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復興政策は失敗だった - 五百籏頭真と御厨貴は責任をとれ

c0315619_13350231.jpg東日本大震災から8年経つのに、5万2000人が避難生活を余儀なくされている。岩手・宮城・福島の被災3県では、この8年間で何と30万人も人口が減少した。陸前髙田では1500億円かけて空前の土地かさ上げ事業をやり、盛り土した平地を造成したが、整備された宅地区画に買い手がつかず空き地が広がっていて、寒々とした現状が10日のサンデーモーニングで報道されていた。4年前のネットの記事を見ると、この陸前髙田の工事の事業費は1100億円となっていて、4年間で400億円も増額された事情が分かる。資材と人件費の高騰、工期遅れが原因だろう。1100億円の計画だった段階で、地権者一世帯あたり5000万円の造成費という計算が紹介されていて、結果的に目も眩むような税金の無駄遣いが行われたことに衝撃を受ける。陸前髙田の現実が、まさしく今回の震災復興の政策と行政の典型例を示していて、壮大無比な失敗だったと断言できるだろう。河北新報の記事を見ると、2019年度までに総額35兆円を超える復興関連予算が投入されるとある。35兆円の国費が突っ込まれて、いったい誰が幸せになったのだろう。復興政策は完全に失敗だった。



c0315619_13351685.jpg復興事業は資本に食いものにされただけだった。4年前の2015年、「復興したのは東京だった - 被災地を置き去りにした4年間の土建バブル」という記事を書いた。そこでこう書いている。「復興したのは東京だった。復興したのは、バブルのときの土地転がしで巨額の不良債権を発生させ、20年前のバブル崩壊で一度は破綻して瀕死となったデベロッパー資本、不動産屋と土建屋だった。どこまでも国民の税金を食いものにして」。この記事はネットである程度注目してもらった。河北新報の記事では、復興関連予算の執行率が7年連続で60%台に低迷していて、毎年3分の1が積み残され、事業が遅々として進んでいないと報告されている。資材費と人件費の高騰でどうのと、政府とマスコミは尤もらしく理由を説明するけれど、これを東京五輪に当て嵌めて、もし毎年3分の1も予算が未消化であれば、2020年7月の開催は不可能になるだろう。東京五輪については建設工事は計画どおり進捗していて、政府の差配の下、資材も人員もゼネコンが優先的に投入していることが分かる。その分、東北の復興が後回しにされ、事業費の膨張と納期の遅延というツケをしわ寄せされているのだ。

c0315619_13353078.jpg3年前のネットの記事で、山下祐介という学者が「誰も語ろうとしない東日本大震災『復興政策』の大失敗」という文章を上げている。ページの分量が多い割に学術的な分析や考察が乏しく、大雑把で切れ味がない印象を受けるが、復興政策が失敗だったと断定している点が目を惹く。こう書いている。「震災発生から1年ほどの早い時期に、ボタンが間違えて掛けられてしまった。そして掛け違えたまま、間違った復興が急がされ、今日までつづいている。そのボタンを元に戻さないと、本当の復興には行き着かない。むしろ進めれば進めるほど、復興政策が、被災地の/被災者の復興を阻害する」。この結論は正しい。そして考えてみれば、岩波の「世界」などを中心にこの批判はずっとされてきたし、NHKの鎌田靖などもこの視角から番組を制作して政府に異議申し立てを行ってきた。が、この文章の中で違和感を感じる点がある。それは、復興政策の方向性を大きく誤らせたのが野田政権だと指弾している件で、復興計画を策定した菅政権は正しかったと免責し評価している点である。菅政権の復興政策は、「自然と調和し、民間の力を尊重した復興」だったと持ち上げている。これはとんでもない愚論であり、認識として間違いだろう。

c0315619_13354136.jpg山下祐介自身が言っているところの「最初のボタンの掛け違い」という指摘とも矛盾する。ボタン掛け違えの復興計画を立案したのは、菅内閣であり、菅直人が人選して召集した復興構想会議に他ならない。この8年間にわたる復興事業は、すべて菅内閣が策定した復興基本法(東日本復興基本法)に則って行われており、その指針を出したのは、五百籏頭真が議長を務め、御厨貴が議長代理を務めた復興構想会議である。4月14日に第1回会議が開かれ、復興基本法が国会で成立する6月24日までの間、計11回にわたって会議が行われている。復興構想会議は6月25日に提言を出したが、中身は何もないスカスカの官僚ペーパーで、官庁が復興基本法を盾に予算をぶんどる上で権威づけを与えるために作成された代物だった。五百籏頭真と御厨貴は、後藤新平がどうのとマスコミに出張って鼻息荒く名誉欲の野望を吐露していたが、蓋を開けてみれば、報告書には何のコンセプトもなく、どういう復興を成し遂げるべきかというビジョンが何も描かれていなかった。最も根本的な問題は、復興とは何かという定義が欠落していた点だ。5年後、10年後に被災地がどのような姿で再生しているか何も想定されておらず、言及がなく、目標設定されていない。抽象的な美辞ばかり。

