人気ブログランキング |

日本の財政と経済は緊縮なのか放漫なのか - 予備的認識整理

c0315619_15222337.png緊縮・反緊縮の言葉の問題について検討したい。と言っても、いわゆる薔薇マークの議論については、『そろそろ左派は<経済>を語ろう』しか読んでないので、そのかぎりでの吟味と考察になる。昨年、この本を読んだとき、緊縮反対という欧州で流行の言説とスローガンを安易に日本に持ち込む方法的態度について、得心できないという感想を率直に抱いた。なぜなら日本は客観的に放漫財政だからであり、GDPの2倍を越える世界一の政府債務を抱えながら、イージスアショアやF35など無駄な武器を爆買いし、借金を膨張させ続けているからである。そのことに対する反省がマスコミにも国民の間にも皆無に等しいからだ。軍事費だけではない。東京五輪もそうだ。誘致した当初は7000億円で済ませるコンパクト五輪を謳っていた。それが、あっと言う間に3兆円に膨れ上がって青天井は止まるところを知らない。その浪費に対して誰も歯止めをかけようとせず、批判しようとせず、責任追及しようとしない。直接の五輪経費だけなく、五輪を口実にした無駄な公共事業がどれほど乱舞し氾濫していることか。



c0315619_15260406.png高輪新駅と周辺再開発には5000億円が投じられている。羽田空港アクセス線の総事業費は3200億円、羽田空港拡張工事に1040億円、晴海フラッグと名付けられた選手村のマンション開発に都が投じる事業費は540億円、わずか2kmのTXの東京駅延伸に1000億円、地下鉄臨海新線の計画に2500億円、等々。目眩がして唖然とさせられる数のバブル再開発土建事業が目白押しとなっている。これが本当に借金苦に喘いでいる国の首都なのだろうか。まるでドバイか上海だ。少なくとも、東京での行政とゼネコンの絶倫的な実態と活動を見るかぎり、そして地上を歩いて感じるバブルの臭気のかぎりでは、緊縮経済とか緊縮財政という言葉は納得できない。緊縮とは全く逆の淫乱な状況がここにある。緊縮が批判されている欧州諸国では、このような放漫放恣の経済の狂態はないだろう。ローマもマドリードも24年五輪の招致を断念した。ハンブルクも住民投票で撤退を決めた。松尾匡とブレイディみかこの所論は、欧州の緊縮論をそのまま無前提に日本に適用していて、欧州の問題を語りながらそのまま日本の政策論を導いている。まるで日本が欧州の一国の如くだ。

c0315619_15261826.pngけれども、日本の財政と経済に緊縮の要素がないかというと、それはやはり違う。欧州以上に苛烈で過激に緊縮をやっていて、その真実を見落としてはならない。具体的に日本の財政のどこが緊縮かというと、社会保障の支出が緊縮だ。教育の支出も緊縮だ。われわれは、財政について緊縮か放漫かの議論を始めると、すぐに公共事業の絵を連想する。だから、日本の財政について緊縮の表象は持ちにくく、緊縮の概念規定は与えにくい。だが、社会保障については極端な緊縮シフトで、凄絶なリストラが進行していることをわれわれは再認識・再確認すべきだろう。その中身は、昨年10月26日の赤旗新聞がよく纏めて紹介している。こうした報道についての赤旗のクオリティは伝統的に素晴らしく、十分に評価し敬意を払うべきだと思う。安倍政権の6年間で約4兆円の社会保障費が削減されている。年金もカットされ、医療費と介護保険料の負担は重くなり、そこに消費税が5%から8%に上げられ、高齢者の生活は苦しくなった。生活保護の給付が削減され、そのことが最低賃金の押し下げ圧力になり、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」の水準が低下させられた。

c0315619_15263099.pngここで指摘して注意を喚起したいのは、今から10年以上前に政府やマスコミが言っていたところの、「社会保障の毎年の自然増1兆円」という言説である。政府とマスコミは、年金や医療など社会保障の費用が毎年1兆円ずつ自然に伸びるから、それに対応する財源として消費税がどうしても必要だと強調し、国民を納得させていた。高齢化が進むから、社会保障費が1兆円ずつ伸びるのは当然で、それに手当する措置は不可欠だと誰もが思っていた。おそらく今でも、一般会計の歳出の社会保障費は毎年1兆円ずつ増えていると観念している者が多いのではないか。ところが違うのである。伸びは抑制され、1兆円をはるかに下回る規模でしか毎年増額されてない。数字を検証しよう。10年前、2009年の社会保障費は28兆7161億円だった。2019年の社会保障費は34兆593億円である。10年間で5兆3432億円しか増えていない。平均して毎年5343億円しか積み上がっていない。伸びは毎年1兆円ではなく半分の5000億円なのだ。この事実については、国民はもっと注目し、世論を喚起して糾弾を加えるべきだろう。あの「毎年1兆円ずつ膨らむ社会保障費」の言説はどこへ行ったのか。

c0315619_15264347.png毎年1兆円ではなく5000億円の伸びだから、年金も増えずに減額されているのである。「1兆円の自然増」はウソだったのだ。赤旗新聞が書いているとおり、安倍政権は6年間で約4兆円の社会保障費を削減している。1年平均で6500億円。まさしく、この分が自然増からカットされていて、毎年の増分を半分に抑え込んでいるのである。だから、高齢者の生活は当然苦しくなる。これを緊縮と呼ばずして何と呼ぶべきか。消費税を8%に引き上げるとき、「中福祉中負担」という言葉が喧伝されて誘導されたが、実際には「低福祉高負担」が押しつけられている。少なくとも、「中福祉」を言うのなら10年前の福祉環境が維持されて高齢者に提供されるべきで、毎年最低でも1兆円超の社会保障費増を予算で組むべきだろう。これはまさに国家的詐欺と言うべきである。教育予算の方の緊縮も深刻で、OECD各国のGDPに対する学校教育費の比率を見ると、日本は28か国中24位であり、政府総支出に占める公教育支出の割合でも、日本は31か国中30位である。最悪と言うしかない。この問題はいつも言われるが、全く改善されないまま放置されていて、恐るべき不幸な緊縮が惰性で継続されている。

c0315619_15311595.png教育予算など、年5兆4000億円の規模でしかなく、これを6兆円から7兆円にすることなど造作もないことだ。だが、それをしない。一方でF35を147機買い、機体購入費と維持費合わせて6.2兆円を米国に払う。6000億円のイージスアショアを買う。17機で3600億円のオスプレイを買う。総工費2兆5500億円と言われる辺野古基地を贈呈する。年間8000億円の思いやり予算を平気で与える。イバンカの基金に57億円貢ぐ。総括するなら、日本の財政には放漫と緊縮の二つの側面と性格がある。どちらも真実であり、片方だけの概念規定はできない。放漫財政であり緊縮財政である。すなわち、米国と資本に対してはどこまでも無限の奉仕と献身に徹し、国民一般に対しては冷酷な緊縮で締め上げている。この内実を正しく見分けて認識整理するべきなのだ。事は財政に収まらない。アベノミクス(金融緩和・財政出動・規制緩和)の全体が、資本に対する放蕩的貢納であり、国民生活に対する緊縮的収奪である。資本と米国にはこれでもかと薔薇マークの円を土砂降りさせ、国民生活の地平には草一本生えないように円を吸い上げて干上がらせている。生活水準を切り下げている。日本人をアフリカ人のレベルに接近させている。

日本経済そのものが、異常な放漫と異常な緊縮が同居する矛盾せる運動体なのだ。そして政権と資本は、放漫の表象と財政危機を宣伝して国民に緊縮の必要を説き、借金の責任を国民に被せ、国民に罪悪感を刷り込むのである。国民が拒食症的な緊縮を受け入れて自己運動するようマインドコントロールするのだ。手の込んだことに、その宣伝と刷り込みに左翼学者 - ユニクロと鍋でつましく暮らせ - をも動員して。


c0315619_15270699.png
c0315619_15271481.png
c0315619_15272260.png
c0315619_15273183.png
c0315619_15274098.png
c0315619_15274876.png

by yoniumuhibi | 2019-06-11 23:30 | Comments(1)
Commented by さくら at 2019-06-11 20:24 x
資本には放漫、国民には緊縮。
すごく分かりやすく日本政府の方向性を解説していて、納得できました。思えば消費税偏重の税制論議も、この方向性に符合しています。緊縮なの?放漫なの?なんで消費税なの?というモヤモヤを断つ明快な切り口です。


カウンターとメール

最新のコメント

今回参加した後援会の客層..
by ara at 18:39
安倍晋三は、国民を馬鹿に..
by 宇津木洋 at 14:42
シンゾー秘書の息子がゲー..
by 長坂 at 10:43
▲こちらも、さもありなん..
by 愛知 at 00:59
ずっと以前、貴ブログでも..
by 玄明 at 23:22
今日のNHKの夜7時のニ..
by 酒呑童子 at 20:41
「祝賀御列の儀」という言..
by 長兵衛 at 11:55
残酷で残虐な加害行為と凄..
by 長坂 at 11:02
元々万歳三唱は昭和天皇の..
by Noname at 20:46
私自身は自分の読書歴が、..
by あさのたえこ at 15:33

Twitter

以前の記事

2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング