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安倍晋三の支持率を高めるマスコミの韓国叩きと嫌韓過熱の国民世論

安倍晋三の支持率を高めるマスコミの韓国叩きと嫌韓過熱の国民世論_c0315619_12471933.jpg昨日(27日)、日経新聞の世論調査が発表され、安倍内閣の支持率が前回から6ポイント上昇して53%、不支持率が前回から7ポイント低下して37%と大幅に好転する結果となった。同じく読売新聞の世論調査でも、内閣支持率は2ポイント上がって49%、不支持率は5ポイント下がって38%となっている。保守層の安倍晋三への支持率が上がった。これは、明らかに日韓関係のフリクションが影響している。マスコミが韓国憎悪のプロパガンダを繰り返し、嫌韓感情を刺激する報道がテレビでもネットでも充満したため、安倍晋三への支持が高まる世論状況となった。安倍晋三は、高支持率維持の世論環境を作るため、奇貨たるレーダー照射問題を意図的に政治問題化し、マスコミを総動員して狂騒させたのであり、狙いどおりの成果を得た形になっている。今後、国会が始まり、厚労省統計問題等で野党に叩かれて支持率は下がるが、下がっても大丈夫なように「貯金」を蓄えたわけで、今後、2月22日の竹島の日、3月1日の三一独立運動100周年の記念日を控え、日韓の感情的対立を爆発させて支持率を維持する「起爆装置」を巧妙に仕掛ける政治に成功したと言える。



安倍晋三の支持率を高めるマスコミの韓国叩きと嫌韓過熱の国民世論_c0315619_12472977.jpg12月から1月にかけて、マスコミは韓国叩きに一色となり、テレ朝の吉永みち子や玉川徹までそれに加担し、安倍政権を批判する声は一切出なかった。日韓が対立する問題はレーダー照射と徴用工の二つがあるが、二つの問題とも、日本マスコミは完全に安倍政権の側に与して文在寅糾弾に徹し、野党は黙ったまま政府・マスコミの韓国非難を容認してしまった。異論を挟まなかった。日本国内にこの問題での異論がなく、安倍政権を批判する議論が一切出ない。国民はマスコミの扇動に流されるだけで、当然、安倍内閣の支持率が高まる状況になる。問題なのは、マスコミは官邸に支配されているからやむを得ないとしても、ネットで有効な反論が出ず、異常なショービニズムの奔流に抵抗する論者が現れないことだ。私は、1月12日に「文在寅発言を支持する」という動画を上げ、歴史問題での日本政府批判は正当であるという持論を述べた。レーダー照射問題については、韓国側を擁護する理由や根拠は何もないが、徴用工問題については日本側の拒絶姿勢は評価できず、24年前に誓った村山談話の方針に違反するものだと考える。未来志向の立場に立てば、韓国大法院の判決を尊重して「知恵を出す」譲歩の態度に出てよい。

安倍晋三の支持率を高めるマスコミの韓国叩きと嫌韓過熱の国民世論_c0315619_12474143.jpgと、そういう意見を提起して、嫌韓一色に染まった空気に抵抗する知識人が一人くらいは出てよかった。日ロの領土問題で、木村汎が、56年の日ソ共同宣言は、その後の長い交渉と首脳会談時の諸共同宣言・声明によって相対化されているのだと正しく指摘したように、日韓の戦後処理問題も、65年の日韓基本条約・日韓請求権協定が絶対的な「国際法」ではなくなっている。65年の取り決めが不動で無謬のドグマというわけではなく、水戸黄門の印籠の威力で日韓関係を永久に拘束するものではない。そこから30年後、95年の村山談話において、現在取り組んでいる戦後処理問題についても引き続き誠実に対応してまいりますと、日本政府は謙虚に誓っている。韓国との間で未解決の慰安婦問題と徴用工問題について、日本政府は村山談話に即いて対応すべきであり、野党とマスコミが政府にそう諭し促すのが当然ではないか。村山談話は、日本がアジア諸国と結ぶ国際法の法源となり規範となる根本的なものだ。そのように村山談話をキーにして立論すれば、徴用工問題については争点を構成できる。国内で論争するフィールドを作れる。なぜ、誰もそれをしないのだろう。それをしないから安倍晋三の支持率が上がる。

