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全国で医療崩壊が同時多発する - 地方県の大阪化、第4波の規模への想像力を

全国で医療崩壊が同時多発する - 地方県の大阪化、第4波の規模への想像力を_c0315619_16002435.png8日、新型コロナウィルスの感染者数が15道県で過去最多を更新した。この事実に衝撃と恐怖を覚える。感染力の強い変異種(N501Y)が地方に伝播して感染の主因になり、第4波が全国的に立ち上がったことを意味する。これから地方県が過去最多を記録して、赤く塗られた日本地図が注目される日々が続くだろう。感染波の状況を山登りで喩えれば、今は5合目の段階だと考えられ、これからグラフの傾斜が急角度で上がって行く。8日の全国の感染者数は7245人。おさらいして確認すると、第3波のピークは7957人(1/8)、第2波のピークは1605人(8/7)、第1波のピークは720人(4/11)である。第2波は第1波の2倍の波の高さになり、第3波は第2波の5倍の高さになっている。もし仮に、第4波のピークが第3波の2倍の高さになると、全国の1日の感染者数は1万6000人になる。3倍の高さになると2万4000人で、英仏独の昨年末のロックダウン時と同じ規模だ。第4波の感染規模をパイロットケースで示しているのが大阪府で、5月1日に感染者数1260人を記録した。この数は第3波のピーク654人(1/8)の約2倍である。



全国で医療崩壊が同時多発する - 地方県の大阪化、第4波の規模への想像力を_c0315619_16003713.png大阪では深刻な医療崩壊が起きている。大阪の医療崩壊についてマスコミも当局も正確な内実を報告報道しないが、「自宅療養」と「調整中」を合算した数、すなわち病院にもホテルにも入れず自宅待機させられている者が1万8000人もいて、その中から容態が急変する者が続出している。自宅待機の中に重症者が相当数いて、中等症者は無数にいる。明らかに、保健所窓口と救急医療の現場で刻々粛々と「命の選別」が行われ、トリアージによって高齢者に対して「治療断念」が処置されている。そうすることで重症病床の空きを作り出し、救命の可能性が高い若い重症者に呼吸器と看護師があてがわれている。その真相は、入院調整を行う府の医療系技術職トップが、「高齢者は入院の優先順位を下げざるを得ない」と明記したメールを保健所に送付していた事実が発覚して明らかになった。おそらく現在も続いているだろうし、大阪と兵庫ではまだしばらく「命の選別」の期間が続くだろう。クラスターが発生した高齢者施設も同じで、そこは医療の対象にならず、救命の優先順位から切り捨てられる。昨年も東京や千葉で同じ残酷な事件があった。


全国で医療崩壊が同時多発する - 地方県の大阪化、第4波の規模への想像力を_c0315619_16005594.png要するに、何が言いたいかというと、これから全国の地方県で大阪と同じ苛烈な医療崩壊が起き、「命の選別」現象が大量に同時多発で発生するという地獄図である。その厳しい予測をマスコミは言わない。大阪府で1日50人も死ぬということは大変なことだ。人口当たりのコロナ死者数でインドを超える驚愕の数字である。だが、医療体制が脆弱で高齢者が多い地方県は、第4波が進めば大阪よりももっと過酷な惨状になる。例えば、四国は高度医療を大阪に依存している程度が強い。長らく、各県に医学部が新設され機能するまで、四国の医療者の養成は徳島大学医学部が担っていた。徳島大学医学部は、『白い巨塔』のドラマに出たように大阪大学医学部の支店であり、その人脈と系統と資産と構造が現在まで生きている。四国の医療体制が脆弱なのは言うまでもないが、今、その大阪の医療機関に四国は頼ることができない。コロナ患者だけでなく、癌などの他の病気の治療で頼ることができない。このことは重大な問題だろう。第4波は大阪をパイロットにして立ち上がり、西日本全域に先に感染を伝播させ、西日本各県を医療崩壊の危機に陥らせる進行になっている。


全国で医療崩壊が同時多発する - 地方県の大阪化、第4波の規模への想像力を_c0315619_16010513.png福岡県の9日の感染者数は529人で過去最多となった。大きな歓楽街を抱える福岡県や北海道はすぐに感染者数がハネ上がる。去年から何度も同じことが続く。福岡県の第3波のピークは411人(1/16)。第3波が始まってから2か月でこのピークに達した。福岡県の第4波の起点は4月中旬だから、2か月後がピークとすると6月中旬が第4波の頂点になると想定される。そのときの感染者数は、大阪の状況から考えると2倍の800人、3倍になると1200人という数になる。しかも、その波の高さが1週間以上続く高原状になる。果たして、1日1000人を超える新規感染者が1週間以上発生し続けたとき、福岡県の医療体制は維持できるだろうか。おそらく大阪と同様に、患者を病院に収容できず、自宅療養者を膨らませ、自宅待機中の死亡者を続出させるに違いない。脳卒中への救急医療が不全になり、癌の手術が後回しされるだろう。日本の医療のキャパは、第4波の感染ボリュームをとても抑えられないはずだ。大阪のこの1か月はまさに先行例であり、日本全国の今後1か月を先取りしている。


全国で医療崩壊が同時多発する - 地方県の大阪化、第4波の規模への想像力を_c0315619_16011806.png以上のような予測をテレビ報道は強調して言うべきで、過去の感染波から類推できる第4波の規模とその影響を語るべきだが、マスコミは全くそこに関心の焦点を当てない。感染症の専門家なる人間も、第4波の規模の見通しに言及しない。同じことを何度も繰り返しているのだから、過去の経験から現象の法則性を探り出し、第4波の科学的な予測を立てて試論することは可能なはずなのに、それを行おうとせず、まるでタレント芸人のように番組側の台本と進行に合わせ、中身のない雑談を撒き散らして出番を埋めている。第4波の規模の予測を専門家が言えば、それ自体が注目される警告メッセージの発信になり、視聴者の行動変容を促す刺激材料になるだろう。第1波のときの西浦博のような効果抜群の禁足オリエンテーションとなるのは間違いない。だが、そういう科学的感性を失ったのか、政府・官邸に忖度しているのか、過去の感染波から第4波のスケールとボリュームを分析しようとする人間がいない。本当なら、大阪の1か月の経験をデータ入力してスパコンで解析すれば、各県の医療キャパと照応させて、各県でどれほどの新規感染者数が何日間出れば医療崩壊が起きるのか推計されるはずだ。


全国で医療崩壊が同時多発する - 地方県の大阪化、第4波の規模への想像力を_c0315619_16013379.png変異種の感染力と相関させ、各県でどれほど自宅待機者と重症者の数が膨らみ、高齢者施設でのクラスター事故が発生し、何人が「命の選別」を受けることになるか、冷酷なシミュレーションが可能なはずだ。厚労省は内密でやっているのかもしれない。が、なぜ、それができるはずだという声が、児玉龍彦あたりから説得的に上がらないのだろう。この感染症対策にスパコンを使って立ち向かうことを日本はやっていない。情報処理システムが活用されない。PCR解析にもゲノム解析にもコンピュータが使われない。接触追跡アプリのCOCOAはあのとおりの冗談のお芝居だった。中国人と韓国人に嘲笑されて呆れられ、日本人の現在の知的水準の真実を世界に晒した。しかも、そうした科学的分析は、第1波のときは今よりまだ真面目にやっていて、感染経路の比率だとか年齢別の致死率だとかをテレビで報じていた。菅義偉が首相になって以降、マスコミへのグリップが北朝鮮的に強化されたためか、客観的で科学的な数値分析が絡んだ話はどんどん減り、空疎な漫談ネタのルーティントーク(=松本哲哉の「解説」)が流れて終わりになった感がある。そうして、われわれはまともな危機感すら覚えることがなくなった。


想像力が失われ、感染症に立ち向かう社会的な精神力(理性と知性)が消えた。若者はへっちゃらで繁華街に出て遊び歩いている。なぜこんなことになるのだろう。不思議でしかたがない。


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by yoniumuhibi | 2021-05-10 23:30 | Comments(3)
Commented by アン at 2021-05-11 09:31 x
大阪で、自宅などで死亡したが死因がすぐに特定できないご遺体を府の監察医が調べたら、先月だけでコロナ死が20人見つかったとのこと。貴ブログを昨年春から読んでいますと、今の大阪の状況でこういうことが起きるのは容易に予想できます。

そして愛知県西尾市で、薬局会長夫妻にコロナワクチンの便宜を図った。やっぱりね、としか思えません。

昨日のオンライン全国知事会会議でも、茨城県知事がまんえん防止を指定してと言っても指定してくれない、はやめに対策を取りたいのに取れないと言っておられた。
被害を少なく見せることに躍起になり、必要な金を出し渋り、有効な手を打たない。大阪や神戸のことに無関心で、仲間内ではさざ波と笑っている。五輪開催することが政権浮揚に必要という根拠のない間違った戦略に固執し、妙な人間どもを内閣官房参与にする。死に体になるのも当然です。
政権浮揚に一番必要なのは、コロナを抑えることですよね。まだ前政権の時ですが、昨年夏に菅は嫌いな小池百合子の東京だけを除外してgotoを見切り発車するなど、このコロナ禍に全く不向きの人間をリーダーにしてしまった。
コロナを抑えていれば助かった命。亡くならなくてもよかった人たちが、亡くなってしまった。
Commented by コスモス at 2021-05-12 06:50 x
菅は来月シンガポールで開かれる安全保障の会議に出席すると言っているようですが、シンガポールは日本人の入国を停止しています。シンガポールは日本を、コロナ危険国とみなしているからです。そこへ訪問というのは、物議をかもすのではないでしょうか。

スギ薬局とやらの会長夫婦の話を聞いて、菅もスギ夫妻もそうですが、自己評価は高いんでしょうが、周囲からは全く評価されていない人間が、今の世の中では威張り腐っているんだなと思いました。スギ夫妻は接種会場へ向かっている時に、ゴリ押しがリークされて夫妻の予約が取り消しになったって、嫌われているんだなと笑えます。

ブログ主さんは再三大阪の惨状やこれが全国化することの危惧を書かれていますが、冷酷な菅には大阪のことなど知ったことじゃないし、頭が悪いので全国化するという認識もないでしょう。

ブラジルは中国ワクチンの接種が進み、事態が改善されつつあるとのことです。
和歌山県は大阪の隣にあってなんとか抑え込もうとしています、野尻技監は、コロナを抑えるまでは技監をやめないと言っておられるそうで、敬意を表します。はやく菅を変えてほしい、人の命が掛っていますから。

Commented by 成田 at 2021-05-13 02:23 x
大阪は新規はピークアウト気味に見えますが、陽性率が高いのが気になりますね。3波までが何とかなったので市民に油断が出てしまい、本当の脅威である変異株の4波を抑えきれていないです。この国の民族性なのですが、初戦は幸運や努力でうまくいくことが多いのですが、油断から逆転されます。
ここは全ての力を使って一気に全国的な強力なロックダウンをして押さえ込まないと本当にインドになってしまうと思います。


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