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トランプが7200万票も取れた理由は何か - 株とナショナリズムとモメンタム

トランプが7200万票も取れた理由は何か - 株とナショナリズムとモメンタム_c0315619_15031127.pngトランプはなぜ7200万票も獲得できたのか。マスコミ報道やネット論壇で基本的な事実が見落とされているように思われる。きわめてベーシックな視点と意見だが、誰からも指摘がなく見落とされている問題が3点ある。①株価と②ナショナリズムと③モメンタムである。三番目のモメンタムの方から説明しよう。選挙の最終盤にトランプは激戦州を回って相次いで大規模集会を挙行、世論調査での支持率差を日毎に縮めて僅差に持ち込んでいた。接戦となった選挙戦を制する決め手は、最後の追い込みとモメンタムである。最後まで諦めずに陣営が死力を尽くして運動し、ラストでエネルギーを爆発させた方が勝つ。このことは、昨年の参院選の東北諸選挙区で「野党共闘」候補が勝ったドラマで確認できる。投票4日前、仙台駅前ペデストリアンデッキで山本太郎が怒濤の大演説会を開催、そのモメンタムの奔流が東北4県に伝播し、宮城のみならず山形・岩手・秋田の接戦区を一気に制する快挙をもたらした。



トランプが7200万票も取れた理由は何か - 株とナショナリズムとモメンタム_c0315619_15032487.png街宣カリスマである山本太郎が作った巨大なモメンタムが東北での勝利を導き、本人が功労者となった。同じ政治は今年の大阪都構想住民投票でも再現されていて、大接戦となったレース後半、山本太郎が街頭演説で人を集め、反対派のモメンタムを徐々に盛り上げてゆく。それがマスコミ情勢調査の数字の追い上げに繋がり、最終盤に毎日新聞の戦略弾の投下を得て、最後に鼻の差で差し切った。前回5年前の住民投票は「共産党(SADL)に負けた」が、今回は山本太郎の奮闘と毎日新聞の一撃によって維新は痛い敗北を喫した。苦戦を勝利へと旋回させた立役者は山本太郎である。接戦の選挙では、より大きなモメンタムを興隆させた方が勝つ。プリミティブな事実だが、これが選挙という政治の基本法則だ。今回、バイデン陣営はコロナのリスクに配慮して選挙集会を控え、熱気を盛り上げて演出する手法を自ら封印した。そのためモメンタムはマイナスとなり、反トランプ票の最後の掘り起こしに力を欠く原因を作る。逆にトランプ陣営は動員集会の連発で機運醸成に拍車をかけ、マスコミが「熱量」と報じる現象を作って行った。


トランプが7200万票も取れた理由は何か - 株とナショナリズムとモメンタム_c0315619_15033769.png選挙はモメンタムだ。マスである大衆の心理が主役だ。そして、米国人はファンイベントが大好きな国民性を特徴としている。米国人にとって大統領選は4年に一度の政治のお祭りの場 - 娯楽の要素を含む - であり、1年間レースに関心を集中させ、世界が見守る中で国を挙げて興奮し熱狂するときなのである。期待したファンイベントが抑制され、駐車場に車が並ぶ閑散とした演説集会は、米国人にとっては不興で残念な絵柄だっただろう。そうでなくても77歳の老バイデンのスピーチは、エモーショナルな発揚と効果を十分に導くものではない。そうしたバイデン陣営の選挙戦略の自縄自縛を見透かし、それを逆手にとって乗数効果を狙うように、トランプは最終盤のステージを熱狂する群衆で埋めて「熱量」を演出、クライマックスの高揚と陶酔を求めるオーディエンスのニーズに応えた。パワーを誇示するプロモーションによって保守層の深掘りを奏功させ、首尾よく投票率を上げ得たのである。米国人はゲームに臨むとき、アグレッシブに攻撃するのが好きで守勢に回るのが苦手な性格を持つ。選挙結果が予想外の薄氷となったのは、最終盤の両者の戦略戦術の差による。


