人気ブログランキング |

ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ

ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13161416.png自民党総裁選がマスコミ報道の主役になり、テレビの関心を埋めている。石破茂が候補で登場して、長く続いた安倍政権の路線を止揚する「グレートリセット」を標榜しているため、テレビでの論戦が活発で面白い。告示当日の昨夜(8日)は報ステとNEWS23で生討論会が行われたが、前者では (1)アベノミクスの成否と (2)負の遺産(森友・加計・桜)の二つに焦点が当てられ、非常に興味深いコンテンツとなった。週末12日に記者クラブ主催の公開討論会が予定されていて、延長戦が演じられるので注目される。討論の次第によっては、14日に開票される地方党員票に影響が出るだろう。討論会で明らかになったのは、菅義偉にはディベートの才能がないという決定的な事実だ。語る言葉が貧相で、反論が巧みにできず、印象に劣り、説得力のポイントを稼ぐことができない。厳しい質問に対して逃げてばかりいる。勉強家で政策通で、語りたい中身と論点が山ほどあり、テレビ出演を重ねて場慣れしている石破茂とはコントラストが著しい。指導者の器量に欠ける。



ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13182821.png普通の感覚で判断して、リーダーに相応しいのは石破茂の方だろう。石破茂は、厳しい批判をされても逃げるということがない。菅義偉の方は、質問に答えず別の話をして、その場をかわす胡乱な態度に終始していた。いつもの官房長官会見の手法と同じだ。だが、選挙の討論会ではそれは通用しないのである。官房長官会見では、司会が官邸官僚だし、その場の記者たちも身内で昵懇の安倍軍団ばかりなので、菅義偉のペースで仕切って進行させることができる。「当たらない」とか、「政府として問題とは考えない」とか、「個別の問題については回答を差し控える」とか言って切り捨て、応答をせず、「時間がないので次」と言えばそれで済んだ。論破される前に強権的に遮った。選挙の討論会では、菅義偉も一候補者であり、そのような態度と方式は通用しないのだが、菅義偉にとってマスコミとのやりとりは官房長官会見のスタイルしか覚えがなく、冷静な応酬ができず、粗雑な方法で押し通してしまうのである。討論を演出する才能がなく、弁が立たず見劣りする。


ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13151337.png菅義偉が「自助・共助・公序」をスローガンとして掲げたのも、政治家としての行動としてあまりに無神経で非常識に思われる。この点は報ステの徳永有美が生討論の席で衝いていて、やはりそう思う人間が多いのだろう。この標語は、小泉政権の後に竹中平蔵が何度も口にするようになって耳に付いた言葉だ。竹中平蔵が自助論を喧伝し、意味は社会保障の切り捨てであり、公共政策の削減であり、それを受け入れろという地均しだった。新自由主義のスローガンであり、リベラリズムの社会原理である。この標語と言説には、今までの戦後の政府があまりに弱者を含めた国民全員に手厚く施しをしすぎたという批判の含意がある。国民が政府に頼って甘えるようになり、怠惰なフリーライダーになり、自助努力をしなくなったという決めつけがある。2000年代以降、こうした邪悪なプロパガンダを竹中平蔵がシャワーし、竹中平蔵の子分たちがマスコミでリフレインし、維新の台頭や第2次安倍政権へ繋がる環境的基礎を作っていく。下野して野党になった自民党の綱領にまで文言が収まった。


ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13224791.pngもともと、「自助」を強調するリベラリズムは、90年代の民主党の立ち上げの際にも吹聴された政治哲学であり、90年代の日本の政治の流行思想で、小沢一郎の自由党もこのイデオロギーを前面に打ち出した政党だ。当時は、ネオリベラリズムがこれほど凶悪な弊害と厄災に至るという認識がなく、皆が軽口を叩くように戦後日本の一億総中流社会を貶下し、護送船団方式を侮蔑し、民営化と規制緩和を無条件に賛美していた。91年のソ連崩壊が背景にあり、労働運動の右翼的再編と小選挙区制導入の「政治改革」の流れが前提としてあったこと、あらためて確認するまでもない。長い時間をかけ、第2次安倍政権の年月を経て、この言説なり標語は、政府は何もしないのだという無策行政主義を当然視する過激な意味になり、国民一般のために政府のリソースは使わないのだという開き直りを正当化する政治用語になった。菅義偉の自助主義が典型的に現れているのがコロナ対策で、PCR検査もしないし、隔離など対策はすべて自治体に任せている。


ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13312854.png自助主義のイデオロギー性、すなわち、その言説の正体が国民一般を幸福に導くものではなく逆であること、中間層を解体し、社会に格差をもたらし、国民多数を貧困に落とし込む政策の騙しの宣伝文句であり、新自由主義を美化するトリックであることの真実が、20年かけて一般にも常識になっている。この標語を聞けば、誰もが想起するのは竹中平蔵の顔だろう。もう、今の日本国民には自助などできる余地はない。資産を失い、健康年齢を失い、コロナ禍で働き口を失った多くの国民がテレビの前で佇んでいる。地域の経済発展どころか、持続可能性の展望すら失っている。そんな中で「自助・共助・公助」を平然と言い、それを総裁選のスローガンに立てる菅義偉の無神経に鼻白む思いがする。まさか「自助・共助・公助」を衆院選でもスローガンにするのだろうか。こんな効果としてリスクの高い標語を選ぶということが、菅義偉の頭の悪さとセンスの無さを証明していると断言できよう。そして、菅義偉の周辺にライターがおらず、演出戦略に長けた参謀がいないことを物語っている。


ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13330632.pngおそらく、菅義偉自身が「自助・共助・公助」のイデオロギーの徒であり、この信念にコミットする狂気の確信犯なのだろう。この時勢、叩き上げで這い上がってきた経歴の成功者には、グッドウィルの折口雅博のようにこの類の思想の持ち主が多い。ただ、菅義偉の場合、自己責任主義(=レッセフェールの政府無責任主義)の経済思想がお気に入りというより、それ以上に動機として強烈な反共主義があり、反共右翼としての必然で新自由主義を選び取っているという核心的契機がありそうだ。通常、菅義偉的な類型と世代の自民党政治家というのは、ネオリベとは本来的に相反する関係性のイメージがある。80年代以前の自民党議員の属性はそうだった。新自由主義はまさに社会主義の否定であり、社会の中に制度化されて定着したあらゆるソシアルな要素を根絶・撤廃しようとする。公共政策を否定し、水道を民営化し、生産者組合と労働組合を潰し、労働基準法を潰す。菅義偉がどのように右翼青年として出発し、冷血で冷酷な反共闘士となったのか、ジャーナリズムの調査と報告が待ち遠しい。


推理を入れるとすれば、60年代末の大学紛争の激動の過程があるだろう。4歳年上の町村信孝が類似の範疇に入る(菅義偉よりアッパーなクラスの住人だが)。当時の若者のエネルギッシュな革新運動に対してカウンター(保守反動)の側に立った異端者たち。その人生の目的と使命感。


ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13460482.png安倍政権の番頭であり、話下手で、ゴリゴリの新自由主義者の菅義偉が、自民党諸派閥を密室で纏めて次期総裁確実となった途端に、なぜ急に、あれほどの人気が出たのか。その点は謎である。末期安倍政権に対する異常に高い評価というのも、俄に信じられない政治現象だ。愚衆の付和雷同というほかなく、日本人の政治意識の終末的な劣化に途方に暮れるしかない。総裁選レースを報じるマスコミの世論調査では、今年に入って石破茂がリードし、コロナ禍の中で安倍政権を批判する石破茂に国民の期待が集まっている状況が顕著だった。リセットを求めている国民の気分は明確だった。それが、わずか一週間弱の多数派工作の政治報道とプロパガンダで、あのように簡単に急変し逆転してしまうものなのかと、軽薄さと空疎さに驚き脱力してしまう。安倍辞任以降、テレビとネットの報道は石破茂を叩きまくってきた。自民党内で評判が悪いだの、仲間外れだの、政治生命の終わりだの。マスコミは官邸と直結しているから、石破茂の悪宣伝に徹したのだろうが、それに簡単に釣られる国民世論もどうかしている。


