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国書と漢籍の両方を出典とする妥協的でアクロバティックな新元号

国書と漢籍の両方を出典とする妥協的でアクロバティックな新元号_c0315619_14062169.png27日、新元号についての報道が多くあった。4月1日の発表まで残り5日のタイミングであり、事前の最終のマスコミ報道(=政府リーク)である。その中で、日テレの報道に注目させられた。「政府関係者によると、安倍首相はかねて『元号の出典は日本で書かれた書物がいい』と話しているということだが、日本の古典は、中国の古典を引用しているものが多いことから、日本と中国の古典の両方を出典とすることも検討しているという」とある。これが事実なら状況が少し変わったことに気づく。同じ日テレの1日の記事を確認しよう。こう書いている。「これまでの元号はすべて中国の古典から選ばれているが、安倍首相は周辺に対し、『元号の出典は日本で書かれた書物がいい』と話しているということで、今回は、室町時代までに漢文で書かれた日本の古典に由来する案も候補にあがっているという」。読売・日テレは安倍晋三と昵懇の身内メディアであるため、安倍晋三はネタを優先的に漏らして撒かせることが多い。ここまでは、安倍晋三の主導で国書の出典が確実視されていたが、国書と漢籍の二つを同時に出典という、特殊な、そして妥協的な形式に変わった。もしこれが事実なら看取すべき意味と背景は一つであろう。



国書と漢籍の両方を出典とする妥協的でアクロバティックな新元号_c0315619_14063497.png東宮(皇室)が反対したということだ。2月22日に安倍晋三は東宮を訪れている。そこで元号案が示されたことは推し量ってよく、この後にマスコミに「国書出典」の自らの意思を書かせ、また、国文、漢文、日本史、東洋史の4分野から元号の考案を委嘱する専門家を選ぶ方針を明言している。これは13日の国会で安倍晋三が答弁で語った。元号の文字が日本の古典から採られたことは過去に一度もなく、異例であり、伝統と慣習を破る逸脱で、安倍晋三による元号の私物化の一部を成す不当な政策行為に違いないが、マスコミや野党から特に批判もなく、理由を質すことも行われず、そのまま押し通って承認される進行となっていた。情勢的には、少なくとも3月中旬までは、「国書出典」が既成事実になっていたと言っていい。安倍晋三が国書に拘るのは、言うまでもなく反中国のイデオロギー的衝動からであり、すなわち、宣長的・国学的な漢意(からごころ)排除の先鋭なナショナリズムに動機づけられた妄動に他ならない。日本会議のイデオロギーをこの政策機会に直截的に投射した方針と判断だ。櫻井よしことか、長谷川三千子とか、大原康男とか、毒々しい極右ブレーンの面々が耳打ちする姿が浮かぶ。

国書と漢籍の両方を出典とする妥協的でアクロバティックな新元号_c0315619_14064475.png日本の元号を漢籍出典のコードから解放し、漢意(からごころ)排除の新ルールにアラインさせることは、中国文化排斥の国粋主義者たちの悲願だったと言ってよい。とりわけPRCに対して敵意と憎悪を剥き出しにし、CPC打倒とPRC解体の政治目標の達成をレゾンデートルにしているファナティシズム集団の日本会議は、この機会にどうしても元号を国書出典に変えねばならず、漢籍出典の方式が従来どおり踏襲されることは生理的に耐えられない不具合なのに違いない。考案を委嘱した国文、漢文、日本史、東洋史の専門家について、菅義偉は誰なのか公表しないと言ったが、同志である日本会議系の極右学者が指名されていることは想像に難くない。私は、これらの面々はすぐにペラペラ喋り出すだろうし、自慢したい者が周辺に内幕を漏らし始めるだろうと予感している。文化的教養ではなくイデオロギーの契機が突出・支配し、安倍晋三と仲間たちが私的欲望を満足させる過程となった今回の元号選定では、内面に緊張感や倫理感を欠き、秘密を厳粛に守るということが難しいだろう。安倍晋三は4月1日に談話を生中継して新元号の宣伝式をやるらしいが、それをやれば、当然、誰がどういう思惑で考案したかが類推・探索されることになる。

国書と漢籍の両方を出典とする妥協的でアクロバティックな新元号_c0315619_14065738.png3月中旬までは、国書出典への方式転換を強調し、選抜する二文字も純血主義と固有主義で貫徹するつもりだったのが、発表まで一週間と迫った時点で、急に態度を日和らせ、国書と漢籍の両方に併存するコンパチブルな熟語にすると言い出した。日本会議的・宣長的な強硬なナショナリズムの偏執的追求から離れた。つまり、ここで方針を変更している。おそらく、本命の元号案も変えたのだろう。なぜ、安倍晋三は方針を変え、本命を変えたのか。理由として考えられるのは、東宮(皇室)の抵抗しかない。皇太子(と両陛下)が、日本会議的なイデオロギーに染まった元号になることを快く思わず、拒否の内意を内閣に伝えたのだろう。最近の皇室は、徐々に言論の自由を獲得・拡大する方向に進んでいる。聾唖たるを強制する束縛が緩んでいる。もし、2月下旬から始まった安倍晋三による皇太子への新元号選考の調整と説得が、皇太子のリベラルな思想信条を傷つけるもので、安倍晋三のエゴが皇太子に不快と苦痛を押しつけるものであったなら、その真相は、かなり早い段階で周辺に伝わり広がることになるだろう。それは、安倍晋三の不敬として、皇室に対する不遜な冒涜として歴史に刻まれる結果になる。それを恐れ、安倍晋三(日本会議)は妥協させられたのだ。

国書と漢籍の両方を出典とする妥協的でアクロバティックな新元号_c0315619_14070972.png25日のNHK-NW9で、西安の碑林博物館を訪れて「地平天成」の字句の前に立つ天皇陛下の映像を見たので、27日の日テレの報道は納得がいく。平仄が合う。どうやら、安倍晋三(日本会議)は妥協して折衷案を考え出した可能性がある。再び3月1日の日テレの記事を検証したい。ここには、「政府関係者によると、今月中旬と下旬に2回さらに説明を行うことを検討している」とあり、安倍晋三が三回も皇太子と面会するつもりだったことが書かれている。結局、2月22日と3月29日の二回だけになった。皇太子が安倍晋三の無遠慮で無神経な「内奏」行為を嫌い、新元号を二人で相談して合意の上で決めたかのような形式が既成事実化されるのを避けたのだろう。いずれにせよ、こうして右翼のイデオロギー的策謀が挫かれたことは歓迎すべきことで、安堵すべきことではある。残る問題は、元号二文字に「安」の字を入れるかどうかに焦点集約されてきた。ネットの議論では、いくら恥知らずの安倍晋三でもそこまではやらないだろうという常識論が多い。だが、そうした逸脱と暴走を貪婪に積み重ね、次々と閾値を超え、言語道断の悪事を「当然化」させて開き直ってきたのが安倍晋三だ。安倍晋三のマインドとスタイルというのは、金正恩と類比させて認識すべきもので、傲慢なエゴイズムを暴散させ、他者を屈服させるところに本質と特徴がある。

国書と漢籍の両方を出典とする妥協的でアクロバティックな新元号_c0315619_14072006.png新元号発表まで一週間を切って、NHKのニュースでも、民放のワイドショーでも、新元号への関心と話題でずっと放送時間が埋められる状況が続いているけれど、どの局の番組でも、必ず「安」の字が入った候補を並べる演出で徹底している。街頭での調査とか、どこかの人気投票とか、得体の知れないエビデンスの説明で、さりげなく「安」の字の元号を並べ、これがデフォルトで本命なのだと言わんばかりの「報道」が溢れかえっている。3月に入って、「安」入り元号を懸念し牽制する声がネットで上がったが、それを無視するように、お構いなしとでも言いたげに、テレビに出演するレギュラー陣は「安」入り元号を当然視するコメントを吐き続けた。それは問題っではないか、私物化ではないか、権力者が自分の名前を元号に入れる暴挙ではないかというチェックを入れなかった。一方、右翼はネットで盛んに「安」入り元号を正当化するプロパガンダ運動を始め、「安」入り元号に拒絶反応するのは左翼のアレルギーだと宣伝し、「安」入り元号で何が悪いと吠えまくっている。当然、そこには自民党(ネトサポ)と日本会議の指令系統があり、匿名右翼を動員した世論工作のオペレーションがある。もし、安倍晋三が「安」入り元号を断念していたのなら、ここまで強烈に、凄絶に、テレビとネットで「安」入り元号の刷り込み工作はしないだろう。

少なくとも、これまでのテレビの新元号に関する放送を見るかぎり、安倍晋三が「安」入り元号の発表を強行した後で、「安」が「安倍」の「安」だと批判するのは一部による難癖だと言い張ったり、それは左翼のアレルギーだと開き直るための材料をマスコミが提供してきたことは間違いない。世間一般が「安」入り元号を不審視せず受容する環境を、マスコミがせっせと整備してきた事実は否定できないだろう。マスコミはずっと「安」入り元号の地均しをやり続けてきた。


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by yoniumuhibi | 2019-03-28 23:30 | Comments(3)
Commented by AF at 2019-03-29 01:22 x
いつも拝読させて頂いております。
ニュースや新聞ではまず見られない深い洞察、本当に勉強になります。
と同時に今後の日本のことを思うと暗澹たる気持ちにさせられるばかりです。

ぜひ伺わせてください。
これから生まれてくる子孫の為に、私は何ができるのかを。
Commented by Q at 2019-04-01 21:31 x
まさに的中ですね。
ネットで指摘されている張衡「帰田賦」(文選)が本来の出典で、
説明としては万葉集と言い張ると。

識者から、いくつかの国書漢籍両方を出典とする元号案を示されて、
官邸は、せめて字面が勇ましい「令」を選ぶしかなかった、
というのであれば、それなりに抵抗できたといえるのかもしれませんが。
Commented by mori at 2019-04-02 00:37 x
世に倦む氏が指摘していた「皇太子の抵抗」は、本当にあったのか若干訝しんでいたところはありましたが、実際に「令和」の発表を見た瞬間に自分の中で確信に変わりました。これはサブの案だという感覚が拭えません。本当は「安」のつく元号が本命だったのだと思いますが、事前に皇太子に難色を示されたので変更せざるを得ず、そのための言い訳として後出しとして「民間で人気上位のものはなるべく避ける」などと言い出したのだと思います。そのため、急遽捻り出した案の中に「令和」が登場したのですが、急拵えだから「令」と「和」の意味付けに腐心したとみえて、全く納得のいく「国家の理想像」ではありません。「美しい月と和らぐ風」がなぜ国家の理想なのかを牽強付会に説明せざるを得ないから、万葉集が種々の階層の詩を収載しているなどと万葉集全体のことを言い出しました。しかし内心では「してやったり」なのでしょう。なにせ「和せしむ」=「俺が平和を導いてやる」という俺様主義を形に出来たのですから。「美しい国」の理念も押し出すことができ、おおかた満足のいく巧い案だということなのでしょう。「安」が付かなくてホッとしたということもありますが、同時に何とも面妖で冷徹な響きを持った元号にこれからの時代を託すことは出来そうにありません。(響きがカッコいいなどと言ってる若者たちに暗澹たる思いもあります。)


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