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開戦80年をスルーした3報道 - サンデーモーニング、週刊金曜日、赤旗日曜版

開戦80年をスルーした3報道 - サンデーモーニング、週刊金曜日、赤旗日曜版_c0315619_13443087.png12月8日は太平洋戦争の開戦から80年の日になる。NHKではかなり精力的に特集企画が組まれ、総合・教育・BSと関連番組が目白押しで並び、週末の4日と5日にはNスペの放送(伊東敏恵のナレ)があった。サンデーモーニングの「風をよむ」はどんな編集と制作だろう、すぐにツイッターで感想と批評を上げてやろうと待機していたところ、意外なことに肩透かしを食わされた。「風をよむ」で特集がなかったのだ。来週12日に放送する可能性もあるけれど、テレビの普通の編成では5日予定が常識だろう。忠臣蔵の特集を12月14日の後に放送しても興ざめして意味がないのと同じで、イブを過ぎたクリスマスケーキのように価値が暴落する。旬を過ぎた出し遅れの余剰在庫コンテンツになる。5日の「風をよむ」はワクチン格差の特集で、キレのない、興趣を覚えない、平板で退屈な時間潰しの内容だった。開戦70年・開戦60年のときは、番組は気鋭の放送で臨んだはずである。この番組らしくオーソドックスな反戦平和の論調を茶の間に送り届け、視聴者を正しく啓蒙し、右翼を逆上させていたはずだ。なぜ、サンデーモーニングは開戦80年の特集報道を避けたのだろうか。




開戦80年をスルーした3報道 - サンデーモーニング、週刊金曜日、赤旗日曜版_c0315619_12554477.pngその理由を考える上で、もう一つ、おそらく問いの解答に繋がるヒントとなると思われる事実材料がある。週刊金曜日の先週号(12/3発売)もまた、開戦80年を特集していない。メインの特集記事は筑紫哲也の回顧談で、太平洋戦争の歴史は全く触れられてない。小さな記事の一つも見当たらない。さらに、もう一つの左翼ジャーナリズムの事実も発見した。ひょっとしたら思いつつHPを確認したら、赤旗日曜版の12/5号も開戦80年は一切話題にしていない。1面は辺野古新基地を特集している。この媒体は政党の機関誌でもあるから、日本共産党の論理と必要で時事をフォーカスするわけで、一般の興味関心とは別の問題が編集対象になるのは仕方ないことだ。だが、週刊金曜日と赤旗日曜版と、コアな左翼が定期購読する二つの週刊誌がどちらも開戦80年を無視したことは、やはり尋常ではないというか、そこに何らか意味を抉り出すべき思想的病因が介在することを窺わせる。サンデーモーニングと合わせて、開戦80年無視のこの三者揃い踏みは、明らかに不審で不可解な出来事であり、看過できないジャーナリズムの過失である。事件と言っていい。


開戦80年をスルーした3報道 - サンデーモーニング、週刊金曜日、赤旗日曜版_c0315619_12555511.png本来、安倍晋三が「台湾有事=日本有事」をぶち上げて世論扇動を始めた今こそ、左翼系メディアが開戦80年を大きく取り上げて論じ、反戦と憲法9条の意義を訴えるべきだろう。中村哲の受難の日とも時節が重なるのだから、当然、そこに焦点を合わせて意見を発信するべきだっただろう。反戦平和と憲法9条の気運を盛り上げる論陣を張り、世論に強く鋭く訴えて、12月8日を迎える環境を作るべきだっただろう。だが、サンデーモーニングも、週刊金曜日も、赤旗日曜版もそれをしなかった。戦争を論じなかった。無視し不作為した。なぜなのか。それが意図的な無視であり不作為であったにせよ、あるいは迂闊な等閑による過失であったにせよ、やはり事件の真相を究明しなくてはいけない。彼ら左翼系編集者の動機を探り取って仮説を立てる必要がある。三者の媒体は問題意識が繋がっている。田中優子とか、安田菜津紀とか、仁藤夢乃とか、登場する人物が同じだ。業界の日常的な交遊関係があり、人的なコミュニケーションがあり、思想的方向性を共有していると考えられる。だから誌面・紙面・画面の中身が同じになり、同質同類のメッセージを発信しているのだ。


開戦80年をスルーした3報道 - サンデーモーニング、週刊金曜日、赤旗日曜版_c0315619_13210820.png彼らが共有する思想的方向性とは何だろう。問題はそこだ。そして、指摘し告発したいのは、その核心に憲法9条や反戦平和がないことである。彼らにとってそれは二の次の関心事項なのだ。それでは、核心は何で、最重要の関心事項は何なのか。それは、週刊金曜日のもくじやバックナンバーの表紙を見れば分かる。一言で言えば、脱構築主義の政策群である。ジェンダー主義であり、マイノリティ主義であり、LGBT主義であり、そして脱炭素主義である。多様性と反差別のポリティカル・コレクトネスである。流行思想の問題系である。そちらのイシューとインタレストの方が優先なのだ。おそらく、当該3媒体の編集者にとって、憲法9条や反戦平和の主張というのは、古臭い戦後左翼の発想と観念であり、老人世代が時代遅れの価値観に拘泥する愚態に見えるのだろう。そんな過去の理想に固執しても、今のSDGs全盛の世の中では支持を受けず、若者の市場(読者・視聴者)を得られないと考えているのに違いない。すなわち、ここには転向の契機がある。胡乱な変節がある。戦後民主主義の陣地の放棄と戦線の後退がある。由々しき事態であり、戦争を恐れる者として座視できない。


開戦80年をスルーした3報道 - サンデーモーニング、週刊金曜日、赤旗日曜版_c0315619_12553269.pngさらに問題は掘り下げられなければならない。左翼系3媒体が開戦80年から目を逸らし、敢えて言挙げしなかったのには、重大な理由がある。それは、次の戦争の相手が中国だからだ。今の日本の左翼にとって、中国(PRC・CPC)は国内の右翼以上の敵であり、攻撃し打破しなければいけない不倶戴天の政敵だからだ。サンデーモーニングは、毎週毎週、平日のプライムニュース以上に中国叩きに血道を上げている。中国を悪魔視し、全否定し、視聴者に中国憎悪の感情を植え付け刷り込んでいる。まさにカルト右翼と同じ口調と熱量であり、最早、見ていて取りつく島がない。日本で最も影響力が大きいリベラル系番組と評されるサンデーモーニング。それがこのプロパガンダ・シャワーの狂乱だ。毎週毎週、10 minutes china hate を凄まじく遂行反復していて、全国民を反中反共へ洗脳し、反中反共の戦士に作り変えている。ここから先、中国と戦争を始める以外の道があるだろうか。サンデーモーニングが戦争を煽っている。戦前日本のマスコミと同じく、関口宏とその仲間が国民に対中戦争を嗾けている。 戦争を肯定する心理に染め上げている。反戦平和や他者受容の価値観などどこにもない。


開戦80年をスルーした3報道 - サンデーモーニング、週刊金曜日、赤旗日曜版_c0315619_13372050.png要するに、反戦平和の思惟の構造が変わっているのだ。すなわち、中国(PRC・CPC)という真性敵が措定されたため、その打倒が急務として動機づけられ、そのため、左翼リベラルの反戦平和が抽象的な空語になり、真理価値の褪せた教条的スローガンに形骸化したのだ。簡単に言えば、現在の左翼リベラルにとって、絶対悪たる悪魔的存在は戦争ではなく中国であり、戦争をなくす以上に中国をなくす方が先決なのである。だから、反戦平和と憲法9条は最優先課題として前面に浮上しないのだ。左翼のそうした態度については、TBSの日下部正樹が典型例を示している。日下部正樹において、現在、憲法9条や反戦平和の理念へのコミットは以前のような情熱を伴ったものではあるまい。むしろ、安倍晋三の唱える台湾防護のための自衛隊出撃の方に共感しているのではないか。民主主義を守るための聖戦十字軍の方に立場を寄せているに違いない。日米同盟と反中包囲網の側に与し、中国への圧力と威嚇を正当化することと、8月になったら殊勝な反戦反核の人になることは、日下部正樹において矛盾でも逸脱でもないのだろう。こうした欺瞞の者たちによって戦争がキャリーされ、次々と一線を越えて行くのである。


今、これだけ戦争(台湾有事の名の対中戦争)の危機が差し迫っていて、しかもその戦争は日本の侵略戦争であり、さらにその戦争は核戦争の第三次世界大戦なのに、そして災禍の中心となる戦場は日本なのに、日本国内で憲法9条と反戦平和の声が上がらない。左翼は口を開けば「立憲主義、立憲主義」と言いながら、9条を中核とするこの国の憲法と価値観を守ろうとしていない。他の舶来の新価値観にばかりよそ見し、業界挙げてポリコレ言説のゲームとトレンドに群れ興じ、戦争のリアルな危機を無視・放置している。



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by yoniumuhibi | 2021-12-06 23:30 | Comments(3)
Commented by 長坂 at 2021-12-06 21:35
アジア太平洋戦争は日中戦争の延長上にあるわけだから、本来ならば盧溝橋事件の7月7日に、侵略戦争を真摯に反省し謝罪し不戦を誓わなければいけないはず。ところが「今年は天気が悪く織姫と彦星は会えません、ザンネン」がニュースですよ。皇軍がいる所では規模の差あれど三光作戦、あれだけの残虐行為をし殺しておいて、関心事は七夕。12月8日だって真珠湾ばかりでその直前のマレー半島奇襲上陸がすっぽり抜けている。吉田裕氏の「日本人の戦争観」の執筆動機でもある、高市早苗の「自分は当事者世代ではないので責任はない、反省も謝罪もしない」が日本人マジョリティの気持ち。私はヒロヒトのお気持ちを察する気もないのでETVは見なかったけれど、我ら日本人の厚顔ぶりよ。
敢えて12月8日に触れないのは、アメリカ様と戦争をしたと言う不都合な真実より、日米一心同体、防衛費2%、台湾有事は任せてアピール。(どうせ梯子を外されるんだろうけど。)拉致問題が下火で、今度は台湾問題と国情院やCSISの代理人としてシンゾーの八面六臂の活躍ぶり、すっかり快復したんですね。
Commented by 北海道人 at 2021-12-07 11:09
欧米の植民地支配からアジアの解放を唱え大東亜戦争に突入した日本だが、敗戦による米国の占領下、憲法をはじめ国家機構や社会構造が都合よく改造され、結局、自らが植民地化されてしまった。これが明治維新以後近代日本の歴史的帰結である。一つの中国を承認して平和条約を締結しながら、今度は台湾有事だという。韓国の要求に対して言い放つ「国際法違反」そのものではないか。それにしても、安倍氏も大した者だ。北朝鮮、中国という「敵」を発見し、今や東アジアにおける人権、民主主義という「普遍的価値」の守護神である。トランプ氏をノーベル平和賞に推薦したことが報じられたが、「専制主義」と闘う安倍氏こそふさわしいのではないか。戦後も80年を過ぎると、こんなことになるわけだ。
Commented by 輪ゴム at 2021-12-07 16:32
前回選挙の広報誌で共産党の若手議員が
自党こそが中国の人権侵害を批判できるとアピールしていました
反共アレルギーを緩和するために中国が利用されているのが
見え透いていて将来に不安を覚えます


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