マルクスと日本人 - 『きけ わだつみのこえ』と『君たちはどう生きるか』






「反マルクス主義の文学者も含めて、文学における『方法』という問題を真剣に考え出したのは、マルクス主義の衝撃によってであります。(略)社会的政治運動としてのコミュニズムに対してどんな批判が下されようとも、日本におけるマルクス主義が一つの知的運動 intellectual movement として、職場と世代によって分断された知識人に既成の知識のあり方を反省させ、知性の共通の基盤を意識にのぼせた、という足跡は近代日本の歴史のページから消えさることはないでしょう」(同 P.250)。このことは、岩波新書の『日本の思想』の中にも書かれている。戦後日本の知識世界というのは、戦時体制と権力の弾圧によって一度閉ざされたこの知的運動が、解放され、大きな奔流となり、定着したものと考えていい。死んだ者たちの無念の思いと共に。戦前日本の(国務エリート側の)知識世界のエネルギーが、戦後日本を世界一のマルクス大国の繁栄へと導いていた。

by yoniumuhibi
| 2018-10-29 23:30
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Comments(2)

力強い、日本のマルクス讃歌を拝読しました。ニホンスゴイではありませんが(笑)、戦前も戦後も高いポテンシャルを持っていましたね。『きけわだつみのこえ』も、あらためて読み直したいと思いました。また、丸山真男の指摘する、タコツボ的な細分化された研究を横断してきたのがマルクス主義だという論にも、いまさらながらというべきでしょうが、思い至ります。文学研究も、根本的にこのことを自覚せねばならない、と自戒をこめて反省しました。いつも拝読していますが、今回はあらためて感動しひさしぶりにコメント申し上げました。憲法改正反対の意見が高まってきて、よかったです。
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ご無沙汰しています。FaceBookに『過去の思い出』というものがあり、数年まえのその日のシェアが上がってきます。去年のきょうは、宮崎駿が吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』を遺作(?)と思い立った日で、再度きょうシェアしなおしたところで、この記事に出逢いました。宮崎評はいろいろちがうようですが、吉野源三郎の思想がポピュラーになることはすばらしいと思います。
去年の自分の感想は宮崎監督が完成は3−4年後と言っていることで、ひょっとしたらそれは改憲の国民投票のあとになるのでは、と危惧しています。今年の護憲状況(?)は昨年よりマシなようですが、なにせあの怪物が相手では油断などできません。
ご健筆を続けられ、脱・脱構築の砦を築かれんことを! 金魚 FaceBook: Kingyo NY
去年の自分の感想は宮崎監督が完成は3−4年後と言っていることで、ひょっとしたらそれは改憲の国民投票のあとになるのでは、と危惧しています。今年の護憲状況(?)は昨年よりマシなようですが、なにせあの怪物が相手では油断などできません。
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