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殉教者 - ソレイマニはイランとサウジの和平外交を担う特使だった

殉教者 - ソレイマニはイランとサウジの和平外交を担う特使だった_c0315619_13542575.pngイランによる米国への報復攻撃が8日未明(日本時間同日午前)に行われ、イラン国内の革命防衛隊基地からミサイルが発射、イラク領内にある米軍基地2か所に15発が着弾した。が、基地内の米兵に死傷者は確認されず、イラン側が故意に無人の敷地内を標的にし、流血の被害を出さないよう周到に配慮、事態不拡大の姿勢を見せたのだろうとマスコミでは推測されている。日本時間の9日未明、トランプが会見に現れ、「イランは矛を収めている」と表明、軍事的反撃は行わず、事態を収拾する方針を示した。報復攻撃の直後、イランはスイス経由で米政府に書簡を送り、「反撃しなければ、対米攻撃は続けない」とメッセージを伝えていたことが明らかになっていて、この外交対応がトランプの再攻撃中止の判断に繋がったと見られている。報復合戦は止まり、年明けから始まったイラン戦争の危機は回避された。



殉教者 - ソレイマニはイランとサウジの和平外交を担う特使だった_c0315619_13562841.pngもともとトランプには戦争の意思も計画もなく、スレイマニ殺害は謀略による挑発であり、その目的は、岡本行夫が説明していたとおり、弾劾報道をスピンさせて国民の関心をイラン危機に転じ、選挙戦の環境を有利に引き戻すところにあった。戦争の危機を演出することで、大統領の求心力を高める効果を狙ったのであり、国の安全保障政策を自己の支持率のために利用した悪質な政治である。イランを激怒させ、報復攻撃を行わせるため、最も衝撃の大きなオプションとしてソレイマニ殺害を選び、それを実行して緊張を煽った。日本のマスコミは、常に米国とトランプを正当化する言説で終始し、イランの今回の行動はトランプの想定内だったとか、米軍の圧倒的戦力の前にイランには全面戦争する覚悟はなく、ミサイル空撃ちで面子を保つのがやっとだったとか貶し、今回の危機回避を予定調和的な必然だったと言っている。だが、その見方は全く正しくない。


殉教者 - ソレイマニはイランとサウジの和平外交を担う特使だった_c0315619_13563856.png危機回避の結果は必然ではなく偶然だったのであり、岡本行夫が指摘したとおり、イラン指導部が賢明で抑制を利かせたため、死傷者ゼロの報復攻撃という「プロレス」で済んだのである。そこまでトランプがイラン側の内情と対応を読み切っていたというのであれば、トランプの
賭博師の「天才」を評価してよいかもしれないが、国防総省の制服からすれば、とんでもない危険な博打をやられたということでしかない。国防総省にとってはソレイマニ殺害は寝耳に水で、突然の緊張の到来にパニックとなった新年の一週間だっただろう。徒労と後味の悪さだけが残った。国の安全保障は結果オーライというわけにはいかない。丁半博打の賭けはできない。指導者は戦争を権力維持の道具にしてはならない。マティスならそう正論を言うだろう。今回の事件(ソレイマニ事変)はトランプが仕掛けたもので、トランプに全面的に責任がある。米国の国益にプラスになったとは言えない。


殉教者 - ソレイマニはイランとサウジの和平外交を担う特使だった_c0315619_13553072.png反米シーア派の軍事的指導者を殺害して排除したことは、中東での米国の活動と覇権にとっては、確かにゲームの環境を有利にする獲得だったと言えるかもしれない。だが、代償として米国は二つのものを失い、イランと反米シーア派に与えている。その一つは、イランに核開発のフリーハンドというカードを与えたことだ。イランは無制限のウラン濃縮を表明、事実上の核武装開始宣言をした。実際、作業を着々と進めているはずで、北朝鮮と同じ進行になっていて、国際社会は歯止めをかける術がない。報ステの内藤正彦の説明では、核爆弾の製造・完成まで期間は1年と言っていた。イラン側に内在して考えたとき、お行儀よく国際社会と協調して合意を守っていた自分たちは、米国の非道なテロで指導者を殺され、わがままを貫徹した末に手練手管で核兵器を得た北朝鮮は、米大統領を対等の交渉の席に引っ張り出して脚光を浴びているというコントラストがあり、それこそが国際政治のリアルである。


殉教者 - ソレイマニはイランとサウジの和平外交を担う特使だった_c0315619_13570599.pngもう一つ、トランプの賭けが失敗してイランとシーア派に与えたカードは、イラクの政情変化であり、イラクが一気に米軍排斥へと動いたという帰結である。5日、イラク議会は国内に駐留する米軍の撤退を求める決議を可決した。米国はこれを認めず応じる意思はないが、この決議によって米軍はイラクに駐留する法的根拠を失った、あるいは正当性がきわめて危うくなったと言えるだろう。現在、イラクは無政府状態と言えるほどの政治的混乱の極みにあり、国家権力(主権)の所在が流動的で、それに乗じて米国とイランが影響力のヘゲモニーを争う状況になっている。その渦中でソレイマニ事変が起きた。CIAと革命防衛隊の鬩ぎ合いの中で、ソレイマニ殺害というテロが起きた。事件をマクロ的に総括して論評すれば、岡本行夫が言うようにトランプによる選挙目当ての過激策の行使だが、ミクロの視点で、中東で暗躍するCIAからすれば、緊迫した情勢の中の窮余の策で、一瞬の好機を捉えた作戦決行だったのだろう。


殉教者 - ソレイマニはイランとサウジの和平外交を担う特使だった_c0315619_13571918.pngCIAはソレイマニが指揮するシーア派勢力に連戦連敗で、シリアから駆逐され、イスラム国をソレイマニ軍が殲滅したイラクでも徐々に足場を失っていた。ソレイマニに敗北の屈辱をあわされ続けたCIAにとって、大統領命令による暗殺排除はどうしても得たかった獲物の工作だったに違いない。だが、事変によってイラク世論は硬化し、イラクは反米の方向に流れ、多国籍軍は撤退の動きを始めている。ソレイマニがイラクを訪問したのは、実は、イランとサウジの和平外交を特使として任務遂行するためであり、しかもその仲介をイラク政府がとっていたという報道がある。イラク政府はその努力を米国CIAによってぶち壊されたわけで、まさに怒り心頭だろう。また、この情報が事実であれば、中東全体の平和にとって画期的な出来事で、イランとサウジの対立抗争を維持させたい米国・イスラエルにとっては危機的事態の発生である。CIAがソレイマニ謀殺に出た理由がよく分かるし、事変はサウジに対する米国の警告でもあったわけだ。


殉教者 - ソレイマニはイランとサウジの和平外交を担う特使だった_c0315619_13575120.pngアジア経済研究所の鈴木均が、ソレイマニに哀悼の意を表し、イラン政府に伝えている。「私はひとりの日本国民として、長年イランの優秀な司令官として西アジア地域の平和を守るために活動してきたソレイマーニー司令官の殉教に対し、哀悼の意を申し上げる」。革命による建国以来、一貫して反米を貫いたが故に、米国の経済制裁の締めつけを受け続けたイラン。一方、冷戦に勝利した米国は世界の覇者となり、超大国となって中東に土足で君臨する。が、日陰者で苦境に陥ったはずのイランが、なぜか、イラク戦争の後、じわじわと西に勢力を広げ、シーア派三日月地帯なる勢力圏を構築し、ミニ帝国主義的な小さな覇権を押し出していた。堂々と米国と対峙し、屈服せず、それどころか西に進撃し、地中海まで勢力ベルトを伸ばしていた。それは、ソレイマニのゲバラ的なカリスマと指導力によるものだったのだろう。何であれほどヒズボラが地上戦の戦闘に強かったのか、その秘密の一端が理解できたような気がする。
軍隊は指揮官次第なのだ。


兵士が命を賭けて戦う軍隊は、そして兵士が機械の歯車になる軍隊は、上に立つ指揮官の能力と資質ですべて決まるのである。この10年間、ソレイマニは、イラン人とシーア派と反米イスラムの誇りを支えるシンボルであり、そして、国際社会からは「テロリスト」の烙印を押され、異端・逆境に置かれた切歯の身で闘わざるを得ない彼らの、抵抗と忍耐を支える精神的支柱だった。



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by yoniumuhibi | 2020-01-09 23:30 | Comments(4)
Commented at 2020-01-09 19:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by アラ還 at 2020-01-09 23:19 x
今回の緊急事態に対し、経済的側面から評論する人らが多かった。
彼らは、戦争のダイナミズム、潮流、うねりをかろんじている。
金中心で物事が全て動いているかのような感受性なのだろう。

戦争の始まりは国民のフラストレーション、モチベーションの昂まりが後押しし、
戦争の終わりは国民の厭戦気分とモチベーションの劣化が足を引っ張る。

司令官を失った革命防衛隊、果たして誰がタガを嵌められよう?
まさに、虎の尾を踏んだのはトランプではないか。
選挙対策の丁半博打でハズレを引いたと私は見ます。
Commented by 長坂 at 2020-01-09 23:31 x
トランプが「お前の母ちゃんデベソ」的幼稚で馬鹿丸出しツイートで挑発するも、イランは始終冷静で大人の対応。イラクに事前に攻撃を通告し、当然アメリカにその情報は渡るから両国兵士を避難させてミサイル発射。HARD REVENGEを要求しているイラン国民をとりあえず納得させる。トランプはソレイマニ殺害はバグダディ暗殺ぐらいとその影響力を過小評価していたのか、イランが本気モードになったら取り返しがつかないと改めて気付きかなり動揺していた。これ以上エスカレートせず終結したのは自分の手柄と自慢しても、実際はイランの「今回はこのくらいにしといてやるわ」だ。ソレイマニ殺害理由の「アメリカ人に対する差し迫った危険」が一体どれくらい喫緊の事なのか事実なのかもはっきりしない。弾劾訴追前にイラクを空爆したクリントンもそうだが自己延命の為には大量殺戮の戦争も利用するなんて本当に人倫に悖る行為。
押し込み強盗の米軍がイラクに駐留しているのは主にIS掃討の為。今回三行半を突きつけられたが、出て行かなくてもいいようにするにはこっそりISを支援して又イラクで勢力を拡大させる?
Commented by 愛知 at 2020-01-10 03:26 x
イランで墜落したウクライナ国際航空752便、西側の複数メディアからイランの地対空ミサイルによる誤爆との情報が流れはじめて。乗員乗客176人のうち、82人はイラン人、63人はカナダ人、11人はウクライナ人(9人の乗組員を含む)、10人はスウェーデン人、7人はアフガン人、3人はドイツ人・・・全員死亡。乗員乗客には愛する家族、恋人、友人がいたでしょうに。イランの誤爆が事実であれば、それを招いたのはトランプ。いったい、どうやって責任を取るつもりなんでしょうか。


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