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2019年の朝鮮半島と米中新冷戦 - アメリカは常に『敵』を求めている

c0315619_15300063.jpg今年はどんな年になるのか。昨年の今頃を振り返ると、米朝の対立が緊張の極に達していて、一触即発の戦争の危機を迎えていた。そうした中、私は、11月に中間選挙を控えたトランプは、むしろ北朝鮮との融和路線に舵を切って人気取りに出るのではないかと予想、新宿の喫茶店で初めて対談した天木氏にそう語ったことを覚えている。結局、事態はその方向へと進展し、2月の平昌五輪を経て、4月の板門店での南北会談、6月のシンガポールでの米朝会談と続いて行った。緊張緩和が進み、北朝鮮の非核化と米朝和平の実現を期待する空気感に溢れた。1年前、米朝融和を予想した私は、同時に、それはテンポラリーなもので、11月の中間選挙が終われば、米国は再び北朝鮮と対立を激化させる態度に戻るだろうという悲観論も述べていた。基本的にその見方は今も変わっていない。トランプ政権で安全保障政策を担当する補佐官のボルトンは、生粋の極右ネオコンで、非核化はリビア方式以外になく、非核化とはイコール北朝鮮の体制崩壊だという信念と欲望を持っている。今年は米国で選挙がなく、ストレートに布石を打って戦略を遂行できる。



c0315619_15203250.jpg私の認識では、米国の北朝鮮に対する方針は、2017年12月に出された「国家安全保障戦略」に基づいてプログラムされるもので、中国とロシアという二つの敵を攻略するという大方針があり、それに導かれて副次的に周辺系の戦略が規定されるものだ。すなわち、中国とロシアと親密な関係のまま反米姿勢で抵抗する小国家の北朝鮮は、真っ先に潰さなければいけない対象ということになる。ネオコンの立場と視線からすれば、昨年のトランプの米朝融和の外交劇は、一時的なモラトリアムであり、相手の出方を探る駆け引きのポーズであり、獲物を仕留めるための囮であり罠であるという位置づけになるだろう。米国は北朝鮮の体制崩壊を諦めてはいないし、米中新冷戦の戦略を有利に進めるためにも、北朝鮮を締め上げ、屈服させるか自滅に追い込むことを考えるはずだ。経済制裁の手を緩めず、北朝鮮の求めに妥協せず、北朝鮮に国際社会からの非難が集中する環境を作っていくだろう。仮に二回目の米朝会談があったとしても、それは囮あるいは罠の仕掛けであって、次の局面で北朝鮮の「合意不履行」を責める口実を作るための計略とするに違いない。

c0315619_15204365.jpg北朝鮮の非核化の意思そのものは本物で、私は昨年からそれを一貫して疑っていない。金正恩が核強国の路線を放棄し、経済成長に注力しようとしているのは事実だ。しかし、意思表示だけでは米国は経済制裁をやめず、実際に米国の前で先に丸裸になることを要求し続ける。時間をかければ北朝鮮に不利になる。北朝鮮は、非核化のプロセスを四カ国協議(南北米中)のスキームに移し、多国間の枠組みに入ることで経済制裁の解除・緩和を得ようとしているが、果たしてそれを米国が容認するだろうか。その動きをトランプが認めることは、米国が敵である中ロに妥協することを意味し、有効な武器である国連制裁決議の大義名分を手放すことになる。四カ国協議体制への移行は、北朝鮮の非核化という面では有効だし、世界の市民にとっては理想的な図だが、(金正恩体制を潰そうとする)米国の思惑と戦略にとっては不都合なものである。北朝鮮非核化に中国を割り込ませないというのは、トランプ政権にとって絶対の外交指針だろう。果たして、トランプが譲歩をするだろうか。トランプが譲歩するとして、ネオコンや反中で染まった米国の世論がそれを認めるだろうか。

c0315619_15205517.jpgここで焦点となるのが文在寅の動向で、韓国がどうなるか、どう出るかが今年の世界政治の注目となる。おそらく、文在寅は、3月1日の三一独立運動百周年の記念日に金正恩をソウルに招待しようと試みるだろう。その政治イベントを演出し成功させることで、南北平和統一の気運を高め、国際社会の支持と共感を集め、そうすることで国内での支持率を再び上げ、米国と国連安保理に北朝鮮への制裁緩和を懇請するだろう。3月1日に金正恩をパゴダ公園に呼び、南北合同の三一節百年記念祝典を挙行することは、昨年、私が妙手として献策したところである。実現すればよいと思う。政治家としてこの好機を逸する選択はあり得ない。ぜひ実行するべきで、金正恩もこの策に乗るべきだ。昨年、文在寅は単独で欧州を奔走し、ローマ法王とEU首脳に働きかけたが、小国の力は弱く、成果を上げることが全くできなかった。本来、その外交は金正恩がやるべきことで、私もブログで、モスクワ経由でブリュッセルのモゲリーニと会談せよ、金与正を大阪に派遣せよと提案したが、北朝鮮は動かず、米国だけにフォーカスして交渉に熱中する愚を犯した。巧妙な米国の術中に嵌まって時間を潰した。

c0315619_15210571.jpg現在の米国にとっては、北朝鮮は中国を封じ込め攻略する上でのカードである。北朝鮮が中国と一緒になって対米外交を進め、すなわち中国と距離を置いた親米国家に転換する可能性がないと判断すれば、容赦なく、軍事オプションを含んだ最終行動に出るだろう。本格的に瀬取りを咎め、中ロの擁護論を排除し、海自に瀬取りの摘発と検挙を行わせ、そこで紛争を起こして北朝鮮を逆上させ、そこから有志連合軍(米豪日)を編成して海上封鎖するという一連の措置が検討されているはずだ。机上プランとしては作戦が計画されていて、トランプの決断で発動する準備が整っている。そのとき、軍事行動の障害になるのが韓国左派政権で、本当に米朝戦争の局面になった場合、当然、文在寅は必死でそれを阻止しようと動く。米国(のタカ派)にとって、文在寅は邪魔な因子であり、北朝鮮を潰すために、先に退場させないといけないという論理と順序になる。1月から3月にかけて、(1)非核化をめぐる米国の北朝鮮への攻勢と包囲、(2)それに対する北朝鮮・韓国側の抵抗と反撃、(3)南北の連携外交を無力化するための米国による韓国政権の転覆工作と、三つの動きが激しく交錯するだろう。

c0315619_15211903.jpg昨年の今頃、まさかファーウェイ事件のような出来事が起こるとは誰も想像していなかった。日本のマスコミでは、さまざまな論者がさまざまな解説をしているが、米中新冷戦という構図と情勢は決定的なもので、もう後戻りや解消はないと私は断言する。米国は中国を潰そうとしている。そうしないと米国が覇権国家として生き残れないからだ。20世紀の冷戦でソ連を崩壊させたように、21世紀の新冷戦に勝って中国の挑戦を退けようとしている。ペンスの10月4日の演説は、今後の米国の長期戦略を示した宣言として定礎されるものであり、歴史に長く記憶されるものとなるだろう。大統領ではなく副大統領の言葉というところが、ピエロを演技するトランプのプルーラリズム(フリーハンド)を担保し、国家の最終責任を曖昧化する根拠となっており、中国を揺さぶる道具としての性格づけが垣間見える。米国の周到で狡猾な戦略性を映し出している。また、そのことは同時に、ここまで米国が追い詰められ、覇権国家から転落する間際である歴史的真相を、世界の人々に察知させる上での証左であるとも言えよう。米国という国は、敵を設定して「戦争」することで、それを推進力にして国家を維持・繁栄させてきた国だ。

正月に丸善本店に出かけたら、3階の書棚に『アメリカ侵略全史』という新刊が陳列されていた。ウィリアム・ブルム著。高額だが食指が動く。目次の冒頭にこう題されている。「アメリカは常に『敵』を求めている─―共産主義者からジハーディストヘ、そして……」。今回の中国が最後の敵になるのではないか。年頭にそんな予感を抱く。



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by yoniumuhibi | 2019-01-09 23:30 | Comments(1)
Commented by 長坂 at 2019-01-10 10:50 x
トランプのTWを読むと習近平や金正恩に対し一定の敬愛の念というか、、、交渉は上手くいってるとか次回会うのが楽しみとか( 金正恩に対してはブロマンスを感じるぐらい )かなりポジティブな印象を受ける。逆にボロクソなのが、リベラル民主党、リベラルメディア、不法移民、イスラム教徒、人権や気候変動にうるさいカナダとかEUのような価値観の持ち主。確かに酷い暴言に嘘の数々ではある、人としてサイテーではあるが、トランプの外交政策ってそんなにダメ?オバマの方が全然マシか?北朝鮮を交渉に引っ張り出し核開発を中断させ、朝鮮戦争(長く忘れられた戦争)に終止符を打とうと実際に動いた事はもっと高く評価されるべきだと思う。ロッドマンがオバマに正恩に是非会うべきだと何度も言ったが、全く聞く耳を持たなかったと。平和や安定よりコスパの観点からではあるが、海外からの米軍の撤退や規模の縮小、いいじゃない!オリバー・ストーンがトランプを支持する意味はわかる。
ただリベラルとネオコン(親和性が高い)のトランプ攻撃が凄い。「こっそり核開発を続ける北朝鮮に騙されるマヌケなトランプ」にどうしてもしたい勢力が本当に強い。シリア撤退も早速ボルトンがトルコに行ってるし、すぐに撤退が徐々になっちゃうし。今年は田中さんの仰るように「リベラル」に注目、戦争好きな本性が現れるか。


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