人気ブログランキング | 話題のタグを見る

9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか

9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13485077.png流儀を通して、そのまま中村哲と呼ぶ。中村哲は本当に大きな柱だった。9条にコミットするわれわれの精神的支柱だった。憲法9条の生きた鏡であり、生ける象徴であり、9条の守護神的存在そのものだった。日本国内では、9条の精神は日々衰え死につつあるけれど、海外のアフガンの地で中村哲が9条の平和主義を生き生きと実践し、9条の普遍的な正しさを証明し、9条の成功と繁栄を示し、われわれを力づけてくれていた。そして、言葉を送ってくれていた。中村哲は9条のサムライであり、9条の詩人だった。不毛の地で寡黙に一人で重機を操る小さな中村哲の姿が、どれほどわれわれを勇気づけてくれたことか。中村哲の言葉と姿は心にしみた。火野葦平のおいだという事実は初めて知ったが、卓越した文学的感性について、なるほどと頷かされる。医学、土木工学、文学、何でもできるダビンチ的万能の人だった。



9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13485978.png偉大な小さな巨人。人間というものは、やろうと思えば何でもできるんだよということを教えてくれた先生だった。どこまでも謙虚で、忍耐強く、弱者にやさしく、責任感強く、勇気があり、心から尊敬できる人だった。オーラルがよかった。詩的なリズムと響きがあり、テレビで聞きながら、いつも心地よい感動に包まれた。遠くから、日本人にメッセージを伝えていた。生き方を見つめ直す啓示を与え、9条への確信へ導いてくれていた。こういう至高のオーラルを聞かせてくれる人は、日本人ではほぼ皆無になっている。この10年ほど、ペシャワール会の現地活動のアップデートを伝える特集報道がなかった。2009年に報ステが流した映像が最後ではないか。徳永有美がそれを見て素朴に感動している。日本の政治情勢の変化のため、安倍化し右翼化したマスコミのため、中村哲の活動への関心は低くなっていた。だけど、そんなことはお構いなしに、中村哲は求道的に活動を続けていた。


9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13493119.png誰が中村哲を殺したのか。殺害の報道に接したとき、最初に思い浮かんだのは、アラファトが死んだときに悲しみにくれていたパレスチナの黒いチャドルを被った老婆の写真である。アラファトの死は毒殺だったが、死の数年前から、国際社会ではアラファトは英雄からテロリストの悪玉に堕とされ、貶価と侮蔑の対象になっていた。それと同時に、パレスチナの民衆も、テロリストを崇める無価値な愚衆だという表象が塗りつけられ、偏見が固められていた。私には奇妙に思えることであり、そこに政治の臭いを感じ取るが、中村哲の死と同時に、すぐに5chでは9条を貶めるスレが立ち、9条と中村哲を冒涜するキャンペーンが始まって今でも続いている。中村哲に対する揶揄と罵倒が繰り広げられている。そして、マスコミ報道では、これまた私には不思議で面妖なことだが、中村哲を語るに当たって9条の語が一言も出ない。9条に触れない。9条の理想を実践して証明した中村哲の意義が語られない。


われわれは、あのときのパレスチナの老婆と同じなのではないか。構図的に、あのときの(今の)パレスチナの民衆と同じ存在にされようとしているのではないか。9条こそ普遍的真理であり日本のアイデンティティの根幹だと考える日本人は、アラブの大義を奉じて抵抗し続けるパレスティナ人と同じ運命にされるのではないか。暴力によって。圧倒的な力によって。日米同盟の宗教的正義によって。


9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13495160.png誰が中村哲を殺したのか。次に思ったことは、このテロは龍馬暗殺に似ているということだった。英雄が一瞬のうちに殺された。犯人は分からない。英雄は偉大で、身が危険ではあったが、存在が大きすぎて逆にテロの対象にはなりにくく、本人もそれを分かっていたから護衛は軽装で、そこに油断が生じていた。誰も龍馬を殺す動機がなく、逆に誰もが龍馬を殺す動機があった。幕府側にも、薩摩藩にも、土佐藩にも。激動の情勢の中、次の時代の主導権の奪い合いの沸点で、龍馬は邪魔な存在だった。龍馬暗殺は、現在ではかなり事件全体が解明されて犯人像は明確だが、少し前までは幕末史最大のミステリーだった。アフガン政府、タリバン、イスラム国、、疑えば、すべての勢力に動機がないとは言えない。だが、基本的に、中村哲を殺して政治的に得をする勢力はアフガン国内にはない。国民の敵になるだけで、国民全体から反感を買うだけだ。イスラム国も、こんなことをすれば余計に落ち目になるだけだ。


9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13503590.png誰が中村哲を殺したのか。犯人像を推理する上で重要と思われるのは、犯行がきわめて周到で計画的で、そつのないテロルを実行している点である。中村哲の行動をよく調べ上げ、時間と場所の急所を押さえている。情報を収集して分析している。あれだけ白昼堂々と街中で敢行したテロルにもかかわらず、犯人特定に繋がる情報(車の車種だとか小銃の種類とか逃走経路とか)が全く出てこない。そこにアフガン政府の「関与」を疑う余地が生まれ、「捜査の消極性」を訝る不自然さが残る。アフガンの国家と国民にとって至上の英雄が暗殺されたという非常事態だが、当局はどこまで真剣に捜査しているのだろうか。報ステが5日に伝えた「水利権と土地高騰をめぐるトラブルと怨恨」の「現地情報」は、馬鹿馬鹿しくて話にならないが、誰がそのようなガセネタを流しているのだろう。意図的に流布しているのであれば、真犯人を隠すカムフラージュではないかという疑惑を拭い得ない。今回の事件は政治目的を持ったテロである。