安倍晋三の支持率を高めるマスコミの韓国叩きと嫌韓過熱の国民世論_c0315619_12475268.jpg他方、レーダー照射問題については私は韓国側には与さない。韓国側の言い分には納得できる要素がない。正当性があるのは自衛隊の立場と見解だろう。12月20日の火気官制レーダー照射は事実であり、韓国海軍の艦艇側に事件の過失責任があるのは明白だ。ただし、この事件は政治問題化して騒ぐ性質の問題ではなく、現場を仕切る実務者同士で素早くトラブルシューティングすべきアクシデントだった。政治問題に発展させ、マスコミを動員して煽り、国民感情が衝突する紛争に拡大した犯人は安倍官邸であり、その点で日本側に重大な責任がある。今月23日の離於島近海で起きた哨戒機接近事件の後、韓国世論は一気に日本批判の空気が燃え上がる形勢になった。それまでは日本世論の方が熱くなり、韓国世論の方が冷めていたのが、ダボス会議を直前にしての問題発生で、韓国側が官民共に激高した形になっている。私の認識では、自衛隊機が超低空で威嚇飛行したとは思えないが、韓国軍側からすれば十分に嫌がらせだと感じる行為だったのだろうし、客観的に見たとき、自衛隊側に何の悪意もなかったとは言いがたい。ダボスで外相会談が控えているのだから、当日の行動は注意を要するべきで、相手側に誤解を与える行動は慎むべきだった。

安倍晋三の支持率を高めるマスコミの韓国叩きと嫌韓過熱の国民世論_c0315619_12481292.jpg韓国のマスコミの論調に変化が出ている。従来は、今回の日韓の軋轢に乗じて、韓国の保守マスコミが文在寅政権を叩き、支持率を下げるべく足を引っ張る世論工作を図っていたのが、保守マスコミの一角である中央日報の態度が変わってきた事情が看取できる。国民世論の流れに逆らえなくなったのだろう。25日の保坂祐二によるコラム、「1875年の雲楊号事件を連想させる韓日哨戒機問題」は、23日の「威嚇飛行」を1875年の江華島事件に擬える議論で、韓国世論への影響は小さくないと思われる。恰もハンギョレの記事の如くであり、中央日報とハンギョレの差がなくなった。中央日報の24日の記事、「『日本、傲慢だ』…哨戒機の威嚇飛行に非難水準高める韓国与党」も興味深い。23日までの時点なら、中央日報がこうした記事を書くことはなかったのではないか。与党民主党幹部の韓貞愛の次の発言が紹介されている。「日本の非常識なごり押しに対して、日本メディアは日本政府の肩を持ち、われわれ大韓民国に向かって指を差している。(略)日本は政府とメディアが一つになって大韓民国を悪者扱いしているが、われわれメディアはそれをそのまま中継しているだけではないか。時には政府と共にする姿勢が必要な時もある」。

安倍晋三の支持率を高めるマスコミの韓国叩きと嫌韓過熱の国民世論_c0315619_12482206.jpg一般の韓国人の感覚では、この
韓貞愛の発言が正論だろう。日韓対立の中で、中央日報が文在寅政権に少し近づき、安倍政権と一体になって文在寅叩きをやっているのが朝鮮日報だけになった。日本に置き換えれば、朝鮮日報が産経新聞(右翼)で、中央日報が読売新聞(保守)で、ハンギョレ新聞が東京新聞(左派)というポジショニングだろうか。23日の哨戒機接近事件を境に、韓国の報道と世論全体が左に寄り、この日韓問題で文在寅政権を擁護する姿勢の方に傾いたと言える。韓国の世論調査会社リアルメーターが今月14日に発表した結果では、対日外交について、「より強硬に対応すべきだ」と答えた割合が45.6%になっていた。日経の記事にあるように、従来ならこの数字は60-70%と高く出る傾向にあり、予想より冷静な反応だと評価されている。おそらく、現時点で再び調査すれば、60%を超える数字になるだろう。さらに、竹島の日や三一節が続く2月はより可燃的な状況になっていて、何かの出来事を契機にさらに紛糾する事態に発展する可能性がある。日本の韓国に対する敵視と憎悪は、南北の融和と接近を加速させる触媒剤となる。日本の嫌韓政策と嫌韓世論の攻勢が、パラドクシカルに、南北統一の背中を押す推進力として作用する。これは安倍晋三の支持率には順風環境だが、南北統一を警戒する米国にとっては頭の痛い問題に違いないだろう。

トランプの腹の内はよく分からないが、2月末の二度目の米朝首脳会談で非核化が具体的に進展し、在韓米軍撤退が本格的に始動することを期待したい。


安倍晋三の支持率を高めるマスコミの韓国叩きと嫌韓過熱の国民世論_c0315619_12483382.jpg

by yoniumuhibi | 2019-01-28 23:30 | Comments(1)
Commented by 愛知 at 2019-01-30 00:17 x
首相は施政方針演説で韓国のことは一切触れず(中略)首相のこの姿勢が防衛相の弱腰ともいえる対応にあらわれている。日本はバカにされているのだ―――貴下より少しだけフォロワーが少ない在野の発信者の本日のツイートの一部。立民、自由を跨ぎ応援で野党共闘の旗振りのお一人ですが、頭を抱えてしまって。当地出身の赤尾敏を思い起こさせる檄文。現政権の支持率アップにどれだけ貢献しておられるのかしらと呆れて。保坂祐二氏の輝く「時論」のご紹介に深謝。


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