「身分なき斡旋利得」の法理 - 安倍昭恵の犯罪についての試論

c0315619_15061444.jpg安倍昭恵の行為は法的にどのように意味づけできるのだろう。何らか罪に問える法律論を構成することはできるのだろうか。昨日(19日)の国会での共産党の質疑で見事に解説されていたように、森友学園の国有地取得にあたっては、要所要所で安倍昭恵が登場し、財務省側に積極的な働きかけを行っていて、最終的に国が大幅値引きを認めて売却するという結果に至った。特例措置と称して背任が行われている。辰巳孝太郎がパネルで簡潔に総括したとおり、森友学園側には資金がなく、近畿財務局側にとっては最初から話にならず、交渉は打ち切りという進行になっていた。そこに突然現れたのが安倍昭恵で、籠池夫妻とのスリーショットの写真が突きつけられ、近畿財務局が狼狽し、本省にお伺いを立てる政治案件となり、そして、地中ゴミを捏造する不正工作に国が加担し、異例の8億円値引きを許容・決済して売却契約するのである。首相夫人である安倍昭恵が影響力を行使することで、財務官僚たちは背任を行い、森友学園は不当に安く土地を手に入れることができた。安倍昭恵に注目したとき、事件の全体図は法律論としてどう描くことができるのだろうか。



c0315619_15063912.jpg一つの仮説としては、背任の教唆あるいは幇助という考え方ができるだろう。例えば、具体的には、谷査恵子を使って田村嘉啓(国有財産審理室長)に働きかけを行い、財務省内の事案検討を動かした証拠がFAXで残っている。教唆とは、「他人をそそのかして犯罪実行の決意を生じさせること」である。背任は財務省ぐるみで行われ、森友学園側の望みどおりに土地を取得できるよう、行政を歪めた決定と措置が重ねられているのだが、この犯行を財務官僚に決意させる契機が、安倍昭恵の働きかけであった点は誰の目にも明らかだ。首相夫人からの度重なる照会と督促があり、首相夫人が森友学園の強力な代理人として動き、意向と圧力を財務官僚に示し続けたため、財務省はそれを拒否できず、不当値引き(背任)を方針決定し、三者(国・森友・業者)で共謀して地中ゴミ捏造という不正な偽装工作に及ぶ顛末に流れてしまった。こういう認識と立論で、安倍昭恵を今回の背任事件の教唆犯として立件することは可能だと思うが、この法律論だとやや単純すぎるというか、法理があっさりしすぎていて、意味と本質がよく浮かび上がらない物足りなさを感じる。安倍昭恵はなぜ教唆をしたのか。

c0315619_15065656.jpg私が案出したもう一つの法理は、「身分なき斡旋利得」という考え方である。特異なターミノロジーでお気づきのように、例の、山田洋行事件での守屋幸子の逮捕がヒントになっている。あのとき、検察は「身分なき共犯」の法理を適用し、それまで職務権限がないと一般に想定されていた、(防衛事務次官の守屋武昌の)妻である幸子に手錠をかけた。画期的な捜査であり、歴史に残る司法の英断と成果だった。鮮烈で痛快な捕り物だった。守屋幸子の容疑は斡旋収賄の共犯である。当時の報道で周知のとおり、山田洋行は8年間で300回以上守屋夫妻をゴルフ接待したが、そのゴルフ接待(贈賄)をおねだりした主たる者は妻の幸子であり、幸子の方が積極的に贈賄を業者に要求したという事実経緯があり、検察はこれを重視、幸子に「身分なき共犯」を適用して立件した。この捜査が画期的だった理由は二つあり、一つは、職務権限がないとされていた夫人に検挙が及んだことと、もう一つは、賄賂にはならないと考えられていたゴルフ接待が賄賂と認定されたことである。幸子には公務員の身分はなかったが、収賄の容疑者として収監され、最終的には処分保留で釈放となったものの大きな社会的制裁を受けた。

