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変節を美化・肯定する河西秀哉の言説工作 - 「古層」に屈服した新天皇

変節を美化・肯定する河西秀哉の言説工作 - 「古層」に屈服した新天皇_c0315619_13532952.png新天皇は即位後朝見の儀で「皆さんとともに日本国憲法を守り」と言わなかった。平成天皇の言葉を踏襲しなかった。替わりに何と言ったかというと、「憲法にのっとり」である。「日本国憲法」を消して「憲法」に置き換えている。ここには何やら胡散臭い意図が見え隠れしていて、新天皇の言う「憲法」は日本国憲法が単一に特定されていないことが読み取れる。憲法一般に抽象化されている。新天皇が則る(規範として従う)憲法は、あるいは十七条憲法の意味かもしれず、その含意と示唆を十分に疑ってよいだろう。何と言っても式辞の原稿は安倍晋三が閣議決定で決めている。新天皇の言う「憲法」が現在の日本国憲法のみを指すのではなく、過去の十七条憲法をも含む暗示が配されているのではという憶測は、前段で述べている「歴代の天皇のなさりようを心にとどめ」という一節によって根拠を与えられる文脈となっていると言えよう。前後でワンセットの関係になっている。平成天皇の即位後の宣誓には、このような文言はなかった。そこには、「象徴天皇」の概念をはるか過去まで遡らせ、日本史全体をカバーしようとする動機が伏在するのではないか。そういう「二重思考」を疑いうる。



変節を美化・肯定する河西秀哉の言説工作 - 「古層」に屈服した新天皇_c0315619_13465858.pngいずれにせよ、「日本国憲法」が「憲法」と変えられることにより、日本国憲法は相対化され、平成天皇が情熱的に追求した日本国憲法の象徴天皇制の理念は希釈され、没主体的な、政府の言いなりになって形だけ収まる、官僚的な「象徴天皇」のイメージが滲み出た「お言葉」になった点は否めない。新天皇の「お言葉」は、たとえそれが閣議決定の手続きを経るものであっても、新天皇の責任に帰すものであり、自分自身の言葉である。抵抗して意思と主張を通そうとすれば、安倍晋三の原稿介入の横槍を制することはできた。あの文面を自分の言葉としたということは、本人が自分の意思で日本国憲法を相対化したということであり、平成天皇のリベラルな思想と態度を踏襲せず、そこから変節したことを意味する。安倍晋三に忖度した。マスコミは注目して報道しないが、天皇の言葉が「日本国憲法」から「憲法」一般に変わった事実はきわめて重大で、新天皇の「象徴天皇」のあり方が平成天皇とは大きく変わり、戦後民主主義の思想から離脱し、旋回し、右翼政権の国家運営の方向性と妥協することを意味する。

変節を美化・肯定する河西秀哉の言説工作 - 「古層」に屈服した新天皇_c0315619_13464054.pngそうした変節と妥協を、絶え間なく正当化し合理化して国民を洗脳しているのがマスコミで、「時代に合わせて姿を変える天皇制」の言説である。その先頭に立って、安倍晋三の代わりに洗脳工作の実務を担っているイデオローグが河西秀哉だ。毎日毎日テレビに出ずっぱりで、「時代に合わせて変わる象徴天皇」の講釈を垂れまくっていた。河西秀哉の言う「時代に合わせて」とは、実のところは、安倍政権に合わせての意味であり、右傾化する時代と世論に合わせてという意味であり、それに抵抗しないという意味である。「時代に合わせて変わる」という態度の妥当性の強調が、右翼安倍政権に抵抗しないことを正当化する論理になっている。また、平成天皇も時代に合わせて変わったからという狡猾な論法で、新天皇の変節と転向を合理化する論理を細工して説得している。きわめて欺瞞的な言説工作とプロパガンダの散布だ。河西秀哉の口上に即して反論を返せば、平成天皇は決して時代に合わせなかった。右傾化する空気に迎合せず、右翼政権に屈従しなかった。戦後民主主義の思想が媒介する象徴天皇の理念に頑固なまでに忠実だった。

変節を美化・肯定する河西秀哉の言説工作 - 「古層」に屈服した新天皇_c0315619_13471580.png安倍政権が登場して、改憲の波が世間全体を覆おうとしたときに、皇后(美智子妃)と二人でそれに抵抗し、平和憲法の意義を行動で訴え、改定はならぬ、擁護せよと暗黙裏に国民を諭したのが平成天皇である。平成天皇は風潮に流されなかった。流れに身を委ねなかった。むしろ、悪い流れ(反動)に対して身を挺して戦う態度を示した。平成天皇の最後の7年間は、安倍晋三との熾烈な闘い(権力闘争)に明け暮れた7年間であったと言って過言ではない。二者間で軋轢と角逐が激しさを増すほどに、平成天皇が安倍独裁の圧力に反撃して一矢を報いるほどに、国民の平成天皇への支持と信頼は高まって行った。この国の民主主義の守護神としてのシンボルを屹立させ、その説得力を普遍化させて行った。安倍晋三の独裁と横暴に対して、抗う拠点を(永田町にもどこにも)持たない地べたの国民は、平成天皇を心のよすがとし、そこに政権を監視する微かな民主主義の機能があることを信仰して慰めとした。それを心の支えとして、憶良的な貧窮問答歌の日々を耐えた。だから、河西秀哉の言説は鵜呑みにしてはならない。それは虚偽意識であり、真実の象徴天皇像ではない。

変節を美化・肯定する河西秀哉の言説工作 - 「古層」に屈服した新天皇_c0315619_13483209.png河西秀哉の「流れに合わせて変わる天皇制」の言説を聞いて、真っ先に想起するのは、あの丸山真男の「古層」論であり、基底範疇「つぎつぎになりゆくいきほひ」の問題である。おそらく、同じ感覚と意識を持った者は多いだろう。河西秀哉が垂れている言説の中身は、まさにストレートな「古層」の肯定であり、「執拗低音」への妥協と癒着の勧めであり、丸山真男が析出して批判した「日本の思想」の正当化と合理化に他ならない。日本人の無責任性と非市民的自立性を媒介するところの、宿命的な、DNA的な精神の本質的なパターン。本居宣長の「中今」主義。「いま」の絶対主義。丸山真男は72年の論文の中でこう書いている。「日本の歴史意識の古層をなし、しかもその後の歴史の展開を通じて執拗な持続低音としてひびきつづけて来た思惟様式のうちから、三つの原基的範疇を抽出した。強いてこれを一つのフレーズにまとめるならば、『つぎつぎになりゆくいきほひ』ということになろう」(10巻 P.45)。「こうして古層における歴史像の中核をなすのは過去でも未来でもなくて、『いま』に他ならない。われわれの歴史的オプティミズムは『いま』の尊重とワンセットになっている」(同 P.55)。

変節を美化・肯定する河西秀哉の言説工作 - 「古層」に屈服した新天皇_c0315619_13490408.png丸山真男の思想史論文の最高傑作を読み返しながら、とりわけ今回、私の注意を惹いたのは、次の慈円論の部分であったので抜粋する。「『愚管抄』の場合をとってみよう。(略)『代々の移りゆく』歴史の道理とは、彼(慈円)の場合、同じ道理が時代によって具体的な発現形態を変えてゆくのではなくて、むしろ、『世の中の道理の次第に作り変へられて』『道理を作り変へ作り変へして世の中は過ぐる也』というように、異なった時代には、異なった意味の道理がつくられてゆくことを強調した」(同 P.50)。こうして丸山真男は、執拗低音論の思想史を描き上げつつ、移り変わってゆく時勢や流行にどこまでも肯定的で、ずるずるべったりで、普遍的原理に碇づけられた信念や悟性でもって現実(=上からの政治と空気)に対峙できない日本人のネイティブな精神性(限界性)を批判する。フローする現実(=世間の大勢)に無条件に即応し、無前提に没入する「日本の思想」を政治学の理論で対象化する。そのセオリーは、46年の『超国家主義の論理と心理』から一貫したもので、戦後民主主義の哲学であり、戦後日本人の自己反省的な態度を指導教育し、平和憲法を守る主体性の核心となってきた自己認識でもあった。

変節を美化・肯定する河西秀哉の言説工作 - 「古層」に屈服した新天皇_c0315619_13492017.png天皇制の歴史について誰よりも関心を持ち、誰よりも研究書を読んだ平成天皇が、丸山真男の古層論文を読んでいないはずがない。否、昭和一桁生まれで皇太子の身だった彼が、『超国家主義の論理と心理』や『軍国支配者の精神形態』や『日本の思想』を読んでいないはずがない。平成天皇の象徴天皇の理念の追求と実践は、むしろそこを基礎として営為され構築されていると想像するのが正しく、すなわち吉野源三郎の思想が投影され、平和と民主主義の思想が土台になっていると考えて間違いないだろう。それは近代主義の思想であり、精神的に自立した近代的市民社会を環境想定するものだ。つまり原理定立的な、普遍的規範に価値づけされた世界(観)こそが前提にあるはずで、したがって、主体は原理(平和憲法)と現実(安倍政治)との間の緊張関係に入らなければいけない。入らざるを得ない。内面に原理を持つ平成天皇は緊張関係の日々を生きていた。安倍晋三との抗争を余儀なくされ、言挙げせざるを得なかった。新天皇はその精神的前提を捨て去るのだろうか。原理と規範へのコミットをやめ、古層に埋没するのだろうか。河西秀哉の「流れに合わせて変わる」変節の礼賛と美化こそ、まさに宣長の「中今」主義そのものだ。

それにしても、これが名古屋大学で岩波文化人のレベルとは恐れ入る。気が滅入る。文学部と聞いて少し胸をなで下ろしたが。象徴天皇制の崩壊も遠くない。変えてはいけないものは変えてはいけない。

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by yoniumuhibi | 2019-05-07 23:30 | Comments(2)
Commented by 桃太郎 at 2019-05-08 10:43 x
貴殿の鋭い感覚と指摘に敬意を表します。
非常に巧妙なやり口で ある時は天皇の権威を利用し、またある時は、天皇の存在感を薄め、国民の深層の意識・思想を操作している 現政権の政治手法は極めて危険なものに感じざるをえません。
現政権に寄生し、政治権力、社会風潮の方向付けをしている中核的勢力とは何か? 大いに気になり不安になるところです。
一市民がこれに気づくことは容易ではありません。さらに、一市民として何をどうすればよいのかという問題の困難さにも途方にくれます。
歴史に学ばないのは権力の側だけではありません。庶民も歴史に学べない状況に包まれているのです。 教育の大切さを感じると同時に、また困難さを感じるところです。
貴殿の記事が少しでも多くの人の目に触れられまいことを願っています。
Commented by H.A. at 2019-05-10 13:06 x
香山リカ氏は、”憲法が変わるかもしれないから”こういう言い方になったのだろうとコメントされ、横田耕一氏は、憲法学者として(?)、”皆さんとともに日本国憲法を守る”というと、尊重義務のない国民もしばりかねないから、今回の表現でよかったとコメントされたという記事をみました。浅いというか、形式主義的な見方だなと思いました。
ただ、日本国、国民統合の「象徴」であるためにその時々の時世の”センター”にいないといけないのであれば、時世が右にいってしまったから、仕方ないのかなと思ったりもしました。


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