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中西進の爆弾証言 - 「考案者は私ではない、粘土を出しただけ」

中西進の爆弾証言 - 「考案者は私ではない、粘土を出しただけ」_c0315619_14422429.png14日に中西進が、自身が館長を務める富山市の「高志の国文学館」で講演を行い、新元号「令和」について意味深な説明をしている。「令和」の選定過程の真相に関わる重要な証言だ。その問題の検討に入る前に、冒頭から脱線して恐縮ながら、昨年末にその「高志の国文学館」に足を運ぶ機会があったので先に余談から入ることをお許し願いたい。堀田善衛の生誕100年を記念する展示会が「高志の国文学館」で開催され、その目玉としてスタジオジブリが手がけた『路上の人』の絵コンテが紹介されているという情報があったので、これは見なくてはと思い立って富山へ出かけることにした。宮崎駿は堀田善衛を深く尊敬し影響を受けていて、そのことは司馬遼太郎を加えて鼎談した『時代の風音』を読んでもよく分かる。思想と創作に関わる決定的な影響と言ってよく、宮崎駿にとって人生の師が堀田善衛で、この展示会のために収録したビデオの中でも宮崎駿と鈴木敏夫が熱い思いを語っていた。『時代の風音』の初版は1992年。池袋リブロの店頭で見つけてすぐに買って読んだが、そのとき私は宮崎駿という人物をよく知らず、ジブリの映画作品も一つも見たことがなかった。



中西進の爆弾証言 - 「考案者は私ではない、粘土を出しただけ」_c0315619_14424247.pngあの宮崎駿が堀田善衛について語った映像は、できればテレビで放送する機会があればいいと思う。宮崎作品に夢中で、ジブリ作品のことなら何から何まで完璧に知り尽くしてオタク自慢する日本国民の、果たして何割が、否、何パーセントが堀田善衛の名前を知っていて、堀田善衛の小説や随筆を読んだことがあるだろう。わが子に教育指導したことがあるだろう。私も堀田善衛に影響を受けたと自分で思う一人であり、けれども悲しい哉、知識と才能が乏しすぎて、器が小さく影響を受ける度合いも小さすぎたことが残念だが、堀田善衛は、もっともっと影響を受けたかった偉大な知識人だった。しかし、このことは私から見て、よく分からない日本の矛盾であり、現代日本の不条理である。宮崎駿自らが、堀田善衛に決定的な影響を受けたと言っているのに、当の日本国民が、なぜ堀田善衛を貪り読もうとしないのだろう。あの文章作品に触れて感動し影響を受けるという通路が一般化しないのだろう。誰も堀田善衛に関心を持たない。不思議だ。今、この国に堀田善衛のような本物の知識人がいない。だから、今後、宮崎駿のような巨大な作家も登場することはないだろう。消費だけ。

中西進の爆弾証言 - 「考案者は私ではない、粘土を出しただけ」_c0315619_14425336.png余談と愚痴の続きは次の機会にするとして、14日に中西進は講演会でこう言っている。「(令和の考案者は)私ではないのですよ」、「(元号を)つくるのは神や天」、「誰かが考えたとしても、(私は)粘土細工の粘土を出しただけ」。これは重要な証言だろう。「令和」が発表されてわずか二週間、考案者とされる中西進の発言は意味が重く、新元号誕生の裏側の事情をわれわれに示唆している。基本的にこれらの証言に虚偽はないと考えるべきだ。ウソを言えば、それは後で中西進の名誉に深刻に傷がつく結果となるのだから。つまり、中西進は「令和」を考案して提出してはいない。「令和」の考案者ではなく、「令和」の責任者ではないけれど、「令和」が選定される材料(粘土)を提供したのが自分だと言っている。すなわち、3月14日に官邸(内閣審議室)から緊急の依頼が来て、万葉集から最終版の元号を選定したいので何とか知恵を貸していただきたいと懇請され、それならこの辺りに適当な漢字を採れる箇所がありますよと、(家持の梅花宴序文を含む)漢詩を一つ二つ教示したということではないか。「令和」の責任者ではないと逃げたところに、中西進自身の「令和」への感想と態度がある。

中西進の爆弾証言 - 「考案者は私ではない、粘土を出しただけ」_c0315619_14430413.pngどうやら、この元号に本心では納得していない。それは当然だろう。小島毅も指摘しているとおり、「初春令月、気淑風和」の詩句の中から意味をなす二文字を選んで成語するなら、「淑」と「和」を熟して構成するのが自然で、それがプロトコルに即した正規の言語の形式である。「令」と「和」で成語する組み合わせは脈絡に無理があり、対句の流儀から逸脱した不具合な作法だ。何でもいいから字を二つ選んで合成しただけという、対句の配置と文型を無視した、強引で整合性のない、いわば粗製濫造の類の元号になってしまう。実際、元号について知識のある漢文学者など専門家の見地と眼識から、「令和」は、違和感のある不安定でヘテロドックスな元号だと評価されるものになった。無論、日本と中国の古代文学に精通している比較文学者の権威の中西進が、この基本的な成語方式の瑕疵に気づかないはずがない。普通に考えれば方法的な逸脱であり、学者がやったとすれば過誤の誹りを免れない。中西進ほどの泰斗がどうしてと、学界からは不審視される首尾だろう。当然、中西進がそんな初歩的なミスを犯すはずがないと誰もが思うし、だとすれば、「令和」は中西進ではなく別の誰かの創作だろうという憶測に至る。

中西進の爆弾証言 - 「考案者は私ではない、粘土を出しただけ」_c0315619_14431961.png「令和」発表からわずか二週間で、当の中西進が公の場に出て、「私は考案者ではない」と明言した理由は、そうした学界からの疑念や当惑に対して中西進が返答と弁明を行う必要があったからだろう。前の記事にも書いたが、元号発表の翌日に考案者としてマスコミに名前を出されたのは、中西進にとって想定外の不意討ちであり、内閣に(長期非公表の)約束を裏切られた迷惑至極だったに違いないのだ。考案者として名指しされて発表されれば、当然、学界から小島毅のような指摘を受ける。本郷和人のような辛辣な批評を受ける。中西進は政治家ではなく学者だから、世論調査で国民の80%が好感すればそれでOKというわけにはいかないのだ。学者には学者の名誉がある。仮に「令和」の考案者が中西進ではなく別の者で、中西進は「粘土」を提供しただけだったとして、中西進の目から客観的に評価して、「令和」は元号として不合格なのだろう。「(自分は)考案者ではない」と言い、「粘土を出しただけ」だと言ったのは、元号選定における自分の立場と役割を正直に言い、マスコミの報道(政府リーク)の修正を試みたという意味だと思われる。

中西進の爆弾証言 - 「考案者は私ではない、粘土を出しただけ」_c0315619_14433333.png考案者としてマスコミ報道(暴露)され、狼狽した直後から、中西進と政府との間でどのようなやり取りがあり、元号選定過程の事実認識についての調整と合意があったのかは不明だが、こうして中西進が公開の場に出て口を開き、自ら説明をし始めた以上、全容解明はそれほど遠くないかもしれないという期待を抱かせる。中西進は「(元号を)つくるのは神や天」と言って責任を逃げる言い訳をしたが、「神や天」の比喩で指をさしたのは、明らかに安倍晋三であり、忖度官僚と安倍晋三のブレーンズ(日本会議系)のことだろう。どうしても万葉集出典にしたいから、何でもいいから案を出せと強請され、やむなく「粘土」を出したのだとエクスキューズしている。最終決定までの経過がドタバタで、納期間際で混乱していたことが透けて見える。これから皇位継承の日程があり、元号「令和」は注目され、論議され、その選定過程や制作意図がまたマスコミで焦点になるだろうし、そのときは、安倍晋三が巧妙に真実を隠し、辻褄を合わせ、われわれが鼻をつまんで聞く安倍臭い作り話をマスコミに撒かせるだろう。だが、それをやれば、さらに中西進の証言との間で齟齬が生じ、「令和」の出自への疑念が深まり、「令和」の物語が破綻することになるに違いない。

「令和」は中西進が自信をもって以前から提案していた元号案ではなく、安倍晋三の周辺でバタバタとやっつけで粗製され、納期に何とか間に合わせた作りものだった。権威が独自に考案した手製の価値を欠くものだった。発表から二週間で「令和」の出自は怪しくなり、正統性への確信が相対化され、国民生活に安定的に根づくはずの文化的条件が揺らぎ始めた。


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by yoniumuhibi | 2019-04-16 23:30 | Comments(3)
Commented by mori at 2019-04-17 18:25 x
「令」が「好い」という意味で「和」を形容するんだというなら、じゃあ梅花宴の一節が典拠ということじゃなくたって、漢和辞典が典拠でいいんじゃないですか。そのへんの辞典開いて適当にパラパラっとめくって決めたってことですか。馬鹿にするのも大概にして欲しい。勝手に文字を拾ってきてかばん語のように造語し、それを熟語としての意味を放擲して一字一字の意味を繋げるなどという態度が原典を尊重する学術的態度ではないことは自明です。「令和」を普通に訓じた「和せしむ」という言葉の表記や響きや内実に対して反発を覚えるのは極めて自然であり、これをこじつけだという方がどうかしています(「麗しい和」とは一体何か?)。「和せしむ」について「感心した」と言ったロバート・キャンベル氏にもビックリですが、中西氏の今回の発言には怒りを禁じ得ません。
Commented by Mr.T at 2019-04-18 11:49 x
4月13日の中日新聞によれば、中西進は東京都内での口座で令和について次のように話したとあります。
・命令の令とはこじつけだ
・文選の一節とは「並ぶべくもない。冷静に見ると、万葉集を出典とするのがいい」
・「同姓同名の中西進という人が考案者とされている」と何度も発言

まぁ、嘘としか思えない発言をして記事にされています。
酷いものです。
Commented by ふゆ at 2019-04-18 14:43 x
中西先生は、今回の件で自著が増版となったと連絡があったら、出版社に「万葉集は令はしく生きる日本人の…」などというキャッチコピーを自分で考えて、出版社が増版分の帯につけたくらいの商売人です。
私生活のお話もまあ聞きますし、まあ、もういいお年でちょっといろいろと…ということでしょうね。
今回天皇がノートルダムの件でフランスにお見舞いの言葉を出したそうですが、これは明確におかしいですね。フランスは政教分離で、世俗国家ですから。たしかにノートルダムはフランスの象徴的な建物ですが、天皇がお見舞いの言葉を出すのはおかしいです。こちらは皇后主導で動いたんでしょうが、退位でハイになっているんでしょうね。みっともないです。
私は皇后は安倍夫人とたいして変わらないオツムの人間だと思ってますので、この人がはしゃぐのを滑稽だなと思っています。旧皇族の方々が、この人を見下す気持ちがよくわかります。


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