ブラックアウトの謎 - 停電解消の遅れは原発復権のための作為か

c0315619_12553314.jpg胆振地方で発生した震度7の地震によって、北海道全域の295万戸が停電した。北電最大の火力発電所(165万kW)である苫東厚真発電所の発電機3基が故障して停止、電力の需給バランスが崩れ、他の火力発電所が自動的に停止するブラックアウト現象が起こったため、道内全域の停電に追い込まれた。北電とマスコミはそう説明している。停止した火力発電所を再起動させるためには外部電源が必要で、水力発電を動かし、順次稼働させ、さらに本州から融通を受ける60万kWを加えて、本日7日中に290万kWまで回復させると言う。これは、5日の最大需要量である380万kWの76%の供給量であり、苫東厚真発電所の修理復旧に一週間を要するため、北電は道民に節電を要請する発表をした。北電の記者会見が行われたのは、昨日6日の午後12時すぎと午後4時である。この北電の説明とそれを鵜呑みにしているマスコミの報道は、少し腑に落ちない。どこが疑問なのかというと、素朴に、なぜ停止した他の火力発電所の再起動に1日以上の時間を要するかという点である。北電のHPを確認すると、火力発電所の一覧が載っている。



c0315619_12554890.jpgそこには、苫東厚真の他に、砂川、奈井江、苫小牧、伊達、知内の4ヵ所の火力発電所が載っていることが分かる。ブラックアウトで停止した火力発電所は、奈井江、知内、伊達の3ヵ所だとされていて、その3ヵ所の発電所では、地震が起きた6日午前3時すぎ、保有する各2基の発電機のうち各1基だけを稼働させていた。この3ヵ所の3基がブラックアウトで自動停止した。が、北電本店での社長による記者会見と並行して、午後1時すぎには砂川発電所を動かし始め、午後4時には32万9千戸(全体の11%)への供給を回復させている。もともと、地震が発生した時点では砂川発電所は動いていなかった。ブラックアウトの影響を受けて停止した設備ではなかった。その発電機の稼働に10時間も要したのはなぜなのだろう。また、北電とマスコミの説明には、25万kWの出力を持つ苫小牧発電所の存在が捨象されているが、これはどうしてだろう。設備が古くてずっと運転してないから、本件の認識対象から除外したのだろうか。北海道新聞の記者は、この点を会見で質問したのだろうか。

c0315619_12555994.jpgこのことは、要するに「ブラックアウト」とは何で、その影響が具体的にどのようなものかという問題に関わり、今回の北電とマスコミの説明が本当に正しいのか、人的な過失と責任は何もなかったのかと問いに繋がる。ぜひ、理工系の広瀬隆に登場してもらい、今回の「ブラックアウト」について分析と解説をしてもらいたい。マスコミに出て来た専門家の話では、需給バランスが急激に崩れて周波数が乱れると、タービンの故障やシステムの異常が起こりやすくなるため、発電所は電力の生産供給を自動的に遮断する仕組みなのだと説明されている。朝日2面の記事では、伊与田功(大阪電気通信大)が、「北海道各地で電気の遮断が一斉に起き、すべての発電機が電気系統から離れ」た現象だと言っている。ということは、周波数異常を探知して対処(停止)するのは発電所の自己保全機能で、外側のハード(変電所や送電線)には関係ないことになる。ブラックアウトが発生しても、ブラックアウトそのものはハードの故障や異常ではなく、故障回避システムの正常な作動なのだ。システムは保全されている。

c0315619_12561006.jpgであれば、ブラックアウトに直接関与した3ヵ所(奈井江、知内、伊達)の発電所の再稼働も、もう少し早く前倒しできたはずだし、停止中だった各1基の発電機から先に稼働させるという方法があったのではないか。昨日(6日)のマスコミ報道では、ブラックアウトで停止した火力発電所の発電機を再稼働させるためには、外部電源の補給注入が必要で、そのために北電は水力発電を動かして電力を供給したなどという説明が一部にあった。その話を聞いたときは、水力発電所はブラックアウトの影響を受けないのかと思ったが、北海道新聞の記事の北電の説明を読むと、必ずしもそうではないということが分かる。金山や雨竜などの水力発電所もブラックアウトの影響で停止していた。そして、どこの発電所か不明だが、水力発電所を運転して50万kW分を6日中に供給すると言っている。つまり、ブラックアウトの影響に火力と水力の別は関係ないのだ。ちなみに、北電のHPによると、北電の持つ水力発電所の設備は強大で、主な発電所だけで12ヵ所あり、その発電能力は全体で165万kWにも上る。これは苫東厚真発電所の能力と同じで、5日の道の需要量380万kWの43%の数字だ。

c0315619_12562290.jpgまた、北電の太陽光の発電量は132万kW、風力の発電量は38万kWあり、合わせて170万kWと、これまた苫東厚真発電所の電力生産量と同じ規模になる。自然エネルギーなのでベースロードの範疇にはならないが、この発電が今回の「ブラックアウト」にどう関係したのかしなかったのかを検証する必要がある。当たり前だが、太陽光発電は未明の午前3時には動いてない。周波数の変動の影響は、この時刻は無関係だ。結局、その後どうなったかと言うと、6日午後6時までに41万2千戸(全体の14%)が停電解消となり、7日午前0時までに65万8千戸(同22%)、7日午前3時までに96万4千戸(同33%)、7日午前6時までに130万9千戸(同44%)の停電解消が報告された。地震発生と道内全域が停電するブラックアウトから24時間経って、3分の1の電力が回復した。私が今回の「ブラックアウト」の経緯と説明を疑うのは、一つは、あの世耕弘成のドタバタ会見の騒動がある。世耕弘成は6日の朝8時すぎ、マスコミの前で大見得を切り、「北海道電力に数時間での停電復旧を指示」と書かせていた。その後、昼になって前言を撤回、「完全復旧に少なくとも一週間以上」と訂正して醜態を演じている。

c0315619_12563474.jpg6日早朝、官邸でこの地震災害についての形ばかりの関係閣僚会議が開かれ、わずか10分間だけだが閣僚が集まってNHKにアリバイの絵を撮らせた。午前7時37分から47分のことだ。それを受けて、世耕弘成が出番とばかりに張り切り、「数時間での停電復旧を指示」の発言となったのだろう。無論、経産官僚の報告と説明を受けた上でのことで、経産大臣としての責任あるコミットである。自信があったということだ。ところが、数時間後にそれを翻し、北電の発表と同じ内容に「復旧」について訂正した。一見すれば、世耕弘成と経産官僚が早とちりして大恥をかいたという間抜けな図だが、普通に考えて、経産省・エネ庁がそのような間違いを犯すだろうか。ここまで大臣に恥をかかせるヘマをするだろうか。世耕弘成の朝の会見まではブラックアウトから5時間以上経っている。北電と連絡を取り合りながら、技官が状況を把握し、復旧の手筈もすべて整えた上で、自信を持って官房長に報告、世耕弘成の会見となったと考えていい。全道民・全国民が注目する経産大臣の発言だ。どう考えてもおかしい。こんな幼稚園児のようなミスはあり得ない。技術の世界の話である。

c0315619_12564834.jpg私の推理は、午前中に誰かが介入して入れ知恵し、ブラックアウトなら巧く理由が成り立ってマスコミを騙せるから、停電を長引かせちゃえよと方針転換したのではないかという政治である。その目的と動機は、泊原発を停止させているからこうなったという世論を興すことであり、やっぱり原発は必要だという意識に国民を誘導させるためである。今回、「ブラックアウト」の説明でテレビに出て来た学者たちは、あの3.11の際に広瀬隆から厳しく指弾された「御用学者」の類だろう。ブラックアウト(全系崩壊)については、それを防ぐための「系統安全化装置」がすでに開発・導入されている。だが、NHKの夜のニュースでも、報ステでも、「系統安全化装置」に言及する専門家はなく、今回のブラックアウトを疑問視する角度から解説を試みる者はいなかった。このところ原発の復権の動きが急で、東電が7年ぶりにCMを解禁して放送、石坂浩二が原発を宣伝する電気事業連合会のCMに出演するまでになった。7年前からは想像もできない状況の変化が起きている。今回、北電で何が起き、経産省と官邸で何が起きたのだろうか。私は、世耕弘成の朝の会見が正しかったという見方を採る。

おそらく、昨日(6日)の昼までに全道で復旧の予定だったのだろう。世耕弘成に対して、おまえが恥かいてもいいからこう言い直せと指示できるのは、一人の独裁者である。夜のテレビで真っ暗な札幌を撮って騒がせろ、今が絶好のチャンスだと。そもそも北海道電力の全発電能力は780万kWで、5日の最大消費量380万kWというのは、全生産能力の49%でしかない。半分にすぎない。だから、苫東厚真発電所の165万kWが止まり、泊原発の207万kWが停止中といっても、まだ408万kWの残りの発電余力がある計算になる。理論的には380万kWの消費量を十分カバーできる態勢と能力であり、加えて本州から60万kWの補充があるなら、どうして一週間も停電を続ける必要があるのだろう。

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by yoniumuhibi | 2018-09-07 23:30 | Comments(5)
Commented by いつも読んでます at 2018-09-07 14:59 x
果たして世論は、「発電能力不足で停電した」からといって「じゃあ原発を再開させよう」となりますかね。
原発の外部電源を一時喪失してヒヤリとしたことで、むしろ反対の声の方が強くなりそうですが。
私も原発は廃止した方が良いと思っていますが、さすがにここまではやらないのでは。
とはいえ必要な批判だと思いますし、この点に関する北海道電力側の説明も聴きたいですね。
Commented by 名無しのごんべえ at 2018-09-07 17:43 x
拝読いたしました。具体的数字に裏付けられた推理で説得力があります。この短期間に情報をまとめ、文章にして下さりありがとうございます。
お読みしながら、1つシンクロしたことがありました。それは、元東電社員であられ今は熊本で医師をされているonodekitaさんのツイッター内容です。本7日お昼頃のツイートで、「えっ・・・ 地震当初は大丈夫だったのに9時過ぎから全域で停電したの?ちょっとこれ、ひどくない?」というコメントと共に北電HPから引用されている電力使用状況を表すグラフが載っていたのですが、氏のコメントどおり、丁度午前9時前頃から下がり始めます。一方、午前8時頃までは上昇しており、これは世耕大臣の会見時間と重なります。また、会見終了直後から不可解なダウンも見られます。これらのグラフの動きが、丁度世に倦む様の推測と重なるな、と思った次第です。
「まさかそこまで」と思いたいですが、今の政治を見ていると、このグラフの動きがやけに説得力を持って迫ってきてしまいました。
被災地で困っている方々が一刻も早く平穏無事な日常を取り戻せるよう願っております。
Commented by ROM者です。 at 2018-09-07 23:48 x
すみません、原発再稼働の思惑話とずれますけど。。
東日本の際、米軍や自衛隊の基地施設等がある送電エリアは、ほぼほぼ停電が皆無でした。そういう展開が果たしてどの程度で今回生じるか否か。

それとヤフコメのパチンコ屋営業叩きの極端さ加減が、まあひどいことヒドイコト。人間の心の闇めいたナニかが如実に出て来ている感じです。
Commented by いつも読んでます at 2018-09-09 01:42 x
停電したところで原発の外部電源喪失によりむしろ世論的には再稼働の逆風になるかと思っていましたし、経済被害もハンパないのでまさかという思いでしたが・・・
http://lite-ra.com/i/amp/2018/09/post-4235-entry.html
上記URLの記事を読むと、先生の読まれた線が濃厚ですね。
Commented by フォローしています at 2018-09-11 12:46 x
私はもっと単純に、総裁選スケジュールに影響させるべく動いただけではないかと思います。
単純に硬派者討論回避のための時間稼ぎかと。


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