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日本学術会議の任命拒否問題 – 「15年体制」(1と3分の1体制)の試論

日本学術会議の任命拒否問題 – 「15年体制」(1と3分の1体制)の試論_c0315619_15332695.png日本学術会議の任命拒否の件、本日(5日)、JNN世論調査の結果が出て、「妥当だ」が24%、「妥当ではない」が51%となった。予想どおりの数字である。この問題については、1日の赤旗のスクープによる発覚以降、ほぼ全てのマスコミ報道が批判的な論調で報じているため、世論の反応もこうした賛否になることが予想された。来週以降の他社の世論調査でも同じ傾向が続くことだろう。ただ、国会再開まで3週間の日程が空いているため、どこまでこの問題への関心が持続するかは分からない。その頃は米大統領選(11/3)で話題一色に染まっているだろうし、大阪都構想の住民投票(11/1)の影響もある。台風上陸による被害もあるだろうし、新型コロナウィルスの感染状況に変化が起きるかもしれない。秋国会の争点となって政権批判の渦が起きるかどうかは不透明だ。テレビの一部とネットでは、右翼によって活発な世論工作が遂行されており、日本学術会議の党派性を批判し(先崎彰容)、菅政権による任命拒否を合法だとする刷り込み(野村修也)が行われている。



日本学術会議の任命拒否問題 – 「15年体制」(1と3分の1体制)の試論_c0315619_15442718.png結論から言えば、政府による6人の学者の任命拒否は日本学術会議法違反であり、憲法23条の学問の自由を侵害する違憲行為である。重大な憲法違反の事件の発生だ。これは、黒川弘務の定年延長問題と類似する政府の違法行為で、従来の法律解釈を強引に変え、政府が人事に不当に介入するものだ。集団的自衛権の憲法解釈を無理やり変え、力づくで押し通した件とも通底するところの、法治国家の原則を蹂躙する暴挙である。松宮孝明などが解説しているとおり、政府に任命拒否権はなく、政府がかように人事介入できるようになれば、日本学術会議の独立性は失われてしまう。政府側が今回のような任命拒否を正当化しようとするなら、法律を改正(改悪)して日本学術会議の組織の性格を変える必要があり、法改正案を国会に提出して成立させる必要がある。というところが、この問題についての正論であり、争点であり、菅政権を礼賛しまくるマスコミでも今回の件を正当化できない所以である。だが、私の認識は多少シニカルで、左翼一般と同じ立場には属さない。


日本学術会議の任命拒否問題 – 「15年体制」(1と3分の1体制)の試論_c0315619_15342187.png左翼リベラルが憤慨しているように、今回の事件は右翼政権による学者たちへの報復であり、カウンターの権力政治の発現に他ならない。2013年の秘密保護法、2015年の安保法制、2017年の共謀罪、これらに反対してきた学者6人が見せしめのように任命を拒否されている。明白な政治目的の弾圧だ。だが、しかし、法的な是非や正義の判断を一旦棚に上げて、純粋な政治のパワーゲームの側面から凝視したとき、「学者の会」や「立憲デモクラシーの会」に集って安倍政権と対抗してきた学者たちは、明らかに政治闘争に負け続けてきたのであり、その意味で敗者の側が代償を負うのは当然のことだと言えよう。力が足りず、反対世論と反対運動を興隆させることができず、政治状況を覆すことができなかった。2015年の安保法制以降、三度の国政選挙があったが、いずれも学者たちが推した「野党共闘」は完敗し、安倍政権の勝利に回収されている。選挙に連勝することによって、安倍政権は秘密保護法も安保法制も共謀罪も正当化し、国民の信認を受けたという既成事実を作り上げてきた。


日本学術会議の任命拒否問題 – 「15年体制」(1と3分の1体制)の試論_c0315619_15450875.pngなぜ彼らは負けたのだろうか。負け続けているのだろうか。そういう本質的な総括もないし、問題意識もないように思われる。「学者の会」も、「立憲デモクラシーの会」も、小粒であり、身内的でルーティンワーク的であり、左翼業界の一部を成す業界団体とか寄合仲間の表象が漂う。躍動感と求心力がない。国民の心に訴えを届け、国民を感動させ、奮い立たせられる指導者的な学者の存在がない。そのことが、三度にわたる政治闘争で学者側が政権に敗北を喫した理由だろう。「学者の会」あるいは「立憲デモクラシーの会」の代表格として顔が浮かぶのは山口二郎だが、この男のカリスマ性のなさ、理論力と説得力のなさが、そのまま両会の存在感の卑小さと虚弱さに繋がっていて、「またも負けたか八連隊」の印象を拭えない。また、そこに加えて並び立つ「知の巨人」の内田樹も、何かおちゃらけ的で業界芸人的な態度が目につき、真剣さが伝わって来ず、全て商売で、銭儲けの動機で終始させている感を否めない。さらに、この世界で特に目立つ香山リカらしばき隊文化人の跳梁跋扈も、マイナスイメージを増幅させているだけだ。


日本学術会議の任命拒否問題 – 「15年体制」(1と3分の1体制)の試論_c0315619_15492545.png悲観的な見方を述べるが、今回もまた、総選挙をやれば自民党・菅政権の圧勝に終わり、その政治的帰結によって、6人任命拒否の暴挙は帳消しにされ、日本学術会議への介入が常態化され不問に付される進行になるだろう。60年安保のときは、戦後民主主義の知識人が率いる革新勢力は安保闘争には負けたが、壮絶な運動によって岸信介を退陣に追い込み、自民党に9条改憲を断念させた。以後、自民党政権は左右イデオロギー対決の政局を避け、マイルドな経済成長路線にシフトし、宏池会と越山会(経世会)がメインストリームで政策を仕切る時代になる。60年代を通じて革新勢力は成長し、70年代にかけて各地に革新自治体を建設してゆく。その前衛となり中核となったのは、反安保・反自民の学者たちだった。美濃部亮吉、飛鳥田一雄、黒田了一、本山政雄、、。彼らは安保闘争そのものには敗北したが、政治を変え、社会を大きく変え、ジョン・ダワーの表現を借りて言えば、日本国憲法の理想を地上に引き下ろすことに成功した。知識人たちは国民を指導し、国民は学者たちを信頼していた。今日の風景とは雲泥である。


日本学術会議の任命拒否問題 – 「15年体制」(1と3分の1体制)の試論_c0315619_15454059.png60年安保の政治史と眼前の政治状況とを比較しながら、ある一つの概念の発見に至った。「15年体制」という着想であり、「1と3分の1体制」という新語の発案である。「55年体制」という語は説明の必要はないが、それが「1と2分の1体制」であった事実も周知の事項である。どうやら、2015年に新しい政治体制がこの国に出現し、われわれはその環境下で政治生活しているようだ。「15年体制」とは、共産党が宿敵であった民主党(民進党・立憲民主党)とくっつき、抱きつき、「野党共闘」なる勢力を作り、右翼政権と対峙を始めた新体制のことである。落ち目の民主党も選挙の利害と党勢衰退の事情から共産党と結びつく選択に出た。そのレジームが構築されて5年が経ち、国政選挙を3回やった。都知事選を2回やった。時間が経つほどに体制は盤石になっている。この「野党共闘」の政治を支え推進している主力部隊が、市民連合であり、「学者の会」「立憲デモクラシーの会」であり、しばき隊運動の学者たちと活動家たちである。2015年のSEALDs運動のときから左翼業界で台頭し、管制高地を占領し、ツイッターに蟠踞して扇動を行っている一団だ。


日本学術会議の任命拒否問題 – 「15年体制」(1と3分の1体制)の試論_c0315619_15461932.png今回の問題は、重大な憲法違反で、国民の権利が侵害された事件だ。けれども、今の大学や学者に、果たして憲法によって自由が守られるべき学問があるのだろうか、40年前や60年前の大学や学者と同じだろうかという疑問は生じる。年間10億円の学術会議の予算は何にどう使われ、それは国民全体が納得了承できるものなのだろうか。右翼政権側は、じわじわとマスコミでかく世論工作を進め、軍事研究は行わないとする学術会議の方針を叩き、「左翼」とレッテル貼りして失墜させる攻撃を仕掛けるだろう。結局のところ、この問題は与野党間の政争の具に利用され、学術会議を「野党共闘」が擁護し、左右対立の果てに政党支持率や選挙結果で決着がつくという方向に収斂するのだろう。これまでの政治闘争と同様に。それが透けて見えるから、この問題にはシニカルにならざるを得ないのである。野党と支持者によって「15年体制」維持のネタにされ、憲法23条や戦前の滝川事件の歴史が飼料にされ、安っぽく消費されることを想像すると不愉快になる。「野党共闘」としばき隊左翼の目的は、「15年体制」を維持することで、その体制の保守と永続こそが自己目的なのだ。


彼らのヘゲモニーと既得権益を守ることだから。さて、日本学術会議のHPをアクセスすると分かるが、例の、会議の命でありレゾンデートルを謳った発足時1949年の「決意表明」は、サイトの分かりやすい位置には掲載されていない。隠されていて、検索で掘り起こさないと見えないよう奥深く配置されている。反戦の原点を表に出さないように政府に忖度している。2008年に制定された現在の「日本学術会議憲章」は、読んで眠くなる一般論的で無味乾燥な文言で埋められ、何のために設立された会議体か分からなくなっている。日弁連もこれと同じ経緯を辿って劣化した。平和憲法の精神を否定し、戦後民主主義の思想と営為と達成を忘却し、そこから離脱して、事務的で俗物的な官僚機構か業界団体の類になってしまっている。


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by yoniumuhibi | 2020-10-05 23:30 | Comments(2)
Commented by なかじ at 2020-10-08 08:28 x
菅の圧政が早速始まりました。
安倍はのうのうと議員を続けてます。
逮捕される気配もないです。

もし、この国が韓国のように正義を貫き、前政権不正を次政権が裁く国であったら、日本はこんなに腐敗してないと思います。韓国だったら安倍は朴槿恵のように死ぬまで刑務所でしょう。
サムスンが日本の電機界を滅ぼし、現代がトヨタに完勝しているのはこの韓国に比べて劣った日本の政治と国民性によるところが大きいです。
Commented by Columbites at 2020-10-08 18:16 x
 菅政権の暴挙は論外ですが,反論すべき左派の無能さにはうんざりです.今回の件で国民が学術会議に不審を抱く原因のひとつに,現行の会員が次期会員を選ぶ「co-optation制」があります.たしかに,学術会議が,長老が密室でゴソゴソ決める「枢密院」になり果てているという批判はもっともです.しかし「co-optation制」は,科学者の既得権益を守るために自らが定めた制度ではなく,2005年に自民党政権(小泉政権)によって改革の名のもとに半ば押しつけられたものです.それまでは,良くも悪くも全員が選挙で選ばれていました.この根本的な点を指摘する人が誰も出てこないのはなぜでしょうか?
 私は2005年に制度が改変される直前まで,学術会議の下部組織である研連の委員を6年間務めました.当時,最年少でパシリの役割を果たしたに過ぎませんが,そんなペーペーでさえも関連学会の選挙を経てボトムアップで選ばれていたことは事実です.それが「選択と集中」のスローガンのもとでトップダウン制への改変を迫られ,妥協してできた産物が「co-optation制」です.竹中某らが幅をきかせていた当時をご存知の方なら,雰囲気を容易にご理解いただけると思います.私は「いまさら世襲制にしてどうする?」と強い違和感を感じたことを今でも思い出します.
 学術会議を批判するのであれば,まず2005年まで遡り,今日までの方向性を決めた小泉政権の科学政策を総括する必要があります.それなしに任命拒否だけを論じても無意味です.例えば,会員・連携会員とも任期を1期6年に限定して再任禁止とし,選挙制に戻せば,容易に新陳代謝が図れるはずです.政権としても,公正な選挙で選ばれた候補者を任命しないというロジックは成立しないでしょう.
 また学術会議に10億円の税金を費やすことも批判の対象です.私もリモート等を活用すれば十分節約の余地があると思います.その一方で,持続化給付金事業では,税金749億円が電通に丸投げされていることもお忘れなく.


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