c0315619_15071150.jpg山田洋行事件をヒントにして、安倍昭恵の行為を犯罪としてどう構成するかを考えたとき、「身分なき斡旋利得」という着想と造語が閃いた。そうした面倒な言葉を開発して無理に法理構築しなくても、首相夫人は政治家に準ずるという判断を示せばそれでよいのかもしれない。実際に、このとき安倍昭恵には何人も夫人付きの秘書官(常駐職員)がいて、それらは霞ヶ関の官庁からの出向者で、昭恵の世話のために侍って仕事していた。今回の事件は、夫人の昭恵が首相の安倍晋三の代役となって動き、財務省の行政を不当にねじ曲げ、財務省に背任の大罪を犯させた問題である。背任を犯した財務官僚の動機は、政治権力者から強い圧力と干渉を受け、影響力を行使され、それに逆らったら組織内での自己の地位が危なくなるから、保身のために犯行に手を染めたというサラリーマンの論理と事情で了解できる。首相夫人が事実上の政治権力を保有し、それを行使し、官僚がその指導と要望に服従していた事実は、昨日19日の国会での小池晃の質疑と太田充の答弁で明白だろう。これは典型的な口利きの事案である。口利きとは「間に立って紹介や世話をすること」を意味する。首相夫人 - 事実上の政治権力者 - の立場を利用した口利きの案件だ。

c0315619_15072209.jpg口利きであるという真実を法律論で明確に構成するため、敢えて「身分なき斡旋利得」という新しい概念を考案し提起してみた。背任の教唆という捉え方だけでは、言葉の意味する関係性が平板すぎて、口利きの真実がよく要件構成されない弱点がある。これは政治家(事実上の)による口利きの事件であり、安倍昭恵は口利きを行っており、したがって、口利きの内実が捕捉されるような法理表現が与えられなくてはいけない。今回の背任において関与する当時者は大きく三者あり、(1)犯行を行った財務省と、(2)不当に利益を得た森友学園と、(3)間に入って仲介した安倍昭恵である。安倍昭恵が斡旋を行っている。通常、政治家の斡旋利得の場合、政治家に業者から賄賂が入るという図になる。それが斡旋利得の一般概念だ。今回の安倍昭恵は、森友学園から講演料の報酬等を受け取ってはいるが、これを賄賂と判定するのは常識として少し飛躍があると言えるだろう。それでは、何をもって今回の事件での利得を定義するか。結論を言えば、それはイデオロギー上の利益に他ならない。森友学園の教育理念に賛同し共鳴している安倍昭恵が、そうした学校の建設と増殖を促進するべく、財務省の国有財産行政に干渉し、背任(不当値引き)を導いたと、そう構図を描くことができよう。

c0315619_15074208.jpg山田洋行事件では、検察は前例のない犯罪類型の判断を示し、ゴルフ接待を賄賂と認定した。通常、政治家の口利きとか斡旋利得の事件で、イデオロギー上の利益が問題になることはなく、もっぱら金銭とか物品とか飲食とか性的サービスが対価として問題になる。今回の森友事件では、仲介者の安倍昭恵が金銭や物品を受け取って利益を享受したという実態はない。少なくとも、現在までにそうした事実を裏づける証言や証拠は上がっていない。だが、安倍昭恵が財務省に働きかけたことは事実であり、執拗に介入を繰り返し、国有地管理行政を違法な決定 - 特例措置という名目での背任 - へと方向づけたことは間違いない。このとき、介入(斡旋)した昭恵の利益は何なのか。何を得たのか。それは、教育勅語を児童が暗唱して斉唱する極右教育の小学校が認可設立されることであり、大阪を起点に全国へ広がる夢を得たことだっただろう。森友学園の理事長である籠池泰典は、安倍昭恵とイデオロギーを共有する同志であり、籠池泰典の教育事業が成功して極右教育が全国を席巻することは、安倍昭恵にとっても待望の政治目標の実現だった。それが、今回の口利きの目的であり動機である。それが事件の真相である。

