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北朝鮮がようやく「米国と対話の用意がある」と発言 - 米朝対話へ

北朝鮮がようやく「米国と対話の用意がある」と発言 - 米朝対話へ_c0315619_13460454.jpg昨日(25日)、平昌五輪閉会式に出席する北朝鮮の金英哲が文在寅と会談、「米朝対話の用意がある」と発言し、マスコミが報道するところとなった。トランプ政権になって北朝鮮核危機が緊迫化して以降、北朝鮮の側から「米国と対話の用意」の発言が出たのは初めてのことだ。これまで、米国の側は何度も「対話の用意がある」と合図を送ってきた。最も鮮烈に記憶に残っているのは、12月12日にティラーソンが発した、「前提条件なしで北朝鮮と会合する準備ができている」「とにかく会ってみよう。北朝鮮が望むなら天気の話をすることもできる」という言葉だ。この柔軟な姿勢には驚かされたが、公式の場での表明であり、明らかに北朝鮮に向けてメッセージが発信されていた。その後も、マティスペンスなど米政府の高官から「対話の用意」の発言が相次ぎ、現在に至っていて、米国が北朝鮮からの前向きな返事を待っている状況が窺い知れた。これまで北朝鮮はその誘いに応じず、ずっと威嚇と挑発の声明のみを米国に返していたが、今回、初めて対話に応じる旨の意思表示を発したわけで、このことの意味はきわめて大きい。



北朝鮮がようやく「米国と対話の用意がある」と発言 - 米朝対話へ_c0315619_13464945.jpg記事の内容から分かるとおり、これは文在寅が会談で金英哲から引き出した発言で、韓国政府側が大きなニュースにしてマスコミに発信させた政治だ。が、そのことを外交上手の北朝鮮が知らないはずがなくて、文在寅の誘い水に乗る形で、この重大なコミットを会談の場で明示している。言質を取らせている。外交のファクトを作っている。当然ながら、金正恩からの指令を受けての予定の行動であり、マスコミ報道を使っての米国へのメッセージの伝達に他ならない。普通に解釈すれば、この訪韓中に会う用意があるからコンタクトしてこいという意味になるだろう。前回のペンスと金与正との会談はキャンセルになったが、今回はそのときに障害になった問題が解決できているからOKだという示唆に受け取れる。金英哲は2泊3日の旅程で韓国に入っている。明日27日に帰国する予定で、今日26日は丸一日韓国に滞在する。すでに昨日25日に文在寅との会談を果たした以上、あとは米国の代表団の誰かと会談するしか用事がないはずだ。そのための十分な日程の余白が確保されている。これも一つのメッセージと解してよい。

北朝鮮がようやく「米国と対話の用意がある」と発言 - 米朝対話へ_c0315619_13471974.jpgイバンカの方は本日26日午前に帰国だが、この米国代表団にはホワイトハウス報道官のサンダースが同行していた。日本のマスコミは全く注目しないが、この事実は異例のことではないか。前回のペンス訪韓の際はサンダースは随伴していない。WHの報道官がWHを留守にして海外出張するケースというのは、通常、大統領がG7やG20やAPECに出席して、それに付き従ってプレス対応するときに限られる。WH報道官は米政権の意思を世界に発信する。WH担当の記者の相手をするのが業務だ。だから、本人は必ずWHにいなくてはならない。WH報道官に代理とか副の役職はない。そのサンダースが、わざわざ補佐官イバンカのお供をして韓国に入ったのは、五輪見物のためではなく、焼き肉食って物見遊山するためでもなく、よほど重要な外交事案を抱えていたからに違いないと誰でも想像する。確定した行動ではなくても、そこに北朝鮮との接触・会談が控えていて、臨機応変に対応するため、トランプがスタンバイさせたと考えるのが適当だ。サンダースはトランプの口であり、イバンカがプレスの前面に立たない場合はサンダースが立つしかない。

北朝鮮がようやく「米国と対話の用意がある」と発言 - 米朝対話へ_c0315619_13481538.jpgいずれにせよ、北朝鮮は外交カードを切ってきた。「対話の姿勢を示せ」という米国側のリクエストに応えて直球のボールを投げ返してきた。次は米国のアクションの番だ。そして、米朝対話の環境を熱心に整備しているのは、当時者であり同盟国の韓国で、南北が米朝対話を催促する形になっている。こうなると、米朝対話の開始となり、対話の中身をどう詰めるかという段階に自ずと進む。核問題についてどう北朝鮮と交渉してどう合意するか、どこで双方が妥協してどう着地するかというところに米国の関心が移る。そう考えてよい。米国側は、北朝鮮がさらに劇的に柔軟姿勢を強めると予測して様子を窺う構えをとるはずだ。私の観測も同じで、北朝鮮はこの流れと勢いを強め、韓国の次に米国に対して平和攻勢に出るだろう。少なくとも、パラリンピックが終わる3月18日までは米朝の間で軍事的緊張が高まる事態はない。それまでの時間を、韓国と北朝鮮は米朝対話の下地作りに使える。4月に米韓合同軍事演習を再開する場合は、艦隊や部隊を大がかりに動かさないといけないから、米軍内の指示や準備を3月中に行わないといけないことになる。3月に対話ムードがさらに進展し、トランプが交渉に本腰を入れれば、4月の米韓合同軍事演習は延期されることになる。

北朝鮮がようやく「米国と対話の用意がある」と発言 - 米朝対話へ_c0315619_13483501.jpg前回の、02年から04年の頃の北朝鮮核危機を思い出していただきたいが、国務長官だったパウエルが北朝鮮に対して核放棄を呼びかけ、見返りに「包括的支援」をプレゼントすると宥和政策を公約していた経緯があった。「包括的支援」の内容は、体制保証は言うまでもなく、食糧・エネルギーの支援まで含んでいて、ブッシュ政権の米国がそこまで譲歩するのかと私は驚いたものである。北朝鮮は「悪の枢軸」の一国だった。北朝鮮を欺くためのフェイントかなと疑ったが、そうではなく、実際にその外交戦略を基礎に据えている真実は、ハト派のクリストファー・ヒルが北朝鮮問題担当の国務次官補となり、六カ国協議の米国代表となって活躍したことでよく理解できた。米国(国務省)には過去からの北朝鮮外交の基本線があり、朝鮮戦争の休戦協定を終わらせて国交正常化するという宿題がある。米兵の遺骨の収集と返還、不明米兵の捜索など、終戦と戦後処理の手続きの問題がある。このことは日本のマスコミは無視しているが、米国の北朝鮮外交を動機づける重要な要素で、米国の国益上揺るがせにできない問題なのだ。どこかの時点で、米国は北朝鮮と国交正常化して戦後処理を終わらせないといけない。

北朝鮮がようやく「米国と対話の用意がある」と発言 - 米朝対話へ_c0315619_13484869.jpg別件ながら、少し気になったニュースとして、補佐官のマクマスターと首席補佐官のケリーの二人が辞任するのではないかという観測が流れている。トランプと関係がうまくいかないようだ。マクマスターはフリンの後釜で、ケリーはプリーバスの後釜でホワイトハウスに入ってきた男で、二人とも軍人である。マクマスターは陸軍の退役軍人。ケリーは海兵隊の退役軍人。この二人が補佐官としてトランプの周りを固めたことで、軍事政権の色彩がいちだんと濃くなったと懸念が言われていた。その二人がトランプと軋轢を起こしている。このフリクションが北朝鮮情勢にどういう影響を与えるかというと、客観的に見て、マティスとティラーソンの権力が相対的に浮上する結果に繋がる。国防総省と国務省の実務官僚たちの仕切りが、ホワイトハウスの政策決定に影響力を強める傾向になる。そう考えてよい。ティラーソンも、マティスも、北朝鮮との戦争に前のめりではなく、米国の国益を慎重に計算する男で、トランプにブレーキをかける役割を期待されている。そのことで米国民から信頼されている。ということは、ティラーソンとマティスの権力的地位が相対的に上がるということは、政権の北朝鮮政策がより対話重視の方向に向かうことを意味する。

それは、南北融和と米朝対話を急ぐ文在寅にとっては悪くない環境変化だろうし、逆に、北朝鮮との有事突入を急ぐ極右の安倍晋三にとっては嬉しくないバッドニュースだろう。


北朝鮮がようやく「米国と対話の用意がある」と発言 - 米朝対話へ_c0315619_13491774.jpg

by yoniumuhibi | 2018-02-26 23:30 | Comments(0)


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