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オカシオコルテスは希望だ - 台頭する米国社会主義のシンボル

オカシオコルテスは希望だ - 台頭する米国社会主義のシンボル_c0315619_14155534.jpg米中間選挙は、投票率が過去50年で最高となる50%近くになると言われていて、有権者の関心の高さが際立った選挙だった。しかし、大統領選の60%に比べれば、それでも10%以上低い水準に止まっている。2年前の大統領選では4600万人が期日前投票を行ったが、今回は3500万人だった。これほど世界中が注目し、全米が昂奮して熱中した選挙なのに、有権者の2人に1人しか投票所に足を運んでおらず、半分が棄権してしまっている。トランプを信認するか否かを判断して意思を示す大事な政治機会であり、民主・共和両党が必死で票を掘り起こし、マスコミもネットも執拗に投票を呼びかけながら、半分の有権者は投票をボイコットした。この事実の意味を考えることも重要だろう。私はマイケル・ムーアの言葉をヒントに次のように考える。彼は映画の中でこう説いていた。リベラルの方が多数派なのだ。米国はリベラルの国なのだ。多くの数字を並べて例証しながら、保守の方が少数派で、絶対数としてはリベラルの方が圧倒していると強調していた。私の認識はマイケル・ムーアと同じで、問題は、今の二大政党制が多くの人々をカバーできない欠陥にあるのだと思っている。



オカシオコルテスは希望だ - 台頭する米国社会主義のシンボル_c0315619_14160707.jpg結論から先に言えば、米国の政治は三つの軸に再構成するべきなのだ。①トランプのような右翼、②オバマのような中道リベラル、③サンダースのような左派。この三派に分かれれば、有権者全体の政治意思を議会に回収できるし、マイケル・ムーアが言うところの、リベラルの方が圧倒的に多いという説明も論理的に回収できる。現在、民主党の中に②と③がいて、2年前の予備選では激しく争い、③の票は本選で①の方に流れてしまった。以来、③の一部はトランプの岩盤票となる倒錯を起こしたままを続けていて、そのため、民主党と共和党が票では拮抗する形になっている。①と②は新自由主義であり、③は社会主義である。②と③は経済政策・社会政策の理念が根本的に異なり、本来は同じ政党に同居してはいけないのだ。他方で、②と③は同じリベラルである。反保守である。同性婚と人工妊娠中絶に賛成で、人種差別に反対で、軍縮と環境保護に賛成だ。人権へのコミットが強い。だが、経済政策・社会政策では相容れない。②はウォールストリートから大金を貰って資本家のための政策を遂行する。格差を拡大する。民主党がトランプに圧勝できないのは、そうした欺瞞と自家撞着があるからだ。

オカシオコルテスは希望だ - 台頭する米国社会主義のシンボル_c0315619_14161928.jpg今回、盛り上がった選挙戦は、トランプとオバマの戦いというシンボルの戦いの構図を作った。はっきり言わせてもらうが、この戦いはトランプの勝ちである。民主党が終盤に勢いが衰え、トランプに猛烈に巻き返され、ブルーウェーブのモメンタムを起こせなかったのは、オバマvsトランプの戦いでオバマが劣勢に陥ったからだ。③を支持する層はオバマの欺瞞に反発している。そのことを知っているから、トランプは没落白人層をフォーカスし、彼らの要求を掬い取って政策に反映させる素振りをする。現在、票の上でサンダースやオカシオコルテスを支持している③の人々は、若い層が多いのが特徴だが、知的レベルの高い高学歴の都市の中産市民層が中心になっている点に注目する必要がある。もし、③が勢力として中西部や南部の地方まで浸透し、高学歴でない、そして格差社会で疎外されている、投票所に行かない数千万の人々まで掬い取ることができれば、③は第三の政党となり、米国の二大政党制を崩すことができるだろう。私は以前からそれが持論で、米国に社会民主主義の政党が必要だと言い、米国は普通の国になるべきだと唱えてきた。今、それが形になりつつある。

オカシオコルテスは希望だ - 台頭する米国社会主義のシンボル_c0315619_14163457.jpgオカシオコルテスには一目惚れした。こういう人に出て来て欲しいと思っていた人が颯爽と登場してくれ、我が意を得たりの思いだし、さすがに米国だと感心させられる。奇跡のように思う。米国に拍手する。スピーチの映像が素晴らしい。彼女は台頭する米国社会主義のシンボルで、日本のマスコミもその一挙手一投足を追いかけるに違いない。米国発、若い、女性、美人、リーダー。日本のマスコミはこういうキャラクターが大好きで、垂涎のキラーコンテンツで、だから絶対に悪口は言わない。米国で起きている流行現象は、何から何まで無条件で善であり模範であり、日本に取り入れるべきものだから、日本のマスコミ一般は彼女を批判する言説を吐けない。したがって彼女の民主的社会主義も、これから日本の中で肯定的な概念になって行くだろう。面白いのは、オカシオコルテスをどう呼んで扱うかで、木村太郎のような右翼は彼女を「極左」と呼んで切り捨てている。一方、パックンなどは彼女を「リベラル」と呼び、その当選を歓迎し、これがNYの民意だと後押ししていた。オカシオコルテスの定義は「極左」なのか「リベラル」なのか、今後の日本の論壇の重要なイデオロギー問題になる予感がする。

オカシオコルテスは希望だ - 台頭する米国社会主義のシンボル_c0315619_14184209.jpg一昨年、掘茂樹教授と対談したとき、もっと社会主義が出て来ないとだめなんですよと口を酸っぱくして言った覚えがある。教授とは立場が違い、この意見に同意はしてもらえなかったが、私が言ったとおりの方向性になっていると自信を持つ。資本主義の矛盾の激化が人の人生をこれほど苦境に追いやっているのだから、資本主義を批判する視点や議論が出て来るのは当然で、それを政策主張する潮流が台頭するのは当然のことだ。オカシオコルテスが米国社会主義のシンボルになったことはよかった。カリスマ性を持っている。人を惹きつける。精神が純粋でウソがないというか、応援せずにはいられない気分になるし、この子なら騙されてもいいやと思う。政治指導者になるにはカリスマ的資質が必要条件で、それは持って生まれた才能である場合が多い。29歳の彼女にはそれがある。残念ながら、日本には彼女のような彗星は現れない。人前で挨拶するのに、スマホに顔をつけて読み上げて、しばき隊が配膳した大新聞のカメラに収まっていい気になっている若者だけだ。あの大ヒットしたプエルトリコの歌は、エロな歌のように聞こえるが、よく聴くと悲しい歌に響く。プエルトリコの悲哀が伝わり、そこで懸命に生きている人々の姿が浮かぶ。台風で破壊されたプエルトリコは放置されたまま。

プエルトリコはガザと同じだ。ガザはイスラエルの空爆で破壊されたが、プエルトリコは台風で破壊された。誰も復興に手を貸そうとしない。厚生の手を差し向けようとしない。プエルトリコはアメリカ合衆国のテリトリー(自治的・未編入領域などと訳すらしい)だ。責任のある米国はそれを放置し、荒廃のままに任せている。プエルトリコはミシガン州フリントと同じであり、その延長線上にガザがある。われわれの日本も、いずれはそれと同じ運命になる。オカシオコルテスが出て来てよかった。彼女は希望だ。


オカシオコルテスは希望だ - 台頭する米国社会主義のシンボル_c0315619_14165033.jpg

by yoniumuhibi | 2018-11-09 23:30 | Comments(0)


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