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会田弘継の秀逸な分析と解説 - アメリカの分断とトランプ主義の真相を説く

会田弘継の秀逸な分析と解説 - アメリカの分断とトランプ主義の真相を説く_c0315619_13594722.png11日の報道1930に会田弘継が出演して、今回の米大統領選について秀逸で明快な分析と解説を提供していた。番組の全編の発言場面で膝を打つ言葉ばかりが並び、テレビの前で呆気にとられたというのが正直な感想である。これこそアメリカ現代政治論。聴きたかった政治学の言葉が発された。会田弘継の議論に比べれば、前嶋和弘、渡辺靖、中林美恵子、久保文明などの話は幼稚な床屋政談であり、ワイドショーの時間潰しに供する無益な雑談の垂れ流しに過ぎない。何の学問的価値もない。会田弘継は共同通信の記者出身の専門家であり、アカデミーのキャリアを持つ研究者ではない。だが、議論の中身はそこらの「学者」よりもずっと本格的で、政治思想史の知識と視角からよく立論されている。このことに驚かされる。プロフィールを一瞥すると、どちらかと言うと保守的な人脈や背景が連想されるが、表現と語法に親米反共のバイアスがなく、学者ならではの透徹した概念と鍛錬した述語が看取され、そのため言論がニュートラルで、メッセージが社会科学的で説得的で、そこにも驚かされた。



会田弘継の秀逸な分析と解説 - アメリカの分断とトランプ主義の真相を説く_c0315619_14340577.png会田弘継の説明に登場する、「社会主義」や「資本主義」の言葉に、確かな学者の知性の響きが感得されるのだ。学術的に的確な定義が意識されたシュアな単語として措いていて、そのため、日本の数多の親米媚米反共反中の学者や論者がマスコミで吐き散らすところの、プロパガンダの言説で用語されるイデオロギー的なニュアンスを帯びない。プレーンに耳に入るのであり、納得してストンと胸に落ちる。語法に同意できる。こういう確かな政治学の議論ができる論者はほとんどいない。政治思想史学者として研鑽を積んだ優秀な学究だと分かる。また、会田弘継の議論(持論)が、本人の頭の中では、おそらく英語での思考や論理がトランスペアレントに日本語に訳されて発出されているのだろうとも窺われ、そのいわば思惟のインターオペラビリティの環境を想像すると、会田弘継が資料として日々接している米国のアカデミーや論壇の言説が、日本ほどグロテスクに右翼化されておらず、「社会主義」や「資本主義」の語をプレーンにハンドリングしているのではないかという期待と観測にも導かれる。


会田弘継の秀逸な分析と解説 - アメリカの分断とトランプ主義の真相を説く_c0315619_14380296.png会田弘継の議論がどのようなものか紹介したいが、ネットに上がっている情報を探すと、2017年に本人が出した岩波現代全書『破綻するアメリカ』を三牧聖子が書評したテキストがあり、これを読むと概略が掴めるだろう。今日のアメリカの政治と社会についての一般論が並んでいるように見えるけれど、会田弘継ならでは独自の鋭い視点と分析がある。会田弘継の議論が、トランプ現象を捉える日本の論壇の一般的な認識と理解を導いてきた影響も小さくないように思われる。米国の分断について、左右の分断だけでなく上下の分断に着目せよという主張は、当然のことを言っているようで実は斬新で、精妙な切り口である。この方法でトランプ現象が起きるアメリカ社会の実情がよく了解できる。取り残された白人中産階級の政治不信、その怒りと絶望の心境が分かるし、彼らがトランプのメッセージに呼応する理由もよく頷ける。会田弘継の議論は、金成隆一などのルポルタージュを理論化したもので、半世紀のスパンで構造的な変容を整理したものである。政治学的な分析の決定版だと言っていい。


会田弘継の議論を聞きながら、私は、自分が考えていたアメリカ政治の直観や試論が間違っていないことを確信させられた。三牧聖子の書評の中で見つけた、2016年の大統領選の総括に関する会田弘継の重要な指摘を抜粋したい。

(略)さらに民主党が展開してきたアイデンティティ・ポリティクスの問題点は、それに傾倒することにより、困窮する白人労働者層の問題、経済格差の是正という課題が疎かにされてきたことにある。大統領選で敗北を突きつけられる前に、この問題に気づいていたリベラルもいた。大統領民主党予備選挙で善戦したバーニー・サンダースである。サンダースは、「多様性候補」を立てることも大切だが「労働者階級のための闘士となる候補」が必要だといち早く主張していたが、この問題提起は、民主党のリベラルたちに真剣に受け止められることはなかった。

(略)リベラルたちが「トランプ現象」の意義を、人種差別・排外主義・偏狭なナショナリズムの噴出に矮小化し、その有害さを糾弾することに終始している限り、「トランプ現象」は終わらないと著者は示唆する。リベラリズムがアメリカ国民への訴求力を取り戻していくには、集団ごとの差異を強調するのではなく、差異を超えて広く人々が共有できる大きなテーマを発見し、追求していく必要がある。



会田弘継の秀逸な分析と解説 - アメリカの分断とトランプ主義の真相を説く_c0315619_14351885.pngこれである。
我が意を得たり。この部分には膝を打って打って打ちまくる気分だ。会田弘継に完璧に代弁してもらった。この部分は、特にしばき隊化した日本の左翼と共産党に刮目して見よと言いたい。この論点は、2年前に話題となった「そろそろ」本の中で北田暁大なども提起していたはずだが、(北田暁大が件の問題で失脚したせいか)左翼リベラルの中で大きな潮流とならず、むしろ逆に、共産党などはアイデンティティ・ポリティックス一色の政策基軸へと旋回を遂げ、完全にしばき隊党(脱構築党)へと転化してしまった。マルクス主義政党から脱皮して、「野党共闘」ブロックのリベラル・レフトとして軌道定置している。脱マルクスの地平に安住を始めた。しばき隊ばかりが左翼世界でわが世の春を謳歌し、君臨し、傲慢に支配し、この国の左翼からマルクス的な動機と思想性を消し去っている。ジェンダーとマイノリティだけの左翼と化し、共生主義と多様性だけを奉じて担ぐ政治主体となり、社会主義の理念を放棄した。一方、米国のサンダースは一人敢然と、「多様性候補」ではなく「労働者階級のための闘士となる候補」を擁立せよと訴えている。


会田弘継の秀逸な分析と解説 - アメリカの分断とトランプ主義の真相を説く_c0315619_14342568.png11日に会田弘継が提示した議論は見事で、華麗で、民主党と共和党の半世紀にわたるイデーの変容と動態を追跡し、両党の支持基盤である社会層および基礎過程との変動との連関を簡潔に述べていた。社会科学的な内容の濃い概説だった。もともと米国の民主党(と英国の労働党)は、①労働者と②マイノリティと③都市インテリ層の三本柱に立脚した政党であり、今よりもずっと社会民主主義的な性格を持ち、中産階級である労働者の論理と利害に密着した政党だったのだ。それが、レーガノミクス・サッチャリズムが一世風靡した80年代から変貌を遂げてゆき、ワーカーズ・パーティからコーポレイト・パーティに転換するのである。市場原理に即いて「小さな政府」を追求する政党に変わり、ウォール街金融資本と西海岸IT資本に接近し癒着する。そして90年代のクリントン政治で極に達した。それが「第三の道」だ。会田弘継は、「資本主義の党に変わった」と説明した。センスのいい表現だ。00年代以降の新自由主義全盛によって中産階級が没落し、ゲーテッド・コミュニティが現出する殺伐とした階級社会 - 格差社会と言うより階級社会と言うべきだろう - に米国は変わる。


会田弘継の秀逸な分析と解説 - アメリカの分断とトランプ主義の真相を説く_c0315619_14523513.pngアメリカの中産階級のワーカーズは、かくして自らが支持しコミットする政党を失った。民主党はそこからひたすら多様性主義のアイデンティティ・ポリティックスに傾注し、没入したため、白人中産階級は政治的に取り残されて顧みられない社会階層になった。政策の保護と関与がなく、政治的な主体性と存在感を失い、新自由主義の暴風雨に晒されて没落の憂き目に逢う顛末となる。彼らが救世主として見出したのがトランプだった。トランプ主義は、共和党の伝統的な政策基調であるところの、レーガン的な「小さな政府」と「強いアメリカ」を志向しない。それとは全く逆の「大きな政府」と「世界に関与しないアメリカ」を求めるのであり、共和党の従来のイデーとは決定的に異なる方向性を持つ。今回、トランプは7200万票を獲得し、トランプ主義の信奉者が全米でいかに多いか実力を示した。トランプ主義を熱狂的に支える階層と、今回の選挙でバイデン勝利を牽引した民主党左派の活発な勢力とは、実は利害と動機において近似しているのだと会田弘継は言う。この洞察に、素人ながら私は全く同感で、当を得た認識だと賛成する。アメリカはどんどん先に行っているのだと痛感する。


会田弘継の秀逸な分析と解説 - アメリカの分断とトランプ主義の真相を説く_c0315619_14452565.pngどんどん変わっていて、新自由主義を止揚しないと前に進めない正念場に達している。まさしく、資本主義をどうするかという選択が問われ、答えようとしている。だからこそ、急進左派が勢力を伸ばし、その反動で反共アジテーションが拡散され、社会主義恐怖論のヒステリーが横溢しているのである。前に進みつつ、実は、今のアメリカの状況は1920年代後半のドイツに類似している。右と左の両極の勢いが強くなり、真ん中が陥没する構図がよく似ている。右側はヒトラーのファシズムの運動だった。トランプが選挙に勝っていたら、マッカーシズムが再現していたことだろうと推測する。会田弘継の話では、今回、民主党左派は議員を倍増させ、オカシオコルテスが応援演説に入った州では全勝の結果だったと言う。その左派の動きに対して、民主党中道派は、トランプ側による反社会主義宣伝の絨毯爆撃とその効果を恐れ、恐怖症が高じ、オカシオコルテスに選挙区入りの足止めの圧力をかけていたらしい。その話を聞いて、私は、4年前、サンダースを候補に立てていたら民主党は勝っていただろうと予想したことに再び確信を持った。アメリカは前に行っている。社会主義を必要とする社会になっている。

