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安保法制の政治敗北の代償 - 「学者の会」と「立憲デモクラシーの会」の異端化

安保法制の政治敗北の代償 - 「学者の会」と「立憲デモクラシーの会」の異端化_c0315619_18171030.png日本学術会議の会員任命拒否問題が国会の閉会中審査にかけられ、その模様がテレビで報道された。今井雅人や柚木道義が質問に立っていたが、追及は手ぬるく、厳しさがなく、問題の重大さや深刻さが国民に伝わらないものだった。今井雅人や柚木道義が、「学問の自由」をめぐる政府の憲法違反を国会で質すなど、およそ不似合いで、不釣り合いで、その責任と任務をよく果たせる資質でないことは分かりきったことだ。7日と8日の国会審議を通じて、野党がどこまでこの問題で国民世論を喚起でき、政府批判のエネルギーを増幅でき、臨時国会の争点として国民の関心を高め得たのか、私には甚だ疑問に思われる。前回の記事でも書いたが、与野党対決の国会論戦に持ち込まれることで、逆に、重大な違憲問題が軽薄な政争の具に転化し、マンネリで退屈で不毛な泥仕合の様相を呈し、国民の関心が急速に冷めて行くことは、これまでも幾度もあったように思われる。その結果、明白で致命的な憲法違反を犯しても、政権の支持率はすぐに安定状態へと上昇回復するパターンが定着した。



安保法制の政治敗北の代償 - 「学者の会」と「立憲デモクラシーの会」の異端化_c0315619_15214452.png蓮舫が、 「声を上げ続けてください。間違いは世論の力で正せます」と言っている。とても虚しく響く。これまでどれほど声を上げ続けただろう。ネットで声を上げただけではない。何度も何度も国会周辺に足を運び、群衆の中で立ちんぼして声を上げ続けた。13年の秘密保護法のときも、15年の安保法制のときも。デモに混じって立ちんぼしていると、国会議員たちが自分の挨拶のときだけ演壇に登場して、テレビカメラの前で身振り手振りで演説し、終わればそそくさと立ち去って行った。共産党議員も同じだった。群衆と一緒に最後までデモに立ち会った議員は見たことがない。まさにルーティンワークの慣れた業務をこなしていた。秘密保護法も、安保法制も、共謀罪も、「民主主義の根幹を揺るがす」政府の暴挙を阻止できなかった。マスコミの世論調査では、これらの悪法の強行成立については最後まで反対が多かったが、その後に行われた国政選挙では3度とも安倍自民の圧勝に終わっている。


安保法制の政治敗北の代償 - 「学者の会」と「立憲デモクラシーの会」の異端化_c0315619_15215811.png選挙で安倍与党が圧勝し、反安倍野党が惨敗することで、秘密保護法も、集団的自衛権の解釈改憲も、安保法制も、共謀罪も、民意を問うて審判を受けたという決着になり、正当化され、覆すことができず、粛々と体制化され行政化されて行った。反対意見は風化して行った。特に2015年の安保法制の過程に再注目することを訴えたいが、9月19日未明に成立した直後、その日に、共産党は狙いすましたように「国民連合政府」構想を発表する。これには心底呆れた。そして12月20日に「市民連合」が発足し、「野党共闘」の体制が着々と構築されて行く。私はこの政治を「15年体制」と呼ぶが、そこから3回選挙をやって3連敗を喫して現在に至っている。5年前からずっと指摘し批判しているように、あのとき、左翼の司令塔は、安保法制を廃案に追い込むことを目標とせず、安保法制を出汁にして、SEALDsを売り込むことに注力し、SEALDs運動を看板にして「野党共闘」を整備する戦略を第一とした。左翼の司令塔とは、共産党としばき隊である。15年後半から16年にかけて、その策謀遂行の中心で腕を振るっていたのは中野晃一だ。


安保法制の政治敗北の代償 - 「学者の会」と「立憲デモクラシーの会」の異端化_c0315619_15242399.pngSEALDsのプロモーターの一人である高橋源一郎は、うっかりというか、堂々というか、サンデーモーニングに出演して本音を漏らし、「ボクは安保法制は通ってもいいが、若者が立ち上がってくれたから嬉しい」と言った。7月だった。この一言でSEALDs運動の正体に怪しさが生じ、安保法制反対の国民世論は勢いを失い、安倍政権の支持率が8月にかけて回復する経緯となる。国会で審議が始まった6月から7月初旬までは、反対運動の主役で論陣を張っていたのは憲法学者たちだった。 長谷部恭男、小林節、樋口陽一らが連日テレビ出演し、国民をよく説得し、安倍政権の支持率を落とす進行を作って追い詰めていた。創価学会内部でも反対論が噴出、公明党が動揺し、そこに自民党総裁選の政局が重なり、安倍晋三は窮地に立たされていた。だが、反対運動の主役がSEALDsに切り換えられ、憲法学者が背後に退いた途端、安倍晋三が勢いを取り戻す展開となる。政治的に見て、明らかに反対勢力の運動の設計ミスだったが、どうやら、左翼の司令塔は意図的にそれをやっていた。彼らは安保法制を手段にしていた。私利私欲と党利党略の政治だった。


安保法制の政治敗北の代償 - 「学者の会」と「立憲デモクラシーの会」の異端化_c0315619_15410325.png「立憲デモクラシーの会」と「学者の会」は、その後も活動を続けているが、あまり活発ではなく、国民の支持と期待を集めているとは言えない。表立って登場するのはいつものしばき隊に近い常連で、事務局が誰によって操縦されているかが容易に推察される。結局のところ、彼らは「野党共闘」の応援団であり、「15年体制」の片方の政治勢力を代弁する集合に他ならない。加藤陽子と宇野重規は立憲デモクラシーの呼びかけ人だが、果たして現在、二人はどれほど立憲デモクラシーの会にコミットしていることだろう。今回、任命拒否された6人のうち、3人と3人で対応が若干分かれていて、法学者の3人は強く反発して集会に出るなどしているが、残りの3人の方は異議のコメントは出しているが行動を共にしていない。5年前に政府批判の立場を鮮明にしたときは、5年後にまさかこんな目に遭うとは彼らは思ってもいなかっただろう。政治全体が右に寄ったということであり、全体の座標軸が右に寄り、暴走する右翼政権を批判するオーソドックスなアカデミーが異端化されたということである。


安保法制の政治敗北の代償 - 「学者の会」と「立憲デモクラシーの会」の異端化_c0315619_15510573.png「立憲デモクラシーの会」は、6日に記者会見を開き、任命拒否の撤回を求める声明文を出した。この場には石川健治と長谷部恭男が出席している。杉田敦も同席している。だが、この会見を放送したテレビ報道はなかった。普通に考えたとき、これほど重大な事件が起きた中、憲法学の大家であり権威である石川健治と長谷部恭男が出てきて意見を述べたとなれば、映像を切り取ってニュースに挿入するのが当然で、視聴率のコンテンツという営業的観点からしても無視する手はないだろうと思われる。二人が、特に長谷部恭男が、この問題を学問の自由(23条)の侵害としてどのように整理し、憲法理論として簡潔に説明するか、話を聴きたかった国民は多いだろう。ここでの二人の言説が、いわば次の憲法教科書(ジュリスト)の記述になる。だが、テレビは紹介しなかった。テレビ局の判断が、「立憲デモクラシーの会」を政治的に左傾と性格づけているからであり、この会見を流せば世論に影響し、菅官邸の立場を悪くすると忖度したからである。つまり、客観的には、それだけテレビは右傾化し、安倍・菅政権のイヌになりきっている。


安保法制の政治敗北の代償 - 「学者の会」と「立憲デモクラシーの会」の異端化_c0315619_15554153.pngだが、一方、公共の電波を使うテレビは中立だという原則があり、その前提を逆手に取られた形での大衆の通念があり、テレビが放送するものが政治的に中立だとするイデオロギーの座標軸が成立している。われわれはテレビ報道のバイアスに容易に抗えない。要するに、5年の間に社会がさらに右傾化し、長谷部恭男は「左に偏った学者」の表象にされ、異端に押し込められたという帰結である。「立憲デモクラシーの会」が、アカデミーの存在として、スタンダードでオーソドックスな立ち位置を主張できなくなった。このことの政治的意味は大きい。3度にわたる国政選挙の結果と民意が、テレビ局の報道上の価値判断の変化の担保になっている。だから、だからこそ、選挙には勝たなくてはならないのであり、政治に負けてはいけないのだ。私が前回の記事から書いている内容は、左翼には不快で目障りなシニシズムの雑音だろう。けれども、政治は対立するイデオロギーの闘争の現場であり過程であって、政治はどこまでも結果責任であり、負けたら責任を負わされ、代償を押しつけられるのである。それが政治のリアルなのだ。国政選挙で3度も惨敗しながら、右翼から何も仕置きを受けないと気楽に思う方が間違っている。