c0315619_15075401.jpg「イデオロギー上の利益」なる考え方を、法的な領域、特に刑事に関わる行為認定に持ち込み、それを政治家が斡旋利得する際の金銭や物品や性的サービスと同列視する思考を試みることは、我ながら若干の躊躇がある。憲法に規定された思想信条の自由と抵触しないかという不安が浮かび、国家権力が「思想犯罪」を捜査の対象とすることに繋がらないかという懸念がある。けれども、犯罪には常に動機があり、犯罪者が犯行をする動機には、金銭や物品や遊興といった即物的な欲得だけでなく、世界観に関わる観念的で思想的な達成や満足が動機となる場合が確かにある。人が追い求めるものは、食欲や性欲や名誉欲の充足だけではない。人はイデオロギーのために殺人を犯す。それは反体制側の過激派がテロでやるし、国家権力を持つ側が権力犯罪で行う場合も多い。今回の森友事件の一連の諸行為が、権力犯罪であることは、ジャーナリズムの視点を持った者には明瞭だろう。①刑法247条の背任、②刑法104条の証拠隠滅、③刑法156条の虚偽公文書作成、そして、ひょっとしたら、邪推かもしれないが、陰謀論と誹られるかもしれないが、④刑法199条の殺人まで視野に含んだところの、森友事件は巨大で壮絶な権力犯罪の塊である。

まさに、立花隆が探偵となって分析・推理するべき巨悪の事件だ。森友事件を一括して考察し、巨悪の権力犯罪の体系として概念化したとき、主犯は安倍昭恵・晋三夫妻という断定になるだろう。誰も異論はあるまい。すべての犯行には動機がある。検事は刑事事件を立件するとき、動機を正しく確定して構成要件を完成させないといけない。起訴状に、解明した動機を記述し説明しないといけない。森友事件の主犯の動機は何なのか。それは、正しく「イデオロギー上の政治的利益」としか定義できず、客観的説明として他に要素を挙げて立論できないに違いない。私はそう考える。これは極右国家権力者による権力犯罪なのだ。それが森友事件の本質だ。


c0315619_15081575.jpg

[PR]
by yoniumuhibi | 2018-03-20 23:30 | Comments(7)
Commented by 芝ちゃん at 2018-03-20 20:31 x
戦時中、軍国少年だった私(87歳)は、戦後民主主義の荒波で、思想的に、幾多の変遷を受けて生きて来ました。しかし、いつの時代でも【真実は何か】だけは青年のように求め生きております。明治憲法下の教育勅語を復活させ、国民を塗炭の苦しみに追い遣った戦前の日本を再現させようとする勢力に、激しく抵抗する老人として,森友学園問題の解明に懸命に論じるブログ主さまに心から敬意を表します。
Commented by ニコラ at 2018-03-21 01:55 x
非常に分かりやすい解説でした。昭恵夫人は善意のお人好しで籠池さんに利用されたと思うものの、なにか釈然としない。昭恵夫人の軽率な行動で土地の異常な減額、財政基盤の無い学校の設立、決済文書の改ざん、自殺者まで出るといった事態に、昭恵夫人は全くの無実かと言われるとそれも納得できない。

昭恵夫人の動機がイデオロギーにあるというのなら、口利き斡旋の罪は確かにある。権力者のおこぼれに預かる夫人という立場を利用していたのだから。谷さんという秘書に直接役所に介入させたのだから。もちろん執行猶予だろうけれど、こんな事態を引き起こして国会を空転させた罪は背負って貰いたい。
Commented by dustbranch at 2018-03-21 03:59 x
安倍昭恵氏の罪状は、共謀罪だろう
旦那が可決させた共謀罪の初の逮捕者になってもらおうじゃないか

そもそも、現在のマスメディアの体たらくは
安倍晋三らのメディアにおける国家権力の行使にある

それと同じように自分達の主張する改憲意識を世論に高めてもらえるよう、
自分の旦那への世間の支援を取り付ける為に
日本会議のメンバーでもあり、軍国主義教育にいそしむ籠池夫婦に利益供与の便宜を図ってやった

選挙活動の一環でもある

旦那への支援の取り付けの為に国家の全省庁ぐるみで
虚偽を働かせ、国家財政を流用させて利益供与を行う

しかも、それは人殺し(戦争やテロ活動)を助長させる為に
どこの世界に二度と戦争しないと憲法に書いてある国で
わざわざ戦争すると書き換える馬鹿がいる?
国際法上でも違法だろ、戦争や軍隊を助長するなんて