信じられないのは、マスコミの世論調査ではなく、付和雷同の国民の方なのだ。スマイルズの法則が示す国民の政治能力の実態なのだ。絶望はそこにある。



ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13461865.png
ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13573530.png
ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13574624.png
ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13575422.png
ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13580252.png
ディベートが無能な菅義偉 - コロナ禍で「自助」を説く頭の悪さとセンスの無さ_c0315619_13592062.png

by yoniumuhibi | 2020-09-09 23:30 | Comments(3)
Commented by 長坂 at 2020-09-10 08:14 x
ネットの情報だと大して叩き上げてもいないようですね。あの時代の地方出身の大学生って、程度の差あれどあんなものでは? 朴訥な苦労人はいい人のイメージをメディアが勝手に作り上げているのでしょう。日本の場合は社会の隅々まで「抑圧の移譲」なので、「俺がこんなに苦労したんだからお前もな」で決して同情しないし優しくしない。極めて新自由主義的で、自分反緊縮、他人緊縮。反共姿勢も冷戦下ではあるし、親は元満鉄職員で親戚姉二人教師らしいが日教組よりも「忠君愛国」の環境、てか普通の日本人。学生運動の反動、思想信条という「高尚」な理由付けよりよくいるノンポリ極右 (柔道部とか応援部) だったんじゃないかな? 亡くなられた赤木さんも叩き上げと言われているが、真逆な人生観。
ソ連崩壊前の東欧みたいな今の日本にはぴったりだとは思いますが。
国谷さんを恫喝降板させた張本人でしたね。
Commented by なかじ at 2020-09-11 13:52 x
絶望的に無能な首相が誕生しようとしてますね。
しかしリベラル勢力からみると好機です。
安倍の悪政と圧政に市民たちは苦しんできました。
民衆の声でようやく安倍下野させたわけですから、菅も下野させて、リベラル勢力による民主政治が行われることを期待します。
鍵となるのは立憲民主党が支持を回復するかどうかです。
マスコミの後押しが必要な局面だと思います。
Commented by 酒呑童子 at 2020-09-12 20:10 x
今日のNHK夜7時のニュースで、庶民の苦境を伝えるこんなニュースがあった。看板設置業を営む50代の男性。妻と中学生の子と三人暮らし。コロナの影響で仕事が減り、ささやかな幸せの巣であり、思い出の場である自宅を売却することとなった。親子の生活の場として、一生かけて返済していく2000万円のマンションは、けっして贅沢な買い物ではないはずで、こういう現状の庶民はきっと大勢いるはずだ。

貯蓄を切り崩すのはもちろん、この父親も語っていたが子供の教育費のために自分の昼飯代を削り、いろいろと切りつめ切りつめやりくりしても、厳しい状況が続かざるをえない人たち。

自民党総裁選で菅は、自分が目指す国家像は「自助・共助・公助」だと訴え、「まず自分でやってみろ。次に家族や周囲に頼れ。最後には国が助ける」といったこと言っていたが、「まず自分でやってみろ」とは、切りつめ切りつめてもどうにもならず、自宅を売却して引っ越して行く男性の一家のような行動を指すのだろうか。これはあまりに酷な国家像だ。そうなる前に、国が手を差し伸べるのが本当だろう。

「自分のような普通の人間でも努力をすれば総理大臣になれる」と菅は語ったが、3人の候補の中で、語るに足るほどの政治哲学も政策も何もないのは、ただひとり菅だということは明らかになった。なぜ菅が総理大臣になれのるか、それは「自分でやってみる力」「自分の才覚・努力」でも何でもなく「派閥の論理」と「周囲の後押し」にすぎない。勘違いの「自助論」など、はなはだ恥ずべきものだし、庶民にとっては大迷惑だ。


カウンターとメール

最新のコメント

今回のBLM運動が盛り上..
by 長坂 at 15:15
 駄文続きすみません..
by 印藤和寛 at 08:10
パックンはご家庭の事情で..
by コスモス at 00:22
 ロ-ルズやアーレント、..
by 印藤和寛 at 21:04
ロールズを読んだ事ないの..
by 長坂 at 11:29
 「あなたはすばらしい人..
by みきまりや at 08:45
本を批判的に読まなくては..
by さふらん at 15:02
実証主義をうたう伊藤隆氏..
by H.A. at 20:25
私は、日中戦争は笠原十九..
by 長坂 at 19:47
五輪さんの歌のご紹介有難..
by アン at 01:09

Twitter

以前の記事

2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング