自民党総裁選 - 派閥が消滅し独裁が永続するしかない党システム

c0315619_13500697.jpg青木幹雄が吉田博美に石破茂を支持せよと指令したのは7月25日のことだ。すぐにマスコミが報じるところとなり、7月末から8月初にかけて、党内第三派閥である竹下派が石破茂支持に流れるのではないかという観測が浮上した。朝日新聞の記事を見ると、8月2日に「竹下派、石破氏支持へ集約進む」という見出しがある。この時点で、派閥会長の竹下亘は派閥として統一行動をとることを目指し、衆参ともに石破茂支持で纏めるべく衆院の派閥幹部たちを説得、会長一任を取り付けるべく動き、その意思をマスコミの政界記者に伝えて書かせていた。それを見ながら、私は7日に、竹下亘の一任取り付けは到底無理で失敗に終わるだろうとツイートした。結局、調整を試みたものの衆院側の抵抗が強く、竹下亘は9日の派閥会合を前に一本化を断念、自主投票を決め、衆院側大勢は安倍支持、参院側は石破支持と分かれることになった。注目すべきは竹下亘自身の対応で、8日朝の毎日は「竹下氏は石破氏支持」と書いているが、9日夜の朝日では「『私個人はもう少し考えたい』と述べるにとどめた」とある。



c0315619_13502149.jpgつまり、竹下亘本人の意気込みがトーンダウンしている様子が窺える。竹下派の決定は自主投票であり、議員個々の判断に委ねるということである。私は、参院竹下派の21名が、全員揃って石破茂支持で纏まるとは思わなかった。また、そのように吉田博美が21名を差配するとも思わなかった。派閥の決定は自主投票であり、参院議員も自由なのである。総裁選は9月7日告示、20日投票の日程であり、告示まで一か月も時間がある。現時点で、表向き石破茂支持を打ち出したのは参院竹下派だけで、派閥の中で態度未定なのが17名の小所帯の谷垣Gだけだ。谷垣Gが石破茂支持を打ち出すとは考えられず、ぜいぜい自主投票止まりだろう。谷垣Gは石原派(12名)と同じく参院議員がほとんどいない。衆院議員だけで構成する派閥であり、それだけ安倍晋三の強権支配の影響を直接に受ける関係にある。岸田文雄が立てば、竹下派も谷垣Gも岸田文雄支持に出る可能性があった。今回、青木幹雄の助力のおかげで、石破茂はようやく出馬にこぎつけることができたと言える。青木幹雄の鶴の一声がなければ、石破茂は自派内を切り崩されて出馬断念に至ったかもしれない。

c0315619_13503547.jpgこれから総裁選が始まるが、おそらく石破茂は苦戦を余儀なくされるだろう。マスコミやネットの論調では、党員票(405票)で石破茂が善戦するのではないかという見方が広がっている。6年前の総裁選の実績がその根拠になっている。だが、私はこの楽観論に懐疑的で、総裁選を商業的に盛り上げようとする政治マスコミの宣伝の動機による床屋政談に過ぎないと考える。6年前とは大きく状況が変わっていて、自民党員の世代交代も進んでいる。地方の自民党の幹部も、嘗てと違って安倍色を露骨にした若い極右が勢力を張り出してきた。産経フジの7月の世論調査によれば、自民党支持層の中で次期総裁として安倍晋三を支持する者が49.1%で、石破茂を支持する者が16.9%となっていて、3倍の差が開く結果となっている。来年4月に統一地方選があり、7月に参院選がある。地方の一人の自民党員の立場になって考えたとき、総理総裁は石破茂でなく安倍晋三の方を選ぶのは当然だろう。客観的に想定して、石破茂が総理総裁になったときは、自民党の支持率は一気に下がり、参院選は(相手がいくら弱い野党でも)予断を許さない状況になる。

c0315619_13504812.jpgマスコミが伝えるところでは、青木幹雄が、国民に不人気な安倍政権のままで参院選を戦えば自民党は負けると言い、だから石破茂に替えないといけないと言ったという説明だが、もし青木幹雄が本当にこう語ったとしても、この発言には全く根拠がない。実際は逆で、石破茂に替えた方が負ける確率ははるかに高くなる。自民党員の立場で考えて、来年の参院選のために総裁を選ぶとすれば、石破茂ではなく安倍晋三になるのは当然のことだ。安倍晋三だから勝てるのであり、安倍晋三だから5連勝を勝ち取っているのである。右翼のモメンタムが上がる。この青木幹雄の話を成る程と頷いているのは、反安倍の陣営に属する者たちであり、そもそも総裁選の投票には関係ない外野の者たちに他ならない。無論、この説を流している青木幹雄も、マスコミ政界記者も、思惑を持って情報を流しているのであり、青木幹雄は反安倍の世論を焚きつけて石破茂のムーブメントを興そうという意図があり、政治マスコミは、国会が閉幕して夏枯れの農閑期に少しでも市場活性化して商売繁盛させようという動機がある。だから、この床屋政談に釣られてその気になるのは無意味と言うほかない。

c0315619_13510073.jpg安倍晋三と麻生太郎は、この総裁選を極限まで圧勝の形に終わらせる魂胆であり、徹底的に派閥を恫喝・調略して石破茂を追い詰めるはずだ。総裁選後の報復を示唆し、反抗は無意味だと脅し上げ、アメとムチで封殺する構えだろう。そうしないと、少しでも予想を超えて石破茂が善戦する展開となり、反安倍票が党内で顕在化する事態になると、現在の盤石の独裁体制が揺らぐからである。秋以降の国会での改憲戦略や来年の参院選に影響が出るからだ。その一方で、安倍晋三と菅義偉は、あまり締め付けを強めすぎると逆効果となることを察していて、自民党が変質して自由も民主主義も党内にないこと、安倍晋三の恐怖独裁の支配下にあることの真実が、総裁選を通じて世間に露呈し、否定的な評価と印象が浸透し、改憲政局と参院選に悪影響を及ぼす図を恐れている。だから、そうした観点から深慮したとき、石破茂の出馬は消極的歓迎なのであり、勝敗ラインとするトリプルスコア以下で敗退してくれるのがベストの着地だという結論に至る。つまり、この二つの矛盾した論理と課題の調節と顔の使い分けが肝要なのであり、麻生太郎と菅義偉がヤヌスの裏表を意味していると言えよう。

c0315619_13511777.jpgいずれにせよ、自民党はすっかり変わっていて、自民党の派閥の概念と表象は過去の時代のそれとは全く異質なものになっている。一応、派閥は存在するが、そこに派を率いるリーダーがおらず、総裁の座を狙う領袖が存在しない。そのせいか、最近、領袖という言葉が政治マスコミの場で使われなくなった。名前は岸田派とか竹下派とか二階派とかあるけれど、事実上、それらは巨大な安倍派を構成する部分であり、本家(親藩)の細田派に対して分家(外様)が幾つか散らばっているというに程度に過ぎない。外様派閥の中を見れば、家老クラスの幹部が実は安倍晋三の直臣であり、派閥会長ではなく安倍晋三に対して忠誠を誓っている。常に派内をスパイして内情を安倍晋三に密告している現実がある。結束力などどこにもない。派閥という視点から自民党を眺めたとき、最早、自民党には安倍晋三をリプレイスする有力派閥も有力領袖もなく、このまま63歳の安倍晋三を終身独裁者として座らせ続けるしか方途がないのが実情だ。現在の自民党はそういう構造に固定化していて、安倍晋三しかトップに据えられないシステムになっている。競争者がなく、競争者や後継者を用意する派閥のシステムがない。

自民党の派閥は、独裁者に忠誠競争をしてポストを分け与えて貰う集団という意味に変わった。安倍晋三が三選すれば、四選に向けての独裁体制の条件がさらに3年間で固まるのであり、その方向性以外に他にどうすることもできない。独裁制は半自動的に、コックリさんの運動のように強化される。昭和初期の昭和天皇の軍事独裁権力のように、肥大化し超越化・絶対化しつつ、破滅の終局へ転がり突っ走って行くだろう。仮に改憲や戦争がなかったとしても、次の3年間で、マスコミの政治報道はさらに大きく変わるに違いない。安倍晋三の次を考えることは、ロシアのプーチンの次をイメージすることと同じで、すなわち、本人が病気や事故で自然に倒れてくれるか、あるいは、(平穏を常とする日本史に不釣り合いな)相当にラディカルでドラスティックな政治の出現を想定せざるを得ない。

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by yoniumuhibi | 2018-08-10 23:30 | Comments(0)


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