宇沢弘文・内橋克人『始まっている未来』 - フリードマンと新自由主義への批判


宇沢弘文のフリードマン論は重要で、何度か聞くところだけれど、ここでは特に次の点に注目して抜粋したい。

宇沢:(水爆開発の責任者でマッカーシズムの折にオッペンハイマーを公聴会で告発した)テラーは、多くの物理学者から蛇蝎のごとく嫌われていましたが、その後、共産主義から自由を守るために、つまりパックス・アメリカーナを守るために水素爆弾を使うべきだと狂信的に主張しつづけた。そのテラーに全面的に賛同したのが、、ミルトン・フリードマンだったのです。テラーと同じように、スタンフォードにもよくやってきては、自由を守るために、水素爆弾を使うべきだと演説をぶっていました。(P.20-21)



宇沢:そういう政策 - 日米構造協議を通じた630兆円の無駄な公共投資の支出強制 - を見ていると、日本は完全に植民地というか・・・属国ならまだいいのです。属国なら一部ですから。植民地は完全に搾取するだけのものです。それがいま大きな負担になっていて、救いようのない状況に陥っているわけです。(P.43)
宇沢: いまのご指摘(アメリカの対日要求の受け入れと公立病院の削減)は、民主主義以前の問題で、日本が果たして独立した一つの国であるのかどうか、信じられないぐらいの状況ですね。属国ならまだいい。完全に植民地だといましたが・・・。(P. 55)
宇沢: いまのご指摘(アメリカの対日要求の受け入れと公立病院の削減)は、民主主義以前の問題で、日本が果たして独立した一つの国であるのかどうか、信じられないぐらいの状況ですね。属国ならまだいい。完全に植民地だといましたが・・・。(P. 55)
ブログの文章を書きながら、表現を「属国」にしようか「植民地」にしようか迷うときがよくある。迷いつつ、そのときの気分で両方を書いてきた。内田樹などは属国と言っている。宇沢弘文がこう明確に規定しているのだから、迷わず「植民地」でいいわけだ。実際のところは、限りなく植民地に近い属国で、日々、属国から植民地に移行しているのが真実なのだろうが。制度的にも状態的にも。
内橋:パックス・アメリカーナから脱却し、経済学の復権を急がねばならない。そのために何が必要なのでしょうか。いま、メインストリームの経済学に対する批判と疑いの目はかつてないほど厳しいものになっていると感じますが、経済学の復権はどこから始めるべきなのでしょうか。
宇沢:それについては絶望的だと思うのです。特に経済学の分野では、アメリカの大学で教育を受けて、アメリカ的な市場原理主義的な思想にかなりコミットした人たちが、いま中心になっている。かつてはマルクス経済学者が中心になって、新自由主義の流れに厳しい批判を加え、同時に政府のあり方、社会のあり方を常に問題提起してきた。そのマルクス経済学者の発言力がかなり薄れている。それが文部官僚が主導してきた大学改革の一つの帰結ではないでしょうか。
宇沢:それについては絶望的だと思うのです。特に経済学の分野では、アメリカの大学で教育を受けて、アメリカ的な市場原理主義的な思想にかなりコミットした人たちが、いま中心になっている。かつてはマルクス経済学者が中心になって、新自由主義の流れに厳しい批判を加え、同時に政府のあり方、社会のあり方を常に問題提起してきた。そのマルクス経済学者の発言力がかなり薄れている。それが文部官僚が主導してきた大学改革の一つの帰結ではないでしょうか。
今回の読書は内橋克人を偲ぶ目的のものだったが、感想文を書き始めると宇沢弘文が中心になった。内橋克人については、また稿をあらためて書きたい。これは12年前の対談で、宇沢弘文は「絶望的だ」と言っているけれど、今よりもまだましな知性と良識が日本の空間にあり、書店に行けばそうした新刊書の入荷を期待することができた。この本も出版されてすぐ買い求めて読み、PARCの推薦書に挙げるということをしている。12年前はしばき隊の影もなく、ジェンダーやマイノリティや多様性が今ほど、左翼のみならず国民の間で喧騒されることもなかった。脱構築主義の誤った思想が社会全体に吹き荒れる環境ではなく、しばき隊の凄惨な暴力に人が怯える時代ではなかった。経済学の正しい認識を復活させようという呼びかけが説得力をもって響く時代だった。本はネット通販で今も新品が入手できる。未読の方はぜひお読みいただきたい。








by yoniumuhibi
| 2021-11-22 23:30
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Comments(2)

アメリカだって韓国だって、ガチガチの新自由主義でしょう? だけど最賃上がる、給料上がるプラス成長。バイデンは就任直後に、「アメリカはミドル・クラスが作った、労働者の国だ」文在寅は「目指すは福祉国家」と明言してる。アメリカはあちこちでストライキ中、韓国もゼネストが行われたばかり。アメリカの労働長官のツイートが、星条旗が無ければ、「槌と鎌」としか思えないくらい、労働者の団結を呼びかけている。本人もピケットに参加している。1948年以降、連綿と続くGHQの反共政策で、日本の労働者は団結どころか競争対立、ゼネストやる気力をすっかり削がれてしまった。一方宗主国は労働者が主役の国作りをしようとしているなんて。皮肉な物ですよね。
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宇沢:日本は完全に植民地というか・・・属国ならまだいいのです。属国なら一部ですから。植民地は完全に搾取するだけのものです。それがいま大きな負担になっていて、救いようのない状況に陥っているわけです。
この言葉、マスコミはもちろん、日常会話の中でももはや禁句です。太平洋戦争に向かう時代に、大陸侵攻や英米との敵対関係に強い危惧を抱いた日本人は大勢いただろうと思いますが、誰も口にできなかった高度忖度社会の空気感が今はよく理解できます。
この言葉、マスコミはもちろん、日常会話の中でももはや禁句です。太平洋戦争に向かう時代に、大陸侵攻や英米との敵対関係に強い危惧を抱いた日本人は大勢いただろうと思いますが、誰も口にできなかった高度忖度社会の空気感が今はよく理解できます。
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