モゲリーニが北朝鮮非核化を後押し - 孤島状態の日本の報道と世論

c0315619_13105330.jpgマスコミやネットを見ていると、北朝鮮は絶対に非核化しないと言い張っている者が圧倒的に多い。マスコミの御用論者だけでなく、左翼までが北朝鮮は非核化しないと頑迷に信じこんでいる風景には驚かされる。植民地左翼脳と呼ぶべきか、米国と同じレンズとファインダーで北朝鮮や中国を観察し、その歪みと曇りに無自覚な日本の若い左翼が増えている。左翼が率先して北朝鮮への不信を煽り、ツイッターで「二分間憎悪」の勤行に精を出している。世界はどんどん変わっているというのに、日本の中にいる者だけが、米国中心の世界観に染まりきっていて、右も左も米国の神に帰依してしまっている。米国が価値の中心だと絶対視する拝米信仰から離れられない。彼らは、その固定観念のゆえに、今回の北朝鮮の非核化について正しい認識を持つことができないのだ。今週号の週刊朝日の新聞広告を見ていたら、「金正恩は核兵器を手放さない」という記事見出しが載っていた。マスコミの論調を代表するものだが、現在はこの種の偏見丸出しの俗論が横溢し氾濫していて、中朝首脳会談の意義を否定する意見ばかりで盛り上がっている。



c0315619_13113807.jpgこうした主張と逆の論を唱える者はほとんどいない。私ぐらいのものだろうか。いったい日本人は何をしたいのだろうか。溜息が出る。脱力の気分になる。ニュースを見ると、北朝鮮の外交官がブリュッセルを訪問し、EU高官と本日4日に会談するとある。この動きには伏線があり、康京和が3月19日にEU本部を訪れ、モゲリーニと北朝鮮情勢を協議していた。韓国外相がEU外相会議に参加するのは初めてだという。いいコンビだ。二人は息ぴったりだろう。この「初参加」はモゲリーニの差配に違いない。イランの核放棄(核合意)を実現させた立役者はモゲリーニだった。この今井佐緒里の記事によれば、北朝鮮の核放棄にも意欲的に身を乗り出す姿勢とある。頼もしい話ではないか。朝日の記事を見ると、北朝鮮外相の李容浩がロシアを訪問、朝ロ会談について話し合う可能性があるとある。ひょっとしたら、李容浩はその足でモスクワから西に向かい、モゲリーニと電撃会談するかもしれない。北朝鮮が外交攻勢を活発化させ、平和外交のグローバル展開にアクセルを踏んでいて、5月末予定の米朝会談に向けて着々と布石を打っている。

c0315619_13122328.jpg2日夜のBS日テレの番組の中で、辺真一が、金正恩はトランプに非核化を約束するだろうと予測を述べていた。私と同じ見方だ。辺真一は、非核化を宣言することは簡単だが、実際に非核化の中身を具体的に詰めて米朝が合意することは難しいし時間がかかると説明していた。その点の見通しも私と同様だが、表現というか、言説のニュアンスが私と違っていて、辺真一は、北朝鮮への反感と憎悪で凝り固まっている日本人に阿諛した言動に徹している。マスコミで商売する者として当然の態度だろう。ストレートに客観的な判断を示せば、マスコミから出演の依頼はなくなる。テレビの仕事を失ってギャラがもらえなくなる。辺真一は周到に保身を図った言い回しに努め、米朝会談が失敗に終わって欲しいと願望する日本の視聴者の心理に沿う慎重な言葉運びを選んでいた。私にはそのような心配は一切ないので、ありのまま正確な分析と予想を文章にする。トランプが自ら即断して会うと言った以上、米朝会談は成功という結果になるしかないのだ。米朝会談の成功はトランプが求めている絵であり、日本のマスコミや左翼がネガティブな視線でケチをつけても揺るがない。

c0315619_13125316.jpg何度も言うように、それは11月の中間選挙で自画自賛する材料なのだから、少なくとも11月までは、米朝会談が成功してトランプが外交実績を作った、トランプが手腕を発揮して米国と同盟国の平和を守った、という既成事実にしなくてはいけない。だから、5月の米朝会談は世界のマスコミが華々しく礼賛するものになるだろうし、トランプはそれを意識した成果の演出に努めるだろう。トランプにとって必要なのは、金正恩と握手して並ぶツーショットの映像である。それは、北朝鮮の非核化のコミットを意味するもので、北朝鮮の非核化をビジブルに証明し、世界の人々に感得させるものだ。長年の世界の懸案事項であったところの、北朝鮮の核挑発の憂鬱が取り除かれ、米朝核戦争の危機から解放される絵である。それは、世界の人々にとって福音と祝賀以外の何ものでもない。さらに言えば、トランプと金正恩の体格間には相当な身長差があり、そして親と子と同じほどの年齢差がある。肥満はしているが背の低い金正恩は、トランプの巨体と並ぶと子どものような対照になる。父親に強く言い含められ、しぶしぶ頷いて従った男の子というキャラクター・バランスの構図になる。

c0315619_13133832.jpgその政治演出と印象効果がトランプの狙い目だ。トランプはそのイメージを獲得したいのであり、単純な絵で表出された成果をもとに、金正恩はオレの前で頭を下げて非核化を誓ったぞと宣伝するのだ。細かいことはどうでもよく、後のことはどうでもいいのである。非核化のプロセスだの、査察だの検証だの、そんな子細は関心外で目的外なのであり、中間選挙を終えて来年になれば、再び核危機の騒動を演じ合う敵同士の関係に戻ってもよいのだ。トランプがコンビンス(納得・確信)させようとしている相手は、平和を求める世界の市民ではなく、中間選挙で投票する米国の有権者である。合衆国の国益も真面目に検討していない。何と言っても、中間選挙に負けてロシア疑惑で弾劾されれば、それでトランプは一巻の終わりだからである。恥さらし者になってDCから追放される。政治生命が終わる。したがって、この政治の真相を正しく省察するならば、5月の米朝対談はイベントなのであり、北朝鮮非核化が盛大にローンチされる(打ち上げられる)ショーイベントなのだ。バーチャルな外交政治と言ってもいいだろう。北朝鮮側もその真実を理解している。だから、即座に非核化を宣言する。

c0315619_13144412.jpg何の問題もないのだ。辺真一が言い、私が言っていることはそういうことである。今、北朝鮮憎しの感情と扇動で固まった日本のマスコミと世論は、北朝鮮の非核化の中身ばかりを注目し、それは無理だろうとか、信用できないとか、また騙されるとか愚痴を言っている。そう頭から決めつけ、決めつけを言い散らし、閉ざされた密室空間でそれを四方に反響させて満足を覚えている。非核化の具体的な内容が心配なら、それは経験とスキルのあるモゲリーニに問えばよいのだ。問題は、むしろ、米国が交換条件として北朝鮮に与える体制保証の中身である。いったい、米国は北朝鮮に何をコミットするのか。そちらの方がずっと重要な関心事であり、この外交を読み解く上で正解が難しい問題ではないか。金正恩はトランプに「非核化します」と言う。分かりきったことだ。左翼も含めて日本人はその想定を嫌って認めないが、こんなことは常識で、米朝会談に北朝鮮が応じるということは、その場で非核化にコミットして合意するという意味である。それでは、トランプは金正恩に何を約束するのか。何をもって北朝鮮が差し出す非核化と交換するのか。体制保証に応じるのか。その体制保証の中身は何か。

c0315619_13151475.jpg米韓軍事演習は終了させるのか。国連安保理制裁決議と金融制裁の解除に応じるのか。「体制保証」という言葉は、一般の政治や外交では滅多に使われない言葉で、北朝鮮と米国との関係を語るときだけに登場する特殊な四字熟語である。北朝鮮問題の報道や議論で頻繁に登場するものだから、われわれはその言葉の定義をせぬまま、曖昧な概念のまま素通りしてしまっている。本来、言葉の解説が必要だし、この言葉が北朝鮮側から発せられた出発点を確認し、米朝の30年間の歴史を検証し整理しないといけないだろう。そうでないと、北朝鮮が求める「体制保証」の意味が分からない。北朝鮮はそれのみを追求し、国際的に孤立して飢餓の地獄に至ってもなお、プーチン言うところの「雑草を食いながら」核開発をやめずに続けてきた。トランプは、今回の米朝外交を一時的でバーチャルな政治興行として位置づけ、自らの画期的な達成を誇示する場にしようと企図しているけれど、北朝鮮は、これを国家を賭けたリアルな外交と位置づけ、半永久的に残るステートメントを刻む歴史的合意を確立させようと動いている。その動きを韓国と中国とロシアとEUが応援している。畢竟、トランプは、金正恩から「非核化」の満額回答を得る替わりに、「体制保証」の満額回答を与えなくてはいけない。

c0315619_13154001.jpgそうしないと、「非核化」の満額回答は得られず、トランプが選挙目当ての人気取りで思惑する「歴史的偉業」のサクセスストーリーは得られないからだ。「非核化」と「体制保証」の交換は、トランプやボルトンの主観では一時的で仮想的なものであっても、それは世界政治の中では確実に巨大な既成事実となる。与件となり、次の時代を展望する前提となる。中国と韓国とEUがその前提を土台にして国際外交を押し進めたとき、米国単独の力で緊張状態への後戻りを強行することはできない。かくして、トランプが気まぐれなスタンドプレーで残した事実が米国を拘束し、米国の東アジア戦略を規定づける条件になっていくだろう。米朝合意が成った後、北朝鮮は非核化を撤回できないし、米国は体制保証を反故にできない。北朝鮮の非核化が撤回できない理由は、それを半強制的に実行させる国が中国だからだ。中国は北朝鮮非核化の身元保証人の立場であり、今回、米国に先行して北朝鮮から非核化のコミット(内示ベース)を得た。現時点で、北朝鮮の非核化は宣言されたも同然の位置にある。米国の体制保証の方に注意が傾く状況にある。日本の報道と世論は、そうした現実の進行から全く切り離された孤島にある。

愚かしく嘆かわしいことだ。次回、「中国の核の傘」の問題について考察を試みよう。
そのことを通じて「体制保証」の意味を掘り下げて考えよう。

c0315619_13173174.jpg

[PR]
by yoniumuhibi | 2018-04-04 23:30 | Comments(1)
Commented at 2018-04-05 01:21 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


カウンターとメール

最新のコメント

ミャンマーにサラ金、日本..
by 長坂 at 10:43
世の倦む日々様、はじめて..
by Ju at 10:12
30年前、タイ北部、Ph..
by 愛知 at 04:16
(2の2) 日本の..
by 七平 at 02:21
(1の2) 先進国から..
by 七平 at 02:20
ポンペオにばかりスポット..
by 長坂 at 19:07
本土にいる人間をできるだ..
by 国際世論に向け発信 at 22:50
玉城デニーさんの集会には..
by 私は黙らない at 04:06
はじめまして 78歳 ..
by 久保 公 at 16:42
ブログ主さん、今日(9/..
by 私は黙らない at 05:12

Twitter

以前の記事

2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング