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反省なき後任人事の専断と暴走 - 組織委は森喜朗の私物なのか

反省なき後任人事の専断と暴走 - 組織委は森喜朗の私物なのか_c0315619_14311064.png女性差別発言が問題になって一週間、森喜朗を辞任に追い込めたことはよかった。だが、84歳の川淵三郎が後任に指名され、森喜朗が相談役に座り、二人三脚で今後の組織委を回して行く体制になれば、森喜朗の辞任は形だけのもので、何も責任を取ったことにはならない。日本の企業で屡々見られるように、老害のトップが代表権を持ったまま取締役相談役にスライド就任したのと同じで、組織の実権を依然として握ったまま院政を敷く構図になる。セクハラで更迭される部長が後継の部長を指名するのと同じで、本来、そのような交代はあり得ないものだ。引責辞任にならず、開き直りでしかない。見苦しく噴飯な事態になった。おそらく、ここからまた問題が尾を引いて混乱が続くだろうが、現時点で確定しなくてはいけない事実は、当該発言について森喜朗が全く反省しておらず、倫理的過失の自覚がなく、引責して謹慎する意思がないことである。日本スポーツ界を牛耳る現在の権力者の地位と立場から離れる姿勢がなく、そのまま居直ろうとしていることだ。形式だけの「辞任」と川淵後継指名はそのための策だ。



反省なき後任人事の専断と暴走 - 組織委は森喜朗の私物なのか_c0315619_14114085.png先週の「謝罪」も中身はウソだったが、今回の「辞任」もウソの偽装だということだ。「謝罪」会見の後、武藤敏郎ら子分が「会長、辞めないで下さい」と慰留したという作り話が流されたが、今回の川淵三郎後任の動きこそ、まさに「慰留」をする側の論理が剥き出しになった身勝手な組織防衛の工作であり、子分どもが総動員で動いての森喜朗擁護と地位保全・体制維持の政治である。論外としか言いようがない。引責辞任する者が後任者を指名できるのか、後任要請する権利と資格があるのか、そこまで組織委は森喜朗の私物なのか。この点は、11日の報ステで森川夕貴が疑問を呈していたが、12日のモーニングショーでも田崎史郎が留意を示す口ぶりを見せていて、そこを起点に再び世論の批判が沸き起こる可能性がある。11日の千葉の自宅前のインタビューを聞くかぎり、川淵三郎は森喜朗と一心同体で、森喜朗の筆頭の陣笠子分であり、森喜朗との密着関係でここまでの人生を築いた男である。ぶら下がりでの上気した口調からは、森喜朗の女性差別発言への批判的な視線はなく、逆にそれを「気の毒な事故」のように捉えて同情する態度を隠さなかった。


反省なき後任人事の専断と暴走 - 組織委は森喜朗の私物なのか_c0315619_14120390.png明らかに、世間が組織委に期待する方向性とは乖離した反応の様子を見せた。どうやら、評議員会議長でもある川淵三郎は、今回の事件について、それを自分の問題として、組織委の問題として、深刻に受け止めようという良心的な感覚がない。ジェンダーの観点から森喜朗を諫める見解がなく、弁護したい衝動ばかり強く、事件について、些細な舌禍なのに追及が厳しすぎるじゃないかと世間に不満を抱いている。こうした川淵三郎の態度は、今後、必ずガバナンスの不全として露呈するだろう。会見の席で言葉になって表出するだろうし、84歳の高齢でもあり、いわば精神の失禁の形で漏れ出るだろう。9月までの短期の務めであり、緊張感も緩いだろうから、失言に火がつく局面があるだろう。後任引き受けは貧乏くじであり、東京五輪そのものが先行き不透明で、本当に心から開催させて成功させたいと思っている者がいない。IOCは金目しか関心がなく、永田町は政治利用しか考えてない。国民は8割がコロナ禍での開催強行に反対している。そうした状況で、川淵三郎は森喜朗のアンシャンレジームを守ろうという動機しかない。それは世間と対立するベクトルだ。反動であり、必然的に破綻する。


反省なき後任人事の専断と暴走 - 組織委は森喜朗の私物なのか_c0315619_14110581.png辞任までの経過について。11日朝に森喜朗が決断したのどうのと、後付けの作り話が様々に流されているが、森喜朗が判断して収拾策に出たのは8日である。12日のモーニングショーで内幕が披露されていたが、8日にコーツとの電話会談があり、最上級スポンサーのクレームに抗しきれなくなったIOCの立場が直に伝えられ、引導を渡された格好になった。IOCと森喜朗との関係はコーツが肝であり、コーツから切られたら終わりだ。8日深夜、組織委が12日に臨時会合を開くという報道が出て、それを見た私は、12日の会議が辞任の正式発表の場として設定されたことを確信し、そこへ至るまでの数日間に辞任と後任のリークがあるだろうと検討をつけた。その後なかなかリークが出ず、前日の11日まで沈黙が続いたのは、人選で官邸等と揉め、組織の内部固め(院政体制の万全)に時間がかかっているからだろうと推測していた。川淵三郎が喋っていたように、菅義偉は、もっと若い人物とか女性がいいと言ったらしいが、具体的な提案がなく、安倍晋三と麻生太郎が川淵三郎の推挙に同意し、小池百合子も異論を挟まず、それで決まりとなった。そういう説明がされている。


