オーウェル的な政府文書の組織的改竄 -「虚偽公文書作成」の権力犯罪

c0315619_14252899.jpg昨日(12日)、財務省が森友文書の改竄について調査結果を報告した。提出された資料は全78ページ。14件の決済文書で310ヵ所の改竄が行われており、予想していたよりもずっと規模が大きく、組織的な改竄だった事実に驚かされる。10日前の2日に朝日が暴露報道したときは、2件の決裁文書の「書き換え」が指摘されただけで、まさかこれほど徹底的な改竄が行われているとは想像もしていなかった。佐川宣寿が辞任発表した翌日の10日、夜9時のテレ朝の報道番組(サタステ)を見ていたら、財務省前から中継があり、理財局のある3階だけに照明が皓々と灯り、中で週明けの報告書のために作業が続いていると説明されていた。ずいぶん仕事が大がかりだなという印象を受けたが、壮絶な改竄をやった分、それを国民に白状する資料も壮絶な量になったと言える。すぐに連想したのは、オーウェルの『1984年』の冒頭の描写で、真理省の職員のウィンストンが政府の記録文書を書き換えて、元の文書を焼却する作業の場面である。あれがウィンストンの日常業務だった。今回の森友文書の改竄は、決してバッチ処理で短期に行われたものではない。



c0315619_14261981.jpg国会議員に提示する前に一時に集中して行われたのではない。バッチ処理ではなくリアルタイム処理の改竄だ。昨年の2月下旬から4月にかけて行われたと報道されている改竄の時期の意味がやっと分かった。つまり、佐川宣寿が国会で野党議員の質問に対して虚偽の答弁を返す度に、その答弁と辻褄が合わなくなる決裁文書の部分を削除し、あるいは別の記述に内容を変えていたのだ。理財局の組織を挙げて、毎回の佐川宣寿の答弁を入念に検証していたのであり、文書開示後にウソがバレないよう整合性をとるべく、オリジナルの決済文書を改変していたのだ。その作業を実務していた人間が何人もいて - 末端はあの自殺した近畿財務局のノンキャリ職員だが - 何重にも職制をかけてチェックし、最後は佐川宣寿と麻生太郎と、菅義偉と安倍晋三が承認を出して「正式文書」にしていたのだろう。その図を想像すると目眩がする。自殺した職員は長時間の残業で心身に不調を訴え、最後は「常識が壊れた」と親族に語っていたと報じられているが、よく分かる気がする。残業は月100時間を超えていた。決裁文書の内容を一つ変えると、関連した別の文書とも辻褄合わせをしなくてはならなくなり、それを丹念に探して改竄を加えないといけなくなる。

c0315619_14264922.jpg12日のテレビ報道では、当日朝7時に財務省から台車で段ボール箱を運び出す何人かの職員の様子が撮られていた。理財局の東大出の若い官僚だ。10日から12日にかけて、おそらく不眠不休で突貫作業して、全78ページの報告資料を完成し、徹夜でコピーして印刷した山を朝一番で国会に運んだのだろう。お疲れさまと言いたいところだが、彼らこそがまた、昨年2月下旬から4月にかけて決裁文書の改竄実務に携わった者たちであり、公文書管理法違反(さらに刑法違反)の犯罪行為に手を染めた男たちである。逮捕起訴は免れるかもしれないが、何らか懲戒処分は受けるだろう。そのことを覚悟しつつ、週末3日かけて78ページの分厚い報告資料を作成したことになる。霞ヶ関の官僚らしく精密に。報告書の入った重い段ボール箱を運ぶ姿は背中だけが撮られていた。いったいどんな気分だったのか。東大を出て官僚になる者は、誰でも一番に財務省に入りたい。財務官僚と他の現業省庁の官僚とは身分が違い、格が上だから。森友問題というのは、単なる公文書偽造の事件ではないのだ。背任である。すなわち、森友文書の改竄に手を染めた官僚というのは、背任の証拠隠滅を実行し、あるいは幇助した犯罪者に他ならない。

c0315619_14274174.jpg今回の理財局の改竄について、ようやくマスコミは「書き換え」から「改竄」に報道の用語を変更した。「竄」の字が常用漢字でないためか、テレビや新聞では「改ざん」と平仮名で表記されている。文書改竄と呼ぶようになった。悪意が含まれているから、「書き換え」ではなく「改竄」なのだと説明している。それは一歩前進だろうし、正しい認識ではあるだろう。私は、ずっと、これは単なる「改竄」ではなくて「偽造」だと言い、マスコミやネットの言語用法に異議を唱えて注意を促してきた。法律の概念を使って事件を説明しろと言ってきた。事件に適用されるべきは、刑法258条の「公文書毀棄」ではなく、刑法156条の「虚偽公文書作成と行使」であり、刑法17章で一括してカテゴライズされている「文書偽造罪」の考え方を採用するべきだと言ってきた。「公文書毀棄」と「虚偽公文書作成」では犯罪の類型が違う。行為が異なる。今回の文書改竄は、国会議員を欺き、国民を騙し、財務省が犯した背任事件の証拠隠滅を図る目的からの悪質な行為であり、「公文書毀棄」ではなく「虚偽公文書作成」の行為として捉えるのが法的に正確な認識である。偽物の公文書を作り、本物とスリカエた行為だ。

c0315619_14275152.jpgさらに言うなら、この件は、物理的行為としては「改竄」だけれど、法的行為としては「偽造」であると、そういう見方もできるだろう。「改竄罪」という言葉はないのである。「偽造罪」という言葉はある。法律的には、「改竄」は「偽造」という犯罪行為を構成する部品だと、そう整理してもいいかもしれない。昨夜(12日)のNHKの7時のニュースを見ていると、鈴木菜穂子の原稿音声で、大阪地検が捜査に動き、「虚偽公文書作成と行使」の容疑で佐川宣寿を聴取すると報じていた。そして、TBSのNEWS23だったと思うが、元検事の女性弁護士が音声出演し、やはり「虚偽公文書作成」「公文書偽造」だと専門家の見解を述べていた。国民を欺く悪質きわまる権力犯罪であるという指摘もされていた。我が意を得たりの思いで膝を打ったが、どうしてこの正しい法律論がこれまでマスコミ報道の前面に出なかったのか不思議でならない。刑法概論を法学部で学び、行為の類型だとか構成要件について講義を聴いた者なら、この犯罪について第一に類推するべきなのが刑法17章の「文書偽造罪」であり、刑法258条や公文書管理法の規定は法理として本質ではなく周辺であることを洞察できるはずだ。

c0315619_14341981.jpgさて、佐川宣寿への捜査と麻生太郎の辞任は時間の問題となった。そう言っていいだろう。11日のバンキシャは、捜査当局の判断として、この文書改竄について刑事責任は問わないと報道していたが、そういう情勢ではないことは一目瞭然である。ここまで国民から激しい怒りを向けられている悪役が、不起訴処分の措置で無罪放免というわけにはいかない。おそらく、安倍晋三は、ガス抜きの思惑で佐川宣寿を国会証人喚問に差し出すだろう。が、当の佐川宣寿は狡猾に立ち回り、「刑事訴追の恐れがあるので回答を控えます」「捜査を受けている身なのでお答えできません」と、法的立場を巧みに悪用して追及から逃れるだろう。証言を拒否することは真相を隠すことであり、その点では安倍晋三にとって好都合なのだけれど、例の、人をバカにした傲岸でグロテスクな態度を見せられ、テレビの前の国民の憤怒は沸点に達するに違いない。佐川逮捕を要求する国民の声が爆発することは確実で、内閣支持率も下落して行く。そのとき、周到に出番を計っていた検察が、レフェリーストップの如く局面に割って入り、佐川宣寿の身柄を預かって塀の中に移送するものと、そう私は予想する。拘置所の中に入れば口なしで、籠池泰典と同じ身になる。

国民の憤りは到底収まらず、政局は安倍昭恵の証人喚問に向かうだろう。それが問題の本筋だ。背任(国有地の不当値引き売却)こそが事件の本筋だ。かくて佐川宣寿は舞台を降り、いよいよ物語の主役の登場となる。次回、安倍昭恵の容疑の法律論を論じたい。彼女は犯罪をしたのか。それとも道義的責任だけなのか。


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by yoniumuhibi | 2018-03-13 23:30 | Comments(2)
Commented by りん at 2018-03-14 02:01 x
いま野党に対している財務省の理財局次長、あか抜けていて、話し方も上品ですね。年齢は50代前半でしょうか。
S川は容貌も貧相ですし、財務省でも部下による嫌われランキングの上位だと週刊誌で報道もありましたし、人に対する関心がない、人を人とも思わないのでしょう。悪役としてキャラクターが作られてしまいましたが、それは本人の素質によるものと思います。
あまり恵まれた育ちではないのかもしれません(少なくとも片山さつきさんとは、比べ物にならないでしょう)が、それでも人にやさしくできるかどうか、自分に劣等感があるから人にきつく当たるのか、そこが器量の差だと思います。
自殺された方は管理官という立場で、統括官の指示で動く立場の人だから、この人が悪いとは誰も思わないでしょう。自殺されたのが立場からすると不思議なくらいです。
それだけこの人が苦しんだのに、平然とあの答弁をやってのけたS川に対して、後味の悪さしか残りません。
Commented by クロワッサン at 2018-03-14 13:50 x
オウムのことに手を付けるのは方向違いでしょう、自殺者が出たことで一気に情勢が変わったのに、自分の立場のためにさらに人の命に手を掛けることが反発を呼ぶことすらわからないとは、頭が悪すぎます。
オウムの今の死刑囚の人たちは、みんな安倍晋三よりはるかに真面目な学生でした。青春の中で、オウムに入り込んでしまい、マインドコントロールされてしまったのです。
やったことを深く反省しています。主犯のあの男以外の死刑囚は、気の毒な面もあるのです。
二階さんはマキャベリストというか、世論が読めると週刊誌の記事にありました。今回、二階さんが、官邸の言いなりにならないことで、情勢を動かしています。


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