c0315619_13355389.jpg少なくとも、人口減少は阻止するとか、被災前の地域の人口規模を維持するという目標は掲げるべきだっただろう。その目標を掲げていれば、自ずと復興施策の内容も変わってくるし、住民や地域共同体の意向を尊重した目線での復興計画と事業のあり方になっていたはずだ。岩波の「世界」も、繰り返し、誰のための復興かという問題提起を発し続けていた。政府の復興政策は、単に時間と税金をかけて壮大な土木事業(かさ上げ、高台、堤防etc)をやっただけで、被災地の地域経済を復活させることを主眼に置かなかった。本来やるべきは、上からの大型土木プロジェクトではなく、被災地の人々を下から救済・救援する金融策で、被災地の人々が生活と仕事を再建できるよう資金を注入することだった。思い出すのは、鎌田慧もレポートしていたところの、被災地のグループ補助金の制度と実態である。被災地の人々が一生懸命に事業計画と資金繰りを立て、文書に纏めて役所に申請していたものが、積み置かれ、無視され、基準要件を満たさないとして残酷に切り捨てられていた。見せかけだけの、復興政策を偽装し粉飾する事務だった。たしか、美容院をやっていた女性が泣いていた。あのような冷酷なドラマが幾つもあり、2年が過ぎ、3年が過ぎ、被災地から人が出て行ってしまった。

c0315619_13360540.jpg今回、35兆円を注ぎ込んで日本は震災復興に失敗してしまった。この意味はあまりにも大きい。このことは、2年後、復興後半の創生期間が終わる2021年に総括が迫られるだろう。70年前から60年前の10年間、日本は戦後復興に成功した。あれだけ全土を爆撃され、都市を灰燼に帰され、全国民が飢餓状態に追い込まれながら、日本は見事に復興を果たし、50年前には世界第2位の経済大国に躍進して世界の目を見張らせた。24年前に起きた阪神大震災の復興も早かった。4年前の週刊誌の記事にこうある。「インフラの復旧が急速に進んだ阪神では、1995年から新設住宅着工戸数が急増し、1996年には13万件超でピークを迎え、翌年から減少に転じた。これは1996年には市内の住宅の復旧が一段落したことを意味している。結果、兵庫県は1996年には早くも人口が転入超過に転じた」。人口が減り続けている今回の東北3県とは対照的だ。時代も状況も異なり、阪神大震災と単純な比較はできないとはいえ、このあまりの違いに愕然とさせられるではないか。阪神淡路大震災の復興予算は総額5兆2000億円で、東日本大震災の7分の1の規模でしかない。福島原発事故が重なった分を割り引いても、あまりの採算の悪さと効果の無さに絶句する。外から見れば、日本の無能が際立つ一事だろう。

c0315619_13384243.jpg本来、東北の被災地は、ゴールドラッシュで人が殺到する地にしなければいけなかったし、禍を福に転じるモデルケースにしなくてはいけなかった。日本人全体が再生する好機だった。地方の過疎化と高齢化を打破し、新しい成功を実現し、日本の地域住民が自信を取り戻す機会だったと言える。下から資金を入れていれば、それは十分可能だっただろう。災害の事態は経済的にはスクラップ&ビルドのチャンスであり、一から地面を設計して理想の社会像を組み上げ、それにトライしチャレンジする実践の場である。下から資金を入れ、人々の創意工夫を全開させ、新しい地場産業を興し、立ち上がった新事業を中心に産業構造(社会的分業の拡大と循環)を形成し、富を成せば、首都圏で埋もれている引きこもりの労働力が収入と活躍の場を求めて押し寄せる。人口が増える。若者が増える。そういう物語を作るべきだった。そうしたサクセスストーリーを21世紀に作り、世界に向かって胸を張り、日本人のフェニックス神話を再び確信させるべきだった。そのコンセプトを復興構想会議の基軸に据えるべきだった。もともと東北は産業基盤が薄く弱く、日本列島全体の産業配置のバランスから考えて開発の余地の多い場所だった。ここにもっと本格的な産業を興し、資本を集積させ繁栄させないといけない。それは近現代日本の課題だったはずだ。

あのとき、まともな復興政策を求める被災地の思いとは裏腹に、与野党の政治家と御用学者たちは、復興財源を口実にして消費税の引き上げばかりを議論していた。財源はどうすると、そればかりに血道を上げていた。震災復興を増税の出汁にして画策していた。許せない。菅直人は毎晩ニューオータニの「なだ万」で豪華な懐石を食っていた。山下祐介がなぜか菅内閣と復興構想会議を免責し、逆に評価し、野田政権に罪の責任を押しつけているのは、アカデミーのサラリーマンの保身芸であり、五百籏頭真と御厨貴へのおべっかだろうか。くだらない。二人には責任をとらせる必要がある。勲章など論外だ。



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by yoniumuhibi | 2019-03-11 23:30 | Comments(1)
Commented by 長坂 at 2019-03-12 10:48 x
35兆円‼︎ 被災者にキャッシュで渡して。NHK の「終のすみかと言うけれど」を見ましたが、結局ボランティア、NPO、自助のみ。高齢被災者に自助努力が足りない、困ったら善意の誰かを頼れと。御指摘のように自分達にブーメランだから、野党は復興、原発の問題には腰が引けてしまっている。いやらしいシンゾーのこと、「いいですか?民主党政権の時なんですよ」を連発するでしょ。
3月10日は東京大空襲、東京新聞の戦災孤児の動画に、見兼ねて孤児を自宅に引き取った女性が紹介されていますが、つくづくこの国って国民を愛さない国だと思いましたね。アメリカ様はもとより、最近は別に困ってないけど中国憎しでパラオに4億、ちょっと前はBrexitのイギリスに40億円。被災の高齢者、15円のもやしと3つ入って100円のうどん。何のためにの税金?リバタリアンかアナーキストになれってか?


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