昨夜（１６日）のＮＨＫの７時のニュースで、君津市の被災者がブルーシートを屋根に張る作業中に転落、死亡した件を報道していた。同様の事故で病院に搬送された例が１６日までに４３件発生しているという。実数はもっと多いかもしれない。県と自治体が被害状況を把握できておらず、住民家屋の破損の全容すら調査できてないのだから。１５日のＮＨＫの記事を見ると、袖ケ浦市の男性が頭を打って意識不明の重体になった件が報じられていて、１５日時点の救急搬送数は８日間で２６件と報告されている。１日の間に１４件も数が増えている。おそらく、これはまずいということで政府から指示があり、ＮＨＫの７時のニュースで取り上げる算段になったのだろう。ＮＨＫのお達しは、「工事業者の団体は、専門の技術を持たない人は危険なので屋根の上で作業しないでほしいと呼びかけています」である。



そしてその後に、「壊れた住宅の屋根などをシートで覆ったり、瓦を修理したりする作業が各地で進められていますが、工事業者に依頼しても数か月待ちという地域も多く、やむを得ず住民やボランティアだけで行っているケースがあります」とある。ＮＨＫは何を言いたいのだろう。明らかに矛盾した、被災者を愚弄するような説明を語っている。テレビでは、ブルーシートをここで配布していると情報を流し、受け取りに来るよう促しながら、専門の技術を持たない者は危険だから屋根に上がるなと言っている。工事業者の口を使ってＮＨＫと政府が作業の自粛を促している。雨漏りは自然に任せて放置せよと言いたいのか。それなら、何でブルーシートを配っているのだ。要するに、政府とＮＨＫが言いたいことは、屋根から落ちて死んでも自己責任だぞということだ。ＮＨＫの７時のニュースで、危険だからやめとけと言っておいたぞというアリバイ作りだ。


政府が責任逃れをするために、工事業者の口を使って危険性の警告を発している。何という欺瞞的で姑息なやり方だろう。工事業者を全国から集めればよいではないか。電力線網の復旧には、全国の電力会社と設備工事業者から職員を総動員し、「リアルヤシマ作戦」を遂行しているのだから、屋根の方は国交省が全国の住宅修理業者を非常召集し、緊急臨時の公共事業を発動すればよいのである。今年度予算の予備費を回せばよいのだ。３１年度は予備費が全部で５０００億円計上されていて、災害対応分の費用もこの中に準備されている。中小の住宅工事業者も潤うし、ケインズ的な需要と供給が発生するわけで、増税による景気の落ち込み分が多少ともリカバーされ、ＧＤＰのプラスに寄与することになるだろう。国民経済的には一石二鳥の施策だ。専門の工事業者が素人には無理だと言っているのだから、行政が責任を持って作業を代行すればよいではないか。


前回、朝日新聞が千葉の停電と断水に全く関心を持たず、まともに報道しなかった事実を指摘した。左翼はテレビ報道を槍玉に上げ、千葉へのネグレクトを攻撃するのだが、朝日新聞も同様かそれ以上の冷酷な態度に終始していたことについては不問に付している。同じ問題は野党にも言えそうだ。野党は何をしているのだろう。小西洋之が個人的に頑張って被災地のために尽力していて、その奮闘はよく伝わるし評価してよいだろう。だが、党としての活躍や貢献がよく見えない。立憲民主党も共産党も１１日（水）に災害対策本部を立ち上げ、議員が現地に入っているが、ルーティンワーク的でアリバイ的な印象を否めず、国民の期待に応える十分な救済活動だったとは認めがたい。マスコミに撮らせてメッセージを発信しようとするなら、例えば、枝野幸男と志位和夫が防災服姿で二人揃ってカメラの前でぶら下がり会見するなどの演出を考える必要があった。


１２日には志位和夫と山本太郎の党首会談が組まれ、その共同発表をしばき隊左翼がＴｗで賑々しく嬉々として宣伝する場面があり、共産党の先週（９/8-14）の動きとしては、その共闘態勢の誇示と周知の方が中心になっていた。相対的に、共産党の被災地対応への注力の低さが感得される結果となった。１２日の山本太郎との党首会談は、千葉と島嶼を配慮して延期する配慮はできなかったのか。常識的にはそうするべきで、先週の党幹部の行動は被災地の救済に集中し、マスコミがやらない、共産党だけができる、現状の報告と、政府の怠慢と不作為を糾弾する論陣を張るべきだった。予備費拠出の緊急提案を出し、ネットで災害の行方を注視する国民の世論を喚起するべきだっただろう。共産党の出番だった。立憲民主党に呼び掛けて、この災害対策についての（官僚を呼んでの）合同ヒアリングを開催するべきだった。政治は弱者を救うためにあるのだから。


千葉の被災状況への関心はそれだけ高いのだ。内閣改造が終わり、テレビは先週の無視報道の申し訳をするように、千葉の被災復旧情報を前に出し始めている。だが、視聴者の不足感は埋まらず、マスコミへの不満感は小さくならない。台風の進路がもう少し西寄りだったら、神奈川や東京の住民が同じ被害を受け、同じ生き地獄の目に遭わされていたからで、他人事とは思えず千葉の惨状を見つめている人間が多すぎるほどいるからである。今日（１７日）は今日で、旧民主党３派合流の野党政局の幕が演じられているが、これまた被災者不在の永田町のドタバタ騒動であり、国民の目からは脱力と侮蔑しかないだろう。被災者が苦しんでいるときに野党は何をしているのか。会派合流の会談なら、期日をもっと後に遅らせることはできなかったのか。臨時国会の開会は１０月４日で、それまで２週間の時間がある。野党には野党の政治日程があるのだろうが、国民の今の関心は被災地だ。

今、ここで野党政局を入れることは、マスコミの関心をそこに向けさせることであり、被災地から焦点を移し、被災地の取材と報道の量を少なくすることを意味する。それは国民が望んでいることではない。国民が野党に要求していることは、この災害での政府の不作為を批判することだ。どうせ１０月に入れば、安倍晋三とマスコミは即位礼の狂騒曲で水浸しにするつもりであり、３月４月と同じように皇室関連でテレビを埋め、国会や政治の話題をシャットアウトする魂胆だろう。見え透いている。韓国叩きと即位礼の二つでワイドショーを埋め、ＢＳ政治番組を埋め、ＮＨＫのニュースを埋めるに違いない。野党は皇室行事だからと進んで自粛し、安倍晋三の言いなりになり、国会は開会と同時に休会同然となる。そのまま１０月が終わり、消費増税が内閣支持率のマイナスに影響することもなく、１１月になったら改憲と韓国叩きの二つがフォーカスされ、解散風の政局に持ち込まれてゆくだろう。

即位礼イベントでテレビに出まくった安倍晋三が支持率を上げた状態で。目に見えるようだ。