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等閑と放縦の全体主義 – ただちにGoTo中止と緊急事態宣言の発動を

等閑と放縦の全体主義 – ただちにGoTo中止と緊急事態宣言の発動を_c0315619_14554959.png1日あたりの感染者数が1か月の間に500人から1万人になったスイスの例がネット上に出ていた。人口857万人で1日1万人の感染者だから、日本に置き換えれば1日14万人の感染者が出ている計算になる。まさにオーバーシュートの阿鼻叫喚の地獄図だ。2週間前のニューズウィークの記事を読むと、ヨーロッパで最悪の感染拡大状況の国となっていて、そうなった原因は、第一波を抑え込んだ慢心と人命よりも経済を優先する政府の方針にあると書いている。日本に似ている。賢明で堅実で合理的な国民性のイメージがあるスイスだが、何やら体質が奇妙に新自由主義的で、スウェーデンを見倣った「感染対策」(=無対策)を採っているようだ。スイスのように民度が高く市民の知性水準の高い国でも、感染は1か月で1日500人から一気に1日1万人の水準に急増してしまう。スイスの10月の経験は、コロナの感染力がどれほど強いかを教え、今、日本がどういう手を打つべきか教訓を示しているはずだが、テレビ報道で紹介される機会がない。



等閑と放縦の全体主義 – ただちにGoTo中止と緊急事態宣言の発動を_c0315619_14461858.png今の日本は、国民が油断をしていると言うよりも、政府に合わせて等閑の全体主義に国民の態度が染まっている。等閑とは「ものごとをいい加減に見過ごすこと。なおざり」の意味である。春の第一波のときは、日本の得意技である下からの自粛の全体主義で巧く感染の抑制に成功した。日本は、上から権力的にロックダウンの強制発動をしなくても、政府とマスコミがアナウンスするだけで国民が強力な自粛運動を展開する。事実上のロックダウンの実効成果を上げる。春はそうやって日本らしい社会的対処の方式で第一波を封じ込めた。自粛の全体主義で凌いだ。本来、今、再びそれを発動しないといけない局面だが、国民は、今度は(今度もまた)政府の言うがままに従って、お得なGoToキャンペーンで消費と娯楽をエンジョイするという倒錯と逸脱に陥っている。「感染防止と経済活動の両立」の欺瞞のスローガンに乗っかり、観光地に旅行して飲食店で飲み食いする集団行動に精を出している。当然、感染は拡大する。眼前のマスコミ報道の言説は面妖で、自己欺瞞の精神病の極致に達した末期状態と言うしかない。


等閑と放縦の全体主義 – ただちにGoTo中止と緊急事態宣言の発動を_c0315619_14463158.pngテレビ報道が伝える嵐山や永観堂などの人出は、まさに「3密」そのものではないか。春の第一波ではあれほど「3密」を警戒・忌避し、人が集まらないように注意し、人と人が接近・接触しないよう口煩く監視し、毎日、渋谷駅前の様子をテレビ局がモニタリング・チェックしていた。なぜ、テレビ報道は3連休の観光地の映像を見て「3密」だと率直に指摘しないのだろう。不思議だ。不思議なことだが、政府専門家の尾身茂や館田一博によれば、「感染対策をした上での旅行や会食は安全」だという主張を流していて、マスクして換気して手を消毒していれば問題ないと言っている。マスク着用なら嵐山の群衆の「密」状態もOKで、感染の原因にはならないと言っている。密閉空間である映画館など娯楽施設も、間隔座席の規制をやめて全席販売を許容・解禁していて、経済活動が優先なのだと言う。もし、尾身茂らの言うことが本当で、科学的に妥当で正解であれば、春の第一波時もそうすればよかった。外出制限など要請する必要はなく、テレワークなど推奨する必要もなかった。「3密」禁止は不要で、緊急事態宣言も要らなかった。


等閑と放縦の全体主義 – ただちにGoTo中止と緊急事態宣言の発動を_c0315619_14454599.pngコロナをめぐる日本人の自己欺瞞と自己矛盾は、手に負えない深刻なカルト的病状だと思う。重度の集団狂気と言うしかなく、見ていて神経衰弱になる。で、結局、11月24日現在で重症者数が過去最多の345人になった。旭川では医療崩壊が起きている。東京でも重症患者の病床が足らなくなった。医師会はずっと(控えめな)警告を発していたのに、マスコミは菅義偉に忖度し、菅義偉の言いなりの姿勢を貫き、GoToキャンペーンを中止しろと言わず、曖昧に口を濁したまま「感染防止と経済活動の両立」を念仏のように唱えるだけだった。このままだと、1日の感染者数だけでなく、重症者数も、おそらく第一波の2倍3倍の規模に増えるだろう。各地で医療崩壊が起き、救急外来も通常診療も手術も入院も制限され、病院が閉鎖され、高齢の病人や事故の怪我人の面倒をみてもらえない厳しい年末になるに違いない。第一波と同じように、PCR検査まで数日を要する事態になるだろう。芸能人や著名人が死ぬだろう。マスコミや専門家は政府に忖度するが、ウィルスは忖度しない。自然科学的な法則性で伝播する。秋のGoToキャンペーンは、ウィルスにとっては絶好の増殖機会だった。


等閑と放縦の全体主義 – ただちにGoTo中止と緊急事態宣言の発動を_c0315619_14492013.png先週の報ステで、都が調査集計した直近の感染経路の円グラフが紹介されていた。うろ覚えだが、「経路不明」が4割ほどを占めて最も多く、次が「家庭内」で20%超を占め、「職場内」と「施設内」が各10%、「会食」や「夜の街」は7%程度だったという記憶がある。「家庭内感染」というのは、科学的疫学的には「経路不明」と同義である。当たり前の話だが、ウィルスが窓の外から家の中に侵入するということはない。人が持ち込んでいる。その家族が感染した場所は、「職場内」でも「施設内」でも「夜の街」でもないのだから、「経路不明」という範疇になる。問題はその「経路不明」だ。「経路不明」とは具体的に何か。どういう感染の環境と現場か。ウィルスは人を介してしか感染しない。ということは、公共の駅構内とか電車内とか店舗内の人混み、あるいは公衆トイレや立ち寄った建物内のドアノブ・手すり等が原因という分析になる。他に経路空間がないのだから。であるならば、まさにGoToトラベルが促進した人の移動と密集こそ、感染拡大の有力な契機であったと断ぜざるを得ない。大都市から観光地に大量に人を密集させ往来させた国家事業こそ、現在の感染拡大を惹き起こした重大な要因の一つではないか。


等閑と放縦の全体主義 – ただちにGoTo中止と緊急事態宣言の発動を_c0315619_14460666.pngここでどうしても批判しないといけないと思うのは、医療施設の看護師や高齢者施設の介護士の立場で働く者たちの状況と、GoToキャンペーンに乗って楽しんでいる者たちの間の矛盾と格差と不条理という問題だ。旅行業者・中間業者からの献金・賄賂・キックバックを目的にしてやっている政治家や官僚の腐った動機は別にして、同じ日本人なのに、どうしてGoToで観光地や飲食店で遊興している者たちは、コロナ禍の中で疲弊しつつ戦っている者たちのことを思いやれないのだろう。看護師や介護士は、GoToトラベルで旅行することができない。第一波の最初のとき、高知の看護師が大阪のライブハウスで感染して大問題になった騒動があった。職場の名前が表に出たら大変なことになるからと、全国の看護師や介護士たちは観光歓楽の類の消費行動を控えている。禁欲を余儀なくされている。そうせざるを得ないし、実際に誓約書を提出させられているケースもあるという報告も見た。そういうエッセンシャルワーカーの忍耐と服務のおかげで安全が守られ、コロナ禍に対する社会の防護が果たされているというのに、なぜGoTo利用者たちは無責任に自分の快楽の追求と満足に耽ることができるのだろう。どうして彼らに感謝して我慢する自制心を持てないのだろう。


等閑と放縦の全体主義 – ただちにGoTo中止と緊急事態宣言の発動を_c0315619_15011752.pngなぜ、彼らは、倫理的な痛痒や葛藤を覚えることがないのだろう。なぜマスコミは、そういう快楽主義の利己主義者たちをカメラの前に出し、国の経済事業に協力する善良で正常な国民のように褒めそやすのだろう。繰り返すこともない常識だが、無症状者が感染を媒介するのである。産寧坂や道頓堀や竹下通りや仲見世を歩く群衆の中の誰かが、雑踏で、店内で、交通機関の車内で、誰かにウィルスを与え、誰かからウィルスをもらい、帰ってきて無症状のまま感染を広げるのである。自己責任では済まない。弱者やエッセンシャルワーカーに感染をうつしたら、それは自己責任で完結できる問題ではない。そんなことは百も承知のくせに、NHKや民放は、来る日も来る日もGoToキャンペーンを正当化し、旅行歓楽を宣伝して大衆の欲望を刺激する映像を流し、お得だから利用しろと
唆して国民を扇動した。飲食店やホテルの言い分ばかりを電波に乗せ、国民的正論であるかのように演出した。決まり文句の「両立」論をキャスターが言い、菅義偉の「肝いり政策」に局が貢献し、政府に媚び諂って点数を稼いだ。GoTo政策に対して断固たる批判を貫徹しなかった。観光業者に直接の支援をしろと正しい代替案を訴え続けたのは玉川徹だけではないか。


等閑と放縦の全体主義 – ただちにGoTo中止と緊急事態宣言の発動を_c0315619_15072751.png結論を言えば、「感染防止と経済活動の両立」の言説と政策そのものが、根本的に間違った考え方であり、鵜呑みにしてはいけない発想だ。「両立」策で成功している国はない。何故なら、「両立」と言いつつ、その中身は経済優先(=資本優先)であり、感染症対策を後回しにした政策だからである。二つは併存させて立論する問題ではないし、バランスさせるものではない。経済活動のために感染症対策をしなければならないというのが本当であり、中国のように「ゼロ・コロナ」をめざし、それを実現するのが本来の公共行政の姿だ。中国は「ゼロ・コロナ」の収束状態であり、人々の日常にマスクは必要なくなっている。感染者が1名発見されれば、人口2000人の村や区域を封鎖してウィルスを撲滅する。徹底検査する。海外からの渡航者は、例外なく有無を言わせず2週間隔離する。そうやってウィルスの侵入を防ぐ。その結果、中国の2QGDPは前年比プラス3.2%成長となり、3QGDPは前年比プラス4.9%の成長を実現した。コロナ禍がない社会なのだから、経済活動に足枷がないのだ。玉川徹の持論のとおり、ごく少数の感染者を隔離してしまえば、あとは普通の健常な市民社会が出現するのである。すなわち、「両立」ではなく優先順位をつけるべきで、感染症対策を先行させなくてはいけない。


日本国憲法にも13条に公共の福祉の規定がある。25条の生存権がある。中国と同様の人権制限は不可能でも、個人の自由は公共の福祉に反しない範囲でという国家の原則がある。地域の医療体制を崩壊させながら旅行と飲み食いを享楽する個人の自由など認めてはいけないのだ。エッセンシャルワーカーの生存権を脅かしていい個人の自由権などあり得ないのだ。無制限の個人の自由などないのだ。憲法はリバタリアニズム的な放縦の自由を認めていない。いずれにせよ、今回もロックダウン(緊急事態宣言)必至だろう。人の往来と移動を止めないかぎり感染の抑制はできないのだから。


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by yoniumuhibi | 2020-11-25 23:30 | Comments(3)
Commented at 2020-11-25 19:39 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 米帝大嫌い at 2020-11-25 21:56 x
香港の新聞に、久しぶりに周庭の名前がありました。
https://std.stheadline.com/kol/article/1844/政商KOL-巴士的點評-反對派錯估中央-有人承擔責任嗎
ここは星島日報のコラム欄ですが、有罪を認めたつまり自分の非を認めたはずの周庭が平気で中央政府の転覆を夢想している、その卑劣さ無責任さとそれを非難する星島日報はいつも通りですが、私が指摘したいのは下の方のコメント欄。「越南後裔」という単語を使って周庭らを罵倒している人がいることです。新聞社が黃之鋒らの出自を直接問題にしたのは見たことありませんが、コメント欄には「あいつらベトナム難民の子だろ!」という罵倒がしょっちゅうあるのです。中越紛争で敵視されたベトナム在住の華僑の多くは難民として脱出。香港にも難民収容所が存在し、「Gメン'75」の香港シリーズでも何度も登場したのはこ存じかと思いますが、「あいつらベトナム難民の子だから中国本土に親類が全然いない。だからいくらでも敵対できるんだ」という非難には一定の説得力があるでしょう。

日本のマスゴミが絶対に見せまいとする、香港警察の側からの発信。例えばイギリス人警視監のインタビュー。周庭が有罪を認めた警察本部襲撃事件にも触れています。
https://www.scmp.com/news/hong-kong/law-and-crime/article/3088492/frustrating-painful-saddening-police-commander

これはSCMP報道部長(Chief News Editor)の署名コラム。周庭に触れたものではありませんが、駐港アメリカ総領事館が反中活動家の亡命希望を門前払いして追い返した10月27日の事件を題材に評したものです。果たして、CIAからすれば周庭は今も「使える馬鹿」なんでしょうか、それとも「単なる馬鹿」なんでしょうか? 香港市民に対してはもう後者でしょうが、中国を憎み蔑む口実に餓えきったどうしようもない日本人を騙して操る道具としての価値はまだ前者かも知れません。それが不快です。
https://www.scmp.com/news/hong-kong/article/3107920/useful-idiots-just-plain-idiots-now-how-us-has-betrayed-hong-kong
Commented by 愛知 at 2020-11-27 02:28 x
3連休の行楽地の人出をテレビで見て驚愕し呆れ果てた一人です。正確には数少ない驚愕派の一人と言うべきかも。地元ですらほとんど知られていない、報じられないコロナ対応病院の病床状況。名古屋市の場合、病床使用率は297床中、144床使用で48.4%が建前で、稼働可能という実数で言えば150床中、144床使用で96%。あと6人で満床。愛知県の場合、建前(公式)が860床中、364床使用で42.3%。稼働可能病床の実数は非公開。県医師会の柵木会長によれば、名古屋市を含めた愛知県全体での稼働病床は400床で、既に364床使用中なので91%が使用中であると。間もなく満床の名古屋市の患者は市外に回され、まもなく県内も満床で、その場合は他県のコロナ対応病院への協力を要請。数字は11月25日時点。医療機関の少ない地方はいずれも似たような病床状況と危惧しますが、テレビが映すのは長蛇の行列に人混みで辟易。貴下、冒頭ご指摘のスイスの感染者急増もまるで知りませんでした。釈迦に説法の不躾ですが、スイスの最新感染状況、swissinfo.ch(日本語)が連邦内務省保険庁などのエビデンス付きで報じていますのでご参考に。貴下、正鵠を射た分析と論評に感謝いたします。


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