人手不足への対策案 - 200万人の引きこもりの再生とAIの活用を

c0315619_15251195.jpg移民政策に反対し、外国人労働者の拡大に反対する以上、人手不足を解決する対案を提出しないといけない。そのことを述べる前に、日本がなぜ外国人労働者にとって魅力的な労働市場でないのか、マスコミが触れてない要因を言う必要があるように思う。例えば、韓国と比べて、日本の労働市場がなぜ魅力の点で劣るのか、マスコミは韓国の雇用許可制の充実と優越を挙げ、行政が責任をもって外国人労働者に対応している点を指摘、日本の奴隷制同然の劣悪きわまる技能実習制度と比較する。その点はたしかにそのとおりだろう。だが、おそらく加えてもう一つ、経済的な理由があって、それは為替の問題ではないかと思われる。ウォンの対円為替レートは2012年から2018年の間に140%も騰がっていて、ウォンの通貨価値が相対的に高くなっている。2012年に1ドル80円だった円は、2015年には1ドル120円に落ちてしまった。ウォンはドルとリンクして推移している。一方、アベノミクスは徹底的な円安誘導政策だった。日本企業の好景気も、外国人観光客の爆発的増加も、円安によって媒介されている。



c0315619_15205703.jpg外国人労働者にとって、受け取る賃金は常に自国通貨価値で換算され、すなわちドルベースで幾らと評価されるものだから、円安トレンドの日本は労働市場として魅力が薄いのだ。周知のとおり、韓国は最低賃金を10年で2倍に伸ばし、現在は時給835円で、日本と並ぶ水準に達している。ウォンは今後もドルとリンクして安定的に進行すると考えられるが、経済が落ち目の日本は、さらに円安が続く趨勢となることが予想される。自らの労働力商品を売ろうとする外国人労働者が、なるべく高く、なるべく将来性のある労働市場を選ぶのは当然のことで、日本が韓国に対して魅力に劣るのは為替が影を落としている点を見逃してはいけないだろう。安倍晋三と経済界が、慌てふためいて入管規制を取っ払い、移民政策に転換するのは、まずは、隣国の韓国に労働市場としての競争上の優位性があるからだ。台湾と日本と比較するときも、経済上の観点を外せないだろう。台湾のGDPはこの10年で1.4倍に増えていて、平均して2%以上の成長を遂げている。最低賃金の水準は日本や韓国に比べればまだ低いけれど、台湾には外国人労働者にとって別の魅力の要素がある。

c0315619_15210876.jpgそれは言語だ。外国語としての中国語の言語価値の将来性だ。日本へ行って働くと日本語を覚えることになる。韓国へ行って働くと韓国語を覚えることになる。デディケイテッドな言語であり、汎用性のない、国際標準ではない言語である。身につけて将来性のない言語で、どうせ覚えて人生に役立てようとするなら中国語の方がずっと価値が高い。言語は人間労働の能力そのものである。英語は仕事する個人にとって必須の技能だ。国際経済の中で中国語は英語の次に重要な言語で、アジアにおいては特にそうである。その20代の青年が、ベトナム人であれ、ミャンマー人であれ、30代になって自国に戻ってキャリアを役立てるとき、日本語を身につけた者と、中国語を身につけた者と、どちらが経済的成功の機会に恵まれやすいだろう。起業するにせよ、就職するにせよ、どちらが有益だろう。日本で修得できる技術は台湾でも修得できる。10年後、20年後を考え、人生設計を考えれば、東京で働くよりも台北で働いた方が得だと考えておかしくない。中国語を習得した者なら上海で働ける可能性も出てくる。中国とベトナム、中国とミャンマーの関係でのビジネスチャンスが広がる。

c0315619_15211990.jpg前置きが長くなったが、人手不足の問題を国内で解決する策を述べたい。二つある。一つは引きこもりを労働市場に出すことで、もう一つはAIを活用することである。10月29日、この日は外国人労働者受け入れ拡大をめざす入管法改正案が自民党法務部会で了承され、テレビの夜の報道番組で大きく取り上げられた。特定技能1号だの2号だのが初めて国民に説明された日だったが、たまたま、この日のBS日テレに齋藤環が出演し、引きこもりが増えている実情について議論していた。全くの偶然の一致だが、斎藤環の話を聞きながら、それがあるじゃないかと私は着想を得たのだ。斎藤環はずっとこの問題を調査追跡している精神科医で、日本における引きこもり研究の第一人者的な地位にある。それによると、引きこもりは年々増え続け、かれこれ20年の積み重ねを経て、現在では200万人の累積規模が推定されると言う。200万人は巨大だ。この人数の4分の1でも労働市場に放出されれば、日本経済は人手不足に陥ることなく、外国から単純労働者を入れる必要はない。国内で充当できる。逆に言えば、引きこもりが200万人も滞留しているからこそ、労働力不足が起きるのであり、外国からの労働力輸入を必要とするのである。

c0315619_15213046.jpg引きこもりが発生したのは、世代によって事情は異なるけれど、この20年間の就職氷河期や相次ぐリストラが影響しており、また、非正規の低賃金や長時間労働や過労死や名ばかり店長やブラック企業の災禍が影響している。この問題について、10年ほど前だったが、本田由紀が『ニートって言うな』という問題提起をしていた。ニートという言葉は使われなくなったが、引きこもりという言葉はあり、実態はあり、問題は何も解決されず現在に至っている。現代日本は、引きこもりという社会的な異常と不具合をそのまま放置し、無視し、何も対策を立てないまま、矛盾を本人の責任にして隠蔽してしまっている。自己責任で処理している。引きこもりの問題は、まさしく教育現場における不登校と同じ問題だろう。不登校になった本人に原因があるわけではない。学校でのいじめがあり、いじめを被害者の逃避や避難で問題解決させる現在の教育行政と社会常識があり、いじめを受けたら不登校を選んで別の場で生きることが普通のあり方になった。嘗ての戦後日本の教育のような、『君たちはどう生きるか』式の解決方法はマッチョイズムだとして否定された。脱構築的でネオリベ的なスタイルになった。引きこもりに対する視線も同じで、本人がそれでよければ黙って家で一人で静かにしていればよいという認識と対処になった。

c0315619_15214268.jpg詳しい説明は省くが、月収20万円の非正規労働という今の標準的な労働体系を改め、賃金を2倍の月収40万円に増やせば、間違いなく200万人の引きこもりの大半が労働市場に出て来るものと私は推測する。3Kの職場であっても、月40万円の賃金が支払われ、残業代が正当に支払われ、人間としての尊厳を維持できる職場環境であれば、介護でも、飲食宿泊でも、建設工事でも、小売でも、製造でも、ビル清掃でも、人は働きに出て来るだろう。二つ目のAIの活用は、実はそれを前提にして考えるべき対策案で、これまた詳しい説明は別途論ずる必要があるが、基本的に、現在、頭脳労働だと言われているホワイトカラーの労働は、AIに置き換えることが可能なのである。野村総研の試算では、日本の労働人口の49%が就いている職業において、AI・ロボットで置換可能だと報告している。日経新聞と英フィナンシャルタイムズの共同調査研究でも、50%の業務を自動化できると結論づけている。ホワイトカラーの仕事はAIに置き換えができる。オフィスに出勤して机に座りPCを立ち上げ、退勤前にPCを閉じ、PCの中で完結されるホワイトカラーの仕事というのは、基本的にAIに代替可能なのである。定型的に情報を処理して事業を回し、ナレッジベースに依拠して課題を解決する仕事は、AIが人間を代行することができる。

c0315619_15215565.jpg高度プロフェッショナルの法制が成立し、金融商品の開発、ディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発業務の5業務が、高度の専門的知識を必要とする業務の具体例として指定された。これらは年収1075万円以上の労働価値の高い業務である。ところが、よく考えれば、この5業務ほどAIの活躍に適した業務はないのだ。新井紀子なら同意してくれるだろう。笑ってしまう。システム開発も、医師の診察や治療も、弁護士や裁判官の仕事も、新聞記者の論説も、官僚の予算案・法令案作成も、大学教授の講義や論文も、AIができるのである。AIがやった方が正確に効率的にできるのだ。NHKの「マネーワールド」の中で新井紀子が、介護はAIでは置き換えられないと言った。重要で本質的な指摘だ。ここに神の啓示がある。マルクスの労働論と結びつけて、人類の未来を切り拓く展望の鍵がある。介護は、保育は、AIに置き換えられない。今、外国人労働者を入れようとしている低賃金の3Kの肉体労働の職種は、AIに置き換えることができないのだ。ならば、労働観の発想を根本から逆転させて、人がやりたがらない、ブルーカラーの労働に高価値を付与すればよいではないか。AI・ロボットは報酬を要求しない。AIの成果には賃金の支払は不要だ。

AI大国をめざしたらどうか。AI・ロボットを徹底的に活用し、ホワイトカラーの労働を半分に減らし、オフィスの大量の人間をブルーカラーの現場に振り向ければいい。ブルーカラーの労働に高い価値をつけ、高額の賃金を与えればよい。これぞまさに、マルクスの言う「朝には狩りを、夕には批判を」の理想郷の実現だろう。精神労働と肉代労働の分割を止揚するマルクスのコミュニズムの世界に他ならない。黄金郷の到来だ。マルクスが夢見たところの、科学によるその理想の達成だ。予言者の大いなる予言の成就だ。大学は、仕事の資格を取ったり、職業の技能を身につける場ではなく、純粋に真理を探究する学問の場となる。


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by yoniumuhibi | 2018-11-15 23:30 | Comments(0)


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