辺野古の土砂投入 - 面妖で不自然なNHK-NW9の「街の声」

c0315619_13562236.jpg9月30日の沖縄県知事選の直後、天木直人氏と対談した際、私は、安倍晋三は辺野古への土砂投入は来年まで延期するのではないかという見通しを述べた。玉城デニーの得票が過去最高で、予想を超えた圧勝となり、沖縄の民意が決定的に反映された結果となったため、そうした楽観的な見方を自然に持った。だが、天木氏の方は、安倍晋三の立場に立ったとき、ここで先送りしたら土砂投入の機会は永久に失われ、辺野古の政治で安倍晋三は敗北することになるから、必ず年内投入を決行するに違いないと厳しい判断を返してきた。結局、天木氏の予想の方が当たった。官邸が年内土砂投入の方針をマスコミに出したのは、選挙から1か月ほど経った時点だっただろうか。選挙結果が出た後、私も天木氏も、玉城デニーはすぐに米国に飛べと催促した。スクラッチでいいから、即座にDCとNYに飛び、CNNやNYTのインタビューを受け、渡米後の刻一刻の試行錯誤を米日のマスコミに撮らせよと要請した。スクラッチ開発とは、IT用語で「ゼロから始める」という意味で、前提なし、予備環境なしの開発手法のことを言う。そうやって政治を作り、関心を集中させるよう訴えた。



c0315619_13563587.jpgそうすれば、辺野古の政治で主導権を握ることができ、国際的な世論を醸成し、官邸が土砂投入に踏み切るのを躊躇させ、年内断行の阻止へと追い込むことが可能と考えたからだ。米国では11月6日に中間選挙があり、そのクライマックスに向けて盛り上がっている途中だった。だから、渡米するならすぐに行動しなくてはならず、タイミングを逸してはならなかった。アポイントや段取りの調整は必要なく、マスコミのカメラを即興行脚の横に貼り付けて、出たとこ勝負のストラグル&チャレンジでよかったと思う。国務省やホワイトハウスの要人に会う成果の必要もなく、門前払いの仕打ちならそれでも結構で、マイケル・ムーアの映画のように経過をドキュメンタリーにして、行動と言葉をテレビに配信させればよかった。海兵隊員の子どもが沖縄県知事になったから、米国にご挨拶に参上したという記録物語ということでよく、空振り・空回りに終わった数日間の米国滞在という話でもよかった。勇気だけが必要だった。政治は、サプライズが起きたときにモメンタムを作らないといけない。玉城デニーがなぜその挑戦をしなかったのか、みすみす機会をロスしたのか私には理由が分からない。

c0315619_13564608.jpgそれこそ、マイケル・ムーアに直接相談して協力を依頼すればよかった。目取真俊も、10月2日のブログで「鉄は熱いうちに打て」と書いている。記事の中で、「当選直後の熱気があるうちに、どれだけことを進められるかが大きな課題であると思う。日本政府はすぐにも巻き返しを図ってくる。玉城デニー新知事には(略)スタートと同時に力を尽くしてもらいたい」と言っている。具体的にどうせよとは書いてないが、すぐに動け、そうしないと巻き返されるという認識は私と同じだ。選挙直後、具体策の提案として、私はあと二つのことを言った。一つは、公明党沖縄県本部代表の金城勉とサシの会談を持てということと、県政与党(オール沖縄)を再結束させて県議会の動きを作れということである。後者は4年前から提起していて、知事(政府)だけが動くのではなく議会(党)が二つ目の核となって動けと口を酸っぱくして言ってきたが、全く動きがなく、その不活性と不具合の原因も不明のままだ。せめて、前者の金城勉との会談は実現して欲しかったし、それを東京のマスコミが撮る政治を作ってもらいたかった。だが、新知事はそれをせず、にこやかな表情で安倍晋三と握手する絵を作った。

c0315619_13565822.jpg玉城デニーはどこまで本気なのだろうか。2か月間、何をしていたのだろうか。渡米したのは選挙から1か月以上過ぎた11月11日で、米国では沖縄県知事選のことなど誰の脳裏からも消えていた。ニュースバリューのない問題になっていた。これでは、渡米は単なるアリバイにしかならない。土砂が投入された14日の日に、県庁で会見したというのも私には納得がいかない。キャンプシュワブのゲート前で抗議の会見をするのが場として適当だと考える。そこに翁長樹子を同席させ、翁長雄志の遺影を持った長男も並ばせ、3人(4人)の絵を作って、沖縄の大義と沖縄の慟哭を全国に発信するのが政治というものだろう。15日には辺野古に来ているが、短い挨拶の絵を撮っただけで帰っている。1時間でも2時間でも、座り込みをしてよかったのではないか。知事が座り込みしているから、応援しにここへ来てくれないかと呼びかけてもよかったのではないか。玉城デニーが知事選に出馬したのは、辺野古新基地を止めるためであり、知事になるためではない。翁長雄志の遺志を実現するためであり、他のことは二の次のはずだ。それが公約で、それに命を賭ける決意をしたはずだ。辺野古の阻止がすべてに優先する。

c0315619_13571822.jpg面妖で不審に感じたのは、14日のNHKのNW9の映像だ。土砂投入について街の声はどうかという報道で、有楽町イトシア前の通行人が何人かカメラの前で感想を述べていた。三人連れの中高年女性だったと思うが、「遠く離れた場所でのことだから関心がない」とか、「沖縄の人はかわいそうだが我慢して欲しいと思う」とか、そんな発言をしていた。キャスターの有馬嘉男がニュースの説明を入れ、沖縄では賛成と反対に分かれて深刻な受け止めだが、東京では無関心な人が多い、という趣旨と論調で纏めていて、そのエビデンスとしてイトシア前の映像が紹介されるという構成だった。番組を見ながら、あの中高年女性はNHKが用意したサクラであり、発した意見はNHKが台本を書いた台詞ではないかと直観した。あの感想の言葉は、無関心というよりも冷血鬼の態度であり、教室のいじめに積極的に加担して開き直る虐待行為と同じ言動だ。普通の常識や倫理を持った市民なら、いくら何でもあの口上はできない。NHKのカメラの前であり、全国に顔が映って放送されるのであり、あれほどの非常識や鉄面皮を言えば、番組を見た親戚や知人から何か言われる。面倒なことになる。あれほどの沖縄への悪意を平気で口に出せない。

c0315619_13573006.jpgそこから考えるのは、NHKの報道の仕方であり、NHKの倫理観の喪失である。NHKの報道現場の職員と有馬嘉男は、あの説明で14日の土砂投入の報道を整理したのであり、あの「街の声」の異常な口上を東京の市民の一般世論だという描き方にしたのだ。精神の病みに驚愕せざるを得ない。おそらく、官邸と幹部の指示があり、東京の「街の声」はこういう中身にしろという編集方針があったのだろう。新基地阻止を諦めさせることが目的の報道だから、これくらい凄味のある「街の声」じゃないといけないという意図だったのかもしれない。しかし、普通の市民なら、どれほど政治に無知で沖縄の基地問題に無関心な者でも、「沖縄の人はかわいそうだが我慢して欲しい」などと、そこまで無神経は言わないだろう。それは、安倍晋三と菅義偉が、街を歩く普通の市民に言って欲しい一言であり、それを撮ってNHKのニュースで流して欲しい一言だ。「東京の人間はこう思ってるんだから諦めろよ」という、安倍晋三や麻生太郎の沖縄に対する本音を、一般市民の「街の声」に偽装し演出して発信したものだ。われわれは、あのNW9の映像をそう解釈すべきであり、情報工作の所在を看破すべきだろう。あれを本当の「街の声」だと信じるべきではない。

c0315619_13574007.jpgNHKの14日の報道で示された「一般世論」が奇怪で不自然だったことは、16日に各社から出た世論調査でも裏づけられる。共同通信では、土砂投入について56.5%が「支持しない」と答えていて、「支持する」は35.3%に止まっている。毎日新聞でも、「反対」が56%で「反対」が27%の比率であり、反対が賛成の2倍に上っている。この数字を見ると、14日のNHKの報道がいかに世論を歪曲したものであり、政府の強引な政策を正当化する偏向したものだったかが分かる。この世論調査を見るかぎり、国民一般の声はあのイトシア前の婦人の意見とは違う。あれを東京の「街の声」として代表させることはできない。それにしても、マスコミは、なぜこの辺野古の問題を日本人同士の内部対立の構図に描こうとするのだろう。沖縄の中に賛成と反対の分断があるとか、沖縄の県民は苦悩しているが東京の市民は無関心だとか、本土に住む者が米軍基地の負担を受け入れろとか、安全保障のコストを払えとか、そういう話になるのだろう。なぜ、日本対米国の図式に定義しないのだろう。なぜ、パックンのような米国人に質問しないのだろう。土砂投入をどう思うかと。賛成か反対かと。基地を押しつけて平気なのかと。

憲法9条は軍備を禁じている。天木氏がよく指摘するように、砂川事件での伊達判決は、日米安保と米軍基地を違憲だと断じている。これが全てではないか。なぜ、沖縄県民対本土住民の対立構図にされるのか。差別云々の問題に仕立てるのか。なぜ、憲法9条からストレートに考えようとしないのか。



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by yoniumuhibi | 2018-12-17 23:30 | Comments(1)
Commented by (オリジナル)長坂 at 2018-12-18 15:11 x
米軍再編で在沖海兵隊は2〜3000人の小規模に、辺野古新基地は日本版海兵隊の為だと以前読んだ事があります。米軍にばかり気を取られているうちに、自衛隊がますます精鋭化。「いずも」を空母化してF35Bを載せる⁇ 空母は悲願って何言ってんだか。水陸機動団(ジャパニーズ・マリーン)や空母なんて頼んだ覚えないんですけど。専守防衛どころかやる気満々。辺野古、沖縄、米軍基地、自衛隊、日本政府、アメリカ様のご意向、、、仮に米軍が撤退しても自衛隊が来るだけ。


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