反省なき後任人事の専断と暴走 - 組織委は森喜朗の私物なのか_c0315619_14202058.pngこの情報は輪郭として正しいだろう。やはり、人事権は森喜朗と安倍晋三が握っていて、そのことが証明された。この国の政治の最高実力者がこの2人だという真実を物語っている。私の推測は、時間がかかったのは、森喜朗が安倍晋三を口説いていたからで、安倍晋三が固持したため、次善の策である川淵三郎に落ち着いたという図だ。おそらく、バッハとコーツも安倍晋三の出馬を懇請していただろう。その絵が、現状不安定にフロートする東京五輪のモメンタムを高める上で最も好都合だし、コロナ禍第4波だろうが、無観客だろうが、五輪開催を無理やり強行する上で障害が最小となる政治環境を作れるからだ。さらには、東京五輪が中止になったディザスタープランでも、日本からカネをふんだくる上で、軽薄な安倍晋三が組織の責任者であれば安心となる。という舞台裏があり、森喜朗の辞任は8日には決まり、3日間かけて態勢固めして、11日にリークと同時に川淵三郎がテレビ撮影の幕を作った。既成事実を固める展開となった。森喜朗の権力続行(院政)を宣言した。森喜朗らしい老獪で豪胆な手法だ。政治とは既成事実の作り合いであり、既成事実の奪い合いである。


反省なき後任人事の専断と暴走 - 組織委は森喜朗の私物なのか_c0315619_14272660.pngほとんどのマスコミは、川淵三郎を後任会長として認め、それを当然のことのように報じている。川淵三郎のマネジメントの能力と実績を称賛し、最良の適材であるかのように持ち上げている。森喜朗が後任人事を仕切った過程に疑義を入れ、この人事の正統性を問題視する者は少ない。だが、最初に述べたように、この人事を妥当と認めることは、森喜朗の権力維持(院政と傀儡)を認めることであり、事実上の続投を許容することに他ならない。それは、森喜朗の女性差別発言を不問に付し、チャラにして水に流してやることを意味する。果たしてそれでよいのか。常識で考えて、要職にありながら女性差別の失態を惹き起こし、組織と事業を危機的事態に陥らせ、社会からペナルティを受けて退任する者が、相談役などというポストに居座ってよいわけがない。問われるべきは、組織委の面々があの発言をどう考えるかということであり、森喜朗の責任はどれほどのものかということだ。引き続き東京五輪の運営に関わることが許されるのかということだ。もし、組織委が真にあの発言を重大視し、組織として真摯に反省して、五輪憲章の理念に即して出直すのであれば、この人事は認めず、森喜朗を組織から切断し清算するべきだろう。


まず、あの女性差別発言について、もう一度精密に吟味し検証する必要がある。正しく総括する必要がある。この一週間、われわれは森喜朗の幕引きの政治にフォーカスし、政局的関心で刻一刻の進行に付き合ってきた。発言の組織的背景とか、目的とか、森喜朗の過去のジェンダーイシューについては注目しなかった。あらためて議論と総括を行うべきで、その倫理的過誤に釣り合う責任の重さを測定し、森喜朗に対して厳正な処分を与えるべきだろう。辞任を受理するのではなく、懲戒して解任を決定するべきだ。その上で、人選に入り、有森裕子とか谷亮子とか山口香を据えることを考えるべきだ。


稿を書いた後で状況が変わり、川淵三郎の後任決定は飛んだが、ブログ記事はそのまま上げることにする。12日のモーニングショーでの田崎史郎の口ぶりからも、この政変はある程度予想されたところだった。森喜朗が独断専行に走りすぎ、森喜朗と安倍晋三が密室で何もかも決めすぎたことが原因だ。この動きは、政府官邸(菅義偉)からのカウンターとして分析できるし、安倍晋三が慌てて踵を返したことも推測できる。提灯ライターなど子分どもは森喜朗の調整能力を絶賛するが、こうして、実は全く調整能力がなく、あっさり決定が覆されることが証明された。森喜朗の権力が地に墜ちた図である。私は、上の文章で、日本政界の最高実力者2名のうちの1人が森喜朗だと書いたが、森喜朗の政治生命はここで終わった。劇的な瞬間だ。


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by yoniumuhibi | 2021-02-12 23:30 | Comments(0)


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