのだから。












by yoniumuhibi
| 2022-01-24 23:30
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Comments(1)

新型コロナウイルスは、いずれ感染力は強いが弱毒性の方向に”進化”し、WHOがインフルエンザ並みと評価するときが来るでしょう。その時は中国もゼロコロナ政策を中止するかもしれませんが、それは敗北でなく勝利です。世界中の数億人の感染者、数百万人の死者の犠牲の末の結果ですが、中国はそれをほぼ免れたのですから。かつて孫文が中国人を砂とたとえ、魯迅が独立した民衆がいないと評したところを、現在の政府は国家との一体感をもたせるかたちで、人民から国民へとエートスを変えようとしているようです。『白熱教室』でも、米国人学生は進んで出演したい人がたくさんいるでしょうし、日本人学生は恥ずかしいのか同じ人が出るぐらいですが、中国人学生はおそらく優秀な学生を選抜して出演させています。以前、学生は受験戦争に肯定的な意見を言っていたが、政策が変われば否定的な発言をされていました。それが中国の方針であり、他者がどうこう言うものでもないでしょう。なお、地球の温暖化でシベリアの永久凍土が溶け出し、何万年も前に閉じ込められたウイルスが外に現れる恐れがあるが、動物や人に予想もつかない危険性があるとのことです。こういう事態になれば、どこの国でも嫌でもゼロたいさくをとらざるをえなくなるでしょう。
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