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中国との戦争は「無謀な戦争」ではないのか - シミュレーションしているのか

中国との戦争は「無謀な戦争」ではないのか - シミュレーションしているのか_c0315619_16174685.png開戦80年のNHKの特集番組は予想していた以上に本数と分量が多かった。内容については、昭和天皇の関与と主導性を隠し、あくまで近衛文麿や東条英機や陸海軍に責任を押しつけている点が不満だったが、あの戦争を無謀な戦争だったと結論し、戦争突入の歴史を正しく批判していた点は評価できる。今回のNHKの番組制作の基調は、概ね正論文化人の井上寿一の視角と整理によるものと見受けられたけれど、現在の極右一色に染まったマスコミ空間から考えれば、まずまずの出来上がりだと容認できるだろう。開戦80年を迎えて戦争の歴史を振り返る時機は、台湾有事と対中戦争の危機が迫る情勢と重なった。安倍晋三が中国との開戦を宣言し、過激に扇動する時局と折り合わさるところとなった。少なくない国民が、今の状況と当時の進行をシンクロさせて考えたことだろう。今、まさに日本は大きな戦争の入り口に立っている。その点を考えると、1941年の歴史を検証して「無謀な戦争に突入した」と総括したことは意味があると思われる。開戦に突っ込んではいけなかった。



中国との戦争は「無謀な戦争」ではないのか - シミュレーションしているのか_c0315619_16261164.png今回、いわゆる秋丸機関の活動が紹介され、石井秋穂の存在と発言に注目が当たった。陸軍はかなり精密な国力の比較分析を行っていて、英米との総力戦のシミュレーションが数字として上がっていた。冷静に計数を元に国策を決定するなら、当然ながら米国との開戦は避けないといけない。真珠湾やフィリピンへの攻撃は避け、中国大陸からの撤兵に応じないといけない。重慶政府と講和を結び、米国との友好関係を維持する必要があった。そうすれば、満州国は保全できただろうし、日中戦争で疲弊した国内経済を滋養回復することができただろう。ここからはNHKと井上寿一の歴史認識ではなく、私の視点だが、陸軍と天皇がその判断に出なかったのは、陸軍の面子丸潰れと、撤兵による世論の反発が高じて共産革命の端緒が開かれるという危惧があったことに加えて、41年6月の独ソ戦から始まる欧州情勢の新局面があったことが大きい。軍部と天皇はナチスドイツを過大評価し、期待を膨らませ、米国は欧州方面で苦戦する英国支援に張り付かざるを得ず、アジア太平洋方面で本格的な軍事展開に出ることはないだろうと甘く見ていた。


中国との戦争は「無謀な戦争」ではないのか - シミュレーションしているのか_c0315619_15481393.pngアジア太平洋地域は空っぽになり、故に米国は日中戦争での立場も変えて日本に妥協するだろうと大局を看做していた。そうした主観的予測を導かせるだけナチスの進撃は破竹の勢いで、モスクワも陥落するかという見方に支配された41年後半の世界情勢だったのである。実際は天皇の思惑とは逆で、ルーズベルトは第二次世界大戦に参戦する大義と口実を求めていて、日本の奇襲攻撃を周到に手招きし、だから決して中国大陸からの撤兵要求は譲らなかった。米国の世論が戦争突入を認める決定的材料が欲しかったのだ。戦争を始めれば、秋丸機関の科学的分析どおりの推移と帰結になるからである。軍部と天皇の判断が間違っていたのは、ソ連の民衆の抵抗の強さを読めなかった点だ。その点は、オリバー・ストーンとピーター・カズニックが著書に書いているとおりで、第二次世界大戦の分水嶺はスターリングラードの攻防戦にある。ドイツ軍は41年末からの冬将軍の前で進撃を止められ、レニングラードもモスクワも落ちず、東部戦線は膠着、翌42年からは米国の物資補給を受けたソ連軍が反撃に出る。ヒトラーは挫折、ルーズベルトが思い描いたとおりの戦局構図が到来した。


中国との戦争は「無謀な戦争」ではないのか - シミュレーションしているのか_c0315619_16214658.png提起したいのは、安倍晋三や櫻井よしこの扇動に乗って、台湾有事に集団的自衛権を適用し、中国との開戦に及べばどうなるかという問題である。市ヶ谷の幕僚4監部と情報本部で、また国家安全保障局で、まさか秋丸機関や総力戦研究所がやったようなシミュレーションを行っていないとは思えない。米日共同でやっているはずだし、幾つものシナリオを作成・更新しているだろう。作戦の方針を決めるのは米国だが、当然、日本は日本で独自に検討作案しているはずだ。が、果たして、その作業を本当に真面目にやっているのだろうか。戦争は中国軍が相手であり、日米同盟軍が台湾軍を扶け豪州軍などと連合して戦う構図となる。戦場が台湾と台湾海峡に限定され、中国軍が緒戦で壊滅的打撃を受けて敗北するというシナリオで決着すれば、日本の総力戦の事態はなく終わるだろう。だが、第二次大戦のように戦線が膠着して中国側が反撃に出れば、必然的に日本は泥沼の総力戦に嵌まる。核攻撃を受ける可能性もある。日本と中国の国力を比較すると、GDPでも人口でも最先端技術力でも圧倒的に中国が上だ。もし戦争から米国が離脱する事態になれば、そこで日本の運命は決まったも同然となる。


中国との戦争は「無謀な戦争」ではないのか - シミュレーションしているのか_c0315619_16284853.png管見では、戦争はほとんど不可避に見える。米軍の元太平洋司令官が6年以内の台湾有事を表明し、その1年目の今年、アラスカ会談を皮切りに、米国の計画どおりに戦争準備が着々と進んだ。戦争への態勢構築が地歩を刻んだ。来年は台湾の内部で揉め事が起きるだろう。米国は習近平の思想と行動(thought and behavior)をよく研究し承知していて、毛沢東脳の前時代的な独裁者の反応とそこからの指示命令で発生する中国のリアクションが、国際政治的には中国に不利な逆効果を作り出して行くことをよく計算している。戦略的にきわめて巧妙に一つ一つ挑発の罠を仕掛け、罠に中国を追い込んで歩を詰め、中国が台湾に軍事侵攻せざるを得ない環境と回路へ持ち込むことに成功している。中国の対抗行動は粗忽で鈍感で要領を得ず、ブリンケンの狡知な策動を阻止するに不十分である。この戦争は - 米国は競争と呼んでゴマカしているが - CPCを打倒しPRCを解体することが目的で、したがってイデオロギー的な神聖目標を掲げた殲滅戦であり、小さな具体的利益の取得のために駆け引きをしているのではない。米国の覇権を永続させるための戦争である。だから、妥協がなければ必ず一線を越える。


中国との戦争は「無謀な戦争」ではないのか - シミュレーションしているのか_c0315619_16373062.png米国は軍事衝突(第三次世界大戦)を折り込んでいて、軍事力で優勢な今だから時間を無駄にせず作戦に出るのだ。そこには日本という、米国にとって天恵の与件が入っていて、仮に台湾作戦が狙いどおり奏功せず、戦線が膠着状態に入った場合でも、中国の相手を日本に押しつけるという奸策を構えている。日中で延々と総力戦を演じてもらい、核戦争でもやって相互に疲弊してもらうという狡猾な計略だ。中国が弱体化した時点で米国が再び出て行けばいい。米国にとってはパーフェクトな(絶対失敗しない)戦略構想である。日本は、長年の思想改造によって戦前と同じ集団発狂の精神状態に固まっており、米国が戦前の天皇と同じ現人神になっていて、すなわち日本国民は米国の赤子であり、米国のために身を捧げて死ぬのが日本国民の名誉で本望となっている。だから、最後まで喜んで宿敵中国と戦って死んで行く。中国と日米同盟の戦争は、このような前提と図式で素描できるだろう。米国の戦争プログラムは着々と進んでいる。それに合わせて日本国内も戦争体制の整備を急いでいる。何もかも戦前と同じなのだけれど、違うのは、今回の日本は全てを米国に預けてしまい、自分の頭で冷徹に戦争を分析考察してないことだ。


中国との戦争は「無謀な戦争」ではないのか - シミュレーションしているのか_c0315619_16564946.png今の日本には主体性の契機がない。7年ほど前、尖閣での日中の局地的海上戦のシミュレーションが出回り、軍事マニアの右翼が喋々する趣味になっていたことがあった。当時は安倍右翼が対中戦争の開戦に熱心で、米国は腰が引けていて、逆に日本の暴走を制止する慎重姿勢に回っていた。今は関係が逆で、米国が対中戦争を決意して国家戦略を邁進中で、日本はそれに熱心に追従する駒になっている。今回は止める者がいない。80年前の戦争では、堀悌吉のように不戦を唱えて馘首(予備役編入)される高級参謀もいた。普通の頭脳を持った防大出の自衛官なら、中国と総力戦になる可能性や、総力戦となったときの国力の差は想定できるはずだ。中国経済の日本経済への影響力の大きさを理解しているはずだ。なぜ、幕僚の中から不戦論が出ないのだろう。戦前より自由な言論体制があり、憲兵に逮捕されて軍法会議に処されるというわけでもないのに、不思議でならない。同様に、嘗ての左翼は命を賭けて侵略戦争に反対した。特高に捕まって虐殺されながら反戦を訴えて地下活動した。今の左翼は、開戦80年なのに機関誌で特集を組まず、憲法9条の声を上げない。朝から晩まで、ジェンダーとマイノリティとLGBTと脱炭素のお経を上げている。


マスコミと右翼の中国憎悪の嵐に呼応し、ウィグル問題と彭帥問題に目を怒らせ、中国悪魔論を咆吼して国民を戦争に駆り立てている。左翼も米国のイヌになり果てていて、戦争政策の遂行に脇役の位置で協力している。


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by yoniumuhibi | 2021-12-10 23:30 | Comments(1)
Commented by アン at 2021-12-12 19:21 x
SNSでご紹介いただいた野口悠紀雄執筆記事で、野口がデータを提示して説明しているとおり、韓国と日本の間には大きな差ができています。韓国の学校給食は18歳まで無料、おかずも日本より品数が多く充実しています。日本も標準的な自治体の給食はそれなりの水準で実行できていますから、韓国よりおかずが少なくても許容範囲ですが、大阪や横浜はひどい。
そして日本の多くの人がいまだに、中国や韓国に抜かれた事実を認識していない。中韓を蔑視している。
今夏、フランスのマクロンが来日しましたが、マクロンは菅政権が硬直的で頑なであることに驚いたと言います。
井上というNHKのアナウンサーは帰国子女ですから英語はできて当たり前ですね。


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