脱力の選挙戦情勢 - マクロ経済スライドの存否が対立軸にならない
東京はいつ晴れるともない憂鬱な梅雨空が続いていて、そこにマスコミからの参院選の序盤情勢の報道が加わって、さらに気分を重く塞がせる。6日に出た朝日の予想では、自民は59議席が見込まれ、公明の14と合わせて73議席になっている。共同の記事では、自民は65議席と予想が出て、公明と合わせて79議席、さらに維新と合わせて88議席を獲得するとされ、改憲3分の2のラインである85議席を越える怒濤の勢いとなっている。朝日の予想では自公維は81議席。後藤謙次が解説していたように、朝日・毎日など新聞社は、この改憲3分の2のラインの攻防にフォーカスし、投票翌日の見出しを打つ構えでいて、そこには、3分の2を越えるのは到底無理だろうという楽観的な見通しがあった。が、豈図らんや、蓋を開ければ安倍晋三の巻き返しが猛烈で、朝日・毎日など安倍晋三を牽制したいマスコミが青ざめる恐怖の状況になっている。共同の予想を見ると、自民党は選挙区で44議席取るという圧勝であり、6年前の参院選で沖縄と岩手を除く1人区全てで勝利したときとほぼ同じ数字だ。
消費税と年金が争点になった選挙なのに、野党は3年前の結果にも届かない議席になると予想されている。加えて、マスコミからは「盛り上がらない選挙」が言われ、投票率が50%を割るだろうという予測が上がっている。NHKが8日に行った世論調査によると、投票に「必ず行く」と答えた者と期日前投票した者の合計は、前回3年前と較べて8ポイント低くなっていて、投票率の低下が懸念される旨をニュースで伝えていた。野党劣勢の予想と実感が、有権者のこの選挙への関心をさらに低いものにしている。共同が出した序盤情勢の厳しい結果は、実のところ、私が4月5月の時点で言っていた予想と全く同じで、天木氏との対談で何度も述べてきたところの見解と同じである。1人区で勝てるのは沖縄だけだろうと冷徹に言い捨てていた。そのときは、それでもまだ、消費増税の帰趨が不明で、年金問題などは浮上しておらず、野党が有利になる情勢要素は何も無かった頃だ。しかるに、年金問題が浮上して争点になっても、1人区で競り合うほどの風が野党に吹かない。
年金と消費税がダブルでも、野党(立憲民主)に対して有権者の期待が集まらない。6度目の安倍圧勝の絵を見るのだけは勘弁して欲しいと願っている反安倍の有権者としては、気が滅入る一方の展開だが、テレビの政党討論会などを眺めていると、これでは野党が勝てるはずがないと改めて確信させられる。4月5月時点の私の予想を裏づける現実を突きつけられる。年金問題については、まず、立憲民主党はマクロ経済スライドの制度見直しを明言すべきであり、共産党と足並みを揃えて自公と対決するべきで、そのことによって、年金政策は本格的かつ具体的に争点が設定され、有権者の一票による判定へと持ち込まれる。私はTwでそう訴えたが、昨日8日にプライムニュースに出演した逢坂誠二は、制度改定には40年かかるから無理だと言い、制度維持を唱える自民党の新藤義孝と歩調を合わせていた。反町理の巧妙な仕切りが入り、マクロ経済スライドでは、廃止が共産・社民で、存置が自民・公明・立憲・国民という構図が描き出され、視聴者を脱力させる結論と顛末で終わった。
年金問題では「野党共闘」はないのであり、共産以外はオール与党なのだ。立憲民主と自公の間で政策の基本対立はないのだ。だから、枝野幸男は長妻昭をテレビに露出させないのであり、年金で与党を総攻撃する意図がないのだ。しばき隊左翼は、その辺の政治の機微を心得ていて、だから周到に、立憲民主党に対してマクロ経済スライド廃止の表明を要求せず、マクロ経済スライドをめぐって立憲と共産の間に溝がある事実を波立てようとしない。しばき隊左翼にとって、マクロ経済スライドは共産党に比例票を流すための専用のトークであり、1人区で自公候補に競り勝つための政策論点ではないのだ。マクロ経済スライドについて共産と立憲で立場が違う。しかし、であるならば、1人区に立候補している野党候補は、マクロ経済スライドをどうするのかと聴かれてどう答えるのだろう。廃止なのか、存続なのか、曖昧にして逃げるのか。有権者の前で言葉を濁して逃げたら、論争はそこで負けてしまう。ぜっかく年金問題が争点として浮上して、客観的には与党不利の態勢になったのに、それが野党の追い風にならない最大の理由はその矛盾の所在だろう。
それと、公示日前後に何度か党首討論があってテレビを視たが、7党の党首討論の様子は、まさに一強多弱の典型図で、安倍晋三に対抗する野党のシンボルがいない。野党の総大将の存在がなく、どれもドングリの背比べをやっている。党首討論の番組を仕切るマスコミの者たちは、自分が関心のある、自分の聴きたい案件を、聴きたい相手(安倍晋三)に向かって質問を集中する。討論の主役は安倍晋三であり、安倍晋三が喋り、安倍晋三が映る時間だけが無闇に多くなる。それに対して、隣に座っている枝野幸男がオブジェクションをかけてディベートに割り込んで行かない。静かにドングリの背比べで黙っている。年金問題で舌鋒鋭く安倍晋三に噛みつき、生討論で政策の争点をクラリファイしスペシファイして行くのは、常に共産党であり、志位和夫や小池晃である。枝野幸男と逢坂誠二は黙って座っているか、政策論争のお茶濁し(負担上限論)をして逃げている。そこには、いかにも政党支持率5%の弱小野党が控えめに座っていて、およそ「野党共闘」の旗頭が陣取っている気配がない。全国32の1人区で議席をもぎ取ろうという覇気が感じられない。闘争心が伝わって来ない。
