入管法改正に反対する - 移民政策を美化・宣伝しすぎるマスコミ

c0315619_12515507.jpg昨日(12日)NHKが発表した世論調査では、外国人受け入れを拡大することについて、「賛成」が27%、「反対」が30%の結果となっていた。また、今の国会で法案を成立させるべきかの問いに対して、「成立させるべき」が9%、「成立を急ぐ必要はない」が62%となり、慎重意見が多くなっている。10月初旬に毎日新聞が行った同じ世論調査では、外国人受け入れを拡大する政府の方針に対して、「賛成」が47%で「反対」が32%という比率になっていた。また、一週間前の11月初旬に共同通信が行った世論調査でも、「賛成」が51.3%で「反対」が39.5%となっていて、賛成の声が上回っていた。読売など他の調査でも同様である。明らかに一週間前までは、国民の世論は移民法(=入管法改正)に賛成が多数で、反対論は少なかった。様子が変わったのは、8日(木)に野党が外国人技能実習生の合同ヒアリングを行い、その苛酷な労働実態を明らかにしてからで、生々しい人権侵害の諸事例が告発され、世間の注目を浴びて世論の流れが変わった。野党のファインプレーと言える。国民は悲惨な映像を見ることで、日本の外国人技能実習制度がどのような現実であるかを認識した。



c0315619_12520676.jpg年間7000人も失踪していると、数字をどれほど強調しても、なぜそれが起きているのか理解できない。外国人労働者が体験した地獄を個別に告発することによって、この制度の奴隷制的本質がよく理解できる。今回の入管法改正は、単に入国管理の規制を取り払うという意味しかなく、すなわち国境を開放するという意味で、要するに現在の外国人技能実習生の環境はそのままに、その数が無制限に拡大するということだ。労災に遭っても救済されることなく、補償もなく残酷に解雇され、時給300円で1日15時間働かされるという実態が続くということである。政府が経済界の要請を受けて外国人労働者の受け入れを増やすということは、今の現実をそのまま拡大するという意味に他ならない。ところが、TBSやテレ朝は - NHKは言うまでもなく - そうした闇の部分に光を当てて報道することなく、政府の宣伝にそのまま乗っかる形で外国人受け入れ拡大を後押しし、「外国人労働者に選ばれる国」のキャンペーンを張り続けた。移民推進を国論にする世論扇動に徹していた。その政治が一か月続いたため、入管法改正に賛成の世論が多数になるという現象が起きたのである。

c0315619_12521626.jpgそもそも、本当に日本が外国人に対して国を開き、欧州のような移民国家を目指すのであれば、それなりの覚悟が要るのであり、国内の法制度を根本から整備しないといけない。それは、まさしく長妻昭が言うとおり、哲学の問題が前提としてあるのであって、多文化共生社会というのは口で言うほど簡単な問題ではないはずだ。これまで、外国人労働者のための多文化共生のミニマムの社会ケアは、もっぱら自治体行政に任されたのであり、自治体と地域コミュニティの責任と篤志に押しつけられていた。今回の移民法(入管法改正)は、国が新たな法制度を構築・完備するという内容ではない。外国人単純労働者のための予算をつけるという施策ではない。門戸は開放するが、相変わらず環境は現在のままの状態が続くということで、数が増えるというだけだ。だから、ブラジル人労働者を多く抱える館林市長だったと思うが、この拙速な措置に反対の表明をしていた。当然、最低賃金の水準は下がるし、それが経済界の狙い目でもある。山井和則の説明では、100万人の外国人単純労働者が入ると、賃金が20%下がるという試算があるらしい。山井和則はこの政策の専門家なので、この指摘には納得してよい。

c0315619_12522997.jpg政府の狙いは宣伝である。中身は何もない。ベトナムやミャンマーの良質な青年労働者を刈り取るため、台湾や韓国との競争に勝つため、いかにも政府が本腰を上げて移民政策に転換したということを国際的にアピールしたいというのが本旨で、それ以上の意味はない。韓国には雇用許可制というシステムがあり、国が前面に立って外国人労働者の受け入れに責任を持つ態勢が整えられていた。マスコミ(TBS)が報道するほどには、韓国の雇用許可制もバラ色のものではなく、失踪者も多く出ているし、外国人犯罪件数も増加して社会問題になっている。それでも、韓国の場合は政府が窓口を作り、法の理念に沿って国が万事責任を負う形式になっていて、その点では日本とは全く異なる。日本の場合は、国は単に入管規制を取っ払うだけで後は何もしない。後で省令で基準を作ってどうのと言っているが、やる気がないのは明白で、やるやる詐欺の準備をしているだけだ。本来、こうして国のかたちを大きく変える制度にするなら、この問題は厚生労働省が前面に出て、厚労省が制度設計をして法案を提出しなくてはならないはずである。それも、国の根幹を変えるのだから、基本法(外国人労働者基本法)が制定されなくてはならない。何度も国会を跨いで議論をして成立させなくてはならない。

c0315619_12524200.jpg基本的に、私は移民政策に反対の立場で、上野千鶴子が2年前に中日新聞に寄稿した主張の前半 - 日本は無理 - と同じである。移民政策を無造作に遂行すれば、間違いなく欧州諸国と同じ状況になる。労働者の賃金が下がる。地域の行政サービスの負担が増える。文化軋轢が起こる。右翼が移民排斥の運動をやって暴れる。不況で労働者が過剰になっても、日本から出て行ってくれと要求することはできない。欧州諸国は移民政策を自ら失敗だったと認めていて、日本はこの轍を踏まない方がいいと忠告してくれている。であれば、その教訓に従うべきだろう。外国人排斥のナショナリズムの問題については、また別に詳しく論じたいが、最低賃金について言うと、思い出していただきたいのは、2009年の政権交代のときの鳩山マニフェストで、民主党が最低賃金1000円を目玉公約に掲げていた事実である。日経新聞の今年1月の記事を見ると、世界各国の最低賃金の比較表が載っていて、豪州が1517円、フランスが1265円、英国が1256円、ドイツが1118円、米国が892円、日本が798円となっている。豪州の2分の1、英国フランスの3分の2の水準しかない。鳩山マニフェストから9年が経つのに、最低賃金は一向に上昇する気配がなく、諸外国との較差は広がるばかりだ。

c0315619_12525755.jpg一方、安倍政権になって以降、外国人労働者の数は約2倍に増えていて、2012年に68万人だったのが2017年には128万人になっている。2010年は65万人だった。このときの国籍の内訳を見ると、中国人29万人、ブラジル人12万人、フィリピン人6万人となっている。128万人に倍増した2017年の内訳を見ると、中国人37万人、ベトナム人24万人、フィリピン人15万人、ブラジル人12万人、ネパール人7万人になっている。ベトナム人とネパール人が急増していて、人手不足を背景に単純労働力が大量に流入していることが分かる。マスコミは何も報道しないが、この5年間の賃金押し下げの要因として外国人労働者の存在があった点は疑えない。アベノミクスの5年間は、企業は利益を上げて好景気に浮かれながら、賃金は低く抑えられ、負担ばかりが増えて個人消費が萎縮し続けた5年間だった。来年4月に門戸開放すれば、中国などから怒濤の勢いで「移民」が入ってくるだろう。政府とマスコミは4万7千人を想定などと国民を騙して安心させているが、入管規制をかけていた5年間で60万人も増えていて、単純に1年で12万人ずつ増えている。入管規制を取っ払えば、年に20万人から30万人の規模で増えるだろうし、それが経済界の期待と理想だろう。竹中平蔵と経産省の本音だ。

外国人労働者の門戸開放、すなわち移民政策への公式転換は、日本の労働者の賃金を切り下げる目的のためのものであり、高プロ制や裁量労働制とセットのネオリベ政策に他ならない。「イヤなら外国人労働者を雇うから構わない」という条件を経営側が持つための政策だ。専門家の山井和則が言っていたように、門戸開放すれば、すぐに外国人労働者は500万人の人口サイズになる。そして、賃金が引き下げられ、底辺に没落した国民の鬱屈を背景に、右翼による外国人排斥運動が起きる。悪いことばかり。私は今回の入管法改正案に反対だ。


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by yoniumuhibi | 2018-11-13 23:30 | Comments(6)
Commented by 七平 at 2018-11-14 00:46 x
私が海外に出て、広々とした所で暮らす夢を見始めたのは1960年代、中学生の頃です。その理由の一つは、人間らしく人生を送るには日本の人口密度が高すぎるとの判断からでした。掲題の記事にあるように、低賃金、過密国家、日本、に海外から単純労働者を受け入れるなど、狂気の沙汰としか思えません。明らかに、長期経済政策の欠落と失敗、加えて国のGNPや企業の株価の方が国民一人一人の幸せより大切との国家主義丸出し状態だと受け止めています。

アベノミクスが出発した当時から、安倍晋三のアホノミクスと称した人もいるようですが、私はマネゴミクスと称し馬鹿にしています。 ありとあらゆる面、特に資源、国土で環境が違う米国経済の真似事をして、訳も判らず、金融緩和をごり押しして、同じ結果が得られる等夢物語、最初から間違った発想です。誇りとすべし、一億中産階級の日本的経済体制を自ら崩し、殺伐とした格差社会にまっしぐら、現在に至っていると思います。

Webには、日本の廃家、廃村の様子を伝えるYou Tubeビデオが沢山上がっており、考えさせられるのですが、私が今、中学生、高校生であったならば、わざわざ海外に出なかったかもしれません。日本に留まり廃村に移住して人間らしい生活をする計画を立てていただろうと思います。  別に国のGNP等に寄与しなくても、生活体制を整える事は可能です。最も重要な事は、一生に一度しかない人生を各個、如何に幸福に生きるかだと思います。各個人の有意義な生産活動(例:食料、燃料、自給率向上)はGNPに反映されようがされまいが、健全な国家経済の基盤だと考えます。
Commented by 長坂 at 2018-11-14 11:41 x
混血/外国籍 旧植民地出身者 中国残留孤児家族 ボートピープルの家族、、、この人達が日本の学校で受けたいじめの話は沢山聞いてきた。中には壮絶なもの多い。教師も見て見ぬふり。何が多文化共生だよ、と思う。そう言えば蓮舫議員の二重国籍問題時にとっとと戸籍見せろと言ったのは同じ党の今井雅人だった。こんな野党と旧内務省丸出しの入管と「ヤクザと外国人に人権はない」の警察でどうやって「選んで頂く」のか。人として受け入れるんじゃないんです、あくまでも安〜い労働力、顔の見えない「特定技能1号、2号」です。番号ですよって。ちょっと前は外国人の生活保護不正受給、今は外国人の国保不正、、早い話しが「犯罪予備軍」だと思っているんですってハッキリ言えば?
Commented by モアン at 2018-11-15 10:59 x
海外留学、海外勤務の経験のある大学の教員です。ご説ごもっともです。論点がずれるかもしれませんが、日本の産業界が頼りにしている労働力の一つに外国人留学生のアルバイトがあります。彼らの存在は「雇用の調整弁」を通りこして「語学力がある程度なくてはならない職場(コンビニ、外食産業のホール係)の中心」になっています。週28時間まで留学生はアルバイトをしていいことになっていますが、そもそも学生ビザで入国してきて労働ができる国というのは珍しいケースです。本国側での資金的な保証のない留学生も受け入れているわけで、自虐的ですが立派な国際貢献です。アルバイトをしなくては留学生活ができないという状況を霞が関、永田町の人たちはどう考えているのでしょうか?
Commented by hiro at 2018-11-23 11:49 x
移民については、右は安倍政権が推進しているという理由で移民反対と言えず、左は多文化共生の建前から移民反対と言えず、このまま誰も反対しないで移民が入ってくるのでしょうか。
アベノミクス3本の矢は、1リフレのマイナス金利で銀行群を刺す2 2度の増税で国民を刺す3通信業界を刺す、最後に外国人労働者の矢が国民賃金に刺さる。日本の物価上昇目標に逆行する政策を連打。もっと広く知られていいと思います。この政権を本当にどうにかして欲しいです。野党がいつまでたってもモリカケ他の過去のネタに拘っているからダメなんです。攻撃材料は大量にあるのに。
安倍政権の醜悪っぷりは異常で、今まで以上に株式市場で徹底した株価対策が行われています。
一昨日と昨日、GPIFが株を爆買いしました。日銀もこれまで市場関係者が予想していた買い入れ基準を完全に無視して株を買いに走りました。これは初めてのことです。NYが1000ドル程度下がる中、日本は100円程度しか下がらず異常です。年金の問題があるのか。12月末のソフトバンク携帯子会社の上場にまつわる裏でのやり取りがあるのか。日銀のETF買いの平均単価の問題があるのか分かりません。ちなみに、日銀は目標に定めた年間買取額約6兆円のほとんどを消化していて、現在、残り4回程度の買入れしかできない状態です。何もかもが異常です。
Commented by 玄明 at 2018-11-23 22:23 x
この法案審議にぶつけたカリスマ経営者の逮捕劇。それも問題ながら、さらに見えなくなっているのが水道法の見直し法案。すでに参議院に送られている分、不安大です。
そうそう、次に大阪万博がニュース枠を奪うと、審議の存在すら出て来なくなりそう。(投稿時点では、結果が出ていません)
Commented by 七平 at 2018-11-27 01:40 x
hiroさんが指摘されているアベノミクスの実情分析、一般と異なった視点からで興味深く読ませていただきました。少数派でしょうが、マスコミや安っぽい評論家に振り回されず、客観的に状況を分析され、自らの意見形成されているところに、感心しています。 マネゴミクスは、確かにご指摘の様に 脱デフレ政策を長らく掲げていますが、実施した政策と掲げる政策は支離滅裂、結果自体が効果なき政策の実情を物語っていると思います。

日本での教育のせいでしょうか、お手本や教科書がある時代は一生懸命勉学に励み、教科書通りに事を進め、優れた結果を生み出すのですが、いざ、教科書が無い世界、時代に突入すると、教科書外での発想ができず、他国の経済学者や経営者のお勧めを鵜呑みにしてしまう傾向が強いのではないでしょうか? 根底の問題は21世紀には効果を発揮できない、歪んだ日本での教育システムにあると思います。

20年余りも成果をだす事ができず、挙句の果て、低中開発国の様に観光やカジノに望みを託し、 1960-80年の、高度成長期の復元を夢見て東京オリンピックや大阪万博に血税を投資している様に見受けられます。 日本には ”(同じ)柳の下に、ドジョウはいない” と言う諺がちゃんとあるのですが、、、。 普遍性があるところは、大型公共事業は政治家や建設業者の私腹を肥やすと言うところでしょう。


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