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NHKの中曽根賛美の偏向 - 「日米同盟の強化」と「戦後日本の総決算」

NHKの中曽根賛美の偏向 - 「日米同盟の強化」と「戦後日本の総決算」_c0315619_14261342.png逝去した中曽根康弘についてのテレビ報道、特にNHKの説明が甚だしく偏向している。聴きながら気分が悪く、不愉快で耐えられない。NHKが報道しているような中曽根賛美が、標準の歴史認識として教科書に書かれるのだろうか。高校の教師や大学の教官たちも、こうした中曽根像を生徒や学生に講釈するのだろうか。そのことを想像すると脱力させられる。NW9では、桑子真帆が目をキラキラさせて中曽根元総理の「偉大な功績」を称え、その中身として、(1)日米同盟の強化と、(2)「戦後政治の総決算」を挙げた。この二つは今の日本に続く正統な道筋であり、普遍的な方向性であり、中曽根元総理の指導のおかげで現在の日本があるのだと強調、視聴者国民を説教していた。その趣旨で纏めた映像を流し、NHKは20日からずっとプロパガンダを続けている。この中曽根論は、保守派の言説として一般的なものだろうが、中立の立場の公共放送が国民全体に向けて発するものなのか。



NHKの中曽根賛美の偏向 - 「日米同盟の強化」と「戦後日本の総決算」_c0315619_14195434.png国民全体に向けて、桑子真帆が嬉々とした表情で訴えるべき政治認識なのだろうか。このような礼賛一色の中曽根康弘論が、受信料を払って見る公共放送で一方的に垂れ流され、何も異論なしで総括されてよいのだろうか。まず、桑子真帆が絶賛して肯定する「日米同盟の強化」の政策についてだが、確かに、この路線を敷き固めた指導者が中曽根康弘だという見方は当たっている。だが、それは日本を幸福にしたのか、その選択は正しかったのか。この30年間の、日米同盟の強化に次ぐ強化のため、日本と日本人はどうなってしまったか。桑子真帆は、自らの発言をテレビの前で聞く沖縄の人々の内面を斟酌することはないのだろうか。辺野古基地は、まさに「日米同盟の強化」の象徴であり、その政策の本質を具体的に表しているものである。日米同盟の強化とは、日本の米国への隷属であり、植民地化であり、富の貢ぎと捧げであり、主権の放棄と喪失である。米国に生き血を吸い取られることだ。


NHKの中曽根賛美の偏向 - 「日米同盟の強化」と「戦後日本の総決算」_c0315619_14264482.png最近の報道からランダムに数えて挙げるだけでも、2基2360億円のイージスアショアがある。F35戦闘機147機で購入額1兆7052億円、維持費を含めると総額6.2兆円がある。米国からの武器調達債務残高は19年度で5兆円とあり、防衛予算5兆3000億円の4割が米国からの武器購入の借金返済分になっている。国民の税金だ。辺野古の基地建設費用は、総額で2.5兆円という天文学的数字になった。国民の税金で海を埋めて作る。これから中国を睨んだ中距離核ミサイルの配備が始まるだろう。九州の離島や奄美大島、南西諸島で中距離核の基地建設が始まり、何兆円という費用を負担させられるだろう。かが(1170億円)やいずも(1200億円)は中国海軍と戦うための武器で、専守防衛の自衛隊にはそもそも必要ない装備だが、中曽根康弘の「日米同盟の強化」路線の後、構想化され、正当化され、政策実現された。中曽根康弘の主導権の後、自衛隊がどれほど変わってしまったことか。


NHKの中曽根賛美の偏向 - 「日米同盟の強化」と「戦後日本の総決算」_c0315619_14212440.png「日米同盟の強化」の正当化は、憲法9条の否定であり、憲法9条を柱として平和国家を建設・運営してきた戦後日本の否定である。それは、中曽根康弘の指針であり安倍晋三と日本会議のイデオロギーには違いないが、公平中立のNHKが絶対視する政策思想ではないし、そうあってはならないだろう。この30年間は、日米同盟の強化がひたすら推進され、その政策とイデオロギーを信奉する日本国民が増えた30年間ではあったけれど、同時に、それに対して多くの国民が懸命に抵抗してきた30年間でもあった。自衛隊のイラク派遣にも大きな反対運動が起きたし、米国によって要求されて安倍政権が法制化した秘密保護法や安保法制にも反対運動が起きた。「日米同盟の強化」は、決して全国民的に支持された政策や言説ではないし、今後の日本をこの方針で導く普遍的な基本原則でもない。実際に、隣の韓国は韓米同盟を相対化させ、脱米の方向をめざしている。NHKによる「日米同盟の強化」の絶対化は容認できない。


NHKの中曽根賛美の偏向 - 「日米同盟の強化」と「戦後日本の総決算」_c0315619_14361807.pngもう一つの「戦後政治の総決算」もそうだ。NHKは絶賛しているが、中曽根康弘の言った「戦後政治の総決算」とは何だったのか。それは日本国憲法を破棄することであり、軍隊保持を明記した自主憲法を制定することだった。戦後民主主義の全否定、戦後民主主義の制度と思想のリセットの言い換え表現が、中曽根康弘の「戦後政治の総決算」だった。そして現実に、この30年間、教育基本法は改悪され、労働基準法も改悪され、労働法制も税制も徹底的に歪められ、戦後日本が全く想像していなかったところの、日本国憲法の理念とは真逆の恐ろしい教育や労働や税制の実態になっている。そして、それに反対し続けている者も多くいる。日本国憲法の改定については、現時点でも国民の世論調査で賛否が拮抗していて、賛成多数になっていない。であるにもかかわらず、NHKは、中曽根康弘の「戦後日本の総決算」が絶対的に正しい政策理念で、今の現実がそれを証明していると言わんばかりだ。その態度に何の躊躇も留保もない。


NHKの中曽根賛美の偏向 - 「日米同盟の強化」と「戦後日本の総決算」_c0315619_14233373.pngNHKは、中曽根康弘の「戦後政治の総決算」を賞賛し宣伝するに当たって、国鉄民営化を成果として挙げ、大成功だとか、「官から民へ」の流れだとか、まるで北朝鮮中央テレビのように持ち上げていた。テレビの向こうには、ローカル線を廃止されまくって、生活の足を次々に奪われている北海道の人々がいる。毎年毎年、豪雨で鉄橋が流され、土砂崩れで線路が途切れる度に、その赤字路線が再建されず廃止にされている。北海道だけでなく全国の地方で同じことが起きていて、採算と民営の論理が強調され、少子高齢化だから文句を言うなと説教される。赤字路線廃止が正当化される。地方の鉄道がどんどん営業終了になる一方、東京では新しい路線が続々敷設され、延伸され、豪勢な新駅が建造され、テレビのニュースで賑々しく報道されている。相鉄直通線だの、羽田空港アクセス線だの、東京8号線だの東京7号線だの。東京の交通ばかりが便利になっている。その延長上に、水道の民営化が始まり、公立病院の統廃合が推進されている。


NHKの中曽根賛美の偏向 - 「日米同盟の強化」と「戦後日本の総決算」_c0315619_16320093.png「戦後政治の総決算」の政策と思想のエッセンスは、戦後日本の経済社会が築いてきた公共的なものを解体し排除することを主眼とし、すべてを資本主義(ネオリベ主義)の下に再編することでもあった。労働組合を解体する狙いだった。米のレーガノミクス、英のサッチャリズムの日本版だった。そこから30年以上経ち、政策は小泉純一郎と竹中平蔵と安倍晋三に引き継がれ、現在の日本の経済社会がある。格差と貧困にうめき苦しむ荒廃した社会がある。若者たちには非正規労働者の生き方が押しつけられ、所得が分配されず、人生の夢も持てず、とうとう結婚もできなくなった。家庭と家族を持てなくなったため、第2次ベビーブームの世代は子供をつくることができず、日本の人口構成は再生産不可能型の破滅社会になってしまっている。そこへの起点が、まさに中曽根康弘のネオリベ政策だった。中曽根康弘の後、日本経済は停滞し、成長が止まり、一人当たりGDPのランキングはどんどん落ちている。この男の政策こそ大失敗だった。亡国と破滅の政策体系だった。


