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新防衛大綱と対中戦争 - いつの間にか軍事大国になっていた日本

c0315619_15220128.jpg昨日(18日)、新しい防衛大綱と中期防が閣議決定され、朝日の1面トップ記事になっている。2面に解説、7面に要旨が掲載され、14面の社説もこの件について書いている。今日の紙面は新防衛大綱が主役の編集だ。東京新聞(中日新聞)の社説もこの問題が取り上げられている。昨夜(17日)、NHKのニュースはこの問題を報道し、野党からの批判や華春瑩報道官の会見での反発の様子も簡単に紹介していたが、意外なことに、報ステでは一言もこの問題に触れなかった。驚くべきことではあるが、もう慣れてしまって驚かない。さらに意外なのは、ネットで左翼が一言も話題にしていないことで、閑としている。ネットの左翼方面は、今、辺野古の工事中止を嘆願する署名運動に熱中していて、署名に消極的な者をしばき隊が見つけて糾弾するといういつもの光景が続いている。防衛大綱・中期防のニュースに不安と懸念を示している者など一人もいない。この問題についての言葉がない。不思議なことだ。9条改憲に反対している左翼は、今回の防衛大綱と中期防について、そしてそのマスコミの報道姿勢について、危機感を覚えないのだろうか。



c0315619_15221280.jpg9条改憲に反対している左翼は、本当に戦争を拒絶する平和主義者なのだろうか。朝日の社説も、東京新聞の社説も、要点をよく整理していて、専守防衛の枠を超えるものだという正しい批判を書いている。だが、社説の文章を読むと、どこか、官僚ペーパーの臭気を感じざるを得ず、何となく、防衛省が裏でマスコミに「書面」を与え、巧妙に世間に撒かせているガス抜き目的の「論説」の印象を拭えない。通り一遍の、お決まりの論理と文言を配置したマイルドな批判論評に構成されていて、その行間に戦争への危機感というものが全く滲んでいない。この防衛大綱・中期防の軍拡に本当に反対なのか。真剣に反対する立場からの社説には思えないのだ。朝日の社説には「打撃力」という言葉がある。これは、本来「攻撃力」と表現しなければいけないだろう。制服・防衛官僚の欺瞞に朝日が言葉を合わせていて、ジャーナリズムの視角からの認識と判断をしていない。今回の方針と計画は、専守防衛の一線を越えたなどという生易しい表現で収まるものでは到底なく、軍事大国をめざした途方もない軍拡宣言だ。空母を保有し、サイバー・宇宙・電磁波の軍事力も装備する国が、世界に他に幾つあるだろう。

c0315619_15222304.jpg朝日の社説もそうだし、報道1930の松原耕二の説明もそうだが、今回のマスコミの防衛大綱・中期防についての論調は、専守防衛の歯止めを越える点を批判して抵抗しているというより、これで専守防衛は終焉だからいいなと国民世論を説得し、軍拡・軍事大国化への順応と追従を促しているように見える。リベラル表象の松原耕二自身が、空母保有にも賛成だし、サイバー・宇宙・電磁波の新軍事力装備にも賛成だし、領域横断の多次元統合(クロス・ドメイン)にも賛成なのだ。その理由と動機は、中国の脅威への対抗の必要意識であり、対中防衛の立場からすべてが正当化されるのである。中国は日本の敵国であり、敵が旺盛に軍事強化しているのだから、それに対抗する措置を講ずるのは当然という論理であり、その翼賛思考への内省はまるでない。憲法9条(非武装・絶対平和主義)の国家原則など全く念頭にない。中国と日本の間には日中平和友好条約があるのに、一衣帯水の関係を誓い合った原点があることなどすっかり忘れ、中国が日本の最大の貿易相手国であるという経済上の前提的事実すら消し飛んでいる。

c0315619_15223400.jpgマスコミと野党の反応に、私が最も不満なのは、そこに戦争への切迫した危機感がない点だ。マスコミと野党だけでなく、左翼リベラルも、中国と戦争が始まることへの危機感がない。だけでなく、中国が脅威だから日本も軍拡すべしという言説と扇動に同調している。それをやむを得ない選択だと肯いている。9条護憲を口では言いながら、デモで「9条守れ」とプラカードを掲げながら、その同じ口で中国脅威論を唱え、自衛隊の際限のない軍拡を是認している。平和ボケとはこういう態度を指すのだろう。軍は何のために装備を拡張するのか。戦争で使用するためである。空母は中国との戦争の実戦で使う主力の兵器であり、南シナ海での攻撃作戦に投入するためのものだ。戦争をしないのなら、空母もF-35Bも必要ない。通常、10年程の中期スパンでアップデートする防衛大綱を、何のために前倒ししたのか。それは、中国との戦争が近いからだ。準備を急がなくてはならなくなったからだ。米国が中国との開戦に本腰になり、戦略を進行させていて、軍事衝突勃発の日程が迫ってきたからだ。そのことは、この国の上層部に行けば行くほど、自衛隊の幕僚監部に近い者ほど、ひしひしと実感しているに違いない。今回、政府とマスコミは中国との戦争を告知し、国民に覚悟を促している。

c0315619_15224909.jpg6年前、尖閣国有化の事件があり、反日デモが起き、安倍晋三が政権に返り咲いたとき、尖閣沖の衝突(謀略)から始まる日中戦争のシミュレーションを試みた。その後、15年の日米新ガイドライン策定と安保法制成立があり、そのとき、報ステの取材に登場したマイケル・オースリン(アメリカン・エンタープライズ研究所・日本部長)の正直な発言があった。私はその映像を何度もブログで紹介、米国が自衛隊をどう戦場で活用するのか、その思惑について警鐘を鳴らしてきた。米国は海自の装備と実力 - 特に潜水艦操航能力 - に着目していて、南シナ海での戦闘で中国海軍を撃滅することを期待している。嘗ては、南シナ海で米中の軍事衝突が起こったとき、海自は米軍の後方支援を受け持つと想定されていた。だが、状況が変わり、米国側の計画が変わり、どうやら海自の空母打撃群は最初に中国海軍を襲撃し、南シナ海に浮かぶ中国の人工島基地に水陸機動団を上陸・突撃させる作戦にシフトしたらしい。むしろ米軍が後方支援の役割になり、台湾海峡に布陣して広範囲を抑える展開になるだろう。そうすれば、米中が直接に戦火を交える事態を避けられ、直ちに第三次世界大戦に突入という破局にならない。

c0315619_15230310.jpg今回のニュースで焦点になったのは、甲板改造によるいずも型護衛艦の空母化だった。いずも型と呼ばれる全長248メートルの巨大空母は、海自は2隻保有しており、2013年に「いずも」、2017年に「かが」が進水して就役している。すでにインド洋や南シナ海に派遣され、インド軍などと共同で中国軍を敵想定した軍事演習を実施していて、その模様はNHKで詳しく報道された。政府やマスコミが言うような、空母は尖閣防衛のためだとか、太平洋側に航空基地が少ないからとか、そのような理由づけは真っ赤な嘘で、南シナ海が作戦範囲として予定されているのは明白だろう。いずも型の前の少し小型の2隻(ひゅうが、いせ)を合わせ、日本の空母保有は4隻の体制となっている。ネットの情報を調べてみても、11隻保有の米国を除いて、4隻も空母を持っているのは日本だけで、中国も遼寧1隻しか稼働していない。まさに世界第2位の海軍力を誇る堂々たる軍事大国の姿である。気づかない間に、日本は経済大国をやめ、いつの間にか軍事大国になっていた。6年前に日中戦争を予想したとき、右翼日本側の狙いとして、このままでは中国が一気に海軍力を増強し、時間を置けば自衛隊の歯の立つ相手ではなくなるから、先制攻撃で潰そうとするだろうと意図を探った。

だが、私の予測は外れ、6年の間に猛烈なスピードで海軍力を増強したのは日本の方であり、海上軍事における日中の実力差は逆に大きく開くという意外な顛末となった。日本の方が全速力で軍拡に動き、空母打撃群と海兵隊組織を編成し、戦争への態勢を素早く整えた。


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by yoniumuhibi | 2018-12-19 23:30 | Comments(3)
Commented by 不来庵 at 2018-12-20 13:58 x
まさに明治の日露戦争前夜の雰囲気ですね。
私も来年何かしらの紛争がおこるのでは、とみています。
おそらく舞台は朝鮮半島でしょう。
小国が核武装しても抑止力にはならない、という事実を世界に知らしめる為に。
Commented by 七平 at 2018-12-21 01:43 x
トランプの言動が常識ある55%の米国人を代表するものだと決して考えていませんが、大統領制度にもその欠点はあり、時折、とんでもない人物が大統領に選ばれてしまいます。 日本と異なって、三権分立システムは正常に作動し国内では好き勝手出来ないのですが、国外は別です。又、マスコミも独立性を維持し、遅かれ早かれ、振り子は逆方向に振れ、軌道は修正されるのですが、その過程で、被害を被る国、人々が出てしまいます。この大統領、本当に弱い者いじめの大好きな卑怯者で、メキシコ人やクルド人は大変な目にあっています。  

昨日、トランプがシリアからの撤退を発表、実行に入っていますが、米国にに協力してISIS退治に貢献していた、クルド人は見捨てられた事になります。 この、トランプ と言う男、よほどの個人的弱みをロシア(プーチン)に握られている事は間違いないと考えられています。 米国軍のシリア撤退は、ロシアの望む所であり、トランプがプーチンに胡麻をする何らかの理由があるはずです。Robert Muller による調査でいずれ真相は浮上するでしょうが、その間、国際社会における米国の権威は墜落する一方です。 

日本が何隻空母を作っても、搭載するのは米国製のF-何とやら。米国製戦闘機をとんでもない値段で買わされて、貴重な税金の無駄遣いだと思います。 米国の軍産複合体と日本の世襲議員の多くは東京裁判以来、共生関係にあり。持ちつ持たれつ、双方、日本国民の血税を吸う吸血鬼の役目を果たしていると考えます。

日本人がクルド人の様に見捨てられる可能性も検討しておくべきです。
Commented by (オリジナル)長坂 at 2018-12-21 10:32 x
ファーウェイ (副会長、美人!)何が問題なのかサッパリわからない。アップルだってメイドイン・チャイナ。ファーウェイ危険、アップルセーフの根拠は?アメリカはいつも自由競争、市場至上主義、資本主義万歳と言いながら自分たちを脅かすものには容赦なく潰しにかかる。ファーウェイは100パー民間の持ち株会社だと、利益が上がれば給料も上がる。創業者が人民解放軍ばかり強調されてるけど、それが何かでしょ。今アメリカにいる中国人留学生はスパイ容疑で全員国外退去させるのか?監視システム、プリズムがばらされ、同盟国の首脳達を盗聴してた国がよく言う。ファーウェイ、買って応援でアメリカ以外みんなでファーウェイスマホ持つか。


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