トランプが7200万票も取れた理由は何か - 株とナショナリズムとモメンタム_c0315619_15041400.pngが、それよりもっと重要なのは①の株価(カネ)の要素である。第二点。このポイントこそが決定的だということは、2年前の中間選挙時に金成隆一の現地ルポによって報告されていたが、今回、この問題に触れる論者がいない。巷間、「トランプはやることはよくやっている」とか、「トランプは口先だけでなく確かな実績を残している」という米国人の評価の言動が伝えられる。これは、メキシコ国境に壁を建設して公約どおり不法移民対策をしたとか、パリ協定を離脱したとか、エルサレムに首都移転をさせたとか、そういう政策の中身を意味していない。そうではなく、就任4年の間にNY株を55%引き上げ、株を資産とする米国中産階級に利益と幸福をもたらしたという意味だ。2016年11月に1万8000ドル台だったダウは、4年後の2020年10月に2万8000ドル台へと劇的に上昇を遂げている。株運用資産は平均して1.5倍以上になった。この間、トランプは歴代の大統領と異なり、市場が下降局面に入ったときは強引にFRBに介入し、特に2018年以降はパウエルに厳命し、金利を下げてマネー供給を増やす緩和策を強力に差配した。4年間で1.5倍も株価が騰がったのは、いわばMMTを背景としたところのトランプノミクスの成果に他ならない。


トランプが7200万票も取れた理由は何か - 株とナショナリズムとモメンタム_c0315619_15042674.pngアベノミクスの手法と同じで、中央銀行の資金を大量に撒いて市場を押し上げたのだ。米国には401K(確定拠出年金)を利用している者が多い。年金額が株価に連動している。ネットの情報を見ると、確定拠出型の年金加入者は7671万人に上っていて、加入期間30年以上の60歳代では平均して28万976ドルの資産残高に達していると言う。1ドル105円で換算すると2950万円の資産となり、これが企業年金として支給される。このデータは2015年の資料を根拠に引用されているので、トランプ政権の4年間で28万ドルだった資産は(大雑把に)42万ドルに増えた計算になる。4400万円に化けた。2950万円の老後資金の額面が4300万円に増えたら、4年間の短期で増殖してくれたら、誰でも大喜びするのは当然のことだ。大学進学する子どもの学費で悩むのはどこの親でも一緒である。米国でも日本でも、保守派でもリベラル派の家庭でも変わりない。ハーバード大学の1年間の学費は500万円で、4年間の総費用が3000万円という概算がある。米国では学生ローンの負担が深刻な社会問題で、2016年のサンダース旋風以降広く知られるようになった。


トランプが7200万票も取れた理由は何か - 株とナショナリズムとモメンタム_c0315619_15280913.png401Kに加入する中産階級の親としては、神様仏様トランプ様の嬉しい気分だろう。彼らが、ここでもしバイデンを大統領にしたら、株価が下がるのではないか、事故が起きるのではないか、株価の伸びが止まるのではないかと、そう不安に思うのは無理もない俗な心情だと言える。就任後のトランプは株価の維持と上昇誘導に常に躍起になっていて、それを政策の第一の目的と基準に据えて市場介入していた。トランプのおかげで資産が増えたと歓迎する国民には、トランプの退場は耐えられない喪失と打撃だろう。トランプは常にツイッターでダイレクトに有権者と交信しており、媒介環や中間項を介さずに米国民と繋がっていて、自分を支持する国民の利益のために政策を発動し案内していた。ダウが騰がり401K資産が増えて老後人生が豊かになったことは、トランプが直接に豪腕をふるって実現した達成であり、政府や共和党の仕事のプレゼントではない。と、トランプ支持の有権者には映るし、そう受け止めるのは自然である。トランプに対する地方中産階級の強烈なコミットの秘密は、何より金銭利得なのだ。この条件と契機の所在が、今回の米大統領選を分析する論壇であまりに無視されている。その点、強調しておきたい。