そう総括できる。レーガンと対等に渉り合って国際政治に日本の存在感を示したなどと、マスコミと右翼が褒めちぎって神話を拡散しているけれど、何のことはない、当時は日本経済が圧倒的に強力で、円と日本メーカーが精力絶倫で、世界経済を三分する一の実力を持っていて、つまりは、現在の中国のような存在感を誇っていたということだ。日本は今のような惨めな属国でも老衰国でもなかった。そのときの日本の経済力は、戦後の民主主義と高度成長によってもたらされたもので、すなわち、社会主義と資本主義の折衷と世界から表象されたところの、日本型資本主義によって実現したものである。功績を讃えるなら、中曽根康弘ではなく、丸山真男と大塚久雄だろう。石橋湛山と田中角栄と社会党と総評だろう。その一億総中流の幸福なシステムを壊したのが中曽根康弘だ。


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by yoniumuhibi | 2019-12-02 23:30 | Comments(6)
Commented by artandmovie at 2019-12-02 17:17
十数年ほど前に、たしか首相を退任した後の宮澤喜一が左に、中曽根康弘が右に席を取って、互いに意見を述べあうテレビ番組がありました。
自民党の中でも二つの考え方があり、中曽根政治はその半分に過ぎないという認識のあらわれに見えました。

たしかに中曽根追悼の論調を見ていると、そういう自民党内の (かつては辛うじて有ったかもしれない)「双極性」さえも忘れそうになる、
偏った政治史認識に感じます。
Commented at 2019-12-02 17:32
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Commented by 玄明 at 2019-12-02 23:23
投稿をお待ちしておりました。追加で原発推進したことも紹介したく。2011年頃のETV特集によると、昭和20年代終わりの原子力研究黎明期、学者先生方の想定以上に予算を取り、もっと予算要求せよとしたのがこのお方。そのおかげで、まだ賛否小田原評定状態だったのが、原子力推進になったとか。
このほかキーワード的に。士官学校出(cf農民出の角さんは二等兵で苦しんだとか)なのに総理として文民統制? 死んだふり解散。3選を認めさせる党規約改定。国鉄民営化≒組合弱体化・あらゆる組合スト行為の実質消滅。当落危ぶまれたミソギ選挙時、空の事務所への右の方による発砲事件。レーガノミクス失敗を救い、マネー敗戦の糸口になったプラザ合意。
俗に結婚式と葬式では、嘘をついて良いとは言いますが…
Commented by 愛知 at 2019-12-03 00:30
マーガレット・サッチャーは、現代において、もっとも分断と破壊を引き起こした首相でした。/大規模な失業、工場群の閉鎖、破壊された地域社会などが、彼女の残した遺産です。彼女は闘士でしたが、その敵はイギリスの労働者階級でした。彼女は、政治的に腐敗した労働党の指導者たちや、多くの労働組合の幹部たちに助けられて、勝利を得ました。今日、私たちが置かれている悲惨な状態は、彼女が始めた政策によるものです。/その他の首相たち――とりわけトニー・ブレア――は、彼女が歩いた道のりをたどりました。彼女こそが主犯であり、彼は模倣犯だったのです。/彼女が、マンデラをテロリストと呼び、虐待者であり殺人者であるピノチェトを、お茶に招いていたことを思い起こしてください。/私たちは、どのように彼女を弔うべきなのでしょうか?彼女の葬儀を民営化しましょう。競争入札にかけて、最安値を提示した業者に落札させるのです。きっと彼女も、それを望んでいたことでしょう。

2013年4月8日に没したマーガレット・サッチャーに対する翌日のザ・ガーディアンの記事(ブログ、aliquis ex vobisさんから。翻訳はケン・ローチさん)。

私は長年、元請けから有償貸与のシンクライアントPC(空箱)を使用。メンテ用などで、サーバーは5機。その先のことまでわかりませんが。
Commented by takahashi isikawa at 2019-12-03 02:09
八〇年代に大学生だった私の感覚では、中曽根といえば「不沈空母」ですよね。
角栄=ダーティなハト派
大平=クリーンなハト派
福田=クリーンなタカ派
中曽=ダーティなタカ派
という構図もありました。クリーン、ダーティの違いは、利権を持っているかどうかということです。田中派(竹下派)・中曽根派(渡辺派)の利権が、清和会へ流れていった、というのが九〇年代〇〇年代なのでしょうかね。「一億総中流の幸福なシステムを壊したのが中曽根康弘」のご指摘に、悪辣な性格が端的に表れているように思いました。
Commented at 2019-12-03 11:28
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