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違和感を覚える代表選手の発言 - 次は東京五輪の評価と総括をめぐる議論へ

違和感を覚える代表選手の発言 - 次は東京五輪の評価と総括をめぐる議論へ_c0315619_14495129.png日程が半分終わった東京五輪。始まる前、東京五輪は開催賛成派と開催反対派に大きく割れていて、反対派の方が多数だった。反対派は世論調査では中止延期を求める声として整理されていた。現実に開催が強行され、プログラムが半分消化された現在では、中止延期の要求はリアルな主張ではなくなっている。その代わり、次の次元でどうなるかというと、五輪を開催して良かったか悪かったか、東京五輪は成功だったか失敗だったかという意義と総括をめぐる闘争に移るだろう。今度は成功派と失敗派に分かれる。東京五輪の評価をめぐって世論が二分され、再び熱い論争が始まるはずだ。無論、そのとき、東京五輪の意味づけをめぐる議論は、菅自公政権を支持するかどうかという政治問題とそのまま直結する。おそらく、東京五輪が始まる前に中止延期を求めていた多数派は、終わった後も否定的な意識に傾き、感染爆発の中で強行した東京五輪は失敗だったという見方に与するはずで、IOCや政府が導いているような礼賛や是認の方向には向かわないだろう。



違和感を覚える代表選手の発言 - 次は東京五輪の評価と総括をめぐる議論へ_c0315619_14500470.png今、政府寄りのマスコミは、メダルラッシュで空気が変わり、五輪反対派だった者たちの意見が変化したと言っている。東京五輪に肯定的になったと決めつけて世論工作している。果たして本当にそうだろうか。気になるのは、競技を終えてインタビューに登場する日本代表選手の幾人かが、五輪を開催できて本当によかったとか、開催してもらえてよかったとかのコメントを強調している点である。昨日(8月1日)の伊藤美誠がそうだった。この感想は、どうやら本人の政治的立場から出来しているものだと推測され、なるほどそうかと了解される。五輪序盤、柔道でメダルを取った選手の中にも、何人か同じ意見を言った者がいた。JOC会長の山下泰裕が、森喜朗から指示を受けて、各選手に対して、メダル獲得後のインタビューでは必ずこの旨を付加挿入せよと差配したのかもしれない。その発言は、本人の率直な感情の吐露かもしれないが、しかし、それをテレビで見ているのは、コロナのために運動会が中止になったり、部活停止を余儀なくされたり、一生に一度の修学旅行を潰された子どもたちだ。


違和感を覚える代表選手の発言 - 次は東京五輪の評価と総括をめぐる議論へ_c0315619_15010137.pngそして、その子どもたちの横にいる親たちだ。自分たちは自粛を強制され、最低限の行事や旅行や会合や娯楽もできないのに、なぜ五輪の選手たちだけが特別扱いされ、コロナ禍の中でも自分の夢を自由に追いかけられるのだろうと、そう恨めしく思って見ているはずだ。自分たちは、なぜ彼らを応援することだけ要請され、税金を払わされているのだろう、不公平ではないかと、そう素朴に感じている部分が少なからずいる。そうした家族が多いからこそ、マスコミの世論調査で、あれほど東京五輪に対する反対論(中止延期要求)が多く上がったのだろう。自分たちは自粛し、飲食のお店は死活問題に直面し、延々と苦境が続いているのに、感染は一向に収まらず、感染禍の向こうで東京五輪が開かれている。日本選手の競技での活躍がどれほど素晴らしく、華々しく感動的であっても、それと対極の不遇に押し込められた国民の不満感と疎外感が消えることはなく、五輪全体に熱狂して陶酔することはあるまい。偶然なのか、必然なのか、東京五輪のタイミングに合わせて過去最大の感染の波が襲来し、最悪の感染爆発となった。


違和感を覚える代表選手の発言 - 次は東京五輪の評価と総括をめぐる議論へ_c0315619_14502981.pngあのとき五輪を中止していれば、中断していればという声は必ず出るし、説得力を持って世論環境に響くに違いない。巨大なお祭りイベントである五輪が催行され、マスコミが盛り上がりを刺激すると、大衆の気分行動に躁の影響を与え、コロナウィルスの繁殖の促進要因になること、したがって、感染抑制の医学的立場からは五輪は回避すべきだったことは、館田一博や脇田隆字の発言から明らかだ。政府分科会の専門家は、一致して緊急事態宣言下の五輪開催に反対だった。このまま西浦博の予測と警告どおりに第5波が推移し、感染爆発と医療崩壊が進行すれば、東京首都圏だけでなく全国で死屍累々の事態となるだろう。日本中の都市で旭川と大阪の阿鼻叫喚の地獄が再現されてしまう。東京五輪の結果を総括する議論は、8月中旬以降、その惨劇下の言論空間で行われることになる。東京五輪は、感染爆発と医療崩壊の犯人として槍玉に上げられるはずで、中止しとけばよかったという後悔と反省の声が多数派となり、責任追及の議論になるだろう。今は日本人選手のメダルラッシュを歓喜して絶叫報道しているキャスターも、2週間後にはコロッと態度を変えているに違いない。


違和感を覚える代表選手の発言 - 次は東京五輪の評価と総括をめぐる議論へ_c0315619_14561284.png神妙な顔をして、なぜ中止できなかったのかとか言い出し、お得意の「無責任の体系」の一般論でゴマカす説明回路に収斂させて行くだろう。自分たち自身が五輪暴走の実行犯であるのに、素知らぬ顔で犯人捜しのフリをし、「誰も止められなかった」とふざけた口上を垂れるだろう。われわれが覚えておくべきは、インタビューで「東京五輪を開催してよかった」と発言した代表選手の顔ぶれである。天皇も懊悩した国論二分の深刻な状況を知りながら、敢えてそう言ったのは、上からの指示でなければ本人の政治思想の為せる業であり、さらに直截に言えば支持政党の動機だろう。本来、五輪の代表選手であれば、マスコミに出る公的な場では思想信条の中立を心がけるべきで、余程のことがないかぎり、国民の多数派を敵に回す挙動は慎むのが当然と考えられる。まして有力種目の代表選手となれば、国民の税金で海外遠征や特別な強化練習の機会を得ている身である。国民に支えられて選手活動と競技人生がある前提を忘れるべきではない。その選手たちが、まるで菅義偉やバッハを代弁するように、「東京五輪が中止にならずに開催されてよかった」と熱弁するのには抵抗を覚える。意図的に世論工作の役を買っているとしか思えない。


違和感を覚える代表選手の発言 - 次は東京五輪の評価と総括をめぐる議論へ_c0315619_14583687.png本当は逆で、有力選手たちこそが山口香に続いて声を上げ、東京五輪の延期(秋開催)に道を繋げるべきだっただろう。良識のある羽生結弦などは、その立場と心情に近かった感があった。だからこそ、バッハと菅義偉に睨まれ、疎まれ、五輪開会式典から排除されたのだと考えられる。その昔、労組であるプロ野球選手会が1リーグ制強行に反旗を揚げ、国民世論の圧倒的な支持を背景に、渡辺恒雄の強権暴走を阻止した一幕があった。その快挙と範例を倣ってもらいたかった。国内世論的には7割対3割で反対論が多かったのであり、NYタイムズもワシントンポストも、BBCもガーディアンも、フィガロも、ほぼ全ての海外マスコミが中止提言の論陣を張ってIOCを厳しく批判していた。10月に時期を移せば、ワクチン接種も進んで感染は収まっていただろうし、有観客で興行できただろう。無理で歪な開催強行にはならなかっただろう。勇気を出してその動きを牽引する選手やOBがおらず、それを誘導するマスコミやアカデミーがなかった。その現実に、日本の劣化を痛感させられる。国民に支えられてこその代表選手であるという自覚がない。自分たちのオーナーは菅義偉とバッハだと思っていて、橋本聖子と山下泰裕の言うことを聞いていればいいと思っている。


残念なことだ。トミー・スミスとジョン・カーロスのような勇者が現れ、永久に讃えられる歴史を作って欲しかった。健全な身体が宿す健全な精神を見せて欲しかった。


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by yoniumuhibi | 2021-08-02 23:30 | Comments(5)
Commented by ばかばかしい at 2021-08-02 22:43
安倍晋三の福島原発事故の放射能が「アンダーコントロール」だという噓によって誘致されたオリンピックは、シンボルマークの盗作疑惑から、国立競技場デザインの変更、マラソン開催地の移転、海の水質問題、そしてコロナウィルスによる延期を経て、
組織委員会の森喜朗は辞任し、開会式の演出チームは総入れ替え、とうとう、開催中に緊急事態宣言という恥さらしを演じた。
TOKYO2020は、復興五輪でもなければ、エコロジー五輪でもなく、コロナ撲滅を象徴する五輪でもない。

さらに、オリンピック開会式というメインカルチャーそのものともいうべきイベントの担当者が、ほぼサブカルチャー界隈の人々という実に皮肉なことになった。
おそらくまともな表現者、文化人は誰もオファーを受けなかったのだろう。
コロナで緊急事態宣言が出ていた東京で、福島原発の汚染水を海洋放出するという話題まで出ている今の日本で、そもそも夏の気温が35度を越え激しい運動を控えるべき東京で行われるオリンピックになど、知性がある人間ならば、誰も関わりたくない。

世界を疫病が覆っている今、日本代表選手がメダルをいくら取ったって、喜べるはずがない。仕事を失って生活に困っている人がたくさんいるのだ。メダルを取って喜ぶ選手の、その能天気な姿に、逆にイラッとする。
「嬉しいけれど、たくさんの人たちがコロナで大変なときに、自分たちがこんなことをしていていいのかと複雑な気持だ」とコメントした選手はいましたか?
Commented by アン at 2021-08-04 13:31
総裁選で自助を掲げる政治家なんて菅だけと、ブログ主さんが言っておられた。酒販売の店の取り締まりの西村に言わせた一件に続き、カクテル療法、自宅療養、本人の中では仕事する俺様はすごいという感覚なんだろうけれども、話にならない。倉持先生が言っておられるように、菅はけつまくって逃げてるだけ。

それと、小池を選んだ都民も、反省しなきゃいけません。小池は何もしていない。

島根の丸山知事は、首都圏は実質医療崩壊だとして、島根県民の近親者を島根で受け入れる、島根に帰ってきた際の隔離期間のホテル代も半額補助すると発表しました。丸山知事は五輪開催に反対し、竹下に「てめー、ふざけんなよ」と言われても、愚直に持論を曲げず、いよいよ五輪の最中に東京が医療崩壊したら島根でできる救済策を提示した。

全国知事会がロックダウンの法制化の研究をと提言したが、これもブログ主さんのsNSで触れられていたが、納得できない。前回の特措法罰則化の際に、明石市長が猛反対しておられた。

島根県知事、明石市長の感覚はまともで理解できるのだが、菅のやってることはおかしすぎて、付き合っていたらこっちまで頭がおかしくなりそうである。

そして横浜市長選。これは候補者の中に、ちょっと…という人がいますね。この人は当選はしないと思うけれども。身体検査したんだろうかと思う。
Commented by サン at 2021-08-04 16:36
もう人治国家になっていますよ。黒い雨訴訟もプロセスを考えると喜べない。

菅はワクチン接種が40%を超えるとコロナは収まると聞いていたのに、なんで収まらないんだとこぼしているようだ。
Commented by アン at 2021-08-05 10:20
倉持先生、昨日宮根の番組に出るべく準備されていたのに、スケボーで金メダルが出たからと出演がカットされたそうです。
倉持先生のお時間はいま貴重です。それなのに、安易に出演依頼し、安易にドタキャン。倉持先生がほかの局の生放送で菅に対して辛辣な発言をされたばかりので、そのことが影響しているのかなどと邪推します。
外に出れば感染の危険アリ、医療崩壊、こんな状況で、金メダルを優先する。日本の放送局はこんなものですね。
公明党と菅の医療崩壊をめぐる駆け引きは今日も続くと思います。山口那津男は引き下がらないでしょう。ミャンマー国軍がやったコロナ対策は火葬場を増設しただけだそうですが、菅のコロナ対策はミャンマー国軍と同じレベルですよ。経済が大事だという名目で緊急事態宣言を出し渋ったり、goto、五輪で感染を蔓延させるとか、ミャンマー国軍よりひどいかもしれない。
五輪のスポーツによる目くらましを狙うのは、ベラルーシと同じレベルか?
Commented by at 2021-08-05 15:11
デジタル庁トップの人事案に絶句。

ワタミが選挙に出た時も菅が主導したと聞いたし、菅がトップで居続ける限り、ろくでもないのばかり登用されるだろう。菅が登用するのはこれだめだろ、というような後ろ暗い奴。もしくは、暗い顔した不細工な能無し。和泉とか。

野党も人のことを言っている場合ではない。横浜市長選。郷原先生が、ひとつひとつ問題点を指摘されているでしょう。横浜市立大も、大学としてずいぶんなものだなと思う。


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