四選・終身独裁に向かわざるを得ない理由 - 「ポスト安倍」不可能論

c0315619_13020375.jpg自民党総裁選で、石破茂が党員票(地方票)の45%を得た意味は小さくない。当初、安倍陣営はトリプルスコアで勝利すると豪語し、党員票でも70%を集める目算で動いていて、そのことを「情勢報道」としてマスコミの記者に書かせていた。終盤になって、党員票の55%が目標だと言い出して後藤謙次にテレビで撒かせたが、それは、実際に70%を取った場合に圧勝を演出するための作為的な布石であり、安倍陣営の工作の手口であって、彼らの票読みの反映ではない。結局、20日に蓋を開けたところ、安倍陣営の目論見が大きく外れる結果となり、「地方票の反乱」とマスコミに評される政治となった。選挙期間中、安倍晋三は討論と論戦を嫌って逃げ回り、災害を口実にして選挙戦を止め、対ロ外交を姑息に挿入してマスコミ報道の関心を散らし、ありとあらゆる汚い手を使って選挙を自分に有利に導いた。自民党の地方組織を締め上げ、地方議員や現職大臣を恫喝しただけでなく、石破茂が地方で党員集会を開けないように選挙妨害までやった。自分の勝利は確実なのに、大差圧勝の絵を作るため、自民党総裁選とは思えないような卑怯で強引な選挙手法に終始した。



c0315619_13022516.jpg先週末、麻生太郎が開き直って負け惜しみを垂れる図がテレビで放送されたが、その八つ当たりの喧嘩口調が、安倍陣営の苦戦の衝撃の大きさを表していて、政治的には事実上の敗北と言っても差し障りないだろう。カツカレーを食い逃げした陣営議員は4人いた。事前予想では石破茂の議員票は50票だったのに、無派閥中間派の議員が20人も裏切った。70%と想定した地方党員票は15%も石破茂に流れる意外な謀反劇となった。面従腹背が続出したのであり、本来、独裁制を嫌ってプルーラリズムを指向する自民党らしいネイティブな体質の発現と言える。この結果、石破茂の政治家としての存在感は増し、永田町の一角に与党内安倍批判勢力として影響力を残すこととなった。おそらく今後、マスコミの政局報道の場面において、オブジェクション・スピーカーとしての定点位置を確保し、嘗ての石原慎太郎や橋下徹のように、国民を代弁して政府批判・政権批判を発する辛口のシンボル・キャラクターとなるだろう。これまで、正論の政府批判・政権批判のテレビ発信は左の共産党が担ってきたが、今後は加えて石破茂にカメラが向き、「正直・公正」の直言が報道に流れることになる。

c0315619_13023618.jpgこのことの世論への影響は小さくない。折角、安倍晋三は総裁選三選の「大差圧勝」を睨んで、①報ステの小川彩佳を降ろして徳永有美に替え、②スクランブルの橋本大二郎を降ろして右翼の小松靖に替え、③ZEROの村尾信尚を降ろして有働由美子に替え、マスコミ報道の布陣をさらに濃厚な安倍色に染め変える工作に成功したのに、石破茂というヴァイタルなオブジェクション・スポットの構築を許してしまい、政治的に効果が相殺される状況になってしまった。三選直後の会見で、安倍晋三は改憲の悲願達成を強調していたが、あの原稿は、おそらくトリプルスコアでの圧勝を前提にして用意したものだっただろう。圧倒的大勝を国民に見せつけ、その上で、改憲断行を宣告して時機到来の空気を作ることが意図されていたように分析される。だが、その思惑は見事に外れ、逆に改憲の情念が宙に浮いて空回りする形となり、マスコミから「憲法改正は視界不良」と逆襲される顛末となってしまった。早速、21日夜のプライムニュースに出演した山口那津男が、憲法改正は時期尚早と発言、今国会での9条改憲提起に公明党は応じない姿勢を示した。総裁選の結果を受けての慎重論の意思表明だ。

