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選挙の陰で噴出するアンダークラスの絶望と悲鳴 - 浮上する失業と窮乏化の問題

選挙の陰で噴出するアンダークラスの絶望と悲鳴 - 浮上する失業と窮乏化の問題_c0315619_16372672.png投票まで残り4日。終盤になって急に自民党が勢いを盛り返した情勢報道がマスコミから続いている。25日の朝日新聞の記事では、議席予測の棒グラフがほぼ現有議席(276)と同じ値まで伸びていて、「単独過半数を大きく上回る勢い」とある。27日の共同通信の記事もほぼ同様で、「立憲民主党は伸び悩んでいる」とあった。この二つの記事は、24日の静岡補選の結果から窺える楽観的な見方を根本から覆すもので、真逆の事態の進行が観測されている。狼狽する気分で接したが、そこから続いて出た27日のカナロコテレ玉の報道には、青ざめて憂鬱になるという感覚しかない。テレ玉によると、埼玉県内15選挙区の情勢は自民が14勝1敗の見通しであり、何と、5区で枝野幸男が自民候補にリードを許していると分析されている。先週23日の日経の調査記事では、埼玉県内の戦局は五分五分で、僅かに野党優勢の傾向が確認できると報告されていた。急に風向きが変わった。カナコロとテレ玉が、自民党の圧力で情報工作に手を染めるということがあるだろうか。考えにくい図だ。



選挙の陰で噴出するアンダークラスの絶望と悲鳴 - 浮上する失業と窮乏化の問題_c0315619_16383685.png24日の静岡補選を受けて、爽快で華やいだ心境になり、31日の夜のために奮発してチリ産カベルネソーベニオンを準備したけれど、祝杯の宴となるかどうかは予断を許さない状況となった。今回の選挙では経済政策が関心の中心になっている。議論は散漫で、何が論点で何が争点なのか、全く整理されず解説されないが、コロナ禍で傷んだ国民生活を政府の給付で救済しようという政党の公約に対して、それは「バラマキ」であり財政破綻になるからやめろとマスコミが批判、政党対マスコミの対立構図の観を呈している。きわめて不毛ながら、それがこの選挙の「政策論争」の実態だ。マスコミは、政党の給付策や減税案は、国民の歓心を買って票を釣るための人気取りの餌であると最初から規定し、その意義を否定しているため、政党がどうしてここまで給付策や救済策を前面に押し出すのかの事情を内在的に調べて報道しない。そのため国民は、選挙での経済政策議論を媒介しているところの、日本の社会経済の実態がよく分からない。政党にはリアルな情報が集まっている。マスコミは隠してよく見せない。


選挙の陰で噴出するアンダークラスの絶望と悲鳴 - 浮上する失業と窮乏化の問題_c0315619_16524886.pngマスコミは隠すが、われわれが想像している以上に国民生活は甚だしく傷んでいる。その真相が、マスコミ報道から漏れ出る幾つかの断片的な情報から察せられる。選挙期間を通じて、実際のところ、主役になったのは貧困問題であり窮乏化問題だったのではないか。25日に出た、50歳の母親を26歳の長男が首を絞めて殺した愛知県の事件は、とても内容を最後まで全部読むことができなかった。続報が出ているのかもしれないが、経緯を追いかける気になれない。溜息をつき、心が固まるだけだ。どれほど、どれほど苦しく厳しい家族の人生だっただろう。50歳でこんな死を迎えなければならないとは、何と残酷で冷酷な社会の現実だろう。この事件はテレビのニュースで取り上げられなかった。NHKの報道に出なかった。民放も取り上げていない。今の選挙の経済政策論議の、ど真ん中の問題のはずなのに、紹介して説明することがなかった。その代わり、例によって5chやTwのネオリベ右翼が、匿名でこの家族を罵倒し嘲笑って傷つけている。侮辱と誹謗中傷の雨。いつもの光景だ。同情されない。一昔前だったらどうだろうか。どうして今はこうなのだろう。


選挙の陰で噴出するアンダークラスの絶望と悲鳴 - 浮上する失業と窮乏化の問題_c0315619_16390265.png27日には、「コロナで失業長引く女性、急増34万人」という毎日の記事が出て、ネットで少し話題になっていた。副題に「事務職の仕事、見つからない」とある。コロナ禍によって仕事が減り、失業者が増えている。首を切られるのは、雇用の調整弁になっている立場の弱い非正規労働者であり、そこに女性が多くいるので矛盾が押しつけられる結果となる。人手不足が言われているが、それは介護や建設工事の現場であり、女性が働く一般事務ではない。この関係のニュースはときどきテレビで見るが、趣旨がジェンダー平等の切り口で編集されていて、男女を機会均等・待遇平等に扱わない企業が悪いという一般論で纏めている場合が多い。日本は欧米に較べて遅れているというメッセージで総括している印象が強く、貧困問題・格差問題として正面から捉えられていない痛痒さを感じる。ネットの反応は、例によって5chの匿名のネオリベ右翼が、文句を言うな、建設工事の仕事をやれと罵倒する書き込みを連ねていた。生活保護のときも問題になったが、この種の問題に対する日本のネット空間の反応は、この右翼の罵倒が一つの標準パターンになっている。本来、犯罪として取り締まるべきなのだ。


選挙の陰で噴出するアンダークラスの絶望と悲鳴 - 浮上する失業と窮乏化の問題_c0315619_16460279.png同じ27日には、Twのトレンドで「手取り13万円」が話題になった。早速、自分はもっと低いが十分生活できているとか、工夫の余地はあるとか、贅沢言うなとかの反応が飛び交い、いつものTwのタイムラインの進行となった。非正規の話かと思ったら正社員の話らしい。この10年ほど、正規と非正規の同一労働同一賃金が言われる中、ネオリベ側が巧妙に、正規の待遇を非正規側に寄せて行く「同一労働同一賃金」の策動があり、本田由紀などがそれに巧く乗せられて嵌められて行く図を見て来た。ネオリベ側の口上は一貫していて、日本の正社員は恵まれすぎているという批判である。今も新手のネオリベ論者が出て来てテレビでこの説を唱え、正社員の首を切りやすくしろと要求、そうすれば日本の競争力が上がると言っている。10年ほど前、居酒屋チェーンや紳士服チェーンで「名ばかり店長」の問題が上がり、ブラック企業という呼称が生まれたが、今では、正社員の給料を堂々と14万円にしている中小企業が数多らしい。気が滅入る。そして、こういう告発的な意見がネットに上がると、すかさずネオリベ論者が出撃してきて、なぜ日本の中小企業は賃金が上がらないのかという「構造」の講釈をするのである。


選挙の陰で噴出するアンダークラスの絶望と悲鳴 - 浮上する失業と窮乏化の問題_c0315619_16474333.png手取り13万円の低賃金を合理化し、正当化し、仕方ないことだと理屈を刷り込み、ITの能力で労働生産性を上げないと賃金も上がらないのだと説教するのである。どうやら、今の雰囲気はリーマンショックがあった2008年に似ている。あのとき、製造業で派遣で働く非正規労働者が大量に解雇され、寮を追い出されて住む場所を失い、日比谷の年越し派遣村の炊き出しに長い行列を作った。日本経済はリーマンショックで大きな打撃を受け、雇用の安全弁だった非正規社員が失業して路頭に迷った。第二次就職氷河期を迎え、若年層の非正規の比率が一段と上がった。アベノミクスの間、インバウンド等サービス業の内需と雇用が一程度あり、リーマンショック直後のような厳しい環境は後退していたが、再び真冬の季節が到来した雰囲気が漂っている。12年前と違うのは、それをマスコミが可視化しないことだ。問題として大きく報道しないことだ。ワーキングプアの問題として定義せず、ジェンダー問題の視角で報道している点だ。マスコミに危機感がなく、逆に問題を過小評価している。巨大な貧困があり、窮乏化があり、過去にない人々の嘆きと痛みがあるのに、それをマスコミが正視しない。NHKスペシャルにして問題共有しようとしない。


選挙の結果がどうあれ、選挙後は、この貧困と失業の問題への対策が待ったなしの課題になるだろう。なお、日本の労働者の労働生産性の低さの問題については、Twでも若干指摘したが、ITの能力など要因として全く関係ないことを申し上げ、念を押しておく。そのような個別局所的な問題ではない。それはネオリベ論者の騙しの言説である。GDPが大きくなれば、経済指標の数字の一つでしかない労働生産性も自然と大きくなる。労働生産性=生産量÷労働量の割り算だからである。簡単なことだ。自虐に陥ってはいけない。騙されてはいけない。日本の中小企業がなぜ賃上げを実現できないか、賃上げをすると経営に響くかについては、実は重要な論点があり、左翼の経済学者が指摘していない、看過している陥穽がある。その点は、内部留保の研究の続編で論じたいと思う。


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by yoniumuhibi | 2021-10-28 23:30 | Comments(2)
Commented by 山椒魚 at 2021-10-29 14:06 x
国税庁の統計によると、2020年の非正規の年間給与は平均で168万円(除賞与8万円)で月13万円では非正規の平均より少し少ない金額です。これに対して、正規の給与所得者の平均給与は407万円(除賞与89万円)です。非正規と正規では倍以上の給与の差額になっています。ツイッターで、13万円の給与を叩いている人は、非正規の平均以下の人々でより貧しい人が、自分より少しだけ豊かな人にむかって罵詈雑言を浴びせかけるという構造になっているのですね。
Commented by 55年体制を、もう一度。 at 2021-10-30 09:01 x
岸田文雄さんには続投してもらいたいですが、
立れ共社にも3分の1以上を獲得して改憲ができないよう
にして欲しいです。

宏池会の創設者である池田勇人首相以来の政治や社会が、ある程度おちついていたのは、革新野党も3分の1以上を占めていて改憲を阻止できたからだと私は強く思います。

決選投票で安倍さんの票が欲しいから、改憲に意欲的な姿勢を岸田さんは見せていましたが、宏池会会長である以上、内心では現在の日本国憲法を保ち続けたいというのが本音でしょう。

自公で過半数取りつつも、「枝野よ、こっちは少し負けてやるからお前らで3分の1以上は取れよ」という感じがしないでもありませんでした。あくまでも願望の中でですが。

経済と改憲の両立ではなくて、経済に力を全力で注いでもらいたい。


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