安保法制の政治敗北の代償 - 「学者の会」と「立憲デモクラシーの会」の異端化_c0315619_15504365.png「立憲デモクラシーの会」も「学者の会」も、2015年の安保法制の政治闘争でなぜ負けたのか、誠実な総括を与えていない。どうすれば勝てたのか、どうすれば安保法制を白紙化し無効化できたのか、どこに取り組みの欠陥や弱点があったのか、その政治的真相を科学的に分析していない。総括をサボタージュし、その結果、ありがちなことだが、無機質なルーティンワークを延長する不活性な身内型組織になり、「野党共闘」の応援団を惰性で続けるだけの既成の寄合仲間になった。「15年体制」を保守する保守勢力になっているだけで、負け続ける「政治体制」を支えているだけだ。しばき隊運動の一部となり、左翼業界で既得権益を享受し謳歌しているだけだ。それが5年間積み重なり、安保法制に反対した学者たちの(外から見た)表象と属性が変わったのである。丸山真男は、「権利の上に眠る者」という問題提起をして、我妻栄の民法講義を援用し、民主主義の権利は闘って実現するものであり、絶えず自由を奪おうとしてくる権力側と鬩ぎ合って勝つことで保全されるのだと言った。戦いに負け続けていたら、権利が削られてしまうのも当然ではないか。5年前の闘争は敗北だった。敗北だったのに、彼らはそれを勝利だとすり替えた。


安保法制の政治敗北の代償 - 「学者の会」と「立憲デモクラシーの会」の異端化_c0315619_15493466.png何も真摯な反省はなく自責の声もなく、共感を誘う知識人の言葉はなかった。痛憤と悲嘆の呻きもなかった。勝利だとすり替えて意義を誇大に喧伝し、「野党共闘」の既成事実を背景にマスコミで売名して、しばき隊学者は左翼市場で商売繁盛して出世を遂げた。今回の件はしっぺ返しと言える。本質を見つめ直そうではないか。秘密保護法も、安保法制も、共謀罪も、米国から要求されたものである。戦争するための国内法の整備であり、米国が日本に戦争をさせるための制度変更だ。日本が戦争する相手は中国にフォーカスされている。この5年間、マスコミの反中反共プロパガンダは激越の度を強め、日本国民の中国憎悪(暴支膺懲)の感情を激昂させ、戦争前夜の精神状態へと煮滾らせている。最近は香港問題を契機に、しばき隊が中国打倒を吠える憤怒と絶叫の音量が大きくなった。ほとんど右翼に転向したも同然に映る。しかし、左翼リベラルの学者たちは、平和主義と9条を啓蒙する教育活動を積極的にはしなかった。朝から晩までジェンダーとマイノリティの教育に奔走し、説教に没頭して、反ヘイト運動の指導はしたが、9条や反戦の啓発はおざなりだった。


ユネスコ憲章前文の、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」の真理は無視された。菅原文太は、死ぬ前、「政治の役割は二つ。国民を飢えさせないこと、絶対に戦争をしないこと」と左翼リベラルに遺言を残した。9条と25条という意味である。日本の政治で何より重要なテーマは9条と25条だ。ジェンダー主義でもないし、マイノリティ主義でもない。LGBTや夫婦別姓や入管問題ではない。だが、共産党を含めた左翼リベラルは、脱構築化し、しばき隊化し、9条と25条の問題をすっかり後回しにした。9条と25条を蔑ろにし、共生主義をアジェンダの第一にし、中国敵視の問題(平和問題)については触れようとしない。


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by yoniumuhibi | 2020-10-09 23:30 | Comments(1)
Commented by コスモス at 2020-10-10 14:26 x
菅は「学術会議会長が会いたいというのなら会ってもいい。任命は見直さない」と言ったそうですね。ノーベル賞受賞者に対して、こういう言い方をした総理大臣は過去にいないですね。梶田先生はどうされるんでしょうか?
梶田先生の分野は、国から桁違いの予算つけてもらって、そのおかげで代表者がノーベル賞の栄誉にあずかってきました。(小柴、梶田 本来なら戸塚先生)弾圧を受けている局面の会長としては、どうでしょうか。
法政大学の総長は、卒業生として初の総理が誕生しても媚びず、いち早く学術会議問題に対して反対声明を出しました。素晴らしい女性リーダーだと思います。
ICUの学長が出した学術会議問題に対する反対声明も素晴らしかったです、学長は東大の仏文出身でした。

菅は記者の取材に応じてるようですが、なんでも記者をランク付け?しているようですね。質問できる記者(机を用意されている)が2、3人、それを後ろで椅子だけで聞いている記者、別室で音声だけ聞かされる記者。記者を分断する。分断はナチスの手口。


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