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陸前高田と高台移転 - 復興構想会議、菅内閣、野田内閣、マスコミ

c0315619_14080776.jpg今年の3.11のマスコミ報道は、陸前高田の土地かさ上げ工事が主役となった。毎年、3.11にはマスコミが一つの話題を選び、一つの地域をフォーカスしてネタにする。同じ場所にテレビ全局が押し寄せ、ワイドショーやニュース番組で特集する。2年前は南三陸の復興商店街のリニューアル・オープンにスポットが当たった。4年前は駅舎が新築されて鉄道が開通した女川の再開発が大きく紹介された。毎年、なぜかマスコミは同じ話題に集中し、同じ素材と対象に殺到する。単に町だけでなく、被災者の家族の物語という点でも、NHKと民放各局が同じ家族を取り上げて繰り返し放送する。マスコミ各社の取材に全く差がない。どう考えても、そこに政府(内閣府)の指導と差配が入っていて、共通した事前の仕込みがあることが疑われ、テレビ全局がそれに従い、政府が準備したシナリオどおりに「今年の3.11の報道」を制作しているように思われる。そして視聴者であるわれわれも、その年に一度の「報道イベント」にすっかり慣れっこになって、マスコミがルーティンワークで垂れ流す官製報道に何も違和感を感じなくなった。



c0315619_14083543.jpg3.11の報道は、NHKで鎌田靖が政府の復興事業の矛盾を批判し、報ステで古館伊知郎が原発事故の真実を暴露した頃を境に、ジャーナリズムとは呼べない代物になり果ててしまった。覚醒や感動のないものになり、「花よ、花よ、花が咲くー」と歌い流して一過性のセンチメントで時間を送る国民的年中行事になった。今年の3.11報道が例年と少し違うのは、初めてと言うべきか、被災地自治体がマスコミの批判の俎上に上がったことだ。陸前高田の土地かさ上げ事業が槍玉に上げられ、1500億円の巨大土木事業が税金の無駄遣いだと批判される報道になった。市長の戸羽太が報ステの富川悠太に面と向かって論難されるという幕が出現した。これまで、被災地や被災自治体の首長がマスコミに叩かれるという図は一度もなかったので、今回の変化には何事かを感じさせられる。裏に政府の思惑がある。深読みするなら、意図的な世論工作だろう。あと2年で復興期間の10年が終わる。2年後には総括が迫られ、復興の収支決算が示される。復興事業のキーワードは高台移転で、そのため大規模な公共工事が行われて莫大な国費が投入された。それが失敗だったということは、すでに誰の目にも明らかだ。そのため、2年後の総括本番に向けて政府は世論の地均しを始めたのではないか。

c0315619_14085026.jpgその目的と動機は一つで、今後、地方の過疎地で大きな自然災害が起きても、政府は大型の公共事業はやりませんよというメッセージの発信だ。無駄になるからやらない、陸前高田のような失敗に終わるからやらない、やる必要ない、そういう観念を大衆世論に刷り込み、地方自治体に示唆し、政策姿勢を告知しているように窺われる。東日本大震災の後、紀伊半島・九州・広島での大雨災害、熊本地震、西日本豪雨、北海道地震と大きな災害が続いたが、どれも被災地を本格的に復興する大型予算は組まれておらず、過疎地の破壊されたインフラ再整備はなおざりにされてきた。放置された。今後は政府は地方の災害には無関心に徹するから自助努力で何とかしろと、そういう安倍晋三と麻生太郎の方針があり、それを徹底させるため、陸前高田をスケープゴートにして失敗を殊更に演出し宣伝しているのだろう。北海道では災害のたびにJRの線路が不通となり、復旧されないまま運休が続いている。高台移転は菅内閣が打ち出した復興構想の目玉だったため、陸前高田だけでなく他の地域でも大規模な造成工事をやっていて、2年後にはそこかしこに「ピカピカの過疎の町」が出来上がっているだろう。工事で働いていた作業員が撤収し、消費が減り、商店街は寂れるに違いない。

c0315619_14130557.jpg陸前高田の失敗を、10日のサンデーモーニングに続いて11日の報ステが取り上げ、過去に遡って原因を追及する報道をしていた。報ステ(朝日新聞)は、山下祐介の見方と同じで、土木事業が無駄に大型化した原因を野田政権の失策に求め、野田政権が土地かさ上げと高台移転を「全額国費負担」にしたから、自治体側に支障がなくなり、杜撰で無責任な青天井の計画になってしまったのだと指弾していた。菅内閣と復興構想会議に誤りがあったのではなく、戦犯は野田政権だと結論づけていた。11日にブログ記事を書いた直後だったので、この報道の背景と視角がよく分かる気がする。小熊英二は朝日の論壇編集の最高幹部だ。山下祐介は小熊英二の子分なのだろう。平仄が合う。この批判は半分は当を得ているかもしれないが、何と言っても、高台移転を復興構想の青写真に据えたのは菅直人である。復興構想会議のメンバーを召集する前、4月1日の段階で菅直人は高台移転を打ち出していて、復興が山を削って土地を造成する土木プロジェクトになることが見えていた。五百籏頭真と御厨貴にはアイディアは無かった。後藤新平のように名を残したいという醜い名誉欲を剥き出してマスコミで立ち回っていた。安藤忠雄は、瓦礫を海岸に並べて、万里の長城のような桜並木の堤防を作ると垂れていた。

c0315619_14132894.jpg誰も、被災した地域共同体の経済を復興するという話をしなかった。復興と聞けば、誰でも経済活動や経済規模のイメージを持つし、地域の産業が再び活発になり、商店街が賑やかになり、事業主の売上と利益が増え、人々の所得が増えて生活が豊かになる意味だと考える。常識ではそうだ。だが、復興構想会議の提言にはその視点はなく、「減災」がどうのと抽象的な文言を並べ、政府の災害行政の一般論を書いた中身のない官僚ペーパーに終わっていた。経済(仕事とくらし)の再生と繁栄を追求する問題意識がなく、人口を減少させないという意思がなかった。そのため、結局のところ、土木工事と建設工事だけが復興の中身となり、土地がどれだけ造成できたとか、公営住宅がどれだけ完成したとか、ゼネコン公共事業の目線でのみ復興がメルクマールされ、進捗が評価されてマスコミで報道されることになった。三陸高台ゴーストタウンの群れ。これだったら、安藤忠雄の桜並木の妄想の方がまだましだったかもしれない。最初の菅直人の目標では、「高台に家、漁港へ通勤」「エコタタン」のフレーズが掲げられていて、漁港と水産業を再建するという発想があった。菅直人本人は水産業への視線が若干あったように思われる。それが、野田政権から安倍政権に変わっていくうちに、「高台に家」以外の要素は何もなくなった。

c0315619_15451079.jpg復興構想のキーワードに「エコタウン」があったなど、もう誰も忘れている。「漁港」も忘れている。本来なら、一年に一度、復興の進捗をマスコミが確認するとき、三陸の水産業の現状がどうなっているか、漁港と市場は元に戻ったか、水揚げ量は元の水準に戻っているか目配りされるのが当然だが、マスコミはその定点観測をせず、地域経済をエコノミクスの言葉で診断しない。内閣府が台本を書いて絵を撮らせたところの、うわべだけの「今年の3.11の報道」をそのまま電波で流している。復興構想会議の提言が出たのが6月25日だったが、その頃までには菅直人は権力を失ってレイムダックになっていた。復興構想の「提言」と「基本法」は、誰のイニシアティブもリーダーシップもなく、理念が入らず、無内容な官僚テキストの羅列で仕上がり、官僚(官庁)が予算を貪欲に恣意的にぶんどるための口実と道具になった。そしてまた、政治家と官僚が増税を周到に運ぶための口実と道具にされただけだった。しかし、それにしても、今年の3.11の左翼しばき隊による菅直人の礼賛には呆れるばかりだ。あのとき、事故の真実を隠蔽し、「メルトダウンはしていない」だの、「格納容器の健全性は保たれている」だの、「ただちに影響はない」だの言いまくっていたのは誰だったのか。

8年前、左翼は小出裕章で理論武装して猛然と菅内閣を叩いていた。今、立憲民主と組む「野党共闘」の立場に変わり、菅直人の事故対応を英雄視して絶賛している。出鱈目にもほどがある。政権幹部はSPEEDIを見ていた。その情報を国民には隠して米軍に横流しした。放射線量の多い方向に逃げた多くの浪江町住民が被曝した。


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by yoniumuhibi | 2019-03-13 23:30 | Comments(0)


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