トランプが7200万票も取れた理由は何か - 株とナショナリズムとモメンタム_c0315619_15045937.png第三点。②のナショナリズム。この本質的な論点も、今回の大統領選を分析する議論で言及される場面がない。ナショナリズムという語は多義的で、使われる意味が様々で、曖昧で、用語し理解するのが容易でない政治学の言語である。ここでは、トランプ主義に関わるナショナリズムを、内実に即して、愛アメリカ主義、愛米主義の意味で考察することにしよう。誰でも生まれ育った故郷を愛している。自分が生まれ育った国を無条件に愛する気持ちは同じだ。自分の親と先祖の土地を慈しむのは、誰でも等しい自然な態度であり行為である。4年間の現職にあって、トランプはアメリカのナショナリズムを掴んだ。ヒトラーがドイツのナショナリズムを掌中にしたように、アメリカのナショナリズムを半ば自分のものにした。トランプは、半ば、自分をアメリカの神聖シンボルにすることに成功した。大統領がアメリカのシンボルなのは当然だが、トランプは分断を扇動することを通じて、反トランプ勢力に非アメリカの表象性を塗り付けることに成功したと言える。4年間の分断の政治過程は、分断の片方の側のトランプ主義者に、我こそ本物の愛国主義者であり、敵はそうではなくUSAを否定する者だという確信(=観念=偏見)を抱かせる状況を作り出した。


トランプが7200万票も取れた理由は何か - 株とナショナリズムとモメンタム_c0315619_15080558.png具体的には、BLM運動の歴史見直しの一件が典型的だと言える。今年のBLM運動の台頭と影響は、コロンブス像の首を切断するに止まらず、建国の英雄である初代ワシントンと第3代ジェファーソンの銅像まで引き倒すという事件に発展した。併行して、ニューヨークタイムズは建国年を1776年ではなく1619年に変更すべきだというプロジェクトに着手、賛同するリベラル系の学校や教師が多く出て保守派の心胆を寒からしめた。また、名著として崇敬された『風と共に去りぬ』が一瞬でヘイト本扱いとなり、国民的古典の位置から転げ落ちる顛末となった。それらこれらは、多数を占める白人の中高年層の認識からして、少なからず脱アメリカの思想的動向であり、アイデンティティ・クラッシュの端緒となる衝撃の事件だったに違いない。25年後にはマイノリティに転落するという恐怖感と疎外感も相俟って、彼らの愛米主義の主観と信念が刺激され、感情的反発が増幅され、すなわち、歴史見直しを推進する急進リベラル側と対抗するトランプへの支持に傾いたと説明できよう。いくらジェファーソンが奴隷所有者でも、現時点で米国内で全否定するのは政治的に時期尚早で、全員が投票する民主主義の選挙では不利な材料になる。ナショナリズムを敵の側に渡してしまう。


以上、コロナ禍のトランプ逆風の環境でトランプが7200万票を得票した理由を述べた。トランプ主義の狂気が圧倒する空気が充満し、リベラル・デモクラシーの理性を代表する反トランプ派が押され、選挙戦が伯仲となり拮抗となった理由を3つの側面から分析した。①株(買収)と②ナショナリズムと③モメンタムの仮説である。基本的で常識的で整理だが、当を得た見方ではないか。



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by yoniumuhibi | 2020-11-16 23:30 | Comments(1)
Commented by 長坂 at 2020-11-18 12:11 x
あくまでも聞いた話ですが、、私のアメリカにいる知り合いは自分、夫、息子それぞれがコロナの失業者手当として週600ドルぐらい受け取っている。受け取りながら軽くアルバイトもしてる。で近所に手数料を取って失業者保険の申請をして、なんとか受給できるようにしてくれる人と言うのもいるそうです。さっき読んだTWにアメリカでCAをやってる人が政府からの休業手当てプラス会社の保険で週1000ドルだとか。日本での話ですが、過去にアメリカで数年働き、税金を納めた人のところにアメリカ政府からコロナ給付金1200だか1400ドルの小切手が届いたと。アメリカ政府の方針が具体的にどうとか法律がどうとか全くわからないのですが、コロナで20万人死亡でもトランプが人気なのってこういう素早い対応、取り敢えず給付みたいのも影響あるんじゃないでしょうか。失業で家を失い路頭に迷うというニュースも聞くのですが、MMTでどんどんドルを刷ってるとしか思えないほどの大盤振る舞い。戦費に多額の税金を投入よりは全然良いが、このどんぶり勘定で大丈夫なのかと。


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