機が熟している。資本主義の構造を変革するチャンスが来ている。新しいイデーが求められている。会田弘継が言う「広く人々が共有できる大きなテーマ」とは、社会主義のことだ。

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by yoniumuhibi | 2020-11-13 23:30 | Comments(6)
Commented by コスモス at 2020-11-14 11:15 x
大野雄大投手の話題が、貴SNSアカウントで出ていました。大野投手は(コロナ禍前は)母子家庭を試合に招待するチャリティをやっていて、チケット代のみならず、弁当代や応援グッズ代も出してあげるという、やさしさ、繊細さがあります。なかなか、体育会の男性で、ここまで気づく人はいません。弁当代やグッズ代も母子で数千円になりますから、それが負担という家庭もありますし。
中日の前政権時代には、その優しい性格に付け込まれて、某コーチに因縁をつけられて、試合中に新幹線で帰れと命じられたり、最初から投げ抹消扱いだったり気の毒でした。ご自分からアピールされる方ではありませんが、大野選手の真の姿が認められてうれしいです。
北海道コロナですが、菅は子飼いの鈴木知事をわざわざ上京させて、「gotoを続けてほしい」と陳情で言わせましたよね。このさ中に、北海道からわざわざ上京させること自体、危機管理がなっていません。こういう陳情こそ、オンラインでやればいい。知事は移動時間の無駄だし、官邸でクラスターでも発生したらという想像力が足りない。
安倍は、感染者数が増えたら「今井ちゃんどうしよう」と尋ねる素直さはありました。菅は、感染者数が増えでもぶれない、動揺しないことが大事と思い込んでる節があります。自分が進めたgotoを批判する奴は許さない、という器の小さい人間です。経済が大事といいますが、感染者数が増えたら誰も旅行や外食に行きませんよ。
菅のメンツの為に、コロナ患者が増える、コロナで人が亡くなるなんてあってはならない。
大曲先生が「東京もこのままいけば、4週間後には1日1000人を超す」と言っていました。専門家が真実を発言できる点で東京都は国よりマシだと思います。
Commented by アン at 2020-11-14 19:35 x
日本がなぜ戦争であのようなことのなったか、コロナ禍を通してよくわかりました
菅、二階、ハマスタ人体実験をした黒岩、感染症学会の面々、このへんは国賊
Commented by 不来庵 at 2020-11-15 08:51 x
労働問題から逃げた時点で日本左翼に存在意義はなし
Commented at 2020-11-15 10:27
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 長坂 at 2020-11-15 10:34 x
今回の選挙はアメリカの若者、アメリカの教育の勝利なのじゃないかと。バイデンは彼らにとっては全然最良の候補者ではないが、カマラに多少期待しつつトランプを倒すため、コロナ禍SNSを駆使し金を集めデモをやり本当によく頑張ったと思う。てかアメリカの若者は選挙の時はいつも一生懸命。うちの子供が送って来たユーチューブのアメリカのキャンパスでのインタビュークリップを見た。男女ペアの学生がいかに社民主義が大切かとか、コミュニズムは必要とか、資本主義は人の搾取の上に成り立つとか(たぶんトランプ支持)インタビュアーの挑発にめげず、ガンガン答えている。デヴィッド・グレーバーが甦っているのかと思うくらい。もちろん政治興味無し中立という学生もいるが、隔世の感。田中さんご指摘のようにOWS以後更に左へ向かうアメリカの若者たち、頼もしい。アメリカの経済的格差はあまりにも大きいが、日本と違い大学や文化福祉施設、芸術活動等に多額の寄付し「Tax me 」と言ってる富裕層もいるのがまだ救い。
こんな中、日本は社民党が無くなる。社民が立民を吸収ではなく、右と極右の二大政党制を目指す?という地獄が待っているらしい。
Commented by サン at 2020-11-15 12:59 x
灘で西村大臣と同窓(同学年)の研究者が「現体制では反対意見を言うと排除されるから裸の王様になっている」と言っておられる。菅が個人的に心酔しているのは岡部信彦だが、岡部とか尾身は保身に長けてる風見鶏だから、菅のご機嫌とってるだけでコロナの解決はできない。
官僚機構も、何か言って結果が出なければ責任を押し付けられて左遷されるのがわかっているから、誰も動かない。
ここにきて解散の動きもあるようで、二階と一日に二度も食事しているが、コロナ制圧に失敗した政権は負けるのが常。逆にNZのように制圧できれば大勝。貴ブログでは経済情勢とトランプ支持の動向を分析しておられたが、いまは何よりもコロナ制圧が政権支持の鍵。
菅はいまだにコロナに感染するのはキャバクラとかああいうところで、不届きものが悪い程度の認識しかないようで、国民の意識、世界情勢とまったくかみ合っていない。
アフリカのルワンダでは医療用ロボットや医療用ドローンなどテクノロジーを駆使してコロナ制圧に取り組んでいるようだ。一方世界の製薬大手は莫大な利権目指して、必死にワクチン競争。日本は封建制の前近代。


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