9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13504301.png誰が中村哲を殺したのか。犯人は中村哲を狙って殺害している。アフガン国内の攪乱や治安情勢の悪化を狙うのなら、国連NGOやら援助団体やら他にいくらでも標的があり、そうした破壊工作は日常茶飯に起きている。今回の事件はそうしたテロとは違う。性格が異なる。中村哲はアフガンの恩人で、いわばアフガン人そのもので、単なる外国人ではなく、政治的にアフガン政府にもタリバンにも、さらには国連の立場にも与していない。今回のテロは中村哲を仕留めるための組織的な軍事作戦である。綿密に準備した上での特殊任務の遂行だ。だから、事件を糾明する上においては、国際政治の鳥瞰的視角から、誰がなぜ、今、中村哲を殺さなければいけなかったのか、という真相を検討する必要があり、動機の本質的分析から犯人を割り出す必要があろう。人に憎まれることのない、聖人のような中村哲がなぜ殺されたのか。それはまさに、裏返しの動機として、平和主義の聖人だから狙われたのだという政治の論理と背景が導出できるはずだ。 


9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13510328.png9条主義の聖者だから中村哲は殺されたのであり、9条を信奉する平和主義者たちを叩きのめし、9条の精神を打ち砕くために、見せしめとして、中村哲をテロルで屠ったのだろう。容赦なく残酷に。その意味でヤシン暗殺と似ている。首里城火災のときも、私は放火を疑い、放火であるとしたら犯人は誰だろうと考え、そこに政治的動機を嗅ぎ取ってヤシン暗殺を想起した。聖なるものへの暴力と破壊。屈服の強制。今回の件はさらにヤシン暗殺に類型が近似して青ざめる。こうした直観と洞察を述べ始めると、待ってましたとばかり、右翼としばき隊左翼が小躍りして、「陰謀論」叩きの狂喜乱舞を始め、カウンター祭りで騒ぐ展開が予想される。右翼としばき隊は、中村哲の暗殺をめぐる言論で、誰かが「陰謀論」を切り出してくれないかと、今か今かとその瞬間を待機し、その娯楽の享楽に舌なめずりしているような雰囲気だ。「陰謀論」叩き祭りに飢えて、目を血走らせている狂暴な気配がひしひしと伝わる。ならば、先にクロスカウンターを放とう。恐怖の予言を聞け。


今回の件はアフガンで起きたが、東京の路上にいた中村哲が襲われたと仮定すると分かりやすい。日本人が狙われているのであり、戦後日本の背骨である9条がテロリズムされているのである。9条の象徴的人格が斃されているのだ。それがこの政治の意味だ。9条平和主義の理想と信念が邪魔だから、誰かが言ったようにバリケードだから、それを暴力で抹殺し粉砕するのである。東アジアで戦争を始め、平和日本を転覆するために。ということは、次のテロルがあるかもしれない。村上春樹。宮崎駿。



9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13511705.png
9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13513679.png
9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13513346.png
9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13514671.png
9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13515671.png
9条のサムライ、9条の詩人の死を悼む – 誰が中村哲を殺したのか_c0315619_13520999.png

by yoniumuhibi | 2019-12-06 23:30 | Comments(3)
Commented by 山椒魚 at 2019-12-06 19:24 x
Dr.中村哲は、火野葦平のおいでもあるわけですが、彼の血の中に流れていたのは、火野葦平の小説「花と竜」のモデルの祖父若松の権三の大親分玉井金五郎の血だと思います。
身長は対して大きくはなく、学生時代からキリスト者で有り、物静かで思慮深い人物でした。でもこんなにずごいことをするとは思いませんでした。中村先生は、当然列聖されてしかるべき人物だと思います。(私はキリスト教徒では無いですが。)
 「波も荒けらや心も荒い、度胸一つの玄海男」中村哲Dr.の冥福を祈ります。
Commented at 2019-12-06 20:02 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 長坂 at 2019-12-07 07:04 x
2008年に伊藤和也さんが殺害されてから、いつかこんな日が来るかと思っていたが現実になってしまった。山椒魚さんが指摘されるように「花と龍」のおじいちゃんと「麦と兵隊」のおじさんのDNAをしっかり受け継ぐ9条原理主義者で憲法前文体現者。「不沈空母」の中曽根とは真逆、全否定するかのように逝かれてしまった。ただただ感謝でしかない。


メールと過去ログ

最新のコメント

今まで、宗教2世の問題に..
by さかき at 10:31
韓国で40年前に統一教会..
by つばめ at 14:26
産経が「山上は転職回数が..
by サン at 02:45
記事を読ませていただいて..
by さくら at 03:31
>>読売は、山上がsil..
by 牧山 at 00:47
The Daily Be..
by 牧山 at 01:09
安倍晋三に致命傷を与えた..
by サン at 19:08
サンデー毎日に載っていた..
by ひまわり at 10:50
私は、安倍以降、官房機密..
by ナイン at 23:08
山口広弁護士の証言「文化..
by アン at 12:22

Twitter

以前の記事

2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング