トランプの独裁権力強化となった中間選挙 - トランプ主義の米国

c0315619_12433137.jpg米中間選挙の結果について、ほとんどのマスコミが、下院で民主党が過半数を制したことを理由に、「トランプ政権に打撃」と報じている。私はこの見方に同意しない。逆だと思う。トランプと支持者は、今回の選挙戦とその結果に大いに満足しているはずだし、自らの政治力に自信と確信を深めたことだろう。終盤のトランプの巻き返しは凄まじかった。上院の議席に狙いを絞った戦略も効を奏した。実のところ、私は上院も民主党が過半数を奪うのではないかと予想していて、予想を外すとカッコ悪いので黙っていたけれど、投票率の高さは批判票として反映されると思っていた。その予想は見事に外れ、事前の世論調査どおりに収まった。民主党の大勝を想定した根拠は、町山智浩の説明と同じで、2年前に本選でサンダース票がトランプに流れたというような事態が今回は起きないからである。それと、さすがに2年もトランプ政治を見続ければ、米国民も正気を取り戻して冷静な判断を下すだろうという期待もあった。だから、選挙戦終盤のトランプの巻き返しは意外だったし、トランプ主義のムーブメントの恐るべき力を思い知った。まさにマイケル・ムーアが言うとおり、米国でファシズムが台頭している。



c0315619_12434231.jpgトランプを支持する草の根保守は、ブルーウェーブからトランプを防衛するため、一人一人が懸命に「民主主義」の運動をして、米国人らしく積極的に政治参加してトランプ票を掘り起こしていた。何時間も待って長い列を作り、トランプの選挙集会の頭数の一人になっていた。岩盤と呼ばれるトランプ支持層は、2年前よりもトランプに対する帰依と信仰を深めている。今回の選挙を通じて、共和党は完全にトランプ党に実体が転化したと言えよう。トランプなしでは共和党は体をなさない政党になった。議員たちはトランプに媚売りするようになり、党内にトランプの敵は消滅した。軍・CIAも同じだろう。これまでDCでは、民主党も共和党も素人のトランプを小バカにして陰口を叩いていたに違いないが、今後は状況が変わり、トランプを舌鋒鋭く攻撃するのは民主党だけになり、共和党の政治家たちはトランプを擁護して民主党を叩くようになるだろう。トランプの陣笠として動くはずだ。下院の議席は失ったが、トランプは2年前より権力を盤石にしたと言える。2年前にトランプに投票した白人層が、トランプから離れず、さらに強く明確にトランプにコミットする意思を示したからだ。この事実は本当に恐ろしいことだ。

c0315619_12435307.jpg2年間の度重なる暴言、依怙贔屓、外国に対する喧嘩腰、憲法の踏みにじり、これらが、今回の選挙で否定的な審判を受けることなく、民主主義の大衆の投票によって正当化された。本来、およそ大統領の資質を欠いたアウトローが、さらに大統領として居座ることがオーソライズされた。このことは、米国の白人層の価値観が変わっていることを示している。テレビで何度か出た場面だが、取材で感想を求められた白人の中高年女性層が、トランプの暴言や下品な態度は、赤ん坊のやんちゃと同じなのだから大目に見てよいのだと言っていた。トランプに対する許容度が上がっていて、拒絶感が減っている。毎日付き合っている相手だから、そのような関係になるのだろう。日本における大衆と安倍晋三の関係と同じであり、テレビと安倍政権との関係と同じだ。これは実のところ、白人層の内面が次第にトランプと同一化しているという意味であり、トランプの人格性や精神性が感染して広がっている現象だ。日本のマスコミ論者も同じで、中林美恵子なども、市民社会の原則上許されないトランプの暴言を、「アメリカ人の本音」だとして積極的に容認する姿勢を見せ、米国社会の変化を肯定するような意見を述べている。

c0315619_12440581.jpgマイケル・ムーアは映画『華氏119』について、これは21世紀のファシズムを描いた作品だと言っていて、現代アメリカをファシズムが台頭している社会だと批判している。私はこの主張に同意する。米国の(中西部や南部の)白人大衆はなぜかくもトランプを支持しているのだろうか。トランプ主義の草の根となり、トランプの岩盤となっているのだろうか。それは、マスコミでも何度も言われてきたが、トランプが彼らに光を当てる素振りをするからであり、誰にも見放されてDCから光が届かない地域や人々が多すぎるからである。トランプがそこへ行って遊説する。輸入品に関税をかけて保護してやると言う。企業を外に出さず国内の雇用を守ると言う。壁を作って移民は入れないと言う。そしてその政策を強力に実行する。それを見て、没落白人層は救済を感じるのだ。トランプの指導力に帰依するのだ。人間の心理として、それは当然のことだろう。映画『華氏911』では、水道事業を民営化され、ある日からヒューロン湖を水源とする清潔な水ではなく、鉛で汚染されたフリント川の水を供給されるようになった米国最貧の町が紹介されていた。被害者の多くは黒人だったが、彼らは2年前の大統領選で誰に投票したことだろう。

c0315619_12441754.jpg日本人も同じだが、米国人も多くが経済的に没落している。中間層としてのゆとりある人生と能力を失っている。例えば、月収40万円の人の暮らしと月収20万円の人の暮らしでは、人生の余裕が全く違い、周囲や社会を見る目が全く違う。月収20万円の暮らしでは、自分のことで精一杯で、他人の境遇に思いやりを寄せる心の余裕を持てない。誰かの不幸を見ても、差別やいじめが目に入っても、そこに手を差し伸べたり、関心を持って救助に動いたり、公的な補助や支援を訴えて活動するということができない。そうすると、自ずと自己責任論で合理化して頭の中で問題を解決してしまうことになる。そこに先進国の市民社会があり、市民社会のルールがあっても、その成員である一人一人に物質的な主体性がなく、市民社会の市民たり得ないのだ。ミシガン州フリントの住民はそうして放置され、鉛毒の汚染水で子どもたちが犠牲になった。全米にフリントのような町が無数にあり、貧困と荒廃の中で見捨てられた住民がいて、光が当たらず、鬱屈したまま諦めているのだろう。彼らがトランプを救済者として仰ぎ、指導者としてコミットするのは無理からぬことだ。自分たちの指導者を攻撃する敵(マスコミ)を叩くのも心理として当然だ。

c0315619_13202525.jpgこの選挙でトランプを熱狂的に支援した草の根保守の白人層は、民主主義の制度と権利を大いに利用・行使して、お手本のように民主主義社会の市民の責任を果たし、ファシズムの進行と完成に手を貸した。1930年代のドイツのように、市民が選挙でファシズムを構築・推進している。マイケル・ムーアは天を仰ぐような気分だろう。それにしても、正直なところ、米国の政治に注目して観察する方が面白い。安倍晋三が大画面のテレビに出てくると、最近ではすぐに下を向いて音声を消してしまう。話を聞きたくない。聞いても意味が無いと思う。岩田明子がNHKのニュースに出ると、チャンネルを変えて時間を待つ。国内の政治に徐々に関心がなくなった。だからかもしれないが、外国の政治の方に関心のエネルギーが向かう。舞台と俳優が揃い、いろんなキャラクターが舞い踊り、勝ち負けがあって、その中に応援したくなる政治的人物がいて、サンダースのような言葉があって、米国の政治の方が見ていて楽しい。独裁者のトランプでさえも、安倍晋三を見ているよりずっと気分が軽く見ていられる。

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by yoniumuhibi | 2018-11-08 23:30 | Comments(1)
Commented by 七平 at 2018-11-08 22:30 x
確かにファシズムが世界各地で頭を持ち上げ、トランプがその流れの先頭を切っているように見えますが、私は米国人の良識派(55%)を未だ信頼しています。軌道修正は始まっています。 相変わらずトランプと彼の取り巻き知能犯が、裏の裏をかくような情報錯乱行動を続けていますが、日本と違うところはマスコミ(Foxを除く)や一般知識層がトランプの手法とその陰湿さを見ぬいて、政府の誤報誘導、弾圧に屈していないところにあると思います。 トランプが司法府に対して攻撃をかけていますが、失敗するでしょう。一方、日本のマスコミと司法に従事する連中は臆病者ばかりです。古賀さんや三宅弁護士の声は何処に行ってしまったのでしょうか?

今回の選挙結果に関して2,3、掲題の記事に含まれていない点を指摘しておきます。

1.共和党がSenate(上院)の過半数を維持しましたが、各州から二人との Electral College System がもたらした弊害の為です。例: ニューヨーク州の人口1,985万とミズリー州の人口611万が、同数の代議士を選出する所にSystem上の矛盾があり、その矛盾に付け込んでトランプ派が上院で勝利を収めたと言えます。

2.トランプ派が勝利を収めた選挙区は教育レベルの低い地域に集中しています。インテリ層、教育レベルの高い地域の住民は反トランプの旗色ははっきりさせています。 

3.女性代議士の数が随分伸びて、良い傾向だと思っています。日本でも、国谷裕子、伊藤詩織さんの様な、知的で勇気のある女性が立候補すれば、世の中は良くなるだろうと思います。


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