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内部留保の研究 - 特別剰余価値グロスの把握の試みと会計制度のネオリベ的改変

内部留保の研究 - 特別剰余価値グロスの把握の試みと会計制度のネオリベ的改変_c0315619_15254306.png新総理に就任した岸田文雄によって分配の問題が提起され、総選挙に向けての重要な争点になりつつある。当然、議論の焦点として、分配の原資たる内部留保が浮かび上がることだろう。内部留保の存在と実態が解き明かされ、全体がレントゲンされて一望されなくてはいけない。どのような企業が、どれだけの規模のマネーを、どのような資産形態でストックしているのか、全容がインベントリー(棚卸し)されなくてはいけない。内部留保の本格的な研究を経済学者に訴えてきたが、日本の職業学者は全く動かず、左翼学者も見て見ぬフリをしているだけだ。日本の左翼学者は、現在、ジェンダーとマイノリティとLGBTの「多様性」論を喋々する社会学にしか興味関心がなく、格差問題は行政・NPOの絆創膏の手当に任せている。あるいは低所得母子世帯への行政からの支給充実等を言い、国民の税金でケアする方策を提言するだけだ。新宿の炊き出しに並ぶ労働者が産んだ富が、475兆円の内部留保に積み上がっている事実に着目しない。その本質的な矛盾を問題提起しない。新自由主義化されたシステムによって労働者が不当に搾取されている真実を言わない。



内部留保の研究 - 特別剰余価値グロスの把握の試みと会計制度のネオリベ的改変_c0315619_15391402.png2年前、『三位一体 - GDPの長期低迷、賃金の削減と抑制、内部留保の絶倫増殖』というブログ記事を書いた。その要点は、①内部留保と②配当金と③ケイマンマネーの三つを合計して、年間70兆円ほどのマネーがフローとして蓄積されているという推論と仮説である。9月27日に藻谷浩介が出演した報道1930があり、その機会に読み直し、自説の中身に修正と補足を加える必要を感じたのでご報告したい。まだ明確に整理できてないが、再考を要するかもしれないと思う疑問点は、①と②と③が確実に別々のマネーとして分離独立したものか、足し算してよい別個のものなのかという問題である。記事を書いた時点では、三者は会計上確かに別個の資金であり、別々に帳簿に管理され、混同したり混入することはないという認識で自信があった。今、その点に不安を覚え始めた理由は、内部留保という概念に関わっていて、財務省発表の法人企業統計の書式と内容が大きく変動し、そこでの内部留保の定義が変わったからである。言い訳めいて恐縮だが、順番に説明したいので、まず2002年の政府資料のPDFをご覧いただきたい。


内部留保の研究 - 特別剰余価値グロスの把握の試みと会計制度のネオリベ的改変_c0315619_15255922.pngこの報告書の5ページに「内部留保」が登場する。97年から01年まで5年間の内部留保のフローが記載されている。ここでの(d)内部留保とは、(a)当期純利益から(b)役員賞与と(c)配当金を引き算したものだ。(d)=(a) - (b) - (c)。分かりやすいスタンダードな会計の区分整理であり、私はずっと内部留保をこの概念と定式で捉えていた。定義が変更された現在では、過去の伝統的定義と呼ぶべきだろうか。全国の税務署が企業の決算報告書を集計し、数字を本省に集め、年に1回「法人企業統計調査」としてサマリーを発表している。日本経済の重要な基本的データであり、マクロ経済を議論したり政策を立案検討する上での基礎がここに公式に書かれている。02年の統計の表式記述からは、配当金と内部留保は別物であることが理解できる。内部留保は、企業会計の中で最後の最後に残った余剰資金であり、まさしくどこにも使われる途がなく、滞留して繰越計上されるマネーだった。この法人企業統計の表に毎年計上される内部留保の金額が、年々積算されて「企業の内部留保の総額」としてマスコミ報道されているはずだった。財務省がその数字をマスコミに撒き、各社にグラフを描かせて、9月初に季節の風物詩的な記事にさせていたと、私はそう想定していた。


内部留保の研究 - 特別剰余価値グロスの把握の試みと会計制度のネオリベ的改変_c0315619_15392836.pngところが、いつからか財務省の表式の仕様が変わり、企業の純利益を総括する会計方式が変わり、内部留保の定義が変わっている。昨年20年に発表した報告資料を見て欲しい。PDFの7ページである。以前は「利益処分の推移」と題して記載されていた表が、ここでは「剰余金の配当の推移」と改めて再構成されている。だけでなく、嘗てはそこに入っていた(b)役員賞与と(d)内部留保の項目と数字がない。消されてなくなった。(a)当期純利益と(c)配当金だけを配置したシンプルな表になっている。この表内に位置づけられていた内部留保が消えた。で、奇妙だなと思いつつPDFをめくっていくと、13ページの「資金調達の構成」の表内に「内部留保」の所在があり、何やら数字が並べられている。嘗ての内部留保とは全く別物だ。狐につままれたような気分だが、表の下に注記が付され、「内部留保は利益留保、引当金、特別法上の準備金、その他の負債(未払金等)の調査対象年度中の増減額」と複雑に説明している。何のこっちゃと当惑させられるのを否めない。要するに、財務省が定義を変えたのだ。国民経済計算の中の重要項目である企業資金について、考え方を変え、総括方式を変えている。


内部留保の研究 - 特別剰余価値グロスの把握の試みと会計制度のネオリベ的改変_c0315619_16212990.pngおそらく、企業会計の制度が変わり、法律を変えたからだろう。どこかで法制度が変わったから、国の経済の根幹である法人企業統計の仕様も表現も変わったのだ。重大な出来事が起きている。国の政策実務のエコノミクスが転換した。だが、それをわれわれに教示し注意を促した経済学者はいなかった。20年のPDFの8ページには「利益剰余金の推移」と題した表がある。02年の古いPDFには記載がない。新しいタームとコンセプトだ。次々と変化に直面し、還暦を過ぎた大脳皮質が狼狽する。はて、これはなんじゃろなと老いた脳味噌が呻吟していると、あらふしぎ、内部留保の推移を報道する最近のマスコミ記事のグラフに、「内部留保(利益剰余金)」という但書付きの表題があった。以前は、”内部留保(利益剰余金)”という注釈や説明はなかった。ここ数年の出来事である。ネットで検索すると、内部留保とは、正しくは利益剰余金のことであると会計士が念を押す情報が散らばっている。貸借対照表の純資産の一部であるという規定になっている。これが、現在の「内部留保」の正式な定義として与えられて世間知として通念されている事情が分かる。20年の時間軸の中で定義が変わった。浦島太郎である。


内部留保の研究 - 特別剰余価値グロスの把握の試みと会計制度のネオリベ的改変_c0315619_15452307.png無論、それが何のことだか意味は簡単に察せられる。新自由主義によるシステムの改造とはこのことだ。企業会計の制度を変え、国家(財務省)のマクロ統計の概念と方式を変え、新自由主義の経済システムにリフォームしたのである。国民経済のモデルをチェンジし、(マルクス的に昔風に言えば)再生産構造を編成替えしたのだ。嘗ての、制度改変前に財務省が示していた「内部留保」は、いかにも余って滞留した利益であり、何やら居心地の悪い、企業が世間に向かって言い訳に苦しむサープラスなマネーだった。現在は、そこに「利益留保」だの「引当金」だのの名目が付けられ、堂々と胸を張って存在意義を強調する資本の勘定項目になっている。しかも、概念定義をアレンジする工作が処され、「利益剰余金」などという会計上の市民権が与えられた存在に化けている。労働者から掠め取って資本家が蓄積した薄暗いマネーでございと、嘗ては、その素性の怪しさを自覚して、大蔵省の統計資料の中でひっそり日陰者として潜んでいた「内部留保」が、オレには正当な会計上の使命と地位があるのだ、世の中変わったのだと、お天道様の下に出て威張って自己主張している。この会計上の法制度の変更を主導したのは竹中平蔵の一派だろう。


内部留保の研究 - 特別剰余価値グロスの把握の試みと会計制度のネオリベ的改変_c0315619_15495946.png以上、ここまで、2002年と2020年の法人企業統計を精査し、内部留保の定義が変わり、統計方式が変わり、(d)内部留保と(c)配当金が一表中に別々にカウントされていた正規のマクロ統計が変わった事実を発見した。利益剰余金と配当金とは会計上別勘定の範疇と考えてよいと思うが、まだそのことを証明するところまで知識の探求が及んでいない。証拠となる情報に出会っていない。さて、2年前に特別剰余価値の年フロー70兆円と見積もった三つ目の柱である、③ケイマンマネー(租税回避資本)についても、①内部留保②配当金と会計上の重複がないか、別勘定として計算してよいか、この点も確認して論証しなくてはいけないけれど、稿が長くなるので次回の宿題とさせていただきたい。先に所見を言えば、①②との重複はなく、別会計であり別金庫であると確信している。内部留保の語義が変わったこと、その裏で企業会計法制が変わり、マクロ統計の算式が変わったこと、そのことによって、特別剰余価値グロスの捕捉と把握が不透明になった。視界不良になった点を認めざるを得ない。また、ここ数年はアベノミクスの成長活力が減衰したのか、内部留保の増殖も嘗ての勢いがなくなり伸びが鈍化している。


2年前に記事を書いたときの計算は、①40兆円+②20兆円+③8兆円だった。現在は①が10兆円ほどに激減しているため、正直、年70兆円のフローの推定は大風呂敷すぎる感を否めない。次回に続く。


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by yoniumuhibi | 2021-10-07 23:30 | Comments(0)


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