なら、立派な共謀罪じゃないか
ぜひとも、自分の旦那が可決させた悪法の初の逮捕者になってもらおうじゃないか
それでこの問題の始末がつく
Commented by 七平 at 2018-03-21 05:08 x
(1の2)
森友学園疑獄事件の中心人物である、安倍昭恵を 法的に、刑事事件の犯罪者として起訴できるか否かをあらゆる角度から検証していただき、洞察力に満ちた主様の論理展開、興味深く読ませていただきました。ご指摘の通り彼女自身が官僚を恐喝したわけでも無く、見返り有形、無形の賄賂を受けたわけではないので、最後のバラグラフで結論されたように、 「イデオロギー上の政治的利益」 を得た事になるのですが、安倍夫妻の イデオロギー上の政治的利益 を追及する過程において、8億円もの国民資産が私物化され、既に死者3名(田中造園社長も含む) 被害者が出ており、中心人物を無罪放免にするわけにはいかぬと思います。 何らかの刑罰が適用される事を期待します。

安倍昭恵も晋三もWebでBackground を検索してみましたが、どう見ても過去の発言や履歴からして、イデオロギーがどうのこうのと言うIntellectualな面が見いだせません。 二人とも政財界の富裕層出身、三、四代目、単に世襲制度に乗っかって、能力の無い人物が器以上の職務についてしまったと言うのが実情ではないでしょうか? ただ、はっきりしている事は、昭恵も晋三も民主主義の信望者では無いということです。 


Commented at 2018-03-22 05:14 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 鮟鱇 at 2018-03-22 07:59 x
「ニコラ」氏へ。文中「もちろん執行猶予だろうけれど」とあり、これは、本文「安倍昭恵の犯罪についての試論」のなかで「(防衛事務次官の守屋武昌の)妻である幸子に手錠をかけた」「幸子に「身分なき共犯」を適用して立件した」という記述に引きづらたのだと思いますが、守屋幸子氏は検察の取り調べを受けるなどされたものの、結論は「処分保留」です。執行猶予、とは、起訴され有罪判決を意味しているのであり、起訴もなされていない守屋幸子氏の処分保留とは大きく異なります。本文の中でも繰り返し述べられていますが、今回の内容」と判断されたのではないでしょうか?もう少し穿った見方をするなら、司法官僚の身の保身から、「守屋武昌と、その眷属は許すまじ!」という「民意」の風圧から、身を躱す為のスケープゴートにされたーとも見立てられないでしょうか。
今の状況は「アベ、許すまじ!」の気持ちの横溢から、官僚が「正義の味方」……とまではゆかなくとも、その切っ先が鈍く、甘いことに懸念を覚えます。今般の事案のゆきつくところが「官僚支配の最終的完成」となってしまうことにも私たちは警戒をすべきではないでしょうか。
それと「dustbranch」氏へ。おそらくは皮肉から「安倍昭恵氏の罪状は、共謀罪だろう」とレスをなさったのだと思いますが、これこそ、法案成立当時、そして今日においても私たちが懸念している「共謀罪」の恐ろしさではないでしょうか。確かに、アベは権力者ではあります。しかし、そうした権力者に対してさえも司法官僚の意のままに「共謀罪」が適用されることが何を意味するのか、私たちはもっと警戒をするべではないでしょうか。
アベを倒すのは、あくまでも「私たち」でなくてはなりません。
Commented by ロシナンテ at 2018-03-26 12:25 x
ファーストレディを喚問するならば、その背景、日本会議にまで問いただなきゃ、安倍·籠池との関連性までも含めた背任行為を追求できないでしょう。
国会野党からの質問で日本会議の名前が出るかどうかで、茶番か否かの判断ができると見ています。


カウンターとメール

最新のコメント

横田早紀江さんは全てを把..
by 町田 at 15:46
モリカケというアキレス腱..
by takahashi at 14:51
「米朝会談を受け早速ウラ..
by (いつもの)長坂 at 15:51
昨年の危機的な状況から今..
by familia at 20:58
日本がバブルで沸いていた..
by 私は黙らない at 04:24
NHKのクローズアップ現..
by Mr.T at 21:38
米国民主党だけでなす、 ..
by 長坂 at 20:27
朝鮮国内向けのビデオ、い..
by 長坂 at 17:16
NHK の報道がどのよう..
by 七平 at 07:33
本ブログは数年前から欠か..
by familia at 17:05

Twitter

以前の記事

2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング