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文在寅発言と村山談話 - 問われているのは日本人の倫理的態度

文在寅の28日の発言の英訳がネットに上がっていて、こう言っている。

文在寅発言と村山談話 - 問われているのは日本人の倫理的態度_c0315619_10034088.pngIts attitude toward historical issues has been never honest, either. It is an immutable fact that Japan was the perpetrator behind unfortunate chapters of history not only in Korea but also in many other Asian countries. The attitude of the Japanese Government, which neither acknowledges nor repents its past wrongdoings but rather distorts history, only aggravates the wounds and anguish of the victims.

(日本は)歴史的な問題に対する態度も決して正直ではありませんでした。 日本が韓国だけでなく、他の多くのアジア諸国の歴史の不幸な一章の背後にある加害者であったことは不変の事実です。 日本政府の態度は、過去の不正行為を認めも悔い改めもせず、むしろ歴史を歪曲し、被害者の傷と苦悩を悪化させるだけです。




文在寅発言と村山談話 - 問われているのは日本人の倫理的態度_c0315619_13272731.pngStarting from looking squarely at the past, Japan must cooperate with the world and move toward the future. It is never shameful to remember and reflect on the past. Every country has shameful moments in its history. Korea also has chapters in its history that are sources of shame and self-inflicted, not to mention those tied to foreign powers. However, when we remember and reflect on the past, we can be born-again.

過去を真正面から見ることから始めて、日本は世界と協力し、未来に向かって行かなければなりません。過去を思い出して振り返ることは決して恥ずべきことではありません。すべての国には、歴史に恥ずべき瞬間があります。韓国にも歴史上、恥や自傷の原因となる部分があり、それは言うまでもなく、外国勢力と結びついた歴史の一幕です。しかし、過去を思い出して振り返ると、新たに生まれることができます。

文在寅発言と村山談話 - 問われているのは日本人の倫理的態度_c0315619_13320537.pngRecollection and self-reflection about the past can never be completed. This is not something that can be brought to conclusion just by saying that repentance is over because it was uttered once or that the past is completely over because an agreement was reached once.Japan has to take to heart lessons from Germany which has gained trust from the international community by reflecting on its past sincerely, confirming its past wrongdoings as often as needed and reconciling and working together with neighboring European countries.

過去についての回想と自己反省は決して完了することができません。このことは、一度悔い改められたから悔い改めが終わったとか、合意が一度達成されたために過去が完全に終わったとだけ言って結論を下すことのできるものではありません。日本は、過去を誠実に振り返り、必要に応じて過去の不正行為を確認し、近隣の欧州諸国と和解し、協力することにより、国際社会から信頼を得ているドイツからの教訓を心に留めなければなりません。


週末の日本のテレビ報道は、この発言が槍玉に上げられ、関口宏のサンモニを含めて袋叩きの状況だった。マスコミが音頭をとっての一億火の玉の文在寅叩きに、テレビの前で逃げ場がなく憂鬱な気分にさせられる。TBSのサンジャポでは、壇蜜が文在寅を口汚く罵っていた。「数時間憎悪」と呼んでいたが、まさしく「24時間憎悪」そのものの態様だ。果たして、文在寅の言葉を聞いた中国やASEAN諸国の人々は、どのような感想を持つだろう。どう考えても文在寅の言葉は正論で、至当の見解が率直に述べられていて、私や浅井基文はそう判断するしかなく、文在寅叩きに熱狂している日本の空気は異常でしかない。この文在寅の日韓歴史発言は、95年の村山談話と対をなすもので、言説としてペアを構成するものであり、同じ精神によって語られている。一方は加害者側が、一方は被害者側が。まさに、この二つが向き合って合意することこそが真の和解だ。あらためて、村山談話を確認しよう。

文在寅発言と村山談話 - 問われているのは日本人の倫理的態度_c0315619_11012150.pngNow, upon this historic occasion of the 50th anniversary of the war's end, we should bear in mind that we must look into the past to learn from the lessons of history, and ensure that we do not stray from the path to the peace and prosperity of human society in the future.During a certain period in the not too distant past, Japan, following a mistaken national policy, advanced along the road to war, only to ensnare the Japanese people in a fateful crisis, and, through its colonial rule and aggression, caused tremendous damage and suffering to the people of many countries, particularly to those of Asian nations. In the hope that no such mistake be made in the future, I regard, in a spirit of humility, these irrefutable facts of history, and express here once again my feelings of deep remorse and state my heartfelt apology.

いま、戦後50周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。

文在寅発言と村山談話 - 問われているのは日本人の倫理的態度_c0315619_11080640.pngOur task is to convey to younger generations the horrors of war, so that we never repeat the errors in our history. I believe that, as we join hands, especially with the peoples of neighboring countries, to ensure true peace in the Asia-Pacific region -indeed, in the entire world- it is necessary, more than anything else, that we foster relations with all countries based on deep understanding and trust.

私たちは過去の過ちを二度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。特に近隣諸国の人々と手を携えて、アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、なによりも、これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。

Furthermore, I will continue in all sincerity to do my utmost in efforts being made on the issues arisen from the war, in order to further strengthen the relations of trust between Japan and those countries.

また、現在取り組んでいる戦後処理問題についても、わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため、私は、ひき続き誠実に対応してまいります。

文在寅発言と村山談話 - 問われているのは日本人の倫理的態度_c0315619_13124764.png24年前にこの宣言が政府から発されたとき、国民の中で反対する声は全くなかった。むしろ、左派の側から生ぬるいという抵抗の方が大きかったように記憶している。一度謝罪と反省の言葉を口にしからと言って全てが終わるわけではないという戒めは、久米宏や筑紫哲也が繰り返しニュース番組で言っていたことで、歴史問題についての一般論であり、われわれ日本国民の常識だった。そしてそれは、過去の歴史を反省しようとしない右翼側に向けられた批判と軽蔑の常套句でもあった。加害者と被害者の関係の一般認識であり、否定すべくもないことだろう。加害者の側が真に反省して更正したかどうかは、被害者の側が判断して認めるべきことだ。口だけの反省は反省にならない。24年の間に日本人はすっかり転向して、80年前の日本人と同じになった。韓国の側は24年前と変わってない。日本に対する向き合い方は何年経っても同じだろう。今のこの構図では、和解はなく、未来志向もなく、対立と衝突だけが続く。

どちらかが破滅するまで。

文在寅発言と村山談話 - 問われているのは日本人の倫理的態度_c0315619_13223532.png憎悪を燃え上がらせる一方の文在寅叩きの空気を見ながら、何かに似ているという既視感を抱く。それは、昨年8月に死去した翁長雄志に対する保守マスコミのバッシングだ。知事になった5年ほど前までは、NHKも含めて本土のマスコミは翁長雄志に好意的で、沖縄の反辺野古基地闘争に対しても内在的な報道で接していた。ところが、高江の工事が強行された2016年あたりから空気が一変し、沖縄の反基地運動を左翼運動と断定して貶めるようになり、翁長雄志に対する誹謗中傷がマスコミとネットで横行するようになった。保守政治家の翁長雄志は善人の表象で定着していたのに、それが次第に黒く塗られ始め、中国の工作員扱いされ、左翼のボスとして叩かれるようになった。頭髪が揶揄され侮辱された。翁長雄志と沖縄の反基地運動を積極視するのは左翼リベラルの報道と視線だけになり、沖縄の民意はすっかり異端視された。辺野古に賛成する沖縄保守の側がクローズアップされ、反翁長の側が正論であるかのような処理がされて現在に至っている。

文在寅発言と村山談話 - 問われているのは日本人の倫理的態度_c0315619_14522147.png多くの日本人が気づいてないが、同じ問題なのだ。右翼は翁長雄志に対しても「反日」のレッテルを貼って袋叩きにしていた。文在寅叩きは翁長雄志叩きと同じなのだ。日本右翼に抵抗する指導者が叩かれて唾を吐かれるのだ。日本人の過去の戦争に対する認識が問われている。戦争の被害者に対する接し方が問われている。少なくとも左翼は、沖縄と朝鮮が同じだという本質に気づかないといけない。それに気づけば「どっちもどっち」などという態度はあり得ない。辺野古の問題は歴史認識の問題でもある。問われているのは、日本人の倫理的態度の問題だ。加害責任の問題だ。おそらく、文在寅は、この原稿を15日の光復説演説用に準備していたのだろう。外交のタクティックスの流れで28日となった。躊躇なく15日にローンチすべきだった。この問題で下手に妥協してはいけない。28日の文在寅発言に対して、「反日」のレッテルを貼って否定し罵倒する日本人多数の態度は間違っている。そこには村山談話と同じ精神があり、過去を克服しようという真摯な意思がある。

文在寅発言が反日なら、村山談話も反日ではないか。当時の自民党幹事長は森喜朗で、平沼赳夫と島村宜伸と深谷隆司が閣僚として閣議決定に署名している。右から左までオールジャパンで賛成している。どこが反日なのか。ワイツゼッカーも反日なのか。

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by yoniumuhibi | 2019-09-02 23:30 | Comments(4)
Commented by 愛知 at 2019-09-02 18:57 x
「ある日、その愚かしさに気付いた。この辺りが戦場になれば、まず死ぬのは兵士よりもこの子らなのである。敵が上陸してくる場合、北関東にいる我々は、それぞれ所定の道路を使って南下する。その要撃作戦などについて説明すべく大本営から人が来たことがあった。東京や横浜には大人口が住んでいるのである。ものすごい人数が大八車に家財道具を積んで逃げるべく道路を北上してくるに違いなかった。戦車が南下する、大八車が北上してくる、そういう場合はどうなっているのか。しばらく私を睨み据えていたが、やがて公然と『轢き殺して行け』と言った。同じ国民をである。(中略)私は死ぬためにいばってられるんですね。軍人として。ところが女の子とか、ちっちゃい子とか真っ先に死ぬでしょ。本土決戦になれば、沖縄戦が現出されたと思いましたね。みんなの方が先に死ぬんです。なんだろうなと思いました。」昭和20年、司馬遼太郎の戦車第一連隊は本州守備隊として満州から栃木県の佐野市に移った。―――満州国通信社(現電通)の取り仕切るテレビに辟易、Youtubeで司馬遼太郎の遺言を視聴。一部引用したのは、その2から。テレビ局は、そのうち司馬遼太郎さえも反日認定とかでしょうか。
Commented at 2019-09-02 19:43 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 将門 at 2019-09-03 19:12 x
おっしゃる通りです。加害者が忘れても被害者は永遠に痛みを忘れません。賠償責任も一度で終わったわけではないです。日本国民は永遠に罪と賠償からは逃れられることはできないし、逃れてはならないと思います。
Commented by oasis at 2019-09-04 14:19 x
「反日」とは、反日本帝国主義の略、反日本帝国主義の略です。

ムン・ジェインは、確かに「反日」ですが、それは上記の意味です。至極まっとうです。

完全に太平洋戦争期に逆戻りしたからか、残念ながら、ムン・ジェインをバッシングしている今の多くの日本人は、韓国やアジアにおける「反日」を完全に読み違えています。全く分かっていない。

過去と向き合わないと。日本がどんどん退行していきます。劣化していきます。いや、この24年の間に、右傾化をとっくに通り越して、退行しきった気がします。

しかし、これが、1993年の初当選以来、安倍晋三が思い描いていた日本の姿なのでしょう。本人は、ほくそ笑んでいるはずです。

安倍は、日本を完膚なきまでに破壊し尽くした。韓国をはじめとするアジアは、これまでは、壊れきった日本を、不気味な思いでただ眺めていたが、いよいよそうも行かなくなってきた。

現在、これまでの歴史認識論争の総括期というか、アジアの歴史における「まともさ」をめぐる決定的な論争期な気がします。しかし、結果は、分かりきっています。

現在の日本のヒステリーは、世界には通用しません。歴史がないから。あまりにも独善的すぎるから。

安倍のファンタジーと大本営発表しかしないマスコミと国民を愚民化するテレビと芸能人らによって、日本は壊れきった。

この壊れきった、今、ここが日本の再出発の出発点になることを願いますし、やり直すしかない。

やり直す契機として、村山談話や河野談話、憲法9条、そしてムン・ジェインや翁長知事をはじめとするアジアからの呼びかけがある。

やり直す契機は、たくさんあります。


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