c0315619_13030099.jpg最近のマスコミの世論調査では、9条改憲について安倍晋三に順風は吹いていない。自衛隊を明記する9条改定案 - いわゆる「安倍改憲」 - を支持する声は多数になっていない。これは、今年に入ってからの北朝鮮非核化の国際政治の影響が大きく、トランプと金正恩の歴史的会談があり、米朝和平の気運が流れていることが原因だ。北朝鮮のミサイル実験は1年以上も中断していて、今後も再開の気配はなく、そこに文在寅の果敢で大胆な南北融和外交が重ねられ、半島情勢は緊張緩和の方向にシフトしている。さらに中国が米国との貿易戦争への対抗上、日本と接近し協調を演出する外交の必要に迫られ、その面でも東アジアに緊張緩和の条件が出来、政府とマスコミが刷り込んできた「厳しさを増すわが国の安全保障環境」の様相が変化してきたことがある。9条改憲を推す世論は、中国・北朝鮮との緊張対立の高まりを背景に盛り上がるもので、国際環境が逆に動けば世論も逆の方を向く。安倍晋三と右翼にとっては、今年に入って和平ムードが基調となった米朝関係と東アジア情勢は、きわめて不本意で期待外れな現実であるに違いない。この状態が続くかぎり9条改憲は不可能だ。

c0315619_13031137.jpgさて、総裁選が終わったあと、ポスト安倍の問題がマスコミで語られ始めている。私の結論と見通しを先に言うと、安倍晋三は間違いなく党のルールを変えて四選に出るし、現在の独裁権力の地位を永続化させるべく動くだろう。3年で首相の座を降りるなど寸毫も考えていないし、それは本人とこの政権にとって無理な選択だ。例えば、考えてみればいいが、あの麻生太郎がやすやすと只の人になることができるだろうか。安倍政権が終焉し、副総裁・財務相の地位でなくなった途端、これまで難癖をつけ散々愚弄していたマスコミ記者から、カメラを向けられて囲まれ、只の一国会議員として応じなければならないのである。あの麻生太郎の横暴と虐待に記者が忍耐を強いられるのは、麻生太郎と安倍晋三が権力を持っていて、所属する社の上を動かし、人事を自在に動かすことができるからだ。サラリーマンの身だから、給料のため家族のため出世のために我慢している。だが、安倍政権の終焉が目前となり、カウントダウンとなれば、記者と麻生太郎の力関係は変わるのだ。その図を想像しなくてはならないし、彼らが権力を失うことが何を意味し、それが彼らにとっていかに困難で苦痛かを考える必要がある。

c0315619_13032938.jpg他にも、迫田英典の背任の容疑があり、佐川宣寿の虚偽公文書作成の容疑がある。森友問題に関わった忖度官僚たちは不起訴処分になったが、市民団体によって検察審査会に申立がされており、審査の決定はまだ表に出ていない。安倍昭恵も刑事告発されていたし、加計孝太郎も刑事告発を受けていた。おそらく不起訴処分は出ているに違いないけれど、森友・加計でまともに逮捕されたのは籠池夫妻だけであって、他の者は無罪放免の悠々自適で済まされている。性的暴行事件の山口敬之もそうだ。政治資金規正法の甘利明もそうだ。果たして、安倍政権が倒れたとき、それで済むかという問題である。安倍独裁政権には、独裁政権が倒れたときにはただで済まない者が何人もいて、安倍昭恵と安倍晋三がまさに罰を受けるべきチャウシェスク的範疇ということになる。安倍院政などという言葉もあるけれど、官邸の主の座から去ってしまえば、検察を自在に操縦することは難しい。マスコミの記者も黙ってはいない。報復と追撃が始まる。そこから、彼らに内在的に考えたとき、安倍晋三一味は、まさに逮捕と破滅を免れるべく、権力の座に最後までしがみつかねばならないし、なりふり構わず独裁権力を永続化させるしかないのだ。

来年(2019年)の参院選に圧勝して国政選挙に6連勝すれば、必ず党内で四選の声を上げさせ、再来年(2020年)の衆院選に勝った後で党規約を変えるという進行になるだろう。


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by yoniumuhibi | 2018-09-25 23:30 | Comments(1)
Commented by 私は黙らない at 2018-09-26 05:12 x
ブログ主さん、今日(9/25)のワールドサテライトビジネスをご覧になられましたでしょうか?
文書改ざん問題特集、自死された近畿財務局職員Aさんの父のテレビ初インタビュー、近畿財務局職員OB数名による顔出し、実名インタビュー。
安倍続投が確定した今、この時期に、なぜテレ東が、森友問題を特集したのか、非常に訝しく思いました。
アベノミクスの出口戦略を経済界が模索しはじめたということでしょうか?あるいは東アジア情勢の変化に安倍では対応できない(邪魔になる)ということでしょうか。
テレ東の看板番組での森友特集には、何か理由があるように思えてしかたありません。


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