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社会主義の再開発 – レーニンの帝国主義論と鄧小平の社会主義市場経済

社会主義の再開発 – レーニンの帝国主義論と鄧小平の社会主義市場経済_c0315619_13021821.png日本共産党の綱領改定について検討を加えながら、社会主義のコンセプトのリニューアルという問題を提起した。社会主義とは何か、どんなビジョンであり、モデルであり、プロジェクトなのか、その中身を埋める理論的模索が日本では全くなされておらず、関心と熱意がない。アカデミーのみならず、共産党すらその任務と課題に積極的に取り組もうとせず、逆に疎んじて遠ざけてしまっている。「中国は社会主義ではない」という命題を立てて訴えるなら、それなら社会主義の理念はこうで中身はこうだという具体論が対置されなくてはいけない。具体論が提出され、論争されなくてはならない。今回の不破哲三による綱領改定の方法的立論、すなわち発達した資本主義国の所産と前提に重点を置いて社会主義論を組み立てる提言に対して、それに触発され反論する立場から、私なりの社会主義論の着想と試論を述べたい。マルクス主義と社会科学の理論は、どこまでもディアレクティークでなくてはいけない。



社会主義の再開発 – レーニンの帝国主義論と鄧小平の社会主義市場経済_c0315619_13430683.png私見では、マルクスの後、社会主義にバイタルでリアルな生命力を与え、世界を作り変えてきた指導者のテーゼとセオリーとして、価値ある二つのものが挙げられる。第一はレーニンの帝国主義論であり、第二は鄧小平の社会主義市場経済である。二人ともマルクス主義の知識人であり、前衛党を率いた革命家である。レーニンから見ていこう。今日、あまりにレーニン否定の気分と議論が多すぎ、理論家としての意義が埋もれてしまっている感を強くする。不具合に感じる。もしレーニンの帝国主義論がなく、ロシア革命がなかったら、ゲバラの存在はなく、社会主義のイデーとエートスが全世界の知識人に共有されることはなかった。今日、ゲバラは世界中の左翼のアイコンとなり、シンボルとなって信奉され親愛されている。ゲバラが生涯戦った敵はアメリカ帝国主義であり、CIAによって殺害された。帝国主義論こそが、マルクスの理論を西欧世界の限定から解き放ち、全世界に拡大させ、世界中の知識人をマルクス主義の門徒にしたと言える。


社会主義の再開発 – レーニンの帝国主義論と鄧小平の社会主義市場経済_c0315619_13470520.pngレーニンの帝国主義論のキー概念は「資本の輸出」であり(そして「労働貴族」であり)、これはマルクス資本論の理論的改造であり、追加と修正に他ならない。この営為によって、資本による搾取と収奪は国境を越えることが論証され、資本主義の運動とその矛盾は地球大の問題となり、植民地化された国々のいわゆる「被抑圧民族」こそが社会主義革命の主体となる認識が媒介された。遅れた国々に生きる人々こそが人類史の未来社会を切り開き、地球上に理想社会を築く前衛となり得る展望が導かれた。マルクス資本論のセオリーをこのように大胆に発展させ、マルクスの同志を世界大に拡大させた点で、思想家レーニンの意義は余りある大きさがある。無論、それがもたらした巨大すぎる悲劇と厄災と禍根を見落としてはいけないが。不破哲三は、長くて精密な古典研究を通じて、レーニンがいかに資本論を極め尽くしていたかを論じている。最終的にレーニン否定の結論に達した不破哲三も、資本論研究者としてのレーニンへの尊敬を隠していない。匠こそが匠を知る。


社会主義の再開発 – レーニンの帝国主義論と鄧小平の社会主義市場経済_c0315619_13531334.png鄧小平の社会主義市場経済。これを社会主義の指導者のビッグでモニュメンタルなプロジェクトとして評価し、レーニンの帝国主義論に並ぶ偉業として意義づける論者は、おそらく私以外にはいないだろう。鄧小平がいなければ、社会主義なるものは常に貧しく劣悪な経済社会であり、夢と希望のない、非効率でサボタージュが横行する、粗悪品だらけの統制経済の姿でしかなかった。失敗と貧窮と自信喪失の社会像だった。個人が自由な発想と能力を開花させ、成功を掴んで豊かな人生を得られる社会ではなかった。鄧小平のチャレンジによって、初めて社会主義は豊かな社会の表象をわがものとし、暗くて重苦しい赤貧悪平等の苦界から脱出することができた。だけでなく、ファーウェイの5Gに代表されるように、先端科学技術で米国を追い抜くパフォーマンスを示し、20年後には米国を凌駕してGDP世界一の経済大国になると予想されている。ここにも裏側の負の側面はあるが、カリスマ鄧小平と使徒中国共産党の努力と成果を過小評価することはできない。鄧小平は中国人に自信を取り戻させた。


社会主義の再開発 – レーニンの帝国主義論と鄧小平の社会主義市場経済_c0315619_14002012.png今は自信を取り戻しすぎて傲慢の害が顕著だが、アヘン戦争以来の屈辱と鬱懐を払拭させ、中華のプライドを意気軒高に確信づけた。また、冷戦後のアジア・アフリカ世界に、米国に従属しなくても、米国やEUが押しつける「自由主義」 - グローバルスタンダードの名の新装帝国主義=新自由主義 - に従わなくても、経済成長と経済発展は可能なのだという実績と針路を示した。社会主義の名を冠した成功モデルを対抗的に見せつけたと言える。アフリカ諸国の指導部にとっては、ソ連型ではない、競争力のある有意な社会主義の道筋があるのだという発見であり、政策路線のオルタナティブの確保だろう。知識人で革命家の鄧小平は、どこまでも独創的で、マルクス以降の教科書から逸脱することを恐れず、大胆でオリジナルな発想で現実を変革しようとし、地上を理想に近づけるべく斬新な概念を開発した。一国二制 one country two systems もそうである。鄧小平の胆力と指導は、資本主義だの社会主義だのというイデオロギーの言葉が、どれほど現実の生きている人々の前で相対化されるかを教えている。


社会主義の再開発 – レーニンの帝国主義論と鄧小平の社会主義市場経済_c0315619_15141782.png鄧小平の挑戦は社会主義のコンセプトの再開発であり、その成功は、資本主義を超克しようと求める者にとって画期的な事実だ。レーニンと鄧小平。社会主義者たちは意義ある歴史を刻んでいる。夥しい犠牲と副作用を裏腹に抱え持ちながら。それは、そもそも不完全な生きものである人間が、理想社会を追い求めて航海の船を出し、理念の羅針盤を頼りに試行錯誤する姿に他ならない。社会主義とは人間が夢を追いかけ、ユートピアを追求する営みなのだから、そこにはイマジネーションの投擲がなくてはいけない。社会主義市場経済も、一国二制も、指導者による想像力の飛翔であり、新しい概念の定置である。そこには常に所与の現実があり、生きている民衆がいて、政治家の責任がある。政治の現場と社会の矛盾があり、現場は独自の歴史と伝統を背景にしている。教科書の言葉だけで総括できるものではない。マルクスはザスーリッチに宛てた手紙で、ロシアにはロシアの革命の方式があり、資本論に杓子定規にとらわれる必要はないと答えた。中国の現在を国家資本主義と呼んで批判するのは容易だ。だが、本当にその裁断的態度でいいのか。


80年代の中国の社会主義市場経済は大塚久雄の理論をモデルにしている。日本に学んだ経済システムと社会形成の取り組みだった。それがマイルドに発展せず、2000年代初から国家資本主義と呼ばれる悪性表象となり、何やら粗暴で剛直な、国家主導のネオリベラルの構造体と運動体と化したのは理由はあり、そこにも日本の負の影響があること、われわれ日本人はその事実を忘れてはいないか。



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by yoniumuhibi | 2020-01-20 23:30 | Comments(3)
Commented by コスモス at 2020-01-21 12:59 x
鄧小平、『大地の子』でそれらしき人が出てきますが、散々な書き方されてました。(私は作者Y崎さんが好きではありません。大衆には受けるんでしょうけど、いろいろと問題がある書き方が多くて、私はいいとは思いません。この作品で言えば孤児問題に対する怒りだけは共有しますけど。)
パナも家電部門のヘッドを中国に移すとか記事で見ました。日本ではそもそも、日本のものが売れませんよ。家電買うにしても、アジアのメーカーのものか、ほかの先進国のもので、日本のものは選択肢にありません。車も売れてないみたいですが、当たり前でしょう。
日本メーカーのものが売れないのは、世界的な傾向だと思いますね。製品に競争力がない。
Commented by 料理女 at 2020-01-21 15:59 x
ぜひ理論模索すべきです、彼らが諦めてるのでないなら。国家が社会主義にどうかかわるかを論じて死刑にされた日本人理論家がいた国、日本。
鄧小平達にそれが可能だったのは、単なる妥協の産物ではなく、国家人民を豊かにするという"不変理論"が形成堅持できたからだろう。場当たり対応で一党独裁だけが不変理論では罠にかかって行き詰る。習近平の貧困撲滅や腐敗幹部退治が人民権力の不変理論に昇華されるかどうか。「料理女の国家」は如何にして可能になるかの制度理論の解明にも挑戦してほしいもんだ。
「料理女の国家」は何時出来るのか!「料理女の国家」は何故放棄されたのか。世界の主義理論・党理論そのものの改竄黒歴史こそが剔出できるか。それなくば産湯と共に赤子を流すことになる。
資本の輸出とその増殖回収、戦争との関係。高度成長期のマルセイとは米からの資本輸出に対応していた。労組も執行権を中央に取りあげられ党も改造された。発達してない日本は国家を乗取られ30年間やられた。今度は中国が香港や「ウイグル問題」とやらで仕掛けられている。ホブソン、ヒルファディング、レーニンが取り上げなかった日清日露戦争による国際資本の大増殖歴史から~日本を属国にした米の戦争手段の資本大増殖史が、日本人か中国人の解明で見たいもんだ。
日本の「共産党」や「新左翼」は911の正体について事件事実の探究心において米国物理学会より遥かに真逆に低レベルなのは何故か。属国歴75年と党の理論との関係は如何w 独裁幹部が勝手に理論を弄繰り回すのはゾロアスター教をば自民族だけのユダヤ教に改造して以降の"伝統"だろう。
「生産力」は誰のものか。国際法なるもので規制できるか。裏付ける正義の力とは何か。垣間見るだけだが誘発思考でした→セルゲイ・グラジエフ20191007
https://twitter.com/GeorgeBowWow/status/1181110083511410688/photo/1
Commented by a at 2020-01-22 12:07 x
大学でマルクス経済学を教えています。
日本のマル経にもいろんな学派がありますが、私自身はソ連・中国=国家資本主義と規定し、学生にもそう教えています。以下に松尾匡先生の記事を紹介しておきます。

松尾匡「ソ連=国家資本主義論」
https://l.pg1x.com/jk7r

ザスーリチ宛ての手紙も論争はありますが、私自身はやはり、先進資本主義国から社会主義に移行すると考えるのが基本だと思います。ただ、マルクス主義政党が政権を担うと、その“苦しみ”を和らげることができる、よりスムーズに移行できる、と捉えています。


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