マンネリ選挙をやっている。2年前に立ち上げたばかりの新党で、これで二度目の国政選挙なのに、そういうフレッシュな感覚や緊張感はどこにもなく、枝野幸男も逢坂誠二も倦み慣れきっている。見ながら、この党が1年後も存続しているだろうかと訝る。失敗した旧民主党の過去を断ち切って生まれ変わった新党ならば、マクロ経済スライド廃止などすぐに決断していい方針転換だ。が、そんな芸当は彼らにはできないだろうと私は達観していたから、4月5月のシニカルな予想を述べていた。また、政策が矛盾するのに「野党共闘」を演じている共産党も、立憲民主党を変える実力も意思もなく、だらだらと「野党共闘」の芝居を続けるしかないだろうと見切っていた。そのことは、読者の皆様のご存じのとおりである。だから、この参院選で安倍晋三を敗北に追い込む条件がたった一つあるとすれば、太郎新党が野党陣営の先頭に立って牽引し、選挙戦を一気に主導することだった。6月末の世論調査で、野党の中で「投票したい政党」の第1位に躍り出て、記者クラブ主催の討論会や民放番組の討論会に特別扱いで参加を許され、記者やキャスターから質問の集中砲火を浴びる革命ドラマを作ることだった。ブームを起こし、名実ともにこの選挙の主役になり、投票率を上げることだった。それだけが、今回「安倍晋三が負ける選挙」をリアライズする唯一の経路だった。だが、残念なことに、山本太郎にはそんな戦略も展望も最初から全くなかった。






by yoniumuhibi
| 2019-07-09 23:30
|
Comments(2)
今回の参議院選挙、野党にとって非常に厳しい結果になりそうですね。
私の居住する選挙区はいわゆる「1人区」なのですが、自民党候補が優勢の様です。
野党党首も何度か務めた事のある地元選出の衆議院議員が付きっ切りで選挙運動を
展開していますが、中々・・。
この衆議院議員「Oさん」、立憲旗揚げには参加せずに無所属で活動しており、
なんとか「野党集結」に努力したのですが、現実は厳しく・・・ご存知の通りです。
我が選挙区は「自民VS無所属」と言う構図ですが、公職選挙法というモノは
「政党に甘く、無所属に厳しい」らしくて、「Oさん」自身も今年の頭にやっとこさ
立憲会派入りしたのですが、いまでも「無所属」です。
選挙用葉書・ビラ・ポスター、どれを取っても無所属には不利な様に
公職選挙法は設計されていますね。
なお、「Oさん」自身は地元選挙区では滅茶苦茶強くて、所謂「無風区」になっています。
ところで「世に倦む日日」さんは現在の国政選挙の制度についてどう思われますか?
私は「大選挙区制」は無理としても、「衆議院は都道府県単位・参議院は地域ブロック単位」
と言うかつての「中選挙区制」を修正した形にするのが良いかな、と考えています。
「穏健な多党制」が取りあえず良いかな、とも思います。
0
立憲民主党もおかしいですが、やっぱり山本太郎だって奇妙ですよね。新党結成時から寄付金額が話題になるなどして、あれだけ盛り上がったのに、いちばん大事な6月にほとんど露出せず。蓮池透出馬のときはかなり報道されたのだから、それなりの候補者がいれば報道も全然ちがっていたはずです(というか、当然そのくらいやると思っていた)。今、中島岳志とかが陰謀論を交えつつ被害者意識を顕にしていますが、純粋に山本サイドの戦略ミスだと思います。それこそ報ステでも顔が売れていた中島でも立候補したら、テレビだってもっと報道しただろうに。現状、ネット漬けの政治マニアでもないと、新党結成したことさえ知らない日本国民のほうがずっと多いんじゃないか。山本はネットの取り巻きに囲まれて、自分の知名度を過大評価していたのだろうか。

メールと過去ログ
ご意見・ご感想
最新のコメント
| 今こそ「テニスコートの誓.. |
| by 印藤和寛 at 09:18 |
| 総裁選で石破さんを倒すた.. |
| by 人情味。 at 09:29 |
| もし山上容疑者が安倍元首.. |
| by 人情味。 at 21:23 |
| 杉田水脈なる人物は論評に.. |
| by 住田 at 10:51 |
| 盆の時期は一億総反省で過.. |
| by 成田 at 08:07 |
| あれは15年程前.. |
| by ムラッチー at 11:27 |
| 悪夢のような安倍政治から.. |
| by 成田 at 13:03 |
| ハーバード大学で比較宗教.. |
| by まりも at 23:59 |
| 重ねて失礼いたします。 .. |
| by アン at 17:48 |
| 安倍晋三のいない世界は大.. |
| by アン at 13:16 |
以前の記